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【解説記事】文科省調査で過去最多の24万超え。不登校をめぐる現状と今ある選択肢とは?

  • メガホン編集部

不登校が認知されるようになり長く経ちました。しかし、今なお不登校の生徒は増えています。さらに、不登校の定義には含まれていませんが、その傾向にある子どもも多くいるとの調査もあります。

これに対して、一概に学校復帰だけを目指すものでない、多様な不登校支援のあり方がされつつあります。今、改めて不登校の現在の課題や実践などについて説明します。

文科省の不登校の定義

不登校とはどのような状態を指すのでしょうか。

文部科学省(文科省)は、不登校を「何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により、登校しないあるいはしたくともできない状況にあるために年間30日以上欠席した者のうち、病気や経済的な理由による者を除いたもの」と定義しています。

昭和時代では「学校ぎらい」を理由とした欠席を範囲としていましたが、平成10年以降「不登校」という言葉に置き換えられ、「学校に通いたいけど通えない」子どもたちまでを含めるものとなりました。

参考「不登校の現状に関する認識 – 文科省」(文科省,2009年以前公開,2022年10月31日参照)より
参考「生徒指導資料第1集(改訂版)第3章 不登校」(国立教育政策研究所 生徒指導研究センター,2009年3月公開,2022年10月31日参照)より

不登校の現状

令和3年の文科省の調査では、小・中学校における不登校児童生徒数を24万4,940人と発表しています。不登校の定義が現在と同じになった平成10年は小中学校を合わせて127,692人でした。長らく横ばいの後、ここ8年ほどで増加し今に至ります。

では、実際の学校の中には、どれくらい不登校の子どもがいるのでしょうか。

小学校では8万1498人で、全体の1.3%の児童が不登校にあたります。1学年3クラスの学校では学年に1人以上いる計算となります。中学校では16万3442人で全体の5%です。30人以上のクラスでは1クラスに1人はいる計算となり、学校・教員は必ず考えなければいけない問題であると言えるでしょう。

多くの子どもが直面する不登校について、より詳しく掘り下げていきます。

参考「令和3年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」(文科省,2022年10月27日公開,2022年11月2日参照)より
参考「不登校傾向にある子どもの実態調査報告書」(日本財団,2018年12月12日公開,2022年10月31日参照)より

「隠れ不登校」「不登校傾向」の児童生徒はどれくらいいる?

定義上当てはまらないけれど同様の苦しさを抱える子どもたちもいます。「隠れ不登校」「不登校傾向」などと言われる子どもたちです。

日本財団の2018年の調査では、「部分/教室外登校(保健室登校や一部の授業のみに参加する生徒など)」「仮面登校(ほぼ毎日、学校に通いたくないと思っている生徒)」に注目しました。教室に入らなかったり、登校していても遅刻や早退が多かったり、内心では「行きたくない」と感じていたりする中学生が推計33万人いるとしています。これは中学生の10人に1人程度が該当する数です。

参考「不登校傾向にある子どもの実態調査報告書」(日本財団,2018年12月12日公開,2022年10月31日参照)より

不登校の理由

なぜこれだけ多くの子どもが不登校、またはその傾向になるのでしょうか。文科省の調査では、要因を学校、家庭、本人のものと分けて、主に要因となったものについて調査しました。小中学校を通し「本人の無気力・不安」が最も多くおよそ半数にのぼりました。

文科省調査は各学校・教育委員会からの情報をもとにしていますが、2018年、日本財団はインターネットで中学生に直接調査をしました。文科省の調査と比較すると、「本人の無気力・不安」と似た質問項目で該当者が多い点で同様の結果が出ている一方、「先生とうまくいかない/頼れない」という先生との関係に関する項目では大きな差が見られたことが指摘されています。学校や教育委員会を経由した文科省調査においては、学校に要因がある不登校については、正確なデータがとれていないと見ることもできます。

要因については様々なケースがあり、また一つのケースでも複合的な要因があることも多いため、唯一の原因を特定することはできません。不登校児童生徒本人も原因を聞かれても分からないという場合もあり、現場では、児童生徒の個別の事例に向き合っていく必要があります。校種別の状況について、より詳しく見ていきましょう。

参考「令和3年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」(文科省,2022年10月27日公開,2022年11月2日参照)より
参考「不登校の原因・きっかけは? 2つの統計データから解説【2022年3月更新】」(通信制高校ナビ,2022年3月更新,2022年10月31日参照)より

小学校

文科省調査によれば、小学校では、不登校の主な要因を1つあげてもらった場合、約半数を占める本人の無気力・不安についで、親子関係が13.2%、生活リズムの乱れ・あそび・非行が13.1%、ついでいじめ以外の友人関係の問題が6.1%でした。また、学年が上がるごとに不登校の数が増える傾向にあります。

参考「令和3年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」(文科省,2022年10月27日公開,2022年11月2日参照)より

中学校

中学校では、小学校同様約半数を占める本人の無気力・不安についで、いじめ以外の友人関係の問題が11.5%、生活リズムの乱れ・あそび・非行が11%、学業の不振と親子関係が6%程度でした。悩みの対象が親子関係から友人関係へと移行してきているのが伺えます。また、出席認定がされるか、受験に不利にならないか、など進学に関する不安も生まれる時期です。

進学に伴う学習や生活の変化によっていじめや不登校が増加する「中1ギャップ」が広く認知されています。文科省は小学校高学年教科担任制を導入するなどの対策を打ちましたが、国立教育政策研究所は安易な表現に振り回されず、児童生徒の課題を見据える必要性を指摘しており、中1ギャップという問題の捉え方に注意を促しています。

参考「令和3年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」(文科省,2022年10月27日公開,2022年11月2日参照)より
参考「初中教育ニュ-ス(初等中等教育局メ-ルマガジン)第428号【臨時号】」(文科省,2021年12月24日公開,2022年10月31日参照)より
参考「「中1ギャップ」の真実」(文科省,2014年4月公開,2022年10月31日参照)より

高等学校

高校では、無気力・不安を理由とする不登校が最も多いです。意識調査の研究では、「ねむい・体がだるい」「勉強したくない」「授業がわからない」が該当の多い項目で、登校したくない気持ちがありつつ登校している生徒でも同様の回答が多く選ばれていました。

2000年以降減少傾向ではありますが、高校では中退というケースもあります。留年や通信制への転校など、おかれる状況も様々で、実態把握の難しさがあります。

参考「令和3年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」(文科省,2022年10月27日公開,2022年11月2日参照)より
参考「高校生にみる不登校傾向に関する研究 : 意識調査を通して」(山下みどり, 清原浩,鹿児島大学教育学部教育実践研究紀要,2004)より

不登校児童生徒の学ぶ選択肢とその実態

増え続ける不登校への対応として、国や教育委員会等ではどのような施策がとられているのでしょうか?また、実際に不登校になった児童生徒や家庭にとっては、現状どのような選択肢があるのでしょうか?

文科省は「不登校」をどう捉えているのか?

多様な要因・背景から、結果として不登校状態になっているため、「問題行動」と判断してはならないという認識があり、文科省は、令和元年の「不登校児童生徒への支援の在り方について」という通知で、

「学校に登校する」という結果のみを目標にするのではなく,児童生徒が自らの進路を主体的に捉えて,社会的に自立することを目指す必要があること。

としています。必ずしも学校への復帰をゴールとはしておらず、学業の遅れや進路選択の際の不利益を被りかねないことなどのリスクも指摘しつつも、多様な関係機関との連携、家庭への支援を基本的な考え方としています。

参考「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」(文科省,2019年10月25日公開,2022年10月31日参照)より

教育機会確保法

不登校に関連する法律としては、2016年に教育機会確保法というものが施行されました。不登校児童生徒を対象とする教育の機会の確保を推進しようというものです。学校環境の整備、民間団体との連携などを自治体に求めています。

フリースクール等民間団体の支援については直接的に内容としては盛り込まれませんでしたが、文科省は検討会議を設け、議論を続けています。

参考「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律の公布について」(文科省,2016年12月22日公開,2022年10月31日参照)より

支援機関で学習する児童生徒の出席扱い

学校外の機関で学ぶ場合、出席の判断はどのようになるのでしょうか。

文科省はその要件を「保護者と学校との間に十分な連携・協力関係が保たれていること。」「当該施設に通所又は入所して相談・指導を受ける場合を前提とすること。」など複数まとめています。しかし、「適切な支援を実施していると評価できる場合,校長は指導要録上出席扱いとすることができる。」とされ、判断は校長裁量となっています。全国に共通するような明確な基準は示されておらず、運用実態は自治体ごと、学校ごとに大きく差がある状況です。

参考「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)(別記1)義務教育段階の不登校児童生徒が学校外の公的機関や民間施設において相談・指導を受けている場合の指導要録上の出欠の取扱いについて」(文科省,2019年10月25日公開,2022年10月31日参照)より

フリースクール

文科省は、「一般に、不登校の子供に対し、学習活動、教育相談、体験活動などの活動を行っている民間の施設」と定義しています。民間の運営による主体性・自主性によって、規模や活動内容は多岐に渡ります。カリキュラムや授業があるところもあればないところもあり、公教育と異なる教育理念や教育方法を採り、学校への復帰にこだわらない団体もあります。比較的少人数で、それぞれが自由に過ごしたり、子ども中心の活動や学習のサポートなどを行っている場合が多いです。

参考「フリースクール・不登校に対する取組」(文科省,2022年10月31日参照)より

適応指導教室(教育支援センター)

適応指導教室(または教育支援センター)は、学校生活への復帰を目指しその支援をするために、学校以外の場所や学校内の空き教室等に設置されています。市町村の教育委員会が設置する場合がほとんどです。個別の学習支援の他、スポーツや芸術、調理体験や自然体験など集団での活動もされています。

参考「「教育支援センター(適応指導教室)に関する実態調査」結果」(文科省,2019年5月13日公開,2022年10月31日参照)より

適応指導教室の実態と問題点(教育支援センター)

令和元年の段階で4割の自治体で設置できていません。適応指導教室の在籍者は、不登校の児童・生徒の7.5%、12.9%にとどまり、ニーズに答え切れていない現状です。設置できていない自治体のうち、設置予定が6%、設置に関する検討中が35%です。予算や場所の確保が問題となっています。

また、以前より減ってきてはいますが、「社会的自立」が重要という文科省に対し、「学校復帰」を目標にしてしまっている適応指導教室が多いことが課題とされています。原因は職員に退職教員が多いことなどが挙げられています。

参考「「教育支援センター(適応指導教室)に関する実態調査」結果」(文科省,2019年5月13日公開,2022年10月31日参照)より

不登校特例校

不登校特例校は、学校と同じように出席扱いになる教育機関です。設置は努力義務とされており、2022年4月現在、全国で21校(うち公立学校12校、私立9校)しか開校していないのが現状です。

熱心な取り組みもあり、例えば星槎名古屋中学校は、教師全員がカウンセラーの資格を持っています。共感理解教育を掲げ、生徒もコミュニケーションや心理学を学ぶことができ、生徒同士で助け合える「ピア・チューター」の育成も行っています。

岐阜市立草潤中学校では、個に合わせた多様な学び方を徹底されています。オンライン学習によって家や学校内のさまざまな場所で学習ができ、日々の過ごし方や担任まで個々に応じて見直し、変更することができます。

参考「不登校特例校の設置者一覧」(文科省,2022年更新,2022年10月31日参照)より
参考「学校ブログ 12期ピアチューター研修(養成講座)が行われました!」(星槎名古屋中学校,2022年8月27日公開,2022年10月31日参照)より
参考「注目の不登校特例校「学校らしくない」草潤中の今」(東洋経済オンライン,2021年12月7日公開,2022年10月31日参照)より

まとめ

不登校という社会課題に対し、社会的な認知も進み、教育機会確保法が制定されたことで学校や民間団体と学校や行政との連携が始まりました。しかし、不登校傾向も含めると40万人とも言われる子どもたちの数に対し、公的機関・民間機関を合わせても「学校にかわる居場所・学びの場」は足りておらず、学習権が保障できていないことが大きな課題です。社会的自立を目標として、多様な選択肢のもとで子どもが学ぶためには、様々な機関の立ち上げや相互の連携が必要です。フリースクールでの学習が出席・単位として認定されたり、適応指導教室の設置が進み学校を中心としない学習の支援が整備されたり、不登校特例校の設置の拡大がなされることなどが求められています。また、これらは現在の学校が、不登校状態にある子ども達を包摂できていないということでもあり、学校がもっとインクルーシブなものになる余地はまだあります。不登校であっても様々な場所や方法で学ぶことができる「学びの選択肢」が拡大され、そもそも不登校にならなくていいように既存の学校が変容していく、その両輪が回り、噛み合っていくことが求められています。

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