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【教職員アンケート結果】「臨時講師が見つからない問題」と、その影響

  • メガホン編集部

教員の多忙化の背景の1つとしてあげられる「人員不足」。
産休・育休・病休等の欠員をカバーしてきた臨時講師が見つからない事態が、近年多く発生しています。

深刻な人員不足の現状において、学校現場ではどのような影響が出ているのかを聞きました。

「現場が大変なことに…」35人以下学級、教員の悲鳴(西日本新聞) – Yahoo!ニュース news.yahoo.co.jp
【学校が回らない】欠員状態のまま、綱渡りの学校(妹尾昌俊) – 個人 – Yahoo!ニュース news.yahoo.co.jp

アンケートの概要

School Voice Project では、WEBアンケートサイト「フキダシ」に登録する教職員の方を対象に「『臨時講師が見つからない問題』とその影響」についてアンケートを取りました。

■対象  :全国の小〜高校年齢の児童生徒が通う一条校に勤務する教職員
■実施期間:2021年9月29日(水)〜10月24日(日)
■実施方法:インターネット調査
■回答数 :87件

アンケート結果

Q. 産休・育休・病休の代用など臨時講師が見つからない学校が多くあります。代わりの先生が見つからないと、学校現場ではどのような影響が出ますか?あなたの職場で今起こっていることや、過去に起きたことをなるべく具体的に教えてください。(職場組織/体制への影響、児童生徒への影響など)

※自由回答は、全回答の中から抜粋して掲載しています。

講師が見つからない場合、欠員分をどうカバーしているか

1. 教員で分担

・校務分掌は、他の教員に割り振られる
・学年は1人いない状態で行事や生活指導を行っている
・お休みの教員が加配教員である場合で臨時講師が見つからなくても、加配に関わる書類作成と提出を継続して求められる(加配抜きの元々の教員数では物理的に少人数指導などができなくても。)
・授業は同じ教科の他学年で割り振られるか、同じ教科なら授業時間数0の生徒指導主事などが受け持つ【中学校】

異動で後任が見つからず、人員が前年度と比べて−2となりました。教諭の授業時数が1人あたり3時間程度増え、その分空き時間(研究時間)が減りました。しかし研究業務がなくなるわけではないので、放課後にその仕事が回っているのが現状です。【小学校】

2. 教務主任や教頭(副校長)など管理職が授業や担任業務を代替

副校長や算数少人数担当が臨時担任を行います。つまり、副校長業務、算数少人数の指導が出来なくなるということです。
しかも現在のボリューム世代=子育て世代なため、産休育休に入る教員が1年間に2〜3人いるのはよくあることなので、欠員を副校長と算数少人数担当が臨時で補っても空きが埋まらないこともあります。
その時はみんなの空きコマをフル動員するしかありません。その結果、教員が過労で病休になんてなったら負の連鎖はもう止められないです。【小学校】

病休の担任が出たところには、教務主任の先生が教務と兼職で担任をされています。育児もされているため、定時退勤後20〜21時に再出勤され、24時あたりまで働いておられます。また次の日に、通常出勤されています。【小学校】

適応障害により、5月から仕事を休んでいますが、今でも講師が見つかっていません。
昨年度も10月から5月まで精神疾患で休職した先生がいたのですが、なかなか見つからず、専科の先生が代理の担任になりました。
私の傷休補充には、とりあえず新卒の若い講師の先生が入ることになりましたが、私が担任していたクラスや校務分掌(児童指導主任など)を任せることができず、教務主任が私の仕事を引き継いでいる状況です。
人数の少ない学校なので、1人1人の先生の校務分掌の負担が大きく、休む人がでることでさらに他の先生への負担が増して切迫しています。私も昨年度は空き時間が週に1時間しかなく、全くない週もありました。【小学校】

教務主任として時間割を組んだり、一人一人の授業コマ数を調整したりしていますが、足りない国語科については、特別支援学級の国語の授業に保健体育科の自分や社会科の講師が入ることで無理矢理やりくりしている状態です。【中学校】

3. 支援学級の加配分を通常学級へ

支援担当などの加配をなくし、担任や専科に配置し直す。結果組織運営が難しくなり、子ども理解が得られずトラブルが生じる。【小学校】

病休については、支援学級担任が通常学級担任に移動することがいちばん多いです。その担任が担当していた支援学級の子どもたちは、他の支援学級の担任が担当することになります。支援学級の子どもたちに対しての支援は、必然的に少なくなり、学力や生活面でマイナスの効果がはっきり出ることが多くあります。【小学校】

4. その他

レアケースですが、校長が介護休暇、病休ということがありました。二学期は市教委から旧校長がヘルプで来てくれて、教頭が校長代理として勤務してくれましたが、他の教職員では手伝うことのできない仕事(行政関係の仕事)は多く多忙度はとんでもないものでした。余裕のない大人たちに呼応しているのか、子ども達も高学年を中心に荒れていきました。三学期に新しく市教委から校長が赴任する形となりましたが、卒業時まで大人と子どものもぐらたたきは続き、最後まで大変でした。【小学校】

そもそも北海道の郡部では、代替講師が見つかる方が稀です。年度の途中で、期間限定で数ヶ月だけお願いしても、荷積に荷下ろしして北海道を大移動して郡部に来てくれる人はほとんどいません。5教科ならまだしも、芸体教科の教員は生徒数の関係で配置されていない場合も多いです。例えば、音楽の先生が免許外で美術と家庭科をかけ持ちでもったりします。その人の代替となると…、もう大変です。管理職がその免許を保持していれば管理職が授業したり、免許の有無に関わらず誰かがその時間をもつことになります。1学年だけならなんとかなりますが、郡部だと1教科1人でまわすので、3学年部すっぽり抜けることになります。週4入る教科は、そもそも3学年分の授業準備をしているので、それにプラスαされるのは、なかなか大変ですし、分掌の仕事も大規模校に比べると一人当たりの仕事量は増えるので、なかなかです。力のある先生ほど、仕事をかかえています。代替はプラスαの仕事ですので、若手には回せずベテランが持ちます。ただでさえ、郡部は忙しいベテランが多いので、とても大変な状況になります。途中から来てくれる講師も大変です。【中学校】

児童支援として、個別の支援と教科担任をしていた方が担任として講師の先生が見つからない学級へ入りました。
今までの個別指導もなくなり、そういった子どもの学習ができなくなりました。教科担任もできないので、担任の空き時間もなくなりました。補欠の先生がほぼいなくなりました。【小学校】

クラス担任以外(専科の先生)が学級担任になりました。つまり、専科教科がなくなり、クラス担任の空き時間は0になるわけです。5月の時点で4人欠員となりました。クラスで起きたトラブルも誰にも助けてもらえずオロオロする若手教員が増え、みんな疲弊しました。また、その状況がなぜ起こったのかを考えることをせずに、そんな状況でも校内研究授業や、人権研究授業が開催され、いったいこの学校はどこに向かっているか?怒りと悲しみでいっぱいでした。管理職に学級経営の重要性を学んでもらいたい。学力を向上させたいなら、学級経営を人それぞれではなく、学術的根拠に基づいてみんなで考えられる職員集団に導けるマネジメント力を持ってほしい。【小学校】

事務職員の病休代替が見つからず、他校の事務職員で回すことも。【小学校】

具体的に出ている影響は何か

1. 児童生徒へのしわ寄せ

年度当初は、学校に3名配置されていた少人数加配(国語や算数)が、休んでいる教師のクラスの担任に入るため、少人数加配がいなくなり、児童の学力保障が十分にできていない。【小学校】

私の代わりに授業をしてくれる先生が雇えないとのことで、生徒たちの習熟度別編成が無くなり、しわ寄せが生徒たちに行くことになりました。【小学校】

・子どもが不安定になる。
・子どもの異変に気づくのが遅くなる。【義務教育学校】

2. 休むことへの後ろめたさなど、精神的な負荷

女性の産休育休でも、講師が見つからずにギリギリまで働くことになることが多い中年度途中で男性が育休を取るのは、精神的にとても難しく、言い出しにくい。
また、3ヶ月だけというような取り方はさらに講師は見つからないので、不可能であると感じる。【小学校】

一昨年、8月半ばから産休に入りましたが、「年度途中からの代替を見つけるのは現状ではまず無理」と言われました。何とか、採用試験を受けられた方と話が付き、2学期から来ていただけましたが、対面の引き継ぎはできませんでした(夏休み中なので生徒への影響は少なくて済みました)。同教科の同僚が12月から産休予定ですが、まだ全く見つかっていないと聞きます。「5月出産(年度当初から産休)以外は迷惑」な風潮が辛いです。【高等学校】

代わりの教職員が見つからないと,産休・育休・病休取得の際の取得する側,学校側の負荷や負担が大きくなってしまう。よって産休・育休・病休の取得を希望する方が減り,私生活の充実の面や働きやすさという環境において課題が見られるようになるだろうと考える。学校に残っている方に仕事を任せることの負担は計り知れない。また,それを先回りして行っておくことの限界もある。私は育休を取得させていただいたが,講師を自ら探し出した。結果として見つかったが,そこまでしないと取得できないのであれば,取得を諦めるケースは少なくない。【小学校】

3. 休業の申請が通らない、時短勤務の人員が常勤に

代わりの先生が見つからないために、3ヶ月の育児休業の申請が通らず、1ヶ月に短縮されました。こんなことなら学年主任引き受けなければよかったと後悔しています。【小学校】

時短教員や非常勤が臨時(常勤)に繰り上がることも。
理由があって(育児や介護など)時短を選択していても年度途中で常勤に。
断れないだろうし、かと言って家庭の事情がそうそう変わることもないだろうし、大変。【小学校】

4. 人手不足による悪循環

臨時採用者や初任者が他の市よりも多く入ってきます。そして市で育てた若手は5年後に市を出ていかなくてはならず、その代わりに入ってくるのは臨時採用者や初任者。
もちろん臨時採用や初任者が良くないわけではありません。すごく頑張りますし、力のある方も多いです。それでも、一から育てたり、正規の研修をまだ受けていなかったりする方に偏るのは非常に危ういです。【小学校】

今後教員の数が少なくなり、採用試験の倍率が下がる中で、同じような水準の方が来ることが保たれるのかは少し疑問です。【小学校】

講師が足りないことで現場に負担が増して、それによって傷病者の数が増えて講師が足りなくなる、という悪循環にはまっているのが今の現場です。このような現場を目にした若い先生は、続ける自信をなくしてもおかしくありません。【小学校】

・「先生が見つからない」といって年度末に必ずバタバタする。
・一人当たりの授業数や分掌などの仕事などが増える。
・結果、生徒ときちんと向き合う時間が作れない→学校(生徒)が荒れて行き問題事象が増える→より仕事が増える→過労や心労で休職者が増える→でも代わりの教員は見つからない→残された人の仕事がさらに増える→・・・・
という負の無限ループになる。【高等学校】

5. 教員の質の担保、関係性構築の難しさ

生徒指導や教務主任など、担任を兼務すべきでない職員が兼務し、職員室に人がいない状態。トラブル対応、職員の出張や体調不良の休みの補欠などに対応する余裕がなくなった。自分か居住する県では採用されないような指導力不足教員が講師として採用され、さらに負担が増える結果に。非常勤が増え、連携や関係性の構築が難しい。【小学校】

まとめ

臨時講師が見つからない場合、多くの学校で管理職がその役割を代替するなど、今いる教職員でなんとかしのいでいる現状が伺えました。また、そのような状況を知っているからこそ、休業する教職員は心苦しい思いをしていることがわかります。本来、祝福されるはずの新しい命の誕生にさえ心から喜べない事態が起きていいます。
そのような状況でも、児童生徒へ影響が出ないよう、学校現場はなんとか努力してきましたが、明らかに限界を超えている状況です。
(参考:いわゆる「教員不足」について

<解決へ向けて>

人員不足の課題はすぐに解決されるものではありませんが、民間団体による取り組みや、来年度予算の概算要求として、教職員定数の改善を図るための加配や教員業務支援員の増加などが盛り込まれる動きもあります。

教員人材銀行
学校側が、どの教科の講師が必要かなどをウェブサイトから「銀行」へ照会すると、条件に合う講師候補者の情報を受け取れる仕組み。
教員人材銀行www.aichi-kyo-spo.com

小学校教科担任制、2000人加配 文科省・来年度予算 概算要求
小学校教科担任制、2000人加配 文科省・来年度予算 概算要求 www.kyoiku-press.com

また、これまでは一部の自治体への調査に留まっていた教員不足の実態に関して、今年度初めて、全国の自治体を対象に教員不足の実態を把握する調査を行う考えを文部科学省が示しました。

教員不足解消へ、文科省が2021年度に全国実態調査
教員不足解消へ、文科省が2021年度に全国実態調査 | 教育業界ニュース「ReseEd(リシード)reseed.resemom.jp

実態が把握されないことには、抜本的な改革を行うことはできません。
この実態調査が、教員不足解消に向けた課題解決の大きな後押しになることを期待します。



▼ 自由記述の回答一覧は、以下よりダウンロードしてご覧ください。 ▼

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