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文部科学省が2021年に実施した教員不足の全国調査によると、2558人の教員が不足している実態が明らかになりました。NHKの調査でも、2022年度は2800人不足という一層深刻な数字が公表されています。

「#教員不足をなくそう!~今できること、すべきこととは?~現状を共有し、解決の道を探る 公開オンラインシンポジウム」が2022年8月17日、YouTubeライブ配信されました。告知期間が短かったにもかかわらず、100名以上がリアルタイムで視聴し、多くのコメントが寄せられました。

シンポジウムでは、細田眞由美・さいたま市教育長、水川和彦・岐阜市教育長をゲストに、#教員不足をなくそう緊急アクションの妹尾昌彦さん、末冨芳さんが教員不足の現状や解消策の工夫などについて語り合いました。全体司会はSchool Voice Projectの武田緑が務めました。
(本記事は、イベント内容をダイジェストでまとめたものです。イベントの様子はアーカイブ動画でも視聴いただけます。)

「#教員不足をなくそう緊急アクション」とは?
教員不足の厳しい状況を踏まえ、本サイトを運営するNPO法人School Voice Project と末冨芳さん、妹尾昌俊さんが立ち上げたキャンペーン。5月には教員と保護者の緊急アンケートを実施し、それをもとに緊急提言をまとめて記者会見した。国の「骨太の方針」にも教員不足の解消という言葉が入っており、一定の成果が出ている。

登壇者の経歴

細田眞由美さん(さいたま市教育長)
埼玉県及びさいたま市教委、高等学校長などを経て、2017年から現職。文部科学省中央教育審議会初等中等教育分科会委員、経済産業省産業構造審議会分科会委員など公職多数。元英語教師でもあり、最近も英語キャンプに参加。

水川和彦さん(岐阜市教育長)
岐阜県内の小中学校教諭のほか教育委員会、教育事務所にて勤務。義務教育学校・白川郷学園の初代校長。岐阜聖徳学園大学教授を経て、2021年から現職。休日は朝の自転車を楽しむ。

末冨芳さん(日本大学文理学部教授、#教員不足をなくそう緊急アクション発起人)
専門は教育行政学、教育財政学。内閣府子どもの貧困対策に関する有識者会議構成員、文部科学省中央教育審議会委員など歴任。著書に「教育費の政治経済学」(勁草書房)など。

妹尾昌俊さん(学校業務改善アドバイザー、#教員不足をなくそう緊急アクション発起人)
中央教育審議会「学校における働き方改革特別部会」委員、スポーツ庁などで部活動のあり方に関するガイドラインをつくる有識者会議委員も務めた。著書に「教師崩壊」(PHP新書)など。



教員不足の実態は? さいたま市と岐阜市で異なる現実

今日は3部構成で進めます。「教員不足の実態についてどう考えるか」「これまでの各自治体の取り組みや工夫」「今後どうするか」です。早速、パート1の「教員不足の実態」から始めましょう。昨年初めて、文科省が調査したのですが、各自治体が一生懸命に教員を集めても、なお不足していたという実態がありました。我々の調査でも、文科省の調査よりもっと大変であるという実態が見えています。さいたま市の状況からお願いします。

文科省の教師不足に関する実態調査が発表されましたが、まず昨年度5月1日現在の教師不足の状況です。さいたま市は小学校ゼロ、中学校1でした。各自治体とも必死で集めますが、ゼロという自治体は稀有です。他自治体のデータをじっくり見ますと、「うわ、こんなに大変なのか」と愕然としました。しかし、本市も今年については、悪くなっていて、小学校2、中学校3の欠員です。年度後半になると、どんどん穴が空いてくるんです。8月1日現在は、小学校19、中学校7になっています。教員が若返っていて、産休、育休が増えていることによる欠員ですが「ハッピーな話」にすぐ手当てができない現状です。さいたま市は相当充足率が高く、全国的にもトップレベルですが、それでもこんな現状です。

都市部では20代、30代の教員構成が多くなっているので、産休育休代替の需要が強いことはよくわかります。なかなか後任が見つからないのが苦しいですね。

さいたま市の現状を羨ましいと思いながら聞いていました。私は10年くらい前に、県教委の教職員課にいて、大量退職の時代を予測しながら人事異動や採用をしていたのですが、「その通りの時代が来た」と思っています。大量退職のピークは岐阜では過ぎていますが、大量退職イコール大量採用なので、学校の常勤講師のストックがなくなっていくということです。常勤講師が正式に採用されていくためです。さらに、産育休がでたり、部分休をとる人が増えると、厳しくなるということです。退職者が再任用として働きたがらない状況もあります。また、大学を卒業して初任1年目、2年目の初任者が大学生に「先生って面白いよ」と言いがちにならない。さらに、先生が子どもたちの憧れになっているか気になっています。
岐阜市は小学校46、中学校23、特別支援1で、児童生徒数は約3万人です。教職員定数は1800人くらいいるんです。420人の講師群がいます。これだけを一人残らず配置するのは大変です。当初欠員だけで110人ほどいます。どんどん採用されて、ストックがないところをどうやって講師で埋めるのか、大変です。「教員免許を持っていれば、見境なく探したい」というのが人事担当の本音なんですが、なかなかうまくいきません。
では、どうやって充足させたかというと、中学校の加配教員をはがして、小学校に配置するようなことを強引にやりました。それでも加配でつくべき教員が20人くらい不足しました。教務主任しかフリーの教師がいないような状況にあります。
また、岐阜市は国に先がけて少人数学級をやっているんですが、担任が必要になるので教員が不足する。さらに、すべての小中学校にいじめ対策監を市費で70人採用するので、一層足りなくなっています。現場のための施策を打つほど、ますます不足が深刻になっています。

教員不足の数だけが一人歩きしても良くないと思います。何を基準に不足というのか定義も難しい問題がありますね。

採用の工夫は? さいたま市、一次試験に「SPIのみ」導入

リアルな実態ありがとうございます。さいたま市は政令指定都市なので、独自に採用もできる強みがあると思います。教員免許を持っている社会人の若い層を増やすために、工夫があれば教えてください。

ご指摘の通り、さいたま市は政令市なので採用任命していますが、必死です。やれることは全てやろうという気持ちでやっています。地理的にもアクセスが良くて、とても恵まれていて、採用試験も今年(令和5年度)の小学校は150人採用の見込みで、競争率が約3倍です。中学校は6・7倍。特別支援学級は2倍でした。他の自治体からは羨ましいと言われるかもしれません。採用の形態も工夫しています。今年の目玉は、一次試験はSPIのみの試験を導入しました。各大学でのリクルート活動も、春秋と大々的な説明会を全国行脚でやっています。教育長自ら、「教員ってこんなに素晴らしい仕事で、さいたま市はこんな面白いことをしている」というトップセールスをしています。そのため、なんとか志願者数が増えています。

ギリギリのやりくりの中で、特別支援学級や少人数加配が必要な厳しい状況の学級への影響はいかがでしょう。どのように補っていけば良いでしょうか。

特別支援教育に向けては、スクールアシスタントを採用しています。自治体持ち出しで、670人を採用して、困りごとを抱えている子どもたちにさっとつけられるようにしています。

岐阜市は中核市ですが、先生たち「やらされ感」を抱かせることなく、教員として自分の良さが活かせるように市独自で特別支援の教員養成をしています。特別支援の担任の負担感をなくしていかなければならないと思います。

ここで、チャットの意見を紹介します。臨時的任用教員(以下、臨任=欠員補充などのため講師として臨時に任用される教員)に頼るシステム自体に課題があるのではないか。育産休や途中退職などが出ると思うが、正規の採用人数に加算する手立てはできないのか。また、採用が4年生夏の一発勝負になっているが、数回のチャンスがあれば良いのではないか。SPIの導入によって実力のある臨任の人が不利になるのではないか。こんな意見が届きました。

採用時にもっと多く確保できなかったのかという素朴な疑問はありますね。

おっしゃるとおりです。ですから、さいたま市は、臨任もチャレンジできる、チャレンジングな採用枠を作っています。プレゼンテーション特別枠というのがあり、得意なことをプレゼンしてもらう一次試験をやりました。面白い人材が集まっています。また、採用計画は15年先くらいまで見ています。財政面の理解を得ることも大事です。

人事担当者レベルで言うと、一人生徒が増えることによって学級が増える場合があります。正直なところ、フリーの立場でいられる先生が一人いれば、学校はとても楽になるんです。例えば、今ならコロナで陽性になった先生がオンラインで授業するのは難しいですね。しかし、現実は多めに採用しておくのは難しいです。過去に、岐阜県全体で38人しか小学校の先生を採用しなかったことがあり、倍率は19・3倍(平成12年度)でした。今は小学校だけで312人の採用で、倍率は1・91倍です。動向が読みきれないのですが、こうなるのは国の政策が変わるためなんです。同じ県内でも充足しているところと足りないところがあります。

自治体によって課題が大きく違いますね。さいたま市は、0歳から14歳までの転入超過が7年連続で日本一の自治体なので、教員の大量退職の影響のみならず児童生徒増に伴っての教員採用増も続いています。質的担保をどうするのかが最大の懸案事項です。それぞれ全国の自治体ごとに特有の課題がある一方、教育に対して熱い志を持ち続ける人材がじわじわ減っていることは共通の課題だと思います。私自身が教員を志した時代とは違うと実感します。どうやって教育という仕事の魅力を伝えるかが全国共通の課題だと思います。

課題がさまざまでありながら、共通の部分も見ていく必要があると思います。

ここまでは採用の話が中心になっていますが、私たちの緊急アクションで出している提言においても必要な手立てを、「応急処置」として採用方法の柔軟化、「体質改善」として働き方改革、「根本治療」として国庫負担の見直しの3つに分けて整理しています。採用以外の点についてもお話いただけますか?

働き方改革は? 岐阜市、夏休み完全閉庁やいじめ対策監配置

働き方改革を含めた教職の魅力アップの動きはどんなものがありますか。

岐阜市は、夏休みの一部期間は市教委からの連絡も入れず、完全閉庁です。緊急時以外は連絡しません。学期中もDX推進の面からは、携帯で児童生徒のお休みの連絡ができます。ですので、朝は電話が鳴りません。児童生徒がタブレット一台持っていますので、心の健康観察もできています。話したい先生がいれば、その先生につながります。いじめに関する悩みを担任が一人で抱えなくて良いように、いじめ対策監を置いています。過去2年で、民間企業を入れて各学校の業務改善提案をしています。

個々の先生の能力や資質におんぶに抱っこするような仕組みを変えていくことは、負担軽減につながりそうですね。

「チーム学校」というのは、みんなで力を合わせるというのではなくて、得意なことを得意な人が一歩先にやることによって、苦手な人の負担を軽減できます。ベテランが作ったコンパスカリキュラムを若い先生が利用して、部分的に変更していくということで良いのではないでしょうか。

働き方改革については、やれることはなんでもチャレンジしてきました。量的な改革は限界かと思っており、今後は質的な働き方改革をしていこうと思っています。例えば、チームビルドです。得意なことで助け合っていくことは大事で、教員免許を持っていない人にも門戸を開いていく必要があると思います。国は旗を振っているけれど、実態が伴っていないんです。現在、社会人特別免許状(以下、特別免許=一定の知識経験をもつ社会人に教員免許を付与する制度)を出しているのは、ほとんどがネイティブ教員なんですね。学校の中でプロフェッショナルが一緒に仕事できるようになると、「得意なことをこの人に」という学校文化ができると思うので研究しています。

さいたま市「プログラミング人材ほしい」、岐阜市「地域の力を借りれば深い学びに」

ーー子どもを真ん中にして、よりよいコミュニケーションができるようになるにはどうすればよいのでしょう。

プログラミング教育の本物ができる人に来てほしいです。中学校の技術教員でプログラミングを教えられる人は少ないです。高校の情報の免許を持っている教員がいない学校もたくさんあると聞いています。

STEM教員です。理科の免許を持っている人を積極的に小学校の理科に入れていたんですが、すごく良い結果が出ました。技術系や理科は通常の教員がものすごく準備が大変で専門的な知識が必要なところは特別免許を出すことで負担軽減できると思います。岐阜市は全校でコミュニティスクールをやっていますが、教員は地域の人が関わると面倒くさいと思ってしまいますが、地域の人材を活かせれば「10の力が6で済む」ことを知らない教員が多いんです。「どんな力をつけたい」ということをきちっと伝えれば、「では私はこれができます」という話になります。負担が少なくても深い学びができることを、まだまだ先生が知らないんですね。一人教育型、学校完結型の教育はもう終わっていると思います。また、通常は先輩が後輩に教えるんですが、タブレット活用は逆転してるんです。こんな場面では、若い先生とベテランの先生のコラボで大きな効果が出るとよくわかりました。特別免許もその延長線上にあると思います。

「本物ができる人」と繋がることが大事というのが二つの市に共通していました。

得るところが大きかったです。教員不足をどうするかは、あの手この手だろうと思っていましたが、具体的な話がよく見えました。岐阜市独自の特別支援教育の免許状発行もどこでもできると勇気が湧きました。また、質的な働き方改革は、岐阜市の「ここが頑張りすぎじゃない」と前向きに働き方を良くしていこうと、「やってよかった」ことを増やしていくことが大事だと思います。質的な方を見ながらも、睡眠時間の確保は人としての基本的なウェルビーングなので、そこは数値目標にしていただきたいという思いです。そして、休みが取れる職場になりつつあるということも発信していけると、全世代から学校に来てもらえるようになると思います。

最後に、社会全体で考えてほしいこと

国や社会全体で考えていくべきことはいかがでしょうか。

一般企業の採用時期との比較で、「採用試験の時期を早めたい。早まったらいいな」と思っています。また本市では、スクールアシスタントを昨年度実績で670人雇用して、学校で大活躍してもらっていますが、ほとんど教員免許を持っています。ただ、フルタイム勤務はなかなか難しい。2人を定数1とカウントできるようなシステムが取れると、学校で力を発揮したいという人に力を発揮していただくことも可能だと思います。教員不足に対する妙案の一つになると思います。国と相談しながらできたらいいなと思っています。

やがて定年延長がきます。30年かけて一人の教員を校長にしていくのに、校長にはその後、教諭として働いてもらっています。校長をやった人に「担任で頑張ってください」ではなく、キャリアに応じた活かし方があると思います。若い先生のアシスタント、学校経営のアシスタントなど。強みに応じた活かし方があると思います。低学年は得意だけど高学年は苦手な先生もいるんです。それぞれの先生が強みを活かせるようにすることが一つです。また、初任者の研修が大変です。教員は4月1日から20年経験した人と責任という面では、変わらないんです。小学校の初任者は担任を持たずに育成するような仕組みも必要ではないでしょうか。最後に、子どもに自分の生き方を語らない先生が多いと思います。教員は親以外の最も身近な大人のモデルなんですが、時事問題についても語ったりできる環境になってほしい。校長次第で職員室の雰囲気は変わるので、校長にも期待しています。

採用も学校運営も、今までうまくいっていた仕組みでは回らなくなっているところもあります。働き方改革も、単に時間をカットすることが目的になると変な方向に行ってしまうので、先生にとって大切な時間を確保できるようになってほしいと思います。

とても濃い内容のシンポジウムで、ありがとうございました。#教員不足をなくそう緊急アクションは、「この機関が悪いんだ」と誰かを責めてどうにかしようというのではなく、それぞれの立場で頑張ろうとしている人と好事例をシェアして、みんなでこの問題を乗り越えようという方向性で動いています。今日は教育長お二人のどうにかしようという熱量を感じていただけたと思います。私たちも文科省とも相談しながら進めていきたいと思うので、それぞれの地元でも「こんな事例がある」というように、広めていただけたら心強いです。細田教育長、水川教育長、ありがとうございました!

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以前フキダシで行ったアンケート「修学旅行先では自腹で行動!? 旅行行事の教員負担調査」では、旅行行事での教員の“自腹”の現状について現場の声を集めました(結果記事はこちら)。

そのアンケートの中で、他の内容についての自腹も多くある、との意見も寄せられていたことから、今回フキダシでは教員の“自腹”についての連続アンケートを実施します。

※このアンケートでは“自腹”を業務上の必要性の観点から、「業務遂行上絶対に必要であり本来公的に支出されるべきだが、個人の負担になっている費用」と「業務遂行上絶対に必要とは言えないがあった方がよいと思い個人で負担している費用」とに分けて取り扱います。

第1回は「授業・教材研究」に関わる費用について聞きました。

第2回では「学級経営」、第3回では「部活動・課外活動」についての自腹について調査しました。その結果は下記をご覧ください。

アンケートの概要

■対象  :全国の小〜高校年齢の児童生徒が通う一条校に勤務する教職員
■実施期間:2022年9月23日(金)〜2022年10月17日(月)
■実施方法:インターネット調査(実施時の設問はこちら
■回答数 :83件

アンケート結果

設問1 「絶対必要なモノ」の自腹

Q1. 教科の授業や教材研究にかかる費用の中で 「業務遂行上絶対に必要であり本来公的に支出されるべきだが、個人の負担になっている費用」 が含まれているものを選択してください。(複数選択可)

教科の授業や教材研究において、最も多くの教職員が負担しているのは「教材・副教材・教具代」の購入でした。校種別に見ると、中学校の約7割の教職員が「教材・副教材・教具代」の購入をしているのに対して、高校では約5割でした。その他、「電子機器代」や「研修。講習費」についても他の校種に比べて、多くの中学校の教職員が費用を負担していることがわかりました。

設問1-2 具体的な内容は?

Q1-2. 内容を具体的に記入してください。

教材・副教材・教具代

理科の実験や工作に必要な材料(例、紙コップ、たこ糸、ジップロック、ビニル袋)は、正式注文すると時間がかかるので、100均や通販で買います。【小学校・教員】

生徒に授業でみせる映像教材。(例、自宅で録画したBlu-ray、NHKオンデマンドの有料会費)【高等学校・教員】

小学校では、鍵盤ハーモニカや習字セット、裁縫セット、リコーダー、絵の具セット等、学習で使う道具が多くあります。教科担任ではないので、基本的にどの教科の物も必要になります。全て自分で買い揃えています。特に公費の話や、補助の話もありません。自腹が前提となっています。【小学校・教員】

特別支援の子が使えそうなボードゲームをいくつか購入するなどの支出があります。【中学校・教員】

特別支援学級の担任になったが、本校には特別支援学級用の教材が全く無い為、特別支援学級用の問題集や教材作成の為の本、教材作成の為の材料費、専門的知識を得る為の本、特別支援用の知育教材等、全て自腹で買いました。【義務教育学校・教員】

4月の予算の時には、予定のなかったもので、授業で使ったらよさそうな教材などを思いついた時、手続きに時間がかかったり、申請通らなかったりが面倒なので自分で買ってしまいます。【小学校/中等教育学校・教員】

文具代

児童が忘れ物をした時用の文具。【小学校・教員】

書類など手書きで対応する部分は多くあるが、記載するペンなどの用具を学校側が用意する事はない。そのため自分で賄うしかない。【小学校・教員】

毎日押しまくらなくてはならない検印、スタンプ台!【小学校・教員】

書籍代、ボールペンやサインペン、ルーズリーフ。【中学校・教員】

電子機器代

オンライン授業やオンライン会議が始まっていく中で、学校購入ではどうしても数が限られ、探したり共有するよりも個人で購入した方が便利な電子機器などは個人購入をしている。【中学校・教員】

授業でiPad miniを使用している。iPad miniはプライベートでは使わず普段は学校に置きっぱなしだが、自腹で購入したもの。【高等学校・教員】

教育予算がないためか、学級の指導用(デジタル教科書)と成績処理等の業務用として、学級に1台のみのパソコン配布です。児童用タブレットは配布されたのに、教師用タブレットは配布なしです。そのため、自分のiPhoneやiPad、デジカメを使わざる得ない状況です。【小学校・教員】

学校からiPadは配付されているが、学校のwi-fiが弱く、そのiPadを使って動画等が見せられない。仕方なく、私物のiPadを使ってwi-fiを使わず、見せている。【小学校・教員】

SDカードや接続機器などパソコン周りの周辺機器。【中学校・教員】

学校のパソコンは当然持ち出し不可、データも取り出し不可、複合機のスキャンは性能が低い、学校のデジカメの画質は悪く、貸し出しの手続きが面倒、各機器が学校にあっても、借りて返さない教員がいるため、自分で用意しないと仕事にならない。【中学校・教員】

授業でiPad miniを使用している。iPad miniはプライベートでは使わず普段は学校に置きっぱなしだが、自腹で購入したもの。【高等学校・教員】

通信費

一人一台端末が導入され、Google educationが入ってきましたが教員機の性能が悪くスマホからログインした方が早く写真等をアップロードできることが多いので通信費の負担が増えました。【小学校・教員】

オンライン研修時の通信費。学校内のネットワークからはアクセス不可。【中学校・教員】

私の勤める市町村のインターネットの回線契約の関係で、同時に複数のクラスではネットが使えなかったり、そもそも理科室にはインターネット環境がないため、映像資料を見せる場合は、個人のタブレットを使用しています。【中学校・教員】

教材をPC(これも私物)で作成したものをいったんクラウドにアップロードし、iPadにダウンロードしているが、その通信費(スマホのテザリング)も自腹。授業でYouTubeを見せたりするときの通信費も自腹。【高等学校・教員】

教材研究費

書籍代です。授業に必要な本や教材研究に使いたい本は基本自分で購入しています。【中学校・教員】

中学理科の教員です。より良い教具の研究をする場合、失敗を視野に入れて行います。「消耗品なら」と言いつつも、学校に申請した場合は許可がおりないことが多く、理由は「お金がないから」ということがあります。【中学校・教員】

授業づくりで参考にしたい書物代・入試問題作成のための書物購入費(国語科は引用する本を購入しなければならない)。【高等学校・教員】

研修・講習費

授業研究の発表を求められるがそれに対する費用が一切ない。そのため自費で研修会に参加している。【小学校・教員】

特に研修の駐車場代などが気になっています。車でしか行けない場所に出張に行くのに駐車場代は自腹です。【小学校・教員】

各教科の研究協議会の主催する研究大会への参加費。【中学校・教員】

設問2 1の自腹額は?

Q2. 設問1で答えた額は、合計すると1年あたりどの程度になりますか。

教科の授業や教材研究にかかる費用については、年間で1万円から5万円の出費をしている教職員が約半数でした。少数ではありましたが、小学校と中学校では年間で10万円以上の額を個人で負担していると回答した人もいました。

設問3 「あった方がいいモノ」の自腹

Q3. 教科の授業や教材研究にかかる費用の中で 「業務遂行上絶対に必要とは言えないがあった方がよいと思い個人で負担している費用」 が含まれているものを選択してください。(複数選択可)

業務遂行上絶対に必要とは言えないがあった方がよいと思い個人で負担している費用については、「研修・講習費」や「教材研究費」が最も多く、全体の約半数の人が選択しました。「教材・副教材・教具代」については、小学校で51%、中学校で48%であったのに対して高校では14%と、大きく差が開きました。 

設問3-2 具体的な内容は?

Q3-2. 内容を具体的に記入してください。

教材・副教材・教具代

特別支援学級で個別に必要な教材・教具。(手作りの材料も含む)教材作成のためのラミネートシート。【小学校・教員】

学校では新聞を一紙しかとっていない。我が家の新聞を毎日学校図書館に寄贈し、活用している。【中学校・教員】

提出物を入れるかごなど、教室環境整備費。【小学校・教員】

文具代

直しをやった後の丸付けに使う青ペン、間違ったところに付ける付箋、子どもや保護者、他の先生への伝達事項に使う付箋などの文房具。【小学校・教員】

文房具はこだわりがあるので、自分の好きなものを購入しています。【高等学校・教員】

使いやすいハサミやシール、付箋など。【特別支援学校・教員】

貸出用の定規や学校にあるポールペンだと書きづらく書類の清書用に買うペンなどがあります。【小学校・教員】

電子機器代

自宅で仕事をする時用のパソコン、iPad、Apple Pencilなどの電子機器。【小学校・教員】

職員室の支給されているパソコンはSDカードの読み込み口がないため、外付けのデバイスを自前しなければならない。また、教室でタブレットの画面を大型テレビにつなぐケーブルの絶対数が足りていないので、便宜上自分のものを使っている。【高等学校・教員】

通信費

パソコンのスペックが低いので私物持ち込み、Wi-Fiには入れないので自分の通信を使っている【中学校・教員】

教材研究費

教科「情報」で、使ったことのないMacで授業することになり、自腹でmacbookを購入し教材研究している。【高等学校・教員】

研修・講習費

自分で勉強したいと思った内容の書籍代、自主研修のための研修費。【小学校・教員】

設問4 3の自腹額は?

Q4. 設問3で答えた額は、合計すると1年あたりどの程度になりますか。

費用負担については、「業務遂行上絶対に必要であり本来公的に支出されるべきだが、個人の負担になっている費用」よりも低く、年間で5千円から2万円の出費をしている人が約半数でした。高校よりも小学校、中学校の教職員の方が出費額がやや多めということがわかりました。

設問5 授業についての自腹、どう思う?

Q5. 教科の授業や教材研究に関する自腹について、あなたの思っていることや意見、考えを教えてください(困っていること、改善のためのアイディア・工夫、その他)。(任意)

教材研究や自己研鑽のための予算をつけてほしい

免許更新制で強制的に学ばされるよりも、自主的な研究会参加に覆いの補助金を出してくれる方が、教員の主体性を確保できるのでうれしい。今後そうなっていってほしい。ちなみに自分の勤める私立小は、研究費として、上限はあるが支給される。【小学校・教員】

備品費や消耗品費以外に教材研究費がほしい。わたしは技術科なので、ある程度教材研究してから、生徒分を購入したりするが、その教材研究は自費でやっている。【中学校・教員】

授業向上のためという名目で、各教員に予算をつけてほしい。年間1万でもあれば、本買ったり講演聞きにいったりして、教員それぞれがスキルアップできると、授業力もアップされ、生徒へ還元されるはず!【高等学校・教員】

地方だと都市部に研修に行くのにとてもお金がかかるので、研修の半額でも補助していただけるととても助かる。地方の先生の方が研修の機会にハンデがあるので、どうにかしてほしい。【中学校・教員】

大学のように一人いくらまで使えるという研究諸費があればいい。ちゃんと領収書も取りチェックできるように。【中学校・教員】

立替購入をした場合は、後日申請できるようにしてほしい

予算を使うためには、カタログで金額を調べ、提出しなければなりません。100均やネットなどで、必要なものを立替購入できるようになるといいなーと思います。【小学校・教員】

「翌日、必要だからDAISOで買いたい」と思っても、急な公費支出は無理だし、ネットで安いからカード払いとかで立て替えたいのに、それも無理とか、購入に制約が多すぎる。【中学校・教員】

手続きや公費の基準を見直してほしい

ある程度は仕方ないと思う。しかし自分の自治体では予算執行の手続きが煩雑だったり、予算を立てるのが前年度の11月で、執行の半月前までに申請が必要だったりと、小回りが効かない。特に家庭科や美術の教員は自腹が多い印象がある。【特別支援学校・教員】

どこまでが公費で落ちるのかどうか、基準を明確に示して欲しい。【小学校・教員】

まとめ

自由記述では、書籍代やセミナーの参加費など、「教材研究や自己研鑽のための予算をつけてほしい」という声が多く集まりました。一方で、任意で購入している物もあり、「ある程度は仕方がない」「自腹の方が気軽に購入できる」などの意見も集まりました。また、授業においては急遽教材の購入が必要なことも多く、経費申請の手続きをしていると準備が間に合わないため、やむを得ず自費で賄っているケースもあるようです。「立て替えで購入をした際に、後日経費申請ができるようにしてほしい」という声もありました。


▼ 自由記述の回答一覧は、以下よりダウンロードしてご覧ください。 ▼

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※メディア関係者の皆様へ
すでに公開されている教職員アンケート結果やWEBメディアの記事の内容等は報道の際に使用いただいて構いません。その際は【出典:NPO法人School Voice Project 】クレジットを入れていただき、事後でも結構ですのでご一報ください。

今、日本の学校には先生が足りていません。学級担任の不在によって不安な思いをしている小学生、専門ではない教科の先生から教わる中学生、高校生がたくさんいます。

2021年度に文科省による調査で明らかになった教員の不足数は、全国で2558人。「担任が配置できない」「教科の先生がいない」「育休の代わりの先生が見つからない」この状況は、教員の働き方はもちろん、子どもたちにも影響が出る大きな問題です。

本サイト「メガホン」を運営するNPO法人School Voice Project では、学校業務改善アドバイザーの妹尾昌俊さん、教育行政学の研究者である末冨芳さんとともに、「#教員不足をなくそう緊急アクション」を立ち上げました。子どもたちのために、教員不足を一刻も早く改善するための活動です。

5月には教職員、教頭・副校長、保護者を対象としたネット調査を行い、教職員、教頭・副校長向けのアンケートではそれぞれ1000件を越える回答を得ました。また、この調査をもとに、記者会見などメディア発信を行い、また政治家の方や複数の教育委員会と意見交換を実施してきました。その結果、政府の「骨太の方針」に「教員不足解消」の文言が記載されるなど、一定の成果につながっています。

今回は、教職員、保護者、児童生徒を対象に、アンケート調査を実施。教職員向けアンケートについては、どのような教員不足が起きていて、現場はどう対応しているか(特に年度当初と比べて夏休み明けの状況がどう変化しているか)を探るとともに、具体的に困っていることや国・自治体への提案についても収集。保護者、児童生徒向けアンケートについては、教員不足の問題について、保護者・児童生徒の目線からの心配ごとやエピソードを収集しました。

アンケートの概要

■実施期間:2022年9月10日(土)〜2022年10月6日(木)

<教職員向けアンケート調査>
■対象  :全国の小〜高校年齢の児童生徒が通う一条校に勤務する教職員
■実施方法:主にSNSを通じて協力者を募集し、ネット上で回収
■回答数 :426件

<保護者向けアンケート調査>
■対象  :全国の小〜高校年齢の子どもを持つ保護者
■実施方法:主にSNSを通じて協力者を募集し、ネット上で回収
■回答数 :22件

<児童生徒向けアンケート調査>
■対象  :全国の小〜高校年齢の子どもを持つ保護者
■実施方法:主にSNSを通じて協力者を募集し、ネット上で回収
■回答数 :4件

結果を読む際に、ご留意いただきたいこと

  • 任意の調査であるため、教員不足で困っている人ほど、回答しやすい傾向があると考えられます。そのため、現実よりも教員不足の実態が過大に出ている可能性が高いと予想されます。

アンケート結果

教員不足の発生状況

教職員向けアンケートでは、勤務校における今年度(2022年度)「始業式時点」「始業式以降7月末までで(一度でも)」「9月1日時点」の欠員状況を聞きました。以下のグラフに校種ごとの結果をまとめました。
教員不足が深刻な人ほど回答しやすい可能性はあるものの、回答者の状況として、1学期中に教員不足はより深刻化し、9月時点でもあまり改善していないことが読み取れます。

詳細内訳

アンケート回答者の勤務校のうち、2022年度始業式時点では、小学校の約4割、中学校の約半分、高校の約2割で欠員がある状況であったのが、7月末までに小中学校で約6割、高校で約4割に増加。夏休み明けには少し改善してはいるものの、引き続き多くの欠員が出ています。

教員不足が起きた時の対応

教員不足が起きていると回答した回答者に対して、勤務校の状況としてあてはまるものを選んでもらった結果が以下の3つのグラフです。

注)当該時点で教員不足が起きていると回答した数を分母に集計。公立高校等は不足数が少ないためグラフから除外しています。(自由記述の回答は記載)

始業式時点の対応を見てみると、小学校では本来学級担任ではない人(少人数指導、教務主任など)が代替する例が多いことがわかります。中学校では専門外の教員が教科指導にあたったり、授業がストップしたりしているケースも・・・。

7月末時点の対応を見ると、始業式時点よりも多くの項目でグラフが伸びており、「苦肉の策」での対応が加速している可能性が見てとれます。中学校では授業ができない教科があったとの回答が不足が発生している学校の3割近くに登っています。

そして、夏休みが明けて9月に入ったあとも状況は改善していない可能性が高いことが示唆されます。

教員不足の影響(教職員から声)

教員不足の実態

教職員は、みな元気で働けることを前提に配置されていることを痛感した上半期だった。特に担任ではなく専科や事務、校内で1人職の職員が病休になり、教頭教務はじめ職員みんなで空き時間をなくし、何とか乗り切らざるを得なかった。発達の課題や登校渋りの児童が非常に多く、支援体制を考えるにしても、人手が足らなすぎる。(埼玉県、公立小学校)

担任がGW後に休職に入ったため、級外の職員が担任に入ることになった。しかし代わりの職員は勤務時間後に組合業務があるため、時間的に制約がある。学年やブロックの教員で授業を何とかやり繰りして凌いでいる。当該学級に関わる教員の精神的な負担はとても大きかい。また子どもたちにも影響は大きい。例えば技能教科は、1ヶ月ごとに指導教員が変わらざるを得ない状況になり、一貫した指導方針で指導ができているとは言えない。(大阪府、公立中学校)

コロナなどで、誰かが休むと学校が機能しない。ちゃんと授業ができない。教務主任はかなり超過勤務が続いて過労死レベル。教員が不足することで一人一人への負担が増え、さらにブラックな職場になってしまう。(京都府、公立中学校)

担任1名が療休になり、日本語指導の担当を急きょ、その代わりにあてた。また、他の担任が1名、産休に入ったが、代わりが見つからず、教務主任が担任を兼務している。(東京都、公立高校)

療養休暇の時は、学期中に代替が見つからないことが多く、専科などの教員が代わりに担任として入ります。私自身、再任用で6年の理科専科と教育は相談コーディネーターをしていますが、そこへ代替としての授業が入り込むと理科の授業準備、保護者との面談が遅くにずれ込み帰宅が遅くなります。月残業も60〜80に増加。とにかく疲れます。そして、きちんと1人の代替がつかないので複数人で見るようになり子供達は落ち着きにくいです。(福島県、公立高校)

特別支援学校のため少しアンケートには当てはまらない部分もありますが、4月時点で2欠で、当該学年の学年主任も夏前に病欠になりました。産休代替もおらず、病欠が3人増え、現在は小学部のみで6欠です。特別支援学校であるにもかかわらず、副担任が足りず1人で回さなくてはならないクラスがたくさんあります。児童の怪我も増えてきています。9月時点で6欠で、もう限界です。(熊本県、特別支援学校)

教育・教員の質低下に対する危惧

4月当初から,教頭が各学年の教室に入れない子どもの個別対応をしていたが,産休代替として1つのクラスに入ったことにより,複数名の個別指導ができなくなった。そのため,その児童が学校内で暴れたり,外へ逃げ出したりして,その対応に追われるようになった。その結果,複数の学年が落ち着かない状態にある。(宮城県、公立小学校)

問1で教員不足は起きていないと回答しましたが、配置された常勤講師が著しい指導力不足、社会性の欠如といった、教員としての適正に明らかに欠ける者であったため、実質はマイナス1の状態です。担任を任されたものの、学級がすぐに崩れ、学年主任が2学級を合体して指導を続けています。学年主任は、学級の立て直しと講師への指導に疲弊し、心が病んできています。児童の中には、狭い教室に大人数という環境に不適応を起こしている児童も複数いますが、環境を変えるための人的余裕はありません。その常勤講師ができるようになった仕事は、窓明けや黒板消し、掃除などしかありません。それらですら、忘れてやらないこともあります。明らかに適正に欠いているのにも関わらず、雇用されているのは、教員不足の深刻さ故だと思います。(大阪府、公立中学校)

特別支援学級担任が病欠に入り、代替教員が採用されたが1週間足らずでやめた。その後2学期の始めも代替教員は見つかっていない。コーディネーターである特支担当教諭によってクラス編成がされたが、担任が病休に入ったクラスにはいわゆるADHD症状の強い男子児童が2名在籍しており、暴れて奇声を発し、取っ組み合いの喧嘩が絶えない。2人は同じ普通学級に所属していて、支援員さんが午前中は見守ってくださるが、午後は担任不在で普通学級への参加をしている。逃げ出したり暴れたりするたびにコディネーター教諭や管理職が対応するが、その教諭のクラスが今度は不在となり、授業が成立しない。教務主任が担任となって2学期が始まった。しかしながらコロナ禍で家族に熱や風邪の症状が出る度に教諭が出停になるため、自習になるクラスが出ている。私自身も英語専科教諭で加配人材であるため、空き時間は現状で全てない状態。中高1種免許のため、臨時小免で対応している。(愛知県、公立高校)

授業時数への要望

3月末に「4月1日に配置が難しいかもしれないが8日(始業式)までにはなんとかなる」と市教委から言われ校内人事を決定したが8日になっても配置されず「年度当初から必要なのになぜ教員が配置されないのか」と校長が教職員から糾弾され、配置されるまで校長が特別支援学級の授業を行うことになった。(神奈川県、公立小学校)

常に大変なので、異常が日常となっているので感覚が掴めません。財政的に人材の確保が難しいのであれば、せめて授業時数を削減して欲しい。毎日5校時まで等。(沖縄県、公立小学校)

教員を増やすことと、教員の負担を減らすことに尽きると思いますが、工夫だけでは負担減には限界があり、今の膨れ上がった業務を減らしきれない。授業内容をもっともっと減らして、根本的な負担減を測って欲しい。そのことが伝わり、教員がもっと働きやすいと思えるようにならないと、教員不足は解消しないと思う。

教員がいないのに、授業時数を『遵守』するように言われる。実際には、標準時数(中学校では1015時間)や教科ごとの時数を若干下回っても大丈夫なのに、そこを守れと言われるのがなお現場を苦しめている実態もある。『少しくらい下回っても大丈夫だから、柔軟にせよ』と何度も何度も繰り返し強く、文科省からはっきり言っていただくだけで楽になることは多いと思う。(大阪府、公立中学校)

免許外・臨時免許で授業を行うことへの懸念

臨時免許状の先生の授業では実験や実習ができない。安全を確保できないから。先生がいないところの穴埋めで、授業数の増えた先生が病気休暇になった。ストレスによるもので、明らかに教員不足が原因。(宮城県、公立小学校)

初任で免許外の家庭科を教えています。
これがアンケートの教員不足の意図に沿っているかは分かりませんが、すごく困っています。誰も相談できる人がいない。先輩たちは「困ったことがあったら、誰かに相談するといいよ」と言いますが、その「誰か」にはなってくれない。
家庭科は人生の生き方に直結する教科だと思います。だからこそ間違ったこと教えたらどうしようという不安があります。生徒へ申し訳ないです。(大阪府、公立中学校)

養護教諭の病休代替に臨時的任用職員が見つからず、会計年度任用職員を充てている。少数配置・専門職の休職の為、全職員でカバーにあたっている。単純負担もさることながら、専門知識の不足から適切な保健事業が行われているか、保健教育が実施されているか判然としない状況が続いている。(群馬県、公立中学校)

柔軟に対応できる体制を確保する難しさ

研究のための加配だったが、その目的で活動できにくくなった。生徒支援の加配もサポートにまわり、手が取られ得ることが増え、学校の全体の仕事をしたり、緊急時に動ける体制がとれにくくなった。(東京都、公立小学校)

特別支援学校の場合です。児童を見守る目が少なくなるので、ヒヤリハット現象が発生した。事故のリスクが高くなる。(広島県、公立小学校)

精神的負担・心の病の増加

教務主任が担任を兼務しており、非常にしんどそうにしていた。児童も休職している先生が自分たちのせいで病気になってしまったのではないかと想像しており、心配している様子であった。
本校は欠員はありませんが、あくまでギリギリの状態です。担任がお休みした時点で緊急事態に陥ります。担外は1名(教務主任)配置されていますが余力はありません。(北海道、公立小学校)

小学校で43学級あります。2学期も欠員1名、教務が担任で午前中授業、理科専科が午後授業、教頭や学年の中で補って年休等の補欠に入ってます。激務すぎて、コロナ陽性、病気、病休になる先生が次々出て、休む先生が毎日耐えません。自分は50代後半の理科専科ですが、29時間フルに授業していて、教材研究や実験準備などは全て放課後なので、残業は20〜22時までかかります。帰りがけ、疲労が半端なく運転不可能で、いつもコンビニの駐車場で車内で爆睡し、明け方になって家に着くことが何度もありました。(神奈川県、公立中学校)

教員の長時間労働から心身の健康を病んでしまいお休みに入る先生、家庭を犠牲にしてしまい最終的に退職する先生をたくさん見てきました。自治体はそれを把握しているはずなのに、業務を増やしてきます。従わなければ圧力がかかります。自治体の理想とする業務ができない教員は、必要がないと思われているように感じます。実際自分も心療内科に通いながら働いており、いつ使い捨てられるのかと不安や憤りを感じています。(千葉県、公立小学校)

産育休などの取得しにくさ・子育てとの両立の難しさ

育休明けで時短勤務を希望したが、時短勤務では戻せる場所がないと言われた。
教育予算が少なすぎる。再任用の方が多くいるが時短勤務の方が多く時間割調整や仕事の割り振りが大変。(山形県、中学校)

小4、年中の子育てをしながら中学校勤務しています。教科は家庭科担当、勤務市は、家庭科教員は一校1人の配置。本年度転勤になり、勤務校では専門でない女子バスケ部担当に。主な指導はもう1人の顧問が担ってくれているが、生徒のけが、熱中症の心配もあり、放課後は部活終了の18時まで部活にベタ付きが基本。授業準備に放課後の時間をあてることが難しくなり、かなりストレスです。部活も生徒が頑張っているので、適当にもできない。そんなこちらの気持ちにつけ込んで時間が搾取されていると感じます。本当はもう少し保育園に早くお迎えに行きたいし、休日も部活ではなく我が子と過ごしたり家事に時間を充てたい。実習授業準備など、1人で全部しなければならないのに、時間がなかなか捻出できず、別職種の夫が平日休みの日に21時頃〜22時頃まで残って授業準備する日々です。(大阪府、中学校)

管理職の負担の重さ

教務主任が兼任中。教務主任の業務を教頭と他の職員で手分けをして補っている。教頭はもともとキャパオーバー気味だったので、さらにキツくなっており、年度内保つのか心配。さらに10月から産休に入る職員がいるのだが、こちらも後任は決まっていない状況で、職場内で補充するのは難しい。どうするのかは管理職が検討しているとは思うが…。養護教諭も70代の方に来てもらっている状況で、校務支援員さんに手伝ってもらいながら、行っている。(大阪府、公立小学校)

新しい担任が決まるまでは副校長が担任になった。そうなると副校長の業務がストップ。またコロナで休む教員もいるので補教など、専科の先生が総動員で対応して大変だった。(群馬県、公立小学校)

新卒1年目が主で担任をすることになった。また、同じ学年内で初めて常勤講師をする人が1人で担任をすることになった。
技術科の教員が病気療養に入り、補充ができないので、教頭が専門外だが技術の授業を担当している。教頭が職員室にいないため、空き時間に職員室で来客対応や電話対応をする仕事が増えた。
(岡山県、公立特別支援学校)

非正規雇用頼りのシステム・運用への批判

小学校の非常勤講師をしています。10月から、常勤講師を頼まれて移行します。常勤講師が見つからないとのことで、家庭との両立の自信がないままに、仕方なく引き受けました。講師のあり方を変えないと限界な状況です。私の自治体だけかもしれないですが、常勤講師は、基本副業が認めらません。講師の話がくるまで、働かずして仕事を待つことができる人なんて、なかなかいないのではないでしょうか??(愛知県、公立小学校)

産休代替教員が配置されないことが知らされたのが,3月30日でした。欠員は自校で探すように言われましたが,4月1日までの2日間で何ができるでしょうか。結局,指導方法工夫改善教員を担任に当てました。(愛知県、公立小学校)

養護教諭がいないので、保健室を利用できない!生徒が養護教諭に聞いて欲しい話もあり、困っている。
最初から多めに採用するべき。教務や教頭が授業を持たない状態でスタートできるような人員配置にすればいざという時に担任の交代も可能で、学校も円滑に機能する。講師を頼りすぎる今の状態は危うい。(岐阜県、公立中学校)

柔軟な働き方の実現への要望

前任校では、産休に入る先生の代わりが見つからず、少人数担当者が代わりに担うことになりました。子どもたちにきめ細やかな指導ができなくなることに加え、校務分掌の再編がなされました。

課題として見えたのは、少人数指導の先生は、退職され、講師登録した先生だったのですが、業務が多い担当は負担が大きいと言われ、周りがカバーしながら日々過ごしました。負担は大きかったです。体育軽減で来てくださった先生は、介護などあるため、午前中のみの勤務ならば、勤務できるが、担任(支援担)は、できないとのこと。勤務体系を工夫して、午前のみの勤務とし、午後から勤務できる方を新たに探すなどの柔軟な対応はできないのか市教委に掛け合いましたが、受け入れてもらえず。講師の採用の仕方をもっと柔軟にすれば、退職された先生方の力も借りることができると感じました。(大阪府、公立小学校)

四月始業式の時点で担任が1人足りず管理職が校務が兼任、夏休みから産休に入った担任がいてまた不足のためもう1人の管理職教務が兼任。もし、なんらかの都合で仕事を休む担任がいても補助に入れる教師が足りないため、休んだら迷惑をかける、絶対休めないねという意識でみんな仕事をしている。兼任の管理職2人は毎日遅くまで二つの業務をこなしたり休日出勤している。
産育、病休などの代員(臨時的任用)が、フルタイムでないと採用できない。半日だけ、数コマだけ、のような柔軟な任用ができるとよい。(臨時的任用フルタイムだけでなく非常勤なども含めて、新たな任用形態を創設すべきだと思う)(埼玉県、公立中学校)

待遇の改善要望

講師を何年間かして問題がなければ採用するような仕組みがあれば安心して勤務できる。給与や待遇面の改善も必要。(兵庫県、公立小学校)

主幹教諭が担任をもつことになり、仕事がまわらない。産休代替が見つからず、再任用の先生が1ヶ月だけ担任をもち、さらにまた別の再任用の先生へと引き継ぐという、担任が目まぐるしく変わってしまうということが起こった。
教員という仕事自体はとてもやりがいがあるし、魅力がある。しかし、それをはるかに上回るブラックな労働環境で、次々に現職が辞めていき、若者(大学生)はこの仕事を選ばなくなった。定時で帰る労働環境なくして、教員人気の復活はあり得ない。今の40代50代は教員の労働環境について半ば騙されてこの世界に入ってしまった。SNSがこれだけ発達した今、騙される教員志望者は居なくなった。給特法の改善なくして教員不足解消は絶対にないと考える。(栃木県、公立中学校)

働き方改革への要望

学年主任が抜ける事態となりました。当該学年は学年運営が円滑に進んでおらず、他教員の負担が大きくなっているように感じております。また、校長が教科を担当し、実務への支障が少なからずあるのでないかと思われます。学校職員に求める仕事・業務が多く、全体として余裕がない。「子どものため」という言葉は時として教員に対し妥協を許さない重荷となり得る。教員の負担を減らすために、学校事務職員への期待として役割の転嫁が検討されているが、既存の業務に加えられると教育職よりもマンパワーが少ない以上いずれ立ち行かなくなる。また、教育職よりも給与水準の低い行政職に今以上の責任が課せられることに疑念がある。外部委託や業務の自動化など民間企業と比較して後回しにされている仕組み自体の変革を早急に検討するとともに、授業料の廃止など教育に係る予算の見直しを改善してほしい。「足し算」だけではなく「引き算」もなければ、人口減少の未来において学校は機能不全になる。(北海道、公立高校)

 まず、今私たちがしたいことは2つ。1つは業務の大幅な改善です。もちろん学校ごとにすべきことであるのは事実ですが、校長によって、その意識の違いは雲泥の差です。どれだけ現場で声をあげても、校長が無知だと全てが白紙に戻り、そこに費やす職員の労力と時間は無駄になります。
 自治体で、減らすべき基準、教職員の意識の調査をし、業務削減に向けた校内での対話など、現場の職員の声を元に自治体が削減すべき内容を管理者に指示してもらうのが早いのではないかと思います。少ない人数で回すためには、減らすしかない。減らせば、環境は良くなり、実質的に教員が持続可能な仕事として、選択肢に入る人も増えると思います。
 もう1つは、私たち現場の人間も、時間外にできないことは、やらないことです。私たちはやると言われたことは、自分の生活を文字通り犠牲にしてでも行います。多くの主婦の方は定時で帰りますが早朝に起きて仕事をしています。介護をしている私は、土日は仕事に使えませんし、それでも、朝4時に起きて教材研究をします。研究ごとの準備は自宅で行います。少なくとも私の周りの職員は、自分を犠牲にして、仕事をして、学校が成り立っています。そして、学校ではそれを優秀だとして評価します。我々の労働感も見直す必要があるのは確かです。校長も休みの日にも学校のグループLINEであらゆる連絡をしてくる方なので、その辺りの意識が低いのは否めませんので、私の学校特有のところもあるかもしれません。
 でも、その心の余裕はありません。必死に働いています。どうか、教員が人間らしい生活を送れるよう、業務改善の第一歩にお力添えいただきたいです。(福岡県、公立小学校)

地域・家庭への働きかけの必要性

計画的な育成、採用と教員の魅力がまた光るように、待遇や環境改善に取り組んでほしい。特に、地域や家庭が担うべきことを学校にだけ求めないでほしい。保護者の過剰な主張に応えなければならないのが、最も教員を疲弊させている(神奈川県、公立小学校)

関連教員の業務負担増加と超過勤務の悪化。管理職も対応負担増加。生徒への学習指導と成績評価が適正にできていない。
教員が教員でなければできない仕事に注力できる環境に。特に中学校・高校については、部活動を一刻も早く地域に移行してください。望まない教員が、生徒の自主的自発的教育課程外活動に休日を含めた勤務時間外を奪われる不合理は全く説明がつきません。少なくとも、望まない教員が部活動顧問を強いられない環境を整えなければならないことは最早自明です。やりがいを持って部活顧問をしている教員もいる一方で、苦しみ疲弊している教員やその家族も少なからずいます。何がともあれまずは、「教員に部活動顧問は強制できない」と広く周知してください。(長野県、公立高校)

教員不足の影響(保護者・児童生徒からの声)

保護者からの意見

新採用の先生が7月から病休に入られ、8月で退職されたため、現在は主幹教諭が担任を行っている。新採用の先生が退職されたということが保護者としてもとてもショックでした。何が原因かは分かりませんが、その先生のその後が心配されます。また、残された子どもたち、職員の不安や負担はとても大きいと思います。このようなことは起きないでほしいと思いました。 【新潟県、公立小学校】

コロナで休む担任がいると、担任を持たないサブの先生だけで手が回らず校長教頭が代わりに授業に入る。普段からサブの先生がもっと増えて余裕があれば良いのにと思う。【愛知県、公立小学校】

保護者、子供達から慕われているような先生が、所謂昔の、古い考えの先生にパワハラ、モラハラ等の嫌がらせを受けて休職→退職している。子供達がそういう場面を目の当たりに出来てしまうので、本当に良くない。子供達はよく見ていて、子供達同士では話題に上がるも、内申に関わったり逆らえないので何も言えないそう。そんな教員ばかりが残る。そして幅をきかせている。校長が把握して居るのかは不明。 【神奈川県、公立中学校】

・4月時点、教員不足で、昨年度まであった算数少人数クラスが実施できず

・5月末時点、スポーツフェスティバル後、3年生の先生1名が病欠に→副校長がクラス担任を兼任

・8月31日、1年生、2年生の先生各1名の後任が見つからず、1年生には専科の主任教員、2年生には校長が担任、3年生は引き続き副校長とのメールあり。

・教員が3名不足して、目の前に子どもたちがいる状態。

また、コロナで急な数日間の休みもあるなかで、「まわしながら、人を探す、組織を整える」ことを一校で完結するのは無理だと、強く感じています。この深刻な状況が、どのくらいの温度感で行政側(区役所、教育委員会)にどれだけ知られているのかわかりません。【東京都、公立小学校】

1学期途中で転任後一年目の若い美術教師が鬱を患い、途中休職したが、二学期になっても代替教員が見つからない。 【東京都、公立中学校】

3年生から1クラスになったが、発達障害児、グレーゾーン児、家庭の問題で情緒不安定な児童が多かったため学級崩壊が起きた。そのため4年生からは2クラスに分かれたが、専科・フリーとして割り当てられた教員枠を学級担任に流用したため、教員の担当コマ数に余裕がない。
また、学級崩壊の余波で授業を飛び出す児童や喧嘩等の対応にまわれる教員・管理職の手が足らず、学校の治安が悪い状態が続いて3年目になる。
私の息子は学級崩壊の影響で不登校になったが、学校の別室登校ができるようになっても対応できる教員がいないという理由で勉強を見てもらえず、別室にひとりで放置されていた。見かねて保護者の私が一緒に登校して、息子が放置されるコマに教科指導をしていたほどだった。 
学校が福祉施設になることは望んでいないが、教育機関として子どもにきちんと質が担保された教育を提供するために必要な環境を整えるため、教員の数を増やすことは今の世の中で必要な改革だと思う。教員数を増やすのが難しければ、教員より低予算で済む学習支援員を1学年あたり1-2人配置したり、事務員を児童・生徒数100人に対して1人配置するなどして、教員が本来の業務である教科指導に専念できるよう環境整備してほしい。【三重県、公立小学校】

産休に入る体育の教員の代わりが見つからないようです。そこで特別支援学級の担任二人が体育教員なので、分担して受け持つことになりました。それぞれ、副担もされ、特別支援コーディネーターと進路指導もされています。体育の授業と(支援級の)子供の授業がかぶる時は、子供は支援員さんが見ています。授業にはならず、自習です。中3なのに心配です。去年から産休入りはわかっていたはずなのに、なぜ見つけられなかったのでしょうか?なぜ体育が自習にならずに、特別支援学級が自習になるのでしょうか?同じ自治体内の他の学校も同じような状況です。支援員は教員ではなく、支援員単独で授業を見るのはおかしい。授業準備もされておらず、いきあたりばったり、その場しのぎ。意味なし。教育委員会に訴えても、日本全国で教員が足りませんからって開き直っています!【福岡県、公立小中学校】

児童生徒からの意見

いつも忙しそう。先生がコロコロ変わって、誰が担任なのかわからないかんじ。 
支援学級の担任の先生が体育を教えることになり、私達は違う先生に習うことがある。
いるときもあれば、いないときもある。支援員さんだけのときもある。 【福岡県、公立中学校】

担任がいなくなったクラスに、教務主任が入り担任をしている。教頭先生が教科を教えている。 【千葉県、公立小学校】

まとめ

前回実施した年度当初のアンケートと比べると今回は回答者の母数が小さくはなっていること、また教員不足が起きている学校の関係者ほど回答しやすい傾向がある点にも留意する必要があるものの、教職員向けアンケートの結果からは、始業式時点よりも夏休み明けのほうがより事態が悪化している可能性が見てとれます。

今回も自由記述欄には、厳しい学校現場の状況と、早急に効果のある施策を打ってほしいという切実な声が数多く寄せられました。1つ1つのコメントを読んでいくと、教員不足の状況が、現場の教職員を心身ともに追い詰め、更なる欠員発生を招いている悪循環がよく分かっていただけるかと思います。

現場の逼迫は当然ながら子どもたちの学びやケアに影響します。本当は必要なのに、余力がなくきめ細かなサポートができない、授業すらまともに実施できないという悲痛な声をぜひ、政治や行政の関係者の方々、広く市民の方々に知っていただきたいと思います。

状況は厳しいですが、いいニュースもありました。
つい先日(2022年11月1日)、文部科学省は、産休や育休に入る教員の代替教員の確保が年度途中だと困難になっているという声を受けて、来年度から一定の条件の下、年度当初から代替教員を配置できるように運用を改めることを決め、全国の教育委員会に通知しました。
https://news.yahoo.co.jp/articles/33bba8576fa2ba77c1e483f55021f3e6914eb82d

産休・育休代替が見つからない問題は、このことでかなり改善される可能性があり、来年度からの効果が期待されます。#教員不足をなくそう!緊急アクションとしても、状況を見守りたいと思います。
同時に、病休への手立てや、離職防止、採用の工夫など、その他の手立てについても引き続き好事例を集め、発信していきたいと思います。

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(写真:高橋真樹、Hakuba SDGs Labo、白馬高校、横山義彦)

環境ジャーナリストの高橋真樹です。今回は、公立学校で子どもや先生たちを取りまく温熱環境を変えようとするプロジェクトを紹介します。ご存知のように、学校の校舎は、夏は暑く冬は寒いのが当たり前でした。このような過酷な環境が放置されてきたことで、子どもたちの学習意欲や健康、さらには自治体の財政にまで悪影響を及ぼしています。

背景にあるのは、学校の建物がほとんど断熱されていないという事実です。状況を変えるために声をあげたのは、子どもたち自身でした。子どもたちと地域の大人が協力して、教室をDIYで断熱改修するという前代未聞のプロジェクトが、各地で動き始めています。その現状と課題をお伝えし、教育環境のあり方を、皆さんと一緒に考えていきたいと思います。

教室は暑くて寒いのが当たり前?

そもそも日本の学校には、温度規定があってないようなものでした。文科省が定める教室の温度基準(学校環境衛生基準)では、「10度以上、30度以下が望ましい」と定められていました(2018年まで)。しかも努力目標にすぎないので、守っていなくても問題にはなりません。そのことが、夏は熱中症、冬は風邪やインフルエンザなどの流行が起こりやすく、また子どもたちが学習に集中できない要因ともなってきました。

なお、大人が働くオフィスの温度規定である事務所衛生基準規則(厚労省)では、約50年前の1972年の時点で、「17度以上、28度以下になるように努めなければならない」と定められています(2022年に下限を18度以上に改正)。子どもは、大人に比べ心身の発達が成長途上であるにもかかわらず、環境は過酷なまま放置されてきたのです。

変化が起きたのは、2018年です。その年の夏に記録的な猛暑となり、児童・生徒の熱中症が相次ぎました。政府は教室へのエアコン設置を急がせて、公立の小中学校(普通教室)のエアコン設置率は、2018年の約60%から2022年の約96%に上昇しました。また、同じ2018年に学校環境衛生基準もようやく「17度以上、28度以下が望ましい」と改定されます。さらに、今年(22年)の4月には、下限室温が17度から18度に変更されました。なお下限の変更については、2018年にWHO(世界保健機関)が、「冬の室温として18度以上」を強く勧告したことが影響しています。

エアコン設置で解決するか

ただ、室温基準が改められたとは言え、拘束力のない努力目標にすぎないことはこれまでと変わりません。本メディアを運営するNPO法人School voice project が実施した先生方へのアンケート(回答者109名)では、この規定を「すでに知っていた」と回答したのは23%(「だいたい知っていた」と合わせると64%)、さらにこの基準を「しっかり守れている」と回答した人の割合は、東日本では約30%、西日本では約10%と低いレベルにとどまります。

アンケートでは「基準を守れない理由」として、エアコンの故障や能力不足により、稼働しても適温にならないという機械的な問題や、管理職しか操作できないという仕組みの問題も指摘されています。教室の各場所に温度計を設けるなどして、適切なルールの下で空調を動かしている学校はごく一部です。

また、エアコンの普及も現場に新たな課題を突きつけました。出力の大きいエアコンは、ランニングコストの増大にもつながっています。断熱されていない大空間で空調を動かすと、温度ムラが起こりやすく、かつエネルギーの大部分は建物の隙間から抜けていきます。結果として、コストばかりが上昇し、教室は快適にならないという悪循環が起こっています。

実際、予算がかかりすぎるために規定の時間や温度に達するまでは、エアコンを使ってはならないなどと、厳しい規則を課す学校や自治体も多くあります。22年9月には、沖縄の県立高校の生徒がこの稼働基準を変えるよう声をあげ、県の教育庁が基準を変更したこともニュースとなりました。(ニュース記事はこちら

室温を適切に保ちながらランニングコストを増加させないためには、エアコンの導入とセットで教室の断熱を考える必要があります。しかし断熱の意義は、社会的にまだ周知されているとは言えません。そんな中、高校生たちの積極的な行動が事態を切り開いていきます。

高校生による断熱改修プロジェクト

断熱改修プロジェクトが立ち上がったのは、スノーリゾートで知られる長野県白馬村の白馬高校です。冬の教室では石油ストーブが使われますが、ストーブの近くの席は暑すぎて、逆に窓際は寒すぎるという温度ムラの激しい状態でした。高校で環境問題に取り組んでいた手塚慧介さん(当時3年生)ら3人の高校生は、教室を断熱改修すれば暖かくなるだけでなく、省エネも実現できることを知り、2020年初めに学校に断熱改修の提案を行います。

(名峰に囲まれた長野県白馬村の景色)

公共施設の改修となると、学校の判断だけでなく、教育委員会の許可も必要です。しかも生徒が主体になるという話など、聞いたことがありません。担任の浅井勝巳先生は、「当初は、良いことだけどハードルが高すぎるので、生徒たちを傷つけずにどうやって納得してもらうか考えていました」と苦笑します。しかし、生徒たちが粘り強く「どうしたら実現できるか」と模索を続けていく中で、学校側も「なんとかして子どもたちの熱意に応えたい」という姿勢に変化していきます。生徒たちへのアンケートでも、ほとんどの生徒が「教室が寒い」、「手がかじかんで授業が受けづらい」と感じており、断熱改修が求められていました。

最終的に、学校や教育委員会の許可を得た手塚さんたち3人は、断熱改修の専門家に直接交渉して、ワークショップを指導してもらう協力を取り付けました。さらに、地元のホテルやスキー場、環境グループなどに呼びかけて、教室ひとつ分の改修に必要な60万円以上の資金を集めます。

(白馬高校断熱プロジェクトの最終日に参加したメンバー)

体験を通じた学習効果も

3日間にわたる断熱DIYワークショップが行われたのは、2020年9月。主催した3人の高校生の同級生や後輩たちが、入れ替わりでおよそ50名ほどが参加しました。また、地元の工務店や、環境活動に取り組む大人たちも協力しました。

(ワークショップ終了後に行われる振り返りの会)

作業は、高校生と大人が混ざり、いくつかのグループに分かれて進められました。具体的には、窓側の壁、廊下側の壁、天井裏にそれぞれ断熱材をカットして設置することと、廊下側の窓を断熱性の高いものに入れ替えることでした。断熱材を入れた後の壁は、木の板で覆ってきれいに塗装します。また、外側に面する窓には、内窓となる木製サッシを設置しました。

(廊下側の壁に断熱材を入れ、その上に貼った木材を塗装する)
(天井に断熱材を入れる作業)
(断熱材を測ってカットする)

プロが危険のないように指導してくれたおかげで、高校生たちは「自分たちでもできる」という手応えを感じたと言います。浅井先生が言います。「同じことを授業の一環でやったら、こんなに大勢の生徒が自主的に参加することはなかったはずです。生徒自身が呼びかけたからこそ、これだけ広がったのでしょうね。何よりの学びになったと思います」。

断熱改修から2度の冬を越えて、その効果を伺いました。冬が近づくと、ストーブを着けていなくとも、他の教室より2~3度暖かくなりました。また、ストーブを着けた後では、改修した教室はストーブを着けるとすぐに暖かくなり、また極端な温度ムラも解消されました。浅井先生は、「夕方も教室が寒くないので、生徒たちの学習意欲も持続していました」と語ります。

温度以上に生徒たちが喜んだのは、教室の見た目の変化です。木製の壁やサッシに囲まれ、「雰囲気が良くなって嬉しい」という声があがりました。主催した手塚さんは、こう総括します。「本当に良かったと思います。断熱改修は楽しいし、暖かいし、見た目もいいと、みんなが実感してくれました。省エネにもなるので環境にもいいから、他の学校にも広がればいいですね」。

(教室に木製の内窓が設置された)

子どもの感情や願いにフォーカスを当てたコミュニケーションを手助けをしてくれる「子どもニーズカード」。

子どもが感じていることや考えていることを知りたい。
学校生活の中で困っている子どもの気持ちに寄り添えるようになりたい。

もしあなたがそう願っているのなら、このカードは、その願いを叶える後押しをしてくれるかもしれません。

放課後等デイサービスの児童指導員であり、「子どもニーズカード」の製作者でもある能美たかこさんと、スクールソーシャルワーカーをしながら教職員や子どもたちへの対話の場づくりをしている宝本いつみさんに、「子どもニーズカード」の魅力と学校現場での活用方法を伺いました。

カードを使って、感情を知る。ニーズを探る。

ーー「子どもニーズカード」は、学校現場を含めさまざまな場面で活用されはじめていますね。そもそも「子どもニーズカード」とは、どのようなカードなのでしょうか。

能美:子どもニーズカードは、NVC(Nonviolent Communication=非暴力コミュニケーション)の概念を元にして作成したカードで、さまざまな感情やニーズが文字やイラストで表現されています。子どもに自分の内面と近いカードを選んでもらうことで、感情とニーズに焦点を当てたコミュニケーションを取ることができます。

※NVC(Nonviolent Communication=非暴力コミュニケーション)とは、1970年代に、アメリカの臨床心理学者マーシャル・B・ローゼンバーグ博士によって体系化され、提唱された、自分の内と外に平和をつくるプロセス。

宝本:NVCのことは、「自分も相手も大切にするコミュニケーション」と言われることがあります。お互いが必要としていることや大切にしていることをわかり合った上で、どう関わり合うかを探っていくんです。

人って、本当は「仲間に入れて欲しい」「わかってほしい」と心の奥底で思っていても、真逆の行動をとってしまったりすることがありますよね。そうなってしまうのは、感情とその奥にあるニーズの概念を学んでこなかったからなんです。

目に見える言動に惑わされずに、自分自身や相手が大切にしたいことにフォーカスしてコミュニケーションを取っていく。NVCは、そんなシンプルかつ奥深いコミュニケーションの概念です。

ーー「ニーズ」と「感情」には、どのような違いがありますか。

能美:「感情」は、何らかの出来事があったときに抱く気持ちのことです。その奥にあるのが「ニーズ」です。ニーズが叶うと、嬉しい、楽しいなどのポジティブな感情が生まれ、ニーズが叶わないと、悲しい、イライラする、などのネガティブな感情が生まれます。感情は、ニーズが叶ったかどうかを表す信号のようなものです。

子どもニーズカードを使うときは、まず表に出ている感情から信号をキャッチします。そして、その信号の奥にはどんなニーズがあるのかを探っていきます。

ピンクの縁取りは「感情」のカード
ブルーの縁取りは「ニーズ」のカード

感情とニーズを見える化して起こった、子どもの変化

ーー学校現場で「子どもニーズカード」を活用する中で、印象的だったことはありますか?

宝本:ある先生が共有してくれた話です。小学校高学年の児童が、いつも英語の時間になると暴言を吐いたり、呼びかけに無反応になる状態が続いていたそうです。そこで、子どもニーズカードを使うことになりました。英語の時間にどんな気持ちになるのかを聞いたところ、その子が選んだのは「こんがらがってる、ごちゃごちゃ、よくわからない」「不安、緊張してる、心配している」「イライラしている」の3枚のカードでした。

その感情がどこから出てくるのかを聞くと、「英語でしゃべるから意味がわからなくてこんがらがる。そして、ドキドキしてどうしたら良いかわからなくなる。だから、イライラしてどうでもよくなる」と話してくれました。大人から見ると、その子の行動にはイライラしている状態だけが表れていましたが、その奥にはこれだけの感情があったんです。

その後、何をしてほしいかを聞くと、「助けてもらう、サポートしてもらう」のカードを選びました。最終的には、「英語の指示の後には日本語で必ず説明を入れる。授業中は、先生がその子のところに何度か行く。課題は一緒に取り組む」ということを本人と一緒に共有しました。

それからは、ほとんど不適切な行動がなくなったそうです。先生との助け合いの関係が、さらに子ども同士での助け合いにも広がったと聞きました。でも、最終的なこの手立ては、それまでにもやっていたそうなんです。違いは何かと言ったら、その子が自分で自分の感情を知り、さらに自分の気持ちをわかってもらえた体験があったところではないかなと思います。

子どもニーズカードは、学校現場での活用も進みつつあります(写真はイメージです)

ーー能美さんは、「子どもニーズカード」を活用する中で印象的だったことはありますか?

能美:あるお子さんと一緒に料理をしているときに、「学校の休み時間、何してるん?」と話を振ったんです。すると、「ぼーっとしています」と返ってきました。そこで、子どもニーズカードを持ってきて、どの感情が近いか聞いてみたんです。

私はてっきり「だるい」「疲れた」などの感情を選ぶかと思っていたら、その子が選んだのは喜びにあふれた状態を表すカードだったんです。驚きましたね。私の推測がくつがえされる瞬間でした。自分の感情をあまり外に出さない子どもに対して、「きっとこう思っている」と大人が勝手に決めつけてしまうことがあるかもしれない、と自覚した出来事でした。

もう一つ、普段あまり学校に行かないお子さんとの出来事です。ちょっとした会話の中で、子どもニーズカードを見せながら、「学校に行くと、どんな気持ちになるの?」と聞いてみたんです。すると、ごちゃごちゃしている状態を表すカードを選びました。やりとりを重ねる中で、「なりたい自分はどんな感じなの?」と聞くと、平和でリラックスしている状態を表すカードを選んだんです。その後、「どうしたら、そうなれる?」と聞くと、尊重されたり助けてもらう状態を表す4枚のカードを選びました。

子どもニーズカードを使い始めた頃は、なかなか自分の感情やニーズを選ぶことが難しいお子さんだったのですが、少ない枚数から選ぶことを繰り返す中で、適切に自分の状態を表すカードを選べるようになったんです。

最終的に、その子自身が「これがあれば、安心して学校にいられると思う」と思える状態まで一緒に確認することができました。一連の流れをその子のお母さんに見せたら、写真を撮り、「今度、学校の先生にこれを伝えてみます」ととても喜ばれていました。

子どもに寄り添い、一緒に歩んでいくためのツール

最後に、子どもと関わる教職員の方へメッセージをお願いします。

能美:子どもへの敬意を忘れずに、興味や関心を持ちながら寄り添うように関わっていくことが大切なのかなと思っています。「行動の奥には何があるんだろう?」という気持ちで、子どもと一緒に探ってもらいたいです。

そして、学校の先生たちも、感情やニーズの概念を使って話をしてみるのも良いのではないかなと思います。ネガティブな感情を抑え込んで頑張っている先生たちは多いのかなと思うので、そういう場合は、まずはニーズから自分が大切にしたいことを探っていって、その次に自分の感情に気づいていくのも良いかもしれません。

宝本:子どもニーズカードを紹介するときには、「子どもをコントロールするための手段として使わないでほしい」とお伝えするようにしています。大切なのは、大人が困っている状況を解決することではなく、子ども自身が自分の感情やニーズを知り、それによって人と繋がる感覚を持ってもらうことです。

自分が置かれている状況や求めていることを聞いてもらうだけでも、子どもたちの人生が救われることはあるんじゃないかなと思います。大人が子どもの気持ちを受け止めて、寄り添い、一緒に歩んでいこうとする。そんな関係性をつくるためのツールの1つとして、使ってもらえるといいなと思っています。

能美さん、宝本さん、ありがとうございました!

子どもニーズカードを使ってみたいと思ったら…

子どもニーズカードには、購入できる有料版と、ダウンロードして無料版があります。それぞれ、以下のリンクからアクセスしていただけます。また、使用にあたっては、「基本的な使い方」の資料をお読みください。

▼子どもニーズカードの購入はこちらから
https://kodomoneeds.base.shop

▼無料版子どもニーズカードのダウンロードはこちらから
https://tinyurl.com/26x4va3g

▼基本的な使い方(資料)はこちらから
https://tinyurl.com/26nqtukx

「使い方をもっと詳しく知りたい」、「カードを活かした実践を深めたい」という方には、子どもニーズカードを活用している様々な立場の方が参加している以下のコミュニティがあります。ぜひ、参加してみてはいかがでしょうか?

▼Facebookグループ「子どもニーズカードを使ってみよう!」はこちらhttps://www.facebook.com/groups/139249607781121

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学校での水泳の授業について、さまざまな意見が出ています。「子どもたちの安全管理やそのための人員確保が大変」という声のほか、「プールの栓を締め忘れて数百万円の賠償を求められた」といった事例も報道されています。

また、コロナ禍以降プールの授業が大幅に減少した学校や、プールの授業を民間業者に委託する学校もあるなど、学校の水泳の授業に関する状況も変化しています。

学校現場で働く教職員は、水泳の授業についてどのように考えているのでしょうか。

アンケートの概要

■対象  :全国の小〜高校年齢の児童生徒が通う一条校に勤務する教職員
■実施期間:2022年9月16日(金)〜2022年10月10日(月)
■実施方法:インターネット調査(実施時の設問はこちら
■回答数 :88件

アンケート結果

設問1 児童生徒のために、今後の水泳授業は?

Q1. 「児童生徒のために」という観点から、今後の水泳の授業のあり方についてあなたの意見にもっとも近いものをお選びください。

「児童生徒のために」という観点で水泳の授業についてのあり方を聞きました。外部施設を利用する場合も含めると、「続けた方がよい」と答えた人は、全体の約7割でした。

「続けた方がよい」と思う理由としては、「子どもたちが楽しみにしているから」「水の危険性を知るため」「水泳技能の習得のため」などがあがっていました。「外部施設を利用する形で続けた方がよい」と思う理由は、「専門家に教えてもらった方が水泳の楽しさを伝えられる」「外部施設の方が、衛生的で天候に左右されない」など。外部機関の利用も含めて「無くした方がよい」と思う理由としては、「体型を見られることに抵抗がある児童生徒もいるため」「数時間の指導では水泳技能の習得に繋がらないため」などがあがっていました。

今後も学校で実施

「今後も学校で続けた方がよい」を選んだ方の主な意見

校外の施設を利用するとなると、回数を多く行うことが難しくなると考えらえれる。そのため、子どもたちが多くの回数プールに入れることは、子どもたちにとっても楽しみであると考えるので、子どもたちにとっては学校での実施ができるとよいと思う。【小学校・教員】

施設はあるし、子どもたちも楽しみにしている。体育の先生は大変だとは思うが、泳げる、顔に水をつけられるというのは生活スキルとしてできるようになっていてほしい。【中学校・教員】

外部施設では回数が確保できず形骸化してしまう危惧があると思います。また、水泳は全身運動でしかも体に負担がかからないので、特に支援級の子どもにとってはとても良い運動経験になると思うからです。【小学校・教員】

外部施設などを利用して実施

「外部施設などを利用する形で今後も続けた方がよい」を選んだ方の主な意見

特に小学校は専科ではないため、水泳の楽しさを教えられていない部分があり、逆にプール嫌いを生んでしまっているところがある。水泳が得意な先生でも、子どもたちに無理強いをし過ぎているので、専門の指導員に楽しく教えてもらうのが良いと思う。【小学校・教員】

水の危険を知るためにも必要だと感じる。気温によって入れないこともあるため、外部施設の利用が妥当だと思う。【小学校・教員】

海や川が多い国ですから、児童には泳ぐという技能は、必要だと思います。スイミングスクールには、誰もが通えるわけではありません。学校のプールは屋外の場合が多く、児童の中には「汚い」「虫が嫌」などの理由で入らない選択をしている子もいます。しっかりと屋内で管理されているプールを利用すれば、少しはいいと感じます。【小学校・教員】

プールの老朽化が進み、毎年のように手を入れなければいけない状況があります。また、夏の日差しは厳しく、外で授業を受けることは多少なりともリスクがあると思われます。今年度は市の配当予算を活用し、民間の指導者にお願いして指導を受ける機会を設けました。1~4年生が各2時間でしたが、児童にとっても教師にとっても貴重な学びの機会となりました。市内にはいくつかプールもあるので、外部施設や民間の指導者とも連携して子どもの指導にあたれば、子どもたちの力もより伸ばせるのではないかと思いました。【小学校・教員】

泳ぐ技能は災害時などに活用できるから必要だが、学校で実施するよりも専門的に水泳指導を行なっている施設での方が、指導が優れていると考えるから。【中学校・教員】

学校での運営は少子化や施設の老朽化、管理維持費、教員の負担など課題が多い。しかし全く授業がなくなると水難事故が増えることも想定されるので、民間委託などして機会は提供できるほうがいいと思います。【高等学校・教員】

無くしたほうがよい

「無くしたほうがよい」を選んだ方の主な意見

短い時数で水泳指導をしても効果はありません。集団で水泳を行うと、前後の着替えや移動でかなりの時間を取り、実際の活動はほんのわずかな時間しか取れません。また、何十人もの児童(しかも個別に対応しなければならない児童が増えている昨今)をたった数人の教師で、しかも水泳専門でもない教師が一斉に指導するなんて、何か事故や問題が起きないかといつも冷や冷やしてます。危険すぎるので、小学校では水泳指導をしない方がよい、習い事に任せた方がよいと考えます。【小学校・教員】

水泳の授業に参加したがらない生徒の数が年々増えている。泳げないと知られることや体型を他の生徒に見られることを嫌がる生徒が多くなっていると感じる。全員が必修でなくてよいと思う。【中学校・教員】

安全面にいくら配慮しても、危険リスクは高い。そしてなおかつ何か事故があれば、学校、教員の過失となる。水泳、水遊びについては学習指導要領から無くし、泳力、水慣れについては親が我が子に養うものではないだろうか。【小学校・教員】

小規模校での実施は本当に命懸けです。誰か1人、教職員が不足すれば、子どもの命を守れません。命をかけてまでおこなうことなのでしょうか?学校教育を再編するために必要です。熱中症の危険性もあります。そのためか研修を、受けて熱中症アドバイザーというものを取らなければなりませんでした。もちろん時間保障はありません。もう現場は崩壊しています。プール指導の時は休憩時間もありません。朝は早めに出勤し、ハイクロンを入れ、終わってからはハイクロンを入れ、水を止める。異常事態です。【小学校・教員】

中学校で保健体育の教員をしております。無くした方が良いと考えます。3点の理由を投稿いたします。
①予算的に外部に委託しても厳しいと思われます。
②校内で授業をしても生徒の体力(技術、泳力)は、身につくものではありません。
③ジェンダー論の観点からも望んでいない単元で異性の前で水着になることに抵抗感のある生徒がいるのは容易に想像できますし、現に毎年そのような生徒がいます。
教育のアップデートを願います。【中学校・教員】

設問2 教員の働き方の観点で、今後の水泳授業は?

Q2. 「教職員の働き方や管理業務」という観点から、今後の水泳の授業のあり方についてあなたの意見にもっとも近いものをお選びください。

「教職員の働き方・管理業務」という観点で水泳の授業についてのあり方を聞きました。外部施設を利用する場合も含めると、「続けた方がよい」と答えた人は、全体の約5割強「児童生徒のために」という観点と比べると、13人減少しました。

「学校で続けた方がよい」と思う理由は、「近くに外部施設がない」などの外的要因や「管理業務は大変だが、そこまで大きな負担ではない」などがあがっていました。一方で、多くの回答者が、管理への負担や責任の重さを理由に「外部施設などを利用し続けた方がよい」もしくは「無くした方がよい」と回答しました。

今後も学校で実施

「今後も学校で続けた方がよい」を選んだ方の主な意見

プール担当でした。とても負担が大きかったですが、継続してやっていけばノウハウが蓄積されるので大丈夫だと思います。分からないことは業者に聞きました。【小学校・教員】

勤務地でのことを考えると、バスを使ってもすぐに行ける外部施設がないため、学校での実施ということにならざるを得ないだろう。ただし、外部指導者を導入する等、水泳指導への人的支援を取るなどの対策は検討したほうがよい。【小学校・教員】

学校で続けるが、今までとは違い、夏休み等にごく短期間で行うべきだと思います。また、希望者には放課後、外部施設などで学べるようにしてはと思います。【小学校/中学校・職員】

確かに、プール管理は大変である。塩素濃度の管理を体育主任が1人で行っている学校も本市では散見される。機械の不具合によって水泳指導が止まってしまう学校が過去にあったことも聞いている。現在赴任している学校においては、毎年藻が発生しないように放課後指導後に数名でプール清掃を行う必要もある。とはいえ、放課後水泳練習の練習時間が市で統一されたことを受けて、教員の帰宅時刻は早まっている。【小学校・教員】

外部施設などを利用して実施

「外部施設などを利用する形で今後も続けた方がよい」を選んだ方の主な意見

プールの管理は毎年大きな負担となっています。担当は毎日の水質検査や薬品の投入などのために早めに出勤をしています。以前は次亜塩素をタンクに入れる作業も教員がしていましたが、目に入った方や衣類に穴が開くなど危険と隣り合わせでした。教員の業務からこれらの作業が減らせたら、その分子どもたちのために使える時間が増やせるので、外部をうまく利用できたらと思います。【小学校・教員】

水泳授業が、熱中症の問題や時数確保、泳力確保ができる指導までに追いついておらず、「働き方」という観点で夏季休業中の補講も難しいのであれば、外部委託を検討した方がいい。また、「管理業務」という点で、毎年のプールの清掃やプールの水を止めていなかったために数百万という新聞記事などを見るたびに、精神的負担も大きくなってしまうため、外部施設の利用ならば清掃の時間も精神的負担も取り除ける。【中学校・教員】

担当する体育主任への負担がものすごく大きいので、学校で担任をする片手間にプールの管理をすることは、健全な働き方の中では難しいと考えます。コロナにより、夏休み前に水泳学習を終える学校もあるようになりましたが、夏休みをまたぐ学校は夏休み中も水質と水量、機械の管理をしなければなりません。コロナで夏休みの開放もなく、誰も入らないプールに水と薬剤を投入することも、財政的に無駄だと思います。【小学校・教員】

プールの管理がとても大変で、体育科の先生方の大きな負担となっているので、民営委託など今までとやり方を変えるべきだと思います。【特別支援学校・教員】

無くしたほうがよい

「無くしたほうがよい」を選んだ方の主な意見

プールの機械操作を覚えて操作したり、薬品を使用したり、水位を調べたりするのは教員の仕事ではない、専門家を雇うべきだと思うからです。水を出しっぱなしで責任を問われる(そんなニュース記事を目にしました)なんて言語道断だと思うからです。【小学校・教員】

夏休み期間は準備のため、いつも早く来たり、放課後はプールの水質管理のため、輪番で見に行かなくてはいけない。その時間を、学級の時間にかける方が合理的である。学校は採算や合理性を考えないので、もっと効率化や合理化を図るべき。【小学校・教員】

働き方や管理業務という視点からしたら、なくした方がよい。温暖化が進む中、体育の教師は塩分チャージや経口補水液などを自費で補充しギリギリの中授業をしている。年間で短期間しか使わない施設の管理に多額の費用がかかっている。室内にあり、年間通して市民に公開しているプールならば別だが、その場合は管理は学校ではなく市になり、教員の負担は減る。「授業」もインストラクターにお願いできるのであれば継続可能かと考える。【中学校・教員】

管理体制を整えるという理由で水泳期間中は補教に入り負担が増えます。最近の事故後の教員の管理体制など様々なニュースを見るとやりたくないというのが本音です。また、負担が多い割に子どもたちに成果は出るのかは疑問ですし、水泳期間中は成績の時期でもありとにかく肉体的にも精神的にも疲れます。【小学校・教員】

プールを使用できるのは、主に7月9月の僅かな期間で、授業時数で10時間程度である。そのために、学校全体で救命救急講習を行なったり、浄化槽の使い方講習、プールを清掃するために全ての職員が放課後を使って掃除したり、さらには子どもたちまで使って掃除をしたり…。また、安全のために学年によって水位を調節したりと、非常に業務は大きい。また、職員の中にもプールに入りたくないなど、入水による指導を拒絶する人もいるなどトラブルの元となっている。【小学校・教員】

設問3 学校の水泳授業、どう思う?

Q. その他、学校の水泳の授業について、あなたの思っていることや意見、考えなどがありましたらお書きください。(任意)

水泳の授業の教育的意義や目的について

夏のレジャーで命を落とす子どもを減らすために、基本的な泳ぎ方、着衣水泳など災害時身を守る訓練に取り組む方が効果的ではないか。長時間、長距離をわざわざ泳がせる行事を行う自治体もあるようだが、伝統だからとただ続けるのではなく、行事を減らし内部から仕事を減らしていく努力をしていかなくてはならないのではないか。【小学校・教員】

私の勤めている自治体では昔から水泳の授業が盛んです。ただ、保護者の話を伝え聞くと、学校の授業についていけないと困るとか、水泳が苦手だと成績に影響が出るからといって、小さいころからスイミングスクールに通わせている、という話もききます。水泳が苦手、という子どもがそこまで求められるのもおかしなことですし、過度に水泳の能力を競うのではなく、もっと気楽に、ひとつの体験学習として水泳が実施されたらいいのにと思います。【中学校・教員】

1番大切な水泳授業は「着衣泳」だと思っているのですが、水が汚れるので、外部の施設だと実施できないのかな、という点が気になります。【小学校・教員】

時代が変わり、スイミングスクールなどの施設もある。義務教育の中で、するべきこととは思えない。【小学校・教員】

島国として防災等を目的にした水泳学習の意義は大きいが、学校が担う必要はない。地域によっては水泳学習自体が縮小しているなか、目的を果たすために十分な指導ができない状況も多く見られる。教師の指導力にも限界があることから、専門機関への委託等に維持費を使ってほしい。【小学校・教員】

児童の個人差が大きいことから、年々指導が難しくなっていると感じる。ただ、学校でやめてしまうと、泳げない子どもが泳げるようになる機会はなくなるだろう。苦手な子の中から自主的にスイミングに行きたがる子は少なく、仮に行きたいと行ってもお金はかかる。家庭の意識と経済力に左右される。【小学校・教員】

小さいころから水泳を習っている子が泳げて、学校の授業だけではなかなか泳げるようにならないのが実情だと思う。水泳を授業で行うことは、水の事故などから命を守るためという位置づけで、成績に反映させなくてもいいのではと思う。中学生になると入りたくないと休む子も増える中、それに対して教師が時間を割くのは必要なのかと感じる。「入りたくない子は入らない」それでいいのではないか。成績に反映しなければ、入らないから点数がつけられないという問題もなくなると思う。あくまでも命を守るための授業と考えたらいいと思う。【中学校・職員】

教職員の負担について

特別支援学校では、てんかんや医ケアの生徒が多数在籍し、また知的障害のある生徒の安全管理には多大な労力が必要なため、特別時間割を組んで対応しています。その他夏休みのプール指導日は学生ボランティアを募るなどしていましたが、教員不足や病気休業の先生がいるなどで、いよいよその余裕も無くなってきているように思います。

今までのやり方から変える必要があると思いますが、民間委託した時に果たして安全管理ができるかどうかは大変疑問です。文字通り命がかかっているので…。【特別支援学校・教員】

水泳に限らずですが…。もちろん学校でやった方がいいことはたくさんある。でも私たちが使える資源(時間、金銭、施設、スキル他)も有限で、どこにそれを使っていくか資源を踏まえた上で精選する必要を感じる。【小学校・養護教諭】

いざ事故が起きた時本当に対応できるかと考えると不安が強く、子どもたちにも無理させないような授業設計をしてしまいます。習い事で水泳を頑張っている子どもたちにとっては学校の水泳はつまらないのではないかと思います。教員の負担も大きく、子どもたちによっては水着購入などの経済的負担、顔をつけられない子たちの精神的負担、本当に今の形で続けるべきなのか考えるいい時期なのではと思います。【小学校・教員】

児童生徒の実態について

中学校では、女子が生理でない日でも生理と嘘をついて入らない!一方で生理でよ入れるから極力、入りなさいという体育教員もいます。毎年、水泳大会の日は休む子、見学する子も続出し、泳げない子にとって水泳の授業は苦痛なんだなと感じる一方、苦手なことから逃げてほしくないと迫る学校体制の狭間でなんとも言えない気持ちになります。【中学校・教員】

様々な事情で「入れない」「入りたくない」生徒も多い。しかし「授業」だと実技を行っていないという理由で成績が不利になる。無くすか、もしくは選択制にすることで、多くの人にとって負担が減るのではないだろうか。【中学校・教員】

プールの設備について

プールには、虫が浮いているなど衛生面でも心配です。50年以上たつ汚いプールに入るのはかわいそうです。【高等学校・教員】

プール施設や水道代などに費用をかけるよりも、老朽化した校舎の建て替えに予算をまわすべきだと考えます。また、国際的にも、水泳授業を実施している国は稀です。働き方改革の側面からも、費用面でも、水泳は民間の手に委ねるべきです。【小学校・教員】

まとめ

学校の水泳の授業について一定の教育的意義は感じるものの、教職員への負担の大きさから、学校で教職員が水泳指導を担当することに対しては反対する意見が多く集まりました。外部施設の利用を支持する意見の中には、「学校のプールが建設されてから50年以上が経過しており、環境面を考えて外部施設を利用する方がよい」という意見もありました。教育的意義については、水難事故などのときに、衣服を身につけた状態で浮いたり移動したりする訓練でもある「着衣泳」については必要だという意見も。また、水泳の授業への抵抗感を持つ児童生徒がいることも回答の中から伺えました。


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すでに公開されている教職員アンケート結果やWEBメディアの記事の内容等は報道の際に使用いただいて構いません。その際は【出典:NPO法人School Voice Project 】クレジットを入れていただき、事後でも結構ですのでご一報ください。

今、日本の学校には先生が足りていません。学級担任の不在によって不安な思いをしている小学生、専門ではない教科の先生から教わる中学生、高校生がたくさんいます。

2021年度に文科省による調査で明らかになった教員の不足数は、全国で2558人。しかし、この数字には「そんなはずない」「もっと多いはず」との現場や保護者の声が多く聞かれます。2022年度からは小学校で35人学級がスタートし、地域によっては更なる教員不足が起こることも心配されます。

「担任が配置できない」「教科の先生がいない」「育休の代わりの先生が見つからない」この状況は、教員の働き方はもちろん、子どもたちにも影響が出る大きな問題です。

本サイト「メガホン」を運営するNPO法人School Voice Project では、学校業務改善アドバイザーの妹尾昌俊さん、教育行政学の研究者である末冨芳さんとともに、「#教員不足をなくそう緊急アクション」を立ち上げました。子どもたちのために、教員不足を一刻も早く改善するための活動です。

教員不足の実態について、副校長・教頭、教職員、保護者の三者に、学校現場で起こっていることや教員不足に対する意見を聞きました。

アンケートの概要

■実施期間:2022年4月26日(火)〜2022年5月22日(日)

<教職員向けアンケート調査>
■対象  :全国の小〜高校年齢の児童生徒が通う一条校に勤務する教職員
■実施方法:主にSNSを通じて協力者を募集し、ネット上で回収
■回答数 :1052件

<副校長、教頭向けアンケート調査>
■対象  :全国の小中学校年齢の児童生徒が通う一条校に勤務する副校長、教頭
■実施方法:全国公立学校教頭会の協力を得て、会員へメール案内し、ネット上で回収
■回答数 :1070件

<保護者向けアンケート調査>
■対象  :全国の小〜高校年齢の子どもを持つ保護者
■実施方法:主にSNSを通じて協力者を募集し、ネット上で回収
■回答数 :85件

結果を読む際に、ご留意いただきたいこと

  • 任意の調査であるため、教員不足で困っている人ほど、回答しやすい傾向があると考えられます。そのため、現実よりも教員不足の実態が過大に出ている可能性が高いと予想されます。
  • 副校長・教頭向けアンケートでは、地域や校種に一定の偏りがあります。兵庫県(19.2%)、茨城県(11.8%)、熊本県(8.7%)で多くの回答が集まりました。28都道府県から協力を得られましたが、19府県からの回答はありませんでした。
  • 教職員向けアンケートでは、公立の小、中、高、特別支援学校を中心に集計しました。義務教育学校、中等教育学校、国立附属学校は回答数が少なかったため、集計には含めていません(自由記入には含めています)。特別支援学校は回答数が少なかったため、参考値扱いとしています。私立学校については校種別にせず、私立学校というカテゴリーで一部集計に含めました。

アンケート結果

教員不足の発生状況

副校長・教頭向けアンケートでは、2021年度に年度を通じて一度でも教員が不足したことがある小中学校は約4割。2022年度始業式時点では約2割の小中学校で教員不足が発生していると回答しました。その後、4月28日時点でも教員不足の状況は改善されていないことがわかりました。

副校長・教頭向けアンケート

副校長・教頭向けアンケートでは、教員不足が起きている学校数を母数とした場合、小学校の約76%、中学校の約66%で教員の不足数は「1人」と回答しました。次いで多かったのが「2人」で、中には3人以上の教員が足りないケースもあるようです。

副校長・教頭向けアンケート

教職員向けアンケートでは、高校においては約3割が2人不足、約1割が3人以上不足していると回答しました。特別支援学校はもともと教員数が多いものの、約2割が5人以上不足していると回答しました。

教職員向けアンケート

教職員向けアンケートでは、2021年度に年度を通じて一度でも教員が不足したことがある学校は約6割。2022年度始業式時点では約4割の学校で教員不足が発生していると回答しました。その後、4月28日時点でも教員不足の状況は改善されていないことがわかりました。

教職員向けアンケート

教員が不足している場合の対応としては、小学校では管理職が担任業務を兼務するケースがあるようです。中学校では臨時免許を発行して対応したり、中には授業が実施できない教科もあるようです。

副校長・教頭向けアンケート

教員不足の影響

教員が不足することで懸念されることとして、「児童生徒が不安に思う」に対して「おおいにそう思う」と回答したのは、小中学校ともに7割を超えていました。次いで多かったのは、教科等の専門性が高くない教員や学級経営力が高くない教員が教えることによる「授業の質の低下」。選択肢に対して「おおいにそう思う」と回答したのは小中学校ともに半数を超えていました。

副校長・教頭向けアンケート
副校長・教頭向けアンケート(4月28日時点で教員不足が起きている学校のみ集計)

小中学校ともに、約65%の教頭が「講師の質を評価して選んでいられる状況ではない」と回答しました。この状況は、授業の質への不安とも関連していると考えられます。

副校長・教頭向けアンケート

 教員不足が起こることで、教職員が受け持つ授業時間数が増えたり、校務分掌や児童生徒への指導などで負担が増えたりすることを懸念する声が多く集まりました。

副校長・教頭向けアンケート
副校長・教頭向けアンケート(4月28日時点で教員不足が起きている学校のみ集計)

「出産や育児、介護と仕事との両立を応援しづらい雰囲気が職場にできる」と回答した人は約7割でした。

副校長・教頭向けアンケート
副校長・教頭向けアンケート(4月28日時点で教員不足が起きている学校のみ集計)

講師探しについては、約半数の小中学校の副校長、教頭が「校長、教頭らが人脈等と通じて独自に探すが、なかなか見つからないため負担は大きい」と回答しました。

副校長・教頭向けアンケート

今後の見通し

約3〜4割の教職員が、「定年が延長されても働かない予定」と回答しました。定年の延長は2023年度から順次実施されますが、教員の不足解消の切り札となるかには疑問が残ります。

教職員向けアンケート

副校長、教頭においては、「定年が延長されても働かない予定」と回答したのは約1〜2割でした。

副校長・教頭向けアンケート

小〜高校の約15%の教職員が「現在、離職・転職を考えている」と回答しました。「3年以内に離職・転職する可能性がある」と回答した数を含めると、約6割に上ります。

教職員向けアンケート

離職や転職を考える理由として最も多いのが「勤務時間(忙しさ)」で7割を超えていました。次いで多かったのが「給料」でしたが、その数は3割程度。「勤務時間(忙しさ)」を選択肢した人が圧倒的に多いことがわかります。

教職員向けアンケート

1年以内に離職・転職する可能性がある人のみに同様の質問をしたところ、「勤務時間(忙しさ)」と「給料」が理由として多いことに変わりはありませんでした。その他、「保護者との関係」や「職場の人間関係」、「教職員間でのハラスメント」なども一定数の回答が集まりました。

教職員向けアンケート

副校長・教頭向けアンケートでは、「現在、離職・転職を考えている」と回答した人はごくわずかでした。「3年以内に離職・転職する可能性がある」と回答した人は、約15%でした。

次のページでは、「求められる政策・支援策」「当事者の声」を紹介します。

髪型や下着の色の指定、スカート丈のチェック、携帯電話の禁止……。
近年、多くの学校で適用される校則の意義が、問い直されています。「ブラック校則」という言葉で、学校側の対応の問題点や裁判への発展事例とともに取り上げられているのを、メディアで目にすることも増えました。一方で、民主的な方法でそれらの校則を見直そうという、前向きな動きも多く生まれています。

とはいえ「校則の見直し」をしたくても、何が具体的に問題なのか、どのような段取りや方法が必要なのか、いまいち分からないという先生も多いのではないでしょうか。

この記事では、ブラック校則とは何を指すのか、そしてなぜいま校則の問題が注目されているのか、その意義や最新の取り組みなどを紹介します。

「問題校則(ブラック校則)」とは?

全国的なムーブメントとなっている問題校則(ブラック校則)の見直しですが、そもそも問題校則(ブラック校則)とは、どのようなものを指すのでしょうか。

文部科学省(文科省)は、現在改訂中の生徒指導の手引である「生徒指導提要」の中で、校則は「児童生徒が健全な学校生活を送り、よりよく成長・発達していくために設けられるもの」であり「教育目標を実現していく過程において、児童生徒の発達段階や学校、地域の状況、時代の変化等」を踏まえて、「社会通念上合理的と認められる範囲において、教育目標の実現という観点から校長が定めるもの」であるとしています。

問題校則(ブラック校則)は、「合理的範囲」を逸脱し、児童生徒が自主的に守るものではなく、守らせることが目的となってしまったような校則全般のことを指していると言えるでしょう。

引用「生徒指導提要(案)」(文科省,2022年10月5日参照)より

【注】本メディアでの「問題校則(ブラック校則)」の呼称について
行き過ぎた校則を「ブラック校則」と呼称することが一般的となっていますが、「ブラック〇〇」という表現が黒色へのネガティブイメージを固定し、人種差別や偏見助長へつながる恐れがあることから、本記事では、以降、基本的に「問題校則」の表記で統一いたします。

問題校則の具体例とその問題点

「合理的範囲を逸脱」とのことですが、具体的にはどんな校則が問題校則と言えるのでしょうか。教育関係者や評論家によって組織された「ブラック校則をなくそう!」プロジェクトでは、下記のような校則をその代表例として挙げています。

  • 頭髪に関するもの
    • ツーブロックやポニーテールなど、特定の髪型の禁止
    • 髪染めやパーマなど、加工の禁止(地毛証明やくせ毛証明の提出)
    • 男子は耳にかかったら切る、女子は肩にかかったら結ぶなどの長さに関する規定
  • 制服に関するもの
    • カーディガンやセーターの禁止
    • スカート丈に関する規則(膝が見えたら駄目、など)
    • 肌着の色の指定
  • 登下校のルール
    • 自転車通学の禁止
    • ジャージや部下着での登下校の禁止
    • カップルで一緒に登下校することの禁止
    • 飲食店などへの立ち寄りの制限
  • その他
    • キャラクターものの文房具やシャープペンの使用禁止
    • 眉毛の手入れの禁止
    • 授業中の水分補給の禁止
    • 給食や清掃の時間での発話の禁止
    • 携帯電話の持ち込みや使用に関する規定

問題校則が「問題」となるポイント

問題校則は、人によっては「でもそれって必要だよね?」と思われる場合もあるかもしれません。合理的範囲を逸脱しているとされるポイントは、一体どこにあるのでしょうか。

人それぞれの良し悪しの感覚ではなく、明確に校則に問題があるとみなされる場合には、「傷害」「個人の尊厳」など、いくつかの具体的な観点があります。

  • 障害行為の疑いがあるもの
    地毛を黒髪に強制的に染髪させる、髪を強制的に切るというような、傷害行為の疑いがあるもの
  • 個人の尊厳を損なうもの
    地毛証明を提出させる、性別によって制服や髪型を指定するなど、個人の尊厳を損なうもの
  • 生命の危機・健康を損ねること
    水飲み禁止、防寒具の禁止など、生命の危機・健康を損ねること
  • ハラスメント行為
    下着の色の指定とそのチェックなど、ハラスメント行為

引用・参考「「ブラック校則とは」(「ブラック校則をなくそう!」プロジェクト,2022年10月5日参照)より

学業成績との関連がなく、社会通念上のマナーとしても一般的でないという以上に、上記のような観点で児童生徒の権利を不当に侵害し、精神的苦痛を与えるような校則が、問題校則になりうると言えます。

裁判に発展したケースとその結果

校則や処分がその適法性を問われ、裁判事例にまで発展したケースもあります。

  • 熊本丸刈り訴訟(1985年11月13日判決)
    男子生徒の髪型を丸刈りに指定し、長髪を禁止する公立中学校の校則が問題となった事件。
  • 商業高校バイク謹慎訴訟(1990年2月19日判決)
    原付免許取得に関して「免許試験を受けるには学校の許可を得ることを要する。学校の定める地域外の生徒には受験を許可しない。」との校則がある学校において、当該の地域外の生徒が学校に無断で原付免許を取得したことに対し、無期自宅謹慎処分が課されたことの適法性が争われた事件。
  • 大阪カラーリング訴訟(2021年2月16日判決)
    公立中学校で染髪をしていた女子生徒が、教師数名に髪を黒く染めなおさせられたことが体罰に当たるなどとして、親が市に対して損害賠償請求した事件。

これらいずれの判例においても、学校側に違法性は認められない結果となりました。
実は校則には、その定め方や妥当性を直接的に根拠づける法律は存在しません。たとえ基本的人権や子どもの権利条約の観点からその妥当性に疑問が持たれても、問題校則が温存されやすい背景には、そのような法環境上の問題があります。

現状として、校則作りのルールを具体的に決める法律はありません。せいぜい、本記事で度々触れる「生徒指導提要」で、運用と見直しに関する強制力のないポリシーが定められる程度です。
裁判所は、学校には広い裁量権があり、運営のトップである校長に「児童生徒を規律する包括的な権能」があると見ている傾向があります。つまり、校則の内容がよほど酷いものでない限り、ひとりの生徒の主張で変えられるものではないと考える傾向が見えるのです。

引用「ブラック校則とは?定義や問題点を事例と共に弁護士が解説」(ベリーベスト弁護士法人,2022年7月10日公開,4日2022年10月5日参照)より

とはいえ、過去には学校側の違法性が認められた判例も存在します。

  • 私立高校バイク退学処分訴訟(1992年3月19日判決)
    校則に違反してバイクの免許を取得し、乗車していたことが発覚したことを受け、退学処分としたことの適法性が争われた事件。

なお、こちらの判例においても、あくまで「退学」という処分が教育的配慮を欠く、合理的裁量の範囲を超えた違法な行為であるとみなされたのみで、校則によるバイク規制そのものには合理性が認められています。

とはいえ、裁判で違法性が認められないとしても、傷つく生徒がいる限り看過はできません。裁判に発展する前に、学校や教育委員会自らが校則の意義を問い直し、見直しの動きを作っていく姿勢があります。

参考「司法における「ブラック校則」問題と、これからの政治の役割」(SYNODOS,2022年12月13日,2022年10月5日参照)より

全国で広がる現在進行形の「校則見直し」の取り組み

上記のような事情でこれまで留保されることの多かった校則問題ですが、見直しの動きは確実に起きています。NHKの令和3年の報道におけるアンケートによると、全国の都道府県教育員会のうち、4割が校則を「見直した」「見直す予定」と回答しています。

参考「「学校つらい…私がおかしいの?」~不登校の原因は校則でした 」(NHK,2022年9月10日公開,2022年10月5日参照)より

学校単位で校則を見直す動きも、各地で起こっています。ここからは「校則見直し」の意義と、全国で広がる現在進行形の取り組みについて紹介します。

ブラック校則をなくそうプロジェクト

2017年、前述の「大阪カラーリング訴訟」を発端に、NPO法人理事長やLGBTアクティビストが組織する「「ブラック校則をなくそう!」プロジェクト」が発足されました。

評論家でありNPO法人「ストップいじめ!ナビ」代表を務める荻上チキ氏をスーパーバイザーとして、理不尽な校則を見直し、学校と社会が共にこれからの時代にふさわしい校則を全体で考えていくための調査や活動が行われました。

同組織は2019年に、問題校則に関する6万以上の署名を集め、文科省に要望書を提出しています。

文科省の見解

文科省は2021年6月、校則見直しについて「学校を取り巻く社会環境や児童生徒の状況は変化するため,(中略)絶えず積極的に見直さなければなりません。」とその必要性を指摘しました。

また、「校則の見直しは,児童生徒の校則に対する理解を深め,校則を自分たちのものとして守っていこうとする態度を養うことにもつながり,児童生徒の主体性を培う機会にもなります。」と、校則が本来的に持つ教育的な意義についても言及しています。

引用「校則の見直し等に関する取組事例」(文科省,2022年10月5日参照)

2022年、文科省は12年振りに、生徒指導提要の改訂に動きました。試案には、校則の見直しやその公開、児童生徒の権利に関する文言が盛り込まれています。

教育委員会単位での見直し

校則見直しの動きは、教育委員会単位でも広がっています。ここでは、例として岐阜県・熊本市・東京都での動きを紹介します。

岐阜県の例

岐阜県は令和2年の調査において、9割以上の学校に人権などに配慮する必要がある校則があったことから、見直しと廃止の動きに着手しました。制服着用時の下着の色などの制限や、外泊・旅行の届け出や許可を主とした「時代の要請や社会常識の変化に伴い適用が想定されない校則」が、見直しの主な対象となりました。同時に、生徒が主体的に考えられるような校則改定のプロセスについても、各学校に明文化を求める方針が通知されました。

参考「ブラック校則、県立高の9割以上に 岐阜で廃止の動き」(朝日新聞,2019年11月6日,2022年10月5日参照)より

熊本市の例

熊本市では、教育委員会主導で校則見直しの指針となるガイドラインをとりまとめ、市内にある137の市立学校全てにおいて、見直しの取り組みが始まりました。ガイドラインでは、生まれ持った性質や性の多様性を尊重できない校則を必ず改定することや、 取り組みの柱として「児童・生徒がみずから考え、みずから決める仕組み」を各学校で作ることのほか、校則をホームページに公開し、周知を図ることなどが求められています。

遠藤教育長:
「先生の決めたことに対して、守るだけだったり、反抗するだけだったりしたら、大人になってもそういう意識になってしまいますよね。そうではなくて、自分たちのことを自分たちで決めて、そして責任を持って守るということが民主主義です。小学生の頃から校則の見直しを利用して、自分たちの責任で学校をつくるという経験を積み重ねていくことで、大人になった時にもそれが出来るようになり、よりよい社会のあり方につながると思うんです。そして、その中で、少数派の人権をないがしろにするようなルールを作ってはいけないことも含めて覚えていくことですよね。だから髪型や服装をどうこう以上に校則の見直しは、この国のあり方の見直しであって、これからの時代を生きていく子どもたちを育てるための最高の教材なんです」

引用「「校則見直しは最高の教材」 ”異色の教育長”が仕掛ける校則改革|#その校則必要ですか?」(NHK,2021年12月17日公開,2022年10月5日参照)より
参考「校則の見直しについて」(熊本市 学校安全・安心推進課,2022年10月5日参照)より

東京都の例

東京都では2021年4月から12月にかけて校則の自己点検の取り組みが行われ、「生来の髪を一律に黒色に染色」「下着の色の指定に関する指導」など計6項目について改定が行われました。各校では、Googleフォームを用いた生徒の意見集約や、教職員や生徒、保護者同士の意見交換といった取り組みがなされたとのことです。

引用「都立高等学校等における校則等に関する取組状況について」(東京都,2022年10月5日参照)より

ここまで、問題校則のどこが問題であるか、またどのように見直しの気運が広がっているかについて解説しました。
次ページでは、実際に校則を見直したいと思った時に、どのようなプロセスを踏めばよいのかについて、校則見直しの意義や、具体的な取り組み事例に触れながら、解説していきます。

2022年8月27日に、Zoomセミナー「学校にファシリテーションを!」が開催されました。テーマは「『任せる』マネジメントを広げよう」。ファシリテーションの普及に取り組む株式会社ひとまちが主催し、代表のちょんせいこさんが進行役を務めました。

講師は、『カラフルな学校づくり』『「任せる」マネジメント』などの著者である住田昌治さん(学校法人湘南学園学園長)。第1部では、これからの学校や管理職のあり方について住田さんが講演し、第2部では、住田さんの前任校で働く学校事務職員の上部充敬さん(横浜市立日枝小学校)と、教職員や生徒がファシリテーターとして活躍する徳島県美馬市立穴吹中学校校長の濱田雅子さん、同校養護教諭の林加奈恵さんより、実践の紹介がありました。

この記事では、登壇者のお話から、これからの管理職のあり方やファシリテーション※の具体的な実践方法を中心にご紹介します。

※ ファシリテーション:狭義では、会議や研修、プロジェクトなど人が集まる場で一人ひとりの意見を活かし、合意形成や課題解決を進めるための話し合いの技術。広義では、私たちは本来、誰もが力をもつ存在で、その力を発揮できるエンパワメントな場づくりを進める話し合いの技術。

「任せるマネジメント」を提唱する校長・住田昌治さんのお話

校長の役割は、管理ではなく経営

「校長にこそファシリテーションを」。そう書かれた資料を参加者に見せながら、学校法人湘南学園の学園長を務める住田昌治さんの講演が始まりました。

住田:「俺について来い」なんていう考えはもう時代遅れだと思っています。校長は“管理職”とも言われるので、人をコントロールすることが役割だと勘違いをされてしまいがちですが、実際はそうではありません。

本来の役割は、管理することではなく、経営することです。教職員の力を引き出し、エンパワメントすること。エンパワメントされた教職員が、さらに子どもたちをエンパワメントすること。そんな循環を、学校の中でつくっていくことが校長の役割だと思っています。そのために必要な技術が、ファシリテーションなんです。

ーー学校を経営する立場として、どのようなことを考えてきたのでしょうか。

住田:私が校長のあり方として心がけていたのが、「校長が必要とされない学校経営」です。もちろん校長という立場は必要なのですが、「校長に言われたからやりました」「校長のおかげでできました」とか、そういうことは言われたくないと思ったんです。

「校長がいなくても、自分らでできますよ」そんなふうに言ってもらいたい。教室では、先生が脇役、子どもが主役ですよね。職員室では、校長は脇役、教職員が主役なんです。そんな学校経営ができるように、私は指示や命令をせず、ビジョンを示したあとは教職員に任せることにしました。

全員が主体的になるには?安心して話せる場をつくる

具体的に、どのような学校経営をされてきたのでしょうか。これまでに取り組んできた事例をいくつか紹介していただきました。

住田:前任校では、新年度初日の4月1日に、教職員全員で「ビジョン共有ワークショップ」をやりました。教員だけではなく、事務職員や用務員も参加します。教職員全員で1つの学校をつくっていくので、職種や立場を越えて、みんなが対等に関わることが大切なんです。

校長の話はできる限り短くして、教育目標について話し合いました。このときに使ったのが、直接書き込める円形のボード「円たくん」です。みんなで円になり、円たくんを膝の上に乗せて、話し合いながら意見を書き込んでいきます。上下関係を意識せずに話し合うためには、とても有効なツールだと思います。この時間を丁寧に取ったことでお互いに考えていることを共有でき、教職員同士の安心感にもつながりました。

授業研究会は、授業担当者だけではなく、参加者全員が主体的に参加できるようにと考え、話し合いの仕方を変えました。まず授業が終わったら、授業担当者は一旦職員室に戻ります。その間に、参加者が話し合いたいテーマをホワイトボードに書き込んでいき、テーマごとに分かれて話し合いを始めます。その話し合いに、後から授業担当者が加わります。途中でグループを移動して話し合うフラットタイムやワールドカフェも取り入れるようにしました。そうすると、話し合いのテーマは授業で扱った内容に限らず、本当に多岐に渡るんです。

最近の私は、「デフォルトを変える」とよく言っています。いろんなことが変化している時代ですから、学校の中も変化させていく必要があります。例えば、校則や宿題、定期テストや通知表など、今まであることが当たり前だったものをなくしてみたり、変えてみたらどうなるでしょう。学び方や学ぶ場所も、子どもたち自身が自分で選べるようにする。前任校では、そんな取り組みもしていました。

マネジメントの先にあるのは、子どもたちの幸せ

教職員がやっている仕事は、最終的には子どもたちを幸せにすることなんです。ハッピークリエイターなんですよね。そんな教職員をマネジメントする立場にいる校長は、学校に関わるすべての人を幸せにすることが仕事です。

校長にファシリテーションする力があるからこそ、教職員が最大限の力を発揮できる。結果として、それが子どもの幸せにつながる。これからも、そんな循環が生まれる学校づくりをしていきたいと思っています。

夏の学校は暑いところ…というイメージがありますが、実は教室や職員室の温度については「学校環境衛生基準」で「18℃以上、28℃以下であることが望ましい」と定められています。しかし、各学校で、実際に基準通りに運用されているのかにはバラつきがありそうです。学校の教室・職員室の温度状況について、教職員の方に聞きました。

アンケートの概要

■対象  :全国の小〜高校年齢の児童生徒が通う一条校に勤務する教職員
■実施期間:2022年8月26日(金)〜2022年9月19日(月)
■実施方法:インターネット調査(実施時の設問はこちら
■回答数 :109件

アンケート結果

設問1 学校の温度基準、知ってる?

Q1. 文部科学省の定める「学校環境衛生基準」において、教室の温度は「18℃以上、28℃以下であることが望ましい」とされていることを知っていますか?

教室の温度設定が「18℃以上、28℃以下であることが望ましい」という基準は、約7割の教職員が「明確に知っていた」もしくは「だいたい知っていた」と回答しました。周知の度合いについては、校種による差は見られませんでした。

設問2 18℃~28℃の基準、守れてる?

Q2. あなたの勤務校では、学校環境衛生基準で望ましいとされている温度を守れていますか?

望ましいとされている設定温度を守れているかという質問に対しては、教室では約6割が「しっかり守れている」もしくは「だいたい守れている」、職員室では約8割が「しっかり守れている」もしくは「だいたい守れている」と回答しました。

教室において「しっかり守れている」と回答した人の割合は、東日本では約30%、西日本では約10%であり、明確な差が見られました。職員室において「しっかり守れている」と回答した人の割合は、教室に比べると大きな差は見られず、東日本で26%、西日本で16%でした。

設問3 教室で基準が守れていない理由は?

Q3. 設問2で教室について「あまり守れていない」「全く守れていない」と答えた方への質問です。その理由として当てはまるものを選択してください。(複数選択可)

※ 設問の対象者(設問2で教室について「あまり守れていない」「全く守れていない」と答えた方)は42人でした。

クーラーの能力不足

「クーラーを最大限稼働させても、基準の温度にならないため」を選んだ方の主な回答

教室によってクーラーの効きにばらつきがあって、効きの悪い教室ではクーラーを稼働させても30℃をゆうに超える教室があります。【中学校・教員】

校則・管理職の指示

「クーラーはあるが校則や管理職の指示等によって使用できない/設定温度が変えられないため(学校単位のルール)」を選んだ方の主な回答

電気代に予算があり、デマンド監視システムが作動するため、クーラーがあっても温度を下げられない。真夏などはデマンド監視システムによって、ほとんどの教室がクーラーをつけられない状況もある。【高等学校・教員】

クーラーが一括管理のため、教室内が暑く、クーラーをつけている意味がない。【小学校・教員】

職員室から教頭が機械を操作する決まり。設定温度は28度で、各教室の端末操作機には、触られないようにカバーがかけられている。カバーを外して温度調節ボタンを押すと26度までは下がる。そのため、毎日、教員が密かにカバーを外して26度まで下げている。しかし、26度の設定では教室の気温は30度以上になる。【中学校・教員】

クーラーが未設置/不足

「クーラーが設置されていない/不足しているため」を選んだ方の主な回答

本県の県立学校の空調は県で設置していないために、学校のPTAなどで設置せざるを得ない。そのため、クーラーを設置できない教室もある。【高等学校・教員】

多くの専門教室(実習室)にはパソコン室などを除き設置されていません。生徒は夏は暑い中冷房なしで授業を受けています。【高等学校・教員】

各HRにはエアコンが設置されているが、各教科の教室や実験室には一部しかエアコンが設置されていない。【高等専門学校・教員】

一般の教室にはクーラーがあるが、特別教室(芸術)にはないので、業務用の送風機で対応している。【高等学校/高等専門学校・教員】

設問4 職員室で基準が守れていない理由は?

Q4. 設問2で職員室について「あまり守れていない」「全く守れていない」と答えた方への質問です。その理由として当てはまるものを選択してください。(複数選択可)

設問の対象者(設問2で職員室について「あまり守れていない」「全く守れていない」と答えた方)は26名でした。

管理職の指示

「クーラーはあるが管理職の指示等によって使用できない/設定温度が変えられないため(学校単位のルール)」を選んだ方の主な回答

教頭が、クーラーの制御盤を管理している。【中学校・教員】

どんなに暑くても寒くても、管理職の許可が下りない限り、冷暖房のスイッチを入れることはできません。就業時間内のみ稼働で、室温は管理職が設定しており、変えることはできません。冷房は28℃設定ですが、換気していることもあり室温が28℃以下になったことは一度もありません。この夏も冷房がついていても30℃を超える職員室で、各自ミニ扇風機を持参しやり過ごしています。朝晩の残業中は、夏は汗だく、冬は防寒着にくるまって震えながら働いています。【特別支援学校・教員】

クーラーが未設置/不足

「クーラーが設置されていない/不足しているため」を選んだ方の主な回答

大きな職員室にはエアコンが設置されているが、各教科等の準備室にはエアコンが設置されていない。【高等専門学校・教員】

準備室にエアコンがなく、隣の教室から冷気を送っています。誰も使わない部屋をガンガンに冷やしているのは電気代の無駄遣いだと思いますが、こちらもエアコンがなければやっていけませんので仕方なく使っています。【高等学校・教員】

クーラーの能力不足

「クーラーを最大限稼働させても、基準の温度にならないため」を選んだ方の主な回答

換気のために窓を開けているため、既定の温度設定では想定の温度にならない。【小学校・教員】

教育委員会等の基準

「クーラーはあるが教育委員会等によって定められた使用基準があり使用できない/設定温度が変えられないため(自治体単位のルール)」を選んだ方の主な回答

教育委員会から節電の通達があり、生徒の下校後(おおよそ18時以降)には節電のためエアコンを止めるように指示が出たため。【中学校・教員】

その他

「その他」を選んだ方の主な回答

クーラーの故障が長期間続いている。【小学校・教員】

設問5 学校の温度環境、どう思う?

Q5. 教室・職員室温度について、あなたの問題意識や考えを自由にお書きください。(任意)

エアコンの設置やメンテナンスをして欲しい

教室内の温度を均一にするためにサーキュレーターがほしい。【中学校・教員】

職員室のクーラーは年季が入っているためスイングせず、特定の職員のみが直に当たっている。極端に寒くなるのも問題点である。【小学校・教員】

快適な空間で生活するために、地域によって差がないように冷暖房設備を設置してほしいです。体育館の冷暖房設備がまだまだ整っていないので、設置してほしいです。また、エアコンの清掃を保護者のボランティアと用務員で行っているのを見かけました。エアコン業者に任せる予算をつけてほしいです。【小学校・職員】

生徒のいる各教室にはエアコンが設置されており、環境は改善してきていると思います。しかし、教員の準備室にいまだエアコンがないのは異常な状況です。この夏も校舎4階で日中の体感温度は40度くらいだったと思いますが、その中で仕事をせざるを得ませんでした。熱中症の危険がある職場は本当に異常だと思います。準備室を含めたすべての職員室にもエアコンの設置を切に願います。【高等学校・教員】

基準やルールを見直してほしい

コロナの影響で換気もしながらエアコンを使用しているので、教室によって温度にはばらつきがあります。職員室は教室より設定温度が低く、あまり冷房が得意ではない私には寒いです。(ときどき設定温度を上げたり、窓を大きく空けたりするなどしています。)いろいろな人がいるので仕方のないことかもしれませんが、冷房がもとで体調を崩すのは避けたいです。【小学校・教員】

各教室で必要に応じて設定できるようにした方が良いのだが、例え操作は教員以外してはならないと決めても、守らない生徒が必ずでる。それを前提に、罰則規定も含めた、規則を守らせる追加の指導が必要で、手間が増えた。【高等学校・教員】

冷房をつけて良いか悪いかというところから管理職や目上の方に気を遣わないといけないから、やりづらい。【中学校・教員】

設定温度の基準は知っていて概ね守っている。昨今の異常気象で昔より確実に気温が上昇しているし、教室内の人数や教室の場所(下の階か上の階か)によっても体感温度が違う。またコロナ禍でマスクをしている実態から臨機応変に温度設定を変えていく必要がある。【小学校・副校長】

児童生徒の教育活動への弊害

コロナ禍でマスクをしながら30℃を超えている中で授業をまじめに受けなさい!というのは、しんどかった。「一人一台タブレットじゃなくて、一人一台扇風機を」と訴える生徒もいた。【中学校・教員】

私はものづくり系のクラブの顧問をしていますが、この夏、冷房のない教室で部員がずっと作品作りの作業をしていました。熱中症など体調不良は大丈夫でしたが、おそらく暑さのため作業効率が下がり、完成までにかなりの時間を要しました。【高等学校・教員】

まとめ

教室で基準が守れていない理由としては、「クーラーを最大限稼働させても、基準の温度にならないため」が最多。クーラーの冷暖房能力によって適した温度にならない他、感染症予防のために換気をしているため、効きが悪いという声もありました。また、クーラーの設定温度が適切であっても、教室内に児童生徒がいる状態ではなかなか温度が下がらないこともあるようです。

職員室で基準が守れていない理由としては、「クーラーはあるが管理職の指示等によって使用できない/設定温度が変えられないため(学校単位のルール)」が最多。管理職が職員室の温度管理をしており、教職員が自由に設定を変えることができない学校もあるようです。

児童生徒や教職員が普段使用する教室であっても、クーラーが設置されていない教室がある学校は少なくないようです。クーラーの設置や、クーラーが正常に稼働するようにメンテナンスをして欲しいと望む声が多く集まりました。

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※メディア関係者の皆様へ
すでに公開されている教職員アンケート結果やWEBメディアの記事の内容等は報道の際に使用いただいて構いません。その際は【出典:NPO法人School Voice Project 】クレジットを入れていただき、事後でも結構ですのでご一報ください。

以前、 School Voice Project で行った「#教員不足をなくそう 緊急アンケート」は、報道各社に取り上げられ(報道記事はこちら)、文部科学大臣も提言内容にコメントをする(記者会見録はこちら)など、大きな反響がありました。

教員不足を解消するため、School Voice Project では『もっと聞きたい、教員不足現場の“声”』という連続アンケートを実施しました。この記事では、全3回のアンケートのうち、第3回のアンケート結果についてまとめて紹介します。

第1回・第2回のアンケート結果はこちら


第3回 教員の退職を減らすために

第3回のテーマは「教員の退職を減らすために」。教員不足の解消のためには、教員の積極的な採用や臨時免許の発行などの方策があげられています。それと同時に、本来望んでいなかった退職を未然に防ぐことも大切です。教員が退職を考えるのはどのようなときなのか、現場の声を聞きました。

アンケートの概要

■対象  :全国の小〜高校年齢の児童生徒が通う一条校に勤務する教職員
■実施期間:2022年8月12日(金)〜2022年9月12日(金)
■実施方法:インターネット調査(実施時の設問はこちら
■回答数 :136件

アンケート結果

設問1 退職を考えた・相談された経験は?

Q1. 教員の退職について、以下のうち経験のある事柄をすべて選んでください。(複数選択可)

「同僚が辞めたことがある」と回答した人は最も多く、全体の71%でした。次いで多かったのが、「辞めようと思ったことがある」で、全体の63%。どの選択肢においても、校種による回答の大きな差は見られませんでした。「辞めたことがある」と回答したのは、男性では6%、女性では24%と、性別によるばらつきがあることがわかりました。

設問2 退職した・退職を考えた要因は?

Q2. 辞めた・辞めようと思った経験がある方に質問します。辞めた・辞めようと思った要因はなんですか。

働き方

拘束時間が長すぎて、家庭が崩壊するので、難しいと感じた。勤務時間についても定時付近でタイムカードを切らされるのが常態化しており、もし過労死したりうつ病になったりしたときに家族や自分を守れないと思ったから。【小学校/中学校・教員・辞めたことがある】

時短勤務が可能であれば、働きたかったのですが、叶いませんでした。担任をしていたときの生活時間を考えると、子どもを育てながらの復帰は考えられませんでした。頼れる祖父母が近くにいないので、夫と分担しても、私が短時間で働く以外、生活が成り立たないと判断しました。【小学校・職員・辞めたことがある】

授業に関わらない仕事でプライベートが押しつぶされて、何のために働いているか、何のために生きているのかが分からなくなったから。【小学校・教員・辞めようと思ったことがある】

心身の不調

心身の疲労。子どものためにとすべての業務において真面目になりすぎた。身体を壊し、やってられないと思った。やめて正解。休日はあっても1日。毎日の業務量も半端ではなく、肝心の授業づくりは帰宅してからやること。今考えればよくやっていたと思う。【中学校・教員・辞めたことがある】

あまりに業務量が多く、心身両方の面で長く続けていけるか心配になった。体調を崩しても休みづらいと感じたから。【小学校・教員・辞めようと思ったことがある】

異動先でうまくいかず、保護者対応に追われ、適応障害になり、休職を経験。人と接するのが怖くなり、辞めようと考えたことがある。【小学校・教員・辞めようと思ったことがある】

職場の人間関係

私学に勤務中、職場内人間関係が悪く、また、同期が非常に高圧的でこの同僚とずっと勤めるのは無理だと思った。【小学校/中学校・教員・辞めたことがある】

職員室内の人間関係に疲弊した。困難な部活動、校務分掌を一人で任され、激しい叱責を受け、周囲から救済を得られなかった。【中学校・教員・辞めようと思ったことがある】

仕事内容、待遇

自分のやりたい仕事と任されるしごとの乖離。【小学校・教員・辞めようと思ったことがある】

月の超過勤務時間が平均で100時間を越えることが続いたり、教育困難校で勤務していて給料と割に合わないと感じた。【中学校・教員・辞めようと思ったことがある】

あまりの仕事の大変さ(重い責任、身体的、精神的な負担)に対して、対価が支払われていないと感じたとき。【小学校・教員・辞めようと思ったことがある】

保護者や生徒との関係

保護者対応に精神的に追い込まれる。毎年のように出会い、本当につらい。授業が終わった後に対応すると、全く仕事ができない。【小学校・教員・辞めようと思ったことがある】

理不尽な保護者に対応するのにほとほと疲れたこと。本来の業務に支障が出てなんのために仕事をしているのかわからなくなった。【小学校・教員・辞めようと思ったことがある】

自身のキャリア

未来に希望が持てないなぁと思ったとき。【小学校・教員・辞めようと思ったことがある】

他の業種に転職した方が人間として成長できるのではないか?と考えたりした。【中学校・教員・辞めようと思ったことがある】

設問3 どんな制度・サポートがあるといい?

Q3. 同様の要因で退職する教員を減らすために、どのような制度やサポートがあるといいと思いますか。

働き方や仕事内容が要因の退職を減らすために

20人学級の実現。【高等学校・教員】

給特法の遵守、待遇の改善。【小学校・教員】

部活動を早急に地域移行する。【中学校・教員】

初任者については、小学校でも副担任として勤務できる人員配置。【小学校・校長】

持ちコマ数上限の適切な設定(LHRを含めて17)。【高等学校・教員】

全員担任制に切り替え、難題をチームで請け負うようにする。【中学校・教員】

初任のときは、いきなり担任ではなく、副担任としてつとめられる制度。(可能なら、助手的な立場でつとめられる制度)【中学校・教員】

校長など管理職に労務管理の研修を必修させる。業務過多の教師が出た場合、管理職になんらかのペナルティとなる制度を設定する。【中学校・教員】

専門性がなくてもできる作業(集金の計算、出席記録、草むしり、トイレ掃除、印刷、帳合など)を委託することができると良いと思う。【小学校・教員】

特別支援対応の人員を増員する。教科採用の教員は教科指導に専念し、学活・道徳・総合は専門の教員を当てる。無駄な仕事、特に、なくても済む書類作成(特別支援対応、教育委員会提出用)を減らす。【中学校・教員】

道徳や英語教育(小学校)、宿泊体験学習や運動会をやめる。実施するのなら、勤務時間内に収まるようにそのときの授業を午前中のみにし、職員がその準備ができるように環境を整える。【小学校・教員】

日常的に休憩の時間をしっかりと保障することだと思う。余裕がなくなればどんな人でも雑になり追い詰められていく。法定の休憩時間の確保と、退勤時間から次の業務時間までのインターバルを決めるべき。【小学校・教員】

次から次へと学校教育に求めるのではなく、「家庭」「社会」で行われるべき教育を今一度考えてほしい。子どもは学校だけで育つのではないのです。「家庭」「社会」で育っていくのです。「学校」は一部でしかない。【高等学校・教員】

次から次へと学校教育に求めるのではなく、「家庭」「社会」で行われるべき教育を今一度考えてほしい。子どもは学校だけで育つのではないのです。「家庭」「社会」で育っていくのです。「学校」は一部でしかない。【高等学校・教員】

心身の不調が要因の退職を減らすために

休みやすい環境づくり。部活動軽減。担任したいひとは担任をする、教科のみのひとも作る。そもそも今の学校の指導内容の再検討が必要だと思います【中学校・教員】

まずは、仕事量の調整です。例えば週のコマ数に上限をつけたりすることは重要だと思います。【小学校・教員】

やはり、教員の数を増やしたり、印刷、パソコン入力のボランティアを雇うなりして、事務量を減らして、本来の教材研究などに使う時間を増やすこと【高等学校・教員】

職場の人間関係が要因の退職を減らすために

少なくとも2ヶ月に1回ぐらいは管理職と面談する機会があればいいです。管理職が信用できない人物の場合もあるので、それ以外の人との対話の場もほしいです。とにかく孤立化させないような仕組みが必要です。【小学校・教員】

パワハラの相談を校長を介せずに教委に相談できる仕組み、および教員による管理職評価。【中学校・教員】

気軽に相談できるところがある。他の立場の人に専門家として助言してもらうこと。職場に余裕のある時間や人員が増えるといいと思う。【小学校・教員】

保護者や生徒との関係が要因の退職を減らすために

保護者対応は専門の窓口を設ける。【中学校・教員】

SSW(スクールソーシャルワーカー)、SC(スクールカウンセラー)の常駐。警察官OB(スクールポリス)、スクールロイヤーの巡回。【小学校・校長】

現在の学校の力では、地域や保護者の要求に抗うことはできない。授業は教師、児童同士のトラブルはカウンセラーとそれぞれの仕事の領域を明確化させ、教師を何でも屋にしないことが大切。【小学校・教員】

設問4 同僚の退職、どう防げた?

Q4. 同僚が辞めた・同僚から辞めたいと相談を受けた経験がある方に質問します。そのような教員を減らすために、どのような制度やサポートがあるといいと思いますか。

※設問3と同様の意見が多く集まりました。そのため、ここでは設問3の回答と内容が重複していない回答の一部をご紹介します。

管理職以外に第三者の相談機関があること。【高等学校・教員】

悩んでいる先生が、その思いを吐き出せる場所が必要。そして吐き出したことで、嫌な思いや、圧力がかからないようにもすべき。【小学校・教員】

対話を通して、お互いが理解し合う場。
実践の困り感を共有し、サポートする場。
教員がリフレッシュできる体制。【小学校・教員】

辞めたくなる要因はさまざまなので、ひたすら思いを聞いて寄り添う仲間が必要だなと思います。悩みの種が管理職であることも多いので、やはり「同僚」かと。組合など何かしらの組織に所属していることも、ある一つの心理的安心につながると思います。行政が行っているメンタルサポート政策ではなかなか本音が言えないので、公的にはしばらくお休みする制度の充実しかないのかな。ただお休みしたとしても、「あの時辞めなくてよかった」を引き出すには、やはり身近な仲間からの言葉かけが大事だと思います。【小学校・教員】

設問5 教員の退職、どう思う?

Q5. 教員の退職について、気になっていることや意見などありましたらお聞かせください。(任意)

これだけ問題点が明らかになってきているのだから、国、地方公共団体、教育委員会が本腰入れて改革しないとこの状況は変わらない。現場の職員はお互い助けてあげたいがその余裕がない。本当に切羽詰まっている。【中学校・教員】

離れる人が出てくる一方で、新たに民間などから参入できるような仕組みや、初任者がすぐに重いポジションにならないように、仕組みを作っていくことが望ましいと思う。【高等学校・教員】

自分も辞めてしまった人間なので、先生が足りなくて困っている話を聞くと、とても申し訳ない気持ちになります。教員としてのやりがいも十分分かっているからこそ、いつかまた戻るかもしれないという気持ちもあります。(教員に戻っている夢を見るほど)【小学校・教員】

早期退職者増、採用試験受験者減の背景にあるものは何か、現場の教員自身が自らの言葉で語り合う時間をもっと取れたらいいのにと思います。このフキダシに集まる声は現場の叫び。でもたぶん実際の職場では話題にしにくいのではないかと思います(時間もなくチャンスもなく)。上からの指示で動くばかりではなく、教職員自身が「教育」を語り合う場の設定を各学校や自治体でしてはどうかと思います。【小学校・教員】

まとめ

過去に教員を「辞めた」もしくは「辞めようと思った」経験がある人は99人で、回答者全体の73%でした。その理由として最も多く上がっていたのは、働き方や仕事内容。業務量の多さによって勤務時間が長くなり、プライベートの時間が確保できないことで、教員を続けることが難しいと感じることがあるようです。また、勤務時間の長さだけではなく、同僚や保護者との関わりに精神的なストレスを感じるケースも。教員の退職を減らすために必要なサポートとしては、教員や各専門の充実、業務の削減など、教員の負担を減らすことにつながる意見が多く集まりました。

2021年4月時点で、全国の公立学校で不足していると言われている教員数は2,558人です。一方で、定年退職者を除いた教員の離職者は約12,000人にのぼります。本来望んでいなかった退職を未然に防ぐことができれば、教員の欠員を減らすことにもつながるのではないでしょうか。

参考「「教師不足」に関する実態調査」(文科省,2022年1月28日公開,2022年10月6日参照)より
参考「令和元年度学校教員統計調査(確定値)の公表について」(文科省,2021年3月25日公開,2022年10月6日参照)より


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熊本市では、令和2年度に学校管理規則(*1)を改訂し、学年始休業日の終了を1日遅くしました。同時に、冬季休業日も前後1日ずつ伸びる一方で、夏季休業日の終了が3日早まっています。これによって新年度の準備により多くの時間を確保できるようになりました。この取り組みをどのように進めたのか、どういった課題があったのか、熊本市教育委員会の遠藤教育長にお話を伺いました。

取り組みの経緯とスケジュール

ーー改めて、休業日に関して、学校管理規則をどのように改訂されたのか教えていただけますか?

こちらの教育委員会会議の資料にある通り、学年始休業日の終了を1日遅くして、冬季休業の開始日を1日早め、終了日を1日遅くしました。コロナによる休校を経験した今となっては、3日間長期休業が増えるのは大したことがないように思いますが、この規則を変更した当時は授業日数を揃えるために、夏季休業日の終了を3日早め、全体の授業日数に差が生まれないようにしました。

ーーなぜ新年度準備に関する学校管理規則を変更するに至ったのですか?

学年始めは先生方の準備が大変なので1日でも準備期間が増えた方がいいというのは、多くの学校関係者から要望がありました。また、クリスマスプレゼントの話題で悲しい思いをする子がいるということで、クリスマスを休みにしてほしいという声も以前より聞いていました。

ーー教育委員会ではどのようにして取り組みを進めましたか?

教育委員会の職員と話す中で、学期の始めの忙しさを何とかしませんかという話は以前からありました。そこで、まずは教育課程検討会議という、教育委員会と学校関係者が議論する場を作って、予備時数の削減や行事の精選などと一緒に検討しました。その後、検討会議でまとめた案を教育委員会会議に出して、教育委員さんからも賛同いただき、改訂に至ったという流れです。

ーー改訂に向けてどのようなスケジュールで進めたのでしょうか?

検討会議では全体として2年ほどかけて検討しました。学校管理規則の改正案は、作ってから実施するまでに半年くらいのイメージです。次年度に向けて変えるとなると、各学校が次年度の行事予定などを決める前に結論を得なければなりません。8月から9月頃には具体的な案を作り、市長部局や議会にも説明をして、調整するのに1, 2ヶ月程度、その上で12月に教育委員会会議にかけるようなスケジュールです。その間に校長から各学校内への周知もする必要があります。次年度からスタートするのであれば、少なくとも半年ぐらいの期間が必要なんだろうと思います。

授業時数の問題をどうクリアするか

ーー取り組みを進めるにあたっての懸念事項はあったでしょうか?

始業日を早くしますと言ったら先生方からの懸念の声もあるかと思いますが、遅くすることに対しての懸念の声はなかったです。年間の授業日数に変更もなかったので。今となっては、学級閉鎖などにより数日休むといったことなどはよくありますから、3日くらいなら授業日数を減らすだけでも良かったかもしれません。ただ、全体の授業時数がぎりぎりだと学校行事などが組みにくくなってしまうので、それぞれの学校の予定によって日程を変えられる余地は多少はあった方がいいかなと思います。

もし単純に新年度始業日を後ろ倒しにして授業日数自体を減らすのであれば、授業日数を減らすことで実際の授業時数がどう変わるか、先の10年分ぐらいみていくといった作業が必要になるのかもしれないなと思います。

ーーコロナ禍前後で、教育委員会事務局や学校管理職の間で授業時数に対する捉え方はどのように変わりましたか?

かなり変わりました。現場の先生方も教育委員会も、コロナ禍で学校が長期休業となった場合でも1年間で教育課程が終わったという経験があるので、今は多少休校にしますと言っても「それで教育課程終わるんですか?」と言う人はいないですね。休校になってもオンラインで授業ができるから大丈夫というのもありますし、たとえ1ヶ月くらい授業日数が短くなっても、それなりに教育課程を終わらせることができる、ということがコロナ禍の長期休業で分かりましたので。
また、去年の夏休み明けは午前授業をやっていましたが、これは先生方からも生徒からも極めて評判が良かったです。今では通年で毎日午前中授業にできないかという声もあります。そういった意味で、以前のような授業時数へのこだわりはなくなってきているように感じます。

教育委員会、学校現場、保護者の反応

ーー規則を変えること自体への抵抗感などはありませんでしたか?

学校管理規則を改正すること自体が大変だという意識はありませんでした。もともと平令和元年度に、休日がずれるなどの都合で学校管理規則の休業日の記載を1年限りの特例として改訂していたこともあり、令和2年度の規則の変更もやりやすい環境ではありました。そうでなくても、市立の幼稚園、小中学校、高校、特別支援学校、専門学校まで含めれば、毎年のように学校管理規則は改正していますので。

私(教育長)自身にも抵抗感はありませんし、学校や教育委員会の中での抵抗感もないと思います。教育委員会としての仕事を誰のために、何のためにやっているのか、理念・目的を共有できているので、作業的に大変だなと思うことはあったとしても「やらない方がいい」とはならないです。


ーー先生方からの反応はどうでしたか?

楽になってよかったということに尽きますね。特に今年は土日の関係もあって、新年度は4月11日スタートと、だいぶ余裕を持って年度が始まったと思います。来年の年明けも1月10日スタートなので、スケジュール的にはかなり余裕があります。

ーーこのように「働き方改革」“が進むと学校現場は助かりますね。

学校現場の働き方改革の本質としては人を増やすというのが一番の解決策で、それをしないことには抜本的な働き方改革にはならないと思っています。

ただ、もちろんお金が必要なことですし、1自治体では解決するのに時間がかかります。そのため、人を増やす以外の方法でできることは何でもやっていこうという中で、1つの工夫として始業日を変更しました。もちろんそれだけで一気に楽になるような本質的な解決策になるとは思っていませんが、人を増やすまでの期間に先生方の負担が少しでも軽く楽になればと思っています。

ーー保護者からの反応として懸念されていたことはありますか?

始業日の変更については、それぞれ1日ずつですから保護者からの懸念は特にありませんでした。その分、夏休みが短くなっていますし。

保護者の一番の関心は給食・学童保育があるかです。例えば、仮に午前中授業の日を増やしたとしても、給食も学童保育もありますということであれば、保護者からの抵抗というのはそこまでないんじゃないかなと思っています。もし仮にどうしても早く帰ってこられては困るという意見があるのであれば、例えば、放課後は学校内で自習してもいいですよ、とするなど、保護者の懸念を和らげるような方法はあるのかなと思います。結局は、そのためのお金と人を用意できるかということに尽きるでしょう。

教育委員会にできることは多い

ーー「働き方改革」の資料などを拝見すると、他の自治体より踏み込んだ表現が多いように思います。

私としては、制度・仕組みを変えることを重視しています。制度自体は変えないで、例えば、通知を出しますとか、運用を変えますとか、校長会で呼びかけをしますといった方法もありますが、その元になる制度を変えることで、自然にそれが浸透していくことが大切だと思っています。

校則に関しても学校管理規則を改訂しました(校則の制定・改廃に教職員・児童生徒・保護者が参画することや、校則を公表することを追加)。多くの自治体は、この件を学校管理規則に記載しようとは考えないと思います。通知やガイドラインを出すといった対応になるのではないでしょうか。しかし、学校管理規則にするのか、通知やガイドラインを出すだけにするのかで、責任の所在が変わります。教育委員会として要請はしますが、やるかやらないかは学校の責任です、というのはよくないと思います。私としてはやるなら教育委員会の責任でルールを変える、教育委員会が責任を持たないなら口も出さない、というつもりでやっています。

ーー予備時数ゼロまで踏み込んでいらっしゃることが印象的でした。

そこを変えていかないと学校が楽になりません。留守電の導入などもそうですが、保護者への説明としても、教育委員会に言われてこのようにしていますと学校が言える環境をつくる必要があり、それが教育委員会の役割だと思っています。学校が説明しづらいことについては、私(教育長)や教育委員会の名前で通知を出すことで、保護者からの意見要望を学校ではなく教育委員会に言ってもらうようにしています。

ーー次に検討されている取り組みを教えていただけますか?

都道府県・市町村の権限を両方持つ政令指定都市だからできることですが、堺市が中学校単位(学校群)で人事権や予算権を渡すという取り組みを始めており、おもしろい取り組みだなと思っています。学校単位では権限がなくてやりたいことができないという校長に権限を移譲するというのは、モデル校的に取り組んでみてもおもしろいかもしれないと思っています。その代わり、その運営には必ず子どもも参加するようにするべきだと思います。

(*1)学校管理規則とは、小中学校の管理運営の基本事項について定められた各市町村の教育委員会により規定される規則のことをいいます。

(*2)予備時数とはとは、各学校が不測の事態が起こって数日授業ができなくても授業時数が確保できるよう、年度当初に設定している余剰の授業時数のことです。予備時数を多く確保することで、不測の事態には備えられるものの、先生方が授業に拘束される時間が長くなり、負担に繋がっているという側面があります。熊本市では令和元年(2019年)より予備時数を20時間程度まで削減する取組を行っており、現在は更に0時間を基本とした編成を進めています。