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【教職員アンケート結果】現行学習指導要領、あなたの学校の実態は?

  • メガホン編集部

学校経営や各教科の授業を行うにあたって、文科省が作成した教育課程の大綱的な基準である「学習指導要領」。現行の学習指導要領は、小学校・中学校の完全実施を経て、今年度から高等学校でも段階的な実施が始まっています。

Webアンケートサイト「フキダシ」では、学習指導要領の内容改訂に伴う学校現場の声を集めるため、現行学習指導要領における「改訂のポイント」についての調査を行いました。

今回フキダシでは、その調査で特徴的な結果が出た内容について、更に深掘りをしていくアンケートを実施しました。この記事では、「主体的・対話的で深い学び(アクティブラーニング)」「伝統や文化に関する教育の充実」「道徳教育の充実」「外国語教育の充実」の4項目についてのアンケート結果をまとめています。

※「主体的・対話的で深い学び(アクティブラーニング)」「伝統や文化に関する教育の充実」についてのアンケート結果は 前のページ をご覧ください。

アンケート結果

③道徳教育の充実

設問1 調査結果について、どう思う?

Q1. 現行学習指導要領における「道徳教育の充実」について、フキダシで実施したアンケートでは「良い影響が出ていると思わない」という回答が「良い影響が出ている」という回答を大きく上回る結果となりました。この結果について、あなたはどう思いますか。(任意)

柔軟な授業がしづらいからではないか

アンケート結果に納得です。只々、教科書に沿った授業が実施されています。導入前は、副読本だったのでそれなりにみんなで実践を交換していました。もったいないです。【小学校・教員】

道徳が教科化され、選定された教科書の使用が推奨されるようになってきたが、「答え」を導くような「道徳」に指導する側も、子ども側もお互いにプラスになっていないことが考えられる。【中学校・教員】

教員によってやり方が違うからではないか

道徳の授業は教師によって違いすぎると思う。良い授業ができていないと良い影響が出るのは難しいと思うし、すぐに影響がでることも難しいと思う。道徳教育の結果が出るのは、子どもたちが社会に出てからではないだろうか。【中学校・職員】

実情を反映していると思う。局所的に、一部の学校は熱心な事例も知っている。「道徳をしっかりやっていこう」となるかは、管理職のリーダシップが大きいと感じる。道徳担当の教師が声をあげてもなかなか研修など軽視されがち。子どもが変わる。という実感が湧きにくいのも教師のモチベーションが上がらない原因かも。【中学校・教員】

道徳の授業を充実させたい教員が少ないからではないか

とても妥当な結果だと思います。そもそも現場には「道徳教育を充実させたい」という意見より「道徳なんていらない」という声の方が多く、歓迎している教員の方が少数でした。ほとんどすべての生徒にとっては道徳の授業など成績(数字)に関係ないものでどうなってもいいものである、という認識でしょう。配慮が必要となる生徒にとっては苦痛でしかない時間でもあります。生徒にとっても教師にとっても、「良い影響」が出にくい内容だと言えます。【中学校・教員】

「良い影響が出ているとは思わない」という回答が多い理由として、「答えを導くような教科書に沿った内容を実施しているから」「教員によって授業内容やモチベーションが違うから」などの意見が寄せられました。

設問2 あなたの学校の実態は?

Q2. 現行学習指導要領における「道徳教育の充実」について、あなたの学校の実態を教えてください。

教員によってモチベーションに差がある

授業数はちゃんとこなしているが、授業数ばかり気にして、道徳の授業を嫌がる教員が多い。【中学校・職員】

年配者は、めんどくさいと考えている様子。若手の方が熱心で、関心が高い。が、若手はローテーション授業など、研修を通していろいろ知っているが、率先してそれをやりましょうとは、声をあげづらそう。【中学校・教員】

授業の直前になり、慌てて資料を読み込んでいる状態。時間的な余裕がないので、準備をほとんどせずに行っている。【中学校・教員】

適切な授業内容になっていない

以前は自治体独自の資料を使っていたので、意見が分かれる内容で、話し合いも活発だった。しかし、現在は教科書が提示され、内容が一方的なものになり、意見が対立することはなくなったので、こちらから考えを押し付けているようである。【中学校・教員】

差別はアカン!的な方程式を埋め込まれている感じがする。なんでアカンのか?何がアカンのか?を考える力が弱っているようにも思う。【高等学校・教員】

特別な教科化される事で、やらなければいけない事が増え、やる必要がある事をが必要な時にできなくなった。今、目の前の子どもたちがあいさつができていたとしても、あいさつの授業をやり、今目の前の子どもたちが信頼関係のトラブルが起きているのに、あいさつの授業をする。道徳という時数が少ないながらも、子どもたちの関係を結んできた時間が、機械的にやらなければいけない事をやる時間になってしまったから。【小学校・教員】

適切な学習評価がしづらい

道徳の教科化により、通知表への記述評価が始まったが、形式的な内容にとどまり、本当に意味のあるものになっているのか疑問。【小学校・教員】

評価については、ほとんどの教員が定型文の使いまわしをしており、形骸化している。【中学校・教員】

評価を通知表や指導要録に文面で書かなければならないのですが、そんなに一人ひとりが何を考えどう変容したかなんて、この忙しいのにキャッチできるわけがありません。結局、評価をとる資料集めみたいなことで、ワークシートを作ってそれに沿った授業をする羽目になります。本当は教科書の教材を使うのでなく、個性的な実践を創造して楽しく、深く、対話的にやりたいのですが、この多忙化の中でそれはとても難しいです。【小学校・教員】

工夫しながら実施しているが、難しさを感じる

道徳の研究校になり、2年間研究をしてきました。授業づくりは奥が深く、難しいと感じました。評価の仕方も30人を超えるクラスだと大変でした。研究指定を受け、しっかりと研究、専門家による助言を受けて、今では何とか形にはなったかなと思える程度ですが、若手の先生などは指導法などを伝えてはいますが難しそうにしています。【小学校・教員】

小さな学校なので、学年でローテーションで授業をしています。だから、1ヶ月に1回程度道徳の授業をします。1回の授業に向けて1ヶ月程度授業準備ができるので、余裕をもって準備できるので、なんとかマシな授業になるようあれこれ工夫できています。ただ、周りの先生を見ていると、優先事項が後回しになってしまって結局は直前で授業準備することになってしまっていて、教科書をなぞるだけの授業になってしまうことも少なくありません。【中学校・教員】

十分な準備時間が取れていないことや、形式的な授業内容になっていることが伺える回答が目立ちました。記述評価への難しさを感じる声もあり、一人ひとりに合わせた適切な評価ができていないのではないかと感じる人もいるようです。優先順位は高くないものの、工夫しながら取り組んでいるという声もありました。

③外国語教育の充実

設問1 調査結果について、どう思う?

Q1. 現行学習指導要領における「外国語教育の充実」について、フキダシで実施したアンケートでは校種によって「良い影響が出ていると思う」と答える割合が大きく異なる結果となりました。この結果について、あなたはどう思いますか。(任意)

小学校での外国語教育の内容を見直す必要があるのではないか

小学校外国語専科として5年間地元の小学校で指導にあたって、今回の結果と同様の現場での実感があります。理由として4点
1 小学校の外国語が教科化されたことが教員に共有されていない。できれば指導したくない。
2 小中連携が形骸化している。
3 児童や生徒が学習の時間としてとらえていない。学習法略を身につけられる指導になっていない。
4 言語習得の基本であり、素地である聞く読む力を育てるだけの時数が十分に設定されずに、発話を促す指導にいずれの教科書も偏っている。暗記では会話は成立しないということを指導者が理解して指導にあたる必要がある。【小学校・教員】

小学校段階での外国語教育については、強い必要性があるのか、また体系的に学習ができるのかと疑問が出てくる。他教科を含めた小学校で学習する内容について精査していく必要があるのではないだろうか。【中学校・教員】

当方が勤務している小学校段階では、母語である日本語であるコミュニケーションや思考を育くむ事が重要である。しかし、自分自身の気持ちを母語として表現したり、母語を使って論理的に思考する発達段階で、外国語を導入しても定着しない。【小学校・教員】

中学校では学習内容の増加が影響しているのではないか

中学校では過去から学習指導要領で外国語教育が実施されてきたのに、さらに充実と検討したときに「そう思う」が全くと言って評価されていないのは、今の外国語教育自体に入試のための学習としての側面が強すぎるからなのではないだろうか。【中学校・教員】

中学校では、教えなければならない単語の数が大幅に増えたり、高校で教えていた文法事項(仮定法など)も教えることになったりと、詰め込みしなければならないような内容ばかりが増えて、かつ知識理解にとどまらず、話す・聞くなどの言語活動の充実も求められているので、大変なのではないかと想像します。【高等学校・教員】

小学校では英語が専門ではない教員が担当したり、体系的な学びになっていないことが「良い影響が出ているとは思わない」の回答が多かった理由としてあがっていました。中学校では、教える内容が増えたことが影響しているのではないかと推測する声が集まりました。

設問2 あなたの学校の実態は?

Q2. 現行学習指導要領における「外国語教育の充実」について、あなたの学校の実態を教えてください。

教員やALT(Assistant Language Teacher:外国語指導助手)によって授業に違いがある

ALTに教員経験だけでなく、言語としての英語の知識がなく、授業設計段階で話し合いができない。また学校文化になじまず、授業だけが自分の勤務時間だと主張して行事などには協力的でない人もいる。【小学校・教員】

ATLの質に左右されるところがあります。自分で引っ張ってくれるATLもいれば、正直、世話をしなければならないような状況もあります。昨年はATLに加えて専任の日本人英語教員がついてくれていたので、教師の負担は少なかったのですが、今年はその加配がなくなり、みんな毎時間くたくたです。今年はATLが持ち込んだアクティビティが大外れなことが多く、大混乱をもたらしています。【小学校・教員】

高校ですが、多くの先生方、特に年配の先生方の授業スタイルは旧態依然で、教科書や文科省から求められていることが変わっても、ほとんど変わっていないさみしい現状です。【高等学校・教員】

授業準備のための時間が不足している

勤務校ではALTが外国語の授業では来てくるので生の外国語に触れるという点では充実していますが、ALTの先生との打ち合わせの時間もなく、主導は担任なので効果的な活用が出来ていないのが現状です。外国語の専科の先生がいればと思うのですが、そんな余裕も人員もありません。【小学校・教員】

ALTは中学校所属で、月に1回程度の訪問です。満足に教材研究もできず、ALTとの打合せも満足にいかないまま、授業が行われているのが現状です。【小学校・教員】

専門の指導者による授業やプログラムの実施をしている

手厚く、英語の授業専門の教師が来るように設定されている(中学校の英語教師が、小学校3校の外国語の授業を受け持っている)。そこにネイティブティーチャーも入り、手厚い。【小学校・教員】

自治体のサポートとして、外国語、外国語活動に対して、外部の日本人英語指導者がつくため、学習活動の設計の上でとても助かっている。専科教員も増えているようで、外国語は専門の人が担当する、という流れが作られていくように思う。ただし、それは人員が確保されればという条件つきなので、その点には不安が大きい。【小学校・教員】

市全体でALTは複数配置され、コミュニケーションを中心とした科目が独自に設定されている。また、中学3年生では英語能力がどの程度なのか、英検取得級相当とわかるようなテストを実施している。【中学校・教員】

1年生から国内留学プログラムを実施し、英語で環境問題等を学んでいる。月に一度。【高等学校・教員】

家庭の環境によって英語の学力や関心に差が開いている

学校外で英会話学校や英語塾に通っている児童は小学生で8割を超えている。学習経験が両極に偏っているため、学校の授業がつまらない、わからない児童が同程度いる。【小学校・教員】

本校は教育にお金をかけられる家庭が多く、外国語教育を早期に受け、点数を取り、検定に合格している生徒も多くいます。調査をしたわけではありませんが、中学1年生の理解度の高さは「小学校で学んできたから」というより「塾で習っているから」という理由の方が大きいような気がします。(具体的な数字は出せませんが、理解度の高い生徒は学校以外でも学んでいる割合が高いです)【中学校・教員】

英語嫌いな児童生徒が増えていると感じる

中学校に入る時点で英語嫌いな子がいる。また、中2・中3は学習内容が難しくなったことに加え、本文が現代的な課題について扱った内容になり、扱われる話自体が難しくなり、嫌いな教科・苦手な教科が英語だと答える生徒が増えている。【中学校・教員】

確かに英検をとる生徒は増え、知識を持っている生徒は増えていると思いますが、先日同僚の英語教員に聞くと「英語嫌い、英語疲れが増えている」と言います。英語の入試での資格活用が当たり前になったり、英語を学ぶことが特殊でなくなったため、入試の勉強はたくさんしていますが、楽しんで英語を学んでいる生徒は減っているのかもしれません。悲しいことです。【中学校・教員】

英語に関心を持つ児童生徒が増えていると感じる

英語力が高まったとは思わないが、海外に興味を持ったり、言語を楽しんだりしている生徒が増えたように感じます。英語力は低いが、海外への夢を語る生徒が一定数いるのは良いなぁと思う。それは文法より実用的な英会話を取り入れた影響が良い方向に出てるのではないかと感じる。【高等学校・教員】

外部の日本人英語指導者やALTがいることで英語の授業が充実するようになったという声がある一方で、担当者によって授業の質が変わってしまうことを懸念する声もありました。学習塾に通うことで、小学校段階から外国語の学力格差に広がりを感じるという声も寄せられました。

まとめ

現行の学習指導要領の中で、「主体的・対話的で深い学び(アクティブラーニング)」「伝統や文化に関する教育の充実」「道徳教育の充実」「外国語教育の充実」について、以前の調査結果に対する意見と、それぞれの勤務校の実態を聞きました。

どの内容についても共通して上がっていたのが、教員の業務量の多さ。「実践したくても忙しくてできない」という声が目立ちました。また、教員によって学習指導要領への理解や実践へのモチベーションに違いがあることも指摘されていました。

「主体的・対話的で深い学び(アクティブラーニング)」については、高校に所属する人からは良い変化を実感しているという声が比較的多く寄せられました。子どもの発達段階や学力によって、実践の難しさが変わると感じている人もいるようです。

「伝統や文化に関する教育の充実」「道徳教育の充実」については、多くの学校であまり実践が進んでいないことが伺えました。教員自身に興味関心があまりないことや、特定の価値観の押しつけになることへの抵抗感も影響しているようです。

「外国語教育の充実」については、塾に通う児童がいることで小学校段階から学力格差が広がっていることへの懸念や、中学校段階での学習内容が増えたことへの負担を感じる声が多く集まりました。


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