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【解説記事】コメントに悩む通知表…そもそも無くていい? 学校の「評価」の仕組みと最新情報

  • メガホン編集部

「通知表を無くした学校」の取り組み例を紹介

通知表を無くした学校

通知表について」では、文科省におけるその位置付けから、現場で通知表作成に携わっている先生たちの声まで、通知表を様々な角度からみてきました。

繰り返しになりますが、通知表の発行は任意であり、発行しなくて法的な問題ありません。そこで本項では、実際に通知表を出していない学校についてみていきましょう。

長野県伊那市立伊那小学校

最初にご紹介するのは長野県の伊那市立伊那小学校。半世紀以上前の1956年に通知表を廃止し、現在に至っています。

しかし伊那小学校の特徴は、たんに通知表がないことだけではありません。伊那小学校には、通知表だけでなく、時間割やチャイムもありません。それは、教育の中心に探求型の総合学習を据えているからです。

土台となっているのは、伊那小学校の子ども観である「子どもは自ら求め、自ら決め出し、自ら動き出す力を持っている」。この子ども観に立ち、子ども主体の教育の実践を目指した結果が、総合学習中心の教育課程であり、通知表、時間割、チャイム等の撤廃でした。

  • 『初めに子どもありき』の教育に、一律の基準に沿った数字評価はなじまない
  • (チャイムや時間割は)興味を持って没頭している子どもたちの活動を阻害したり、回り道したからこそ実感できる大事なことに至れなくなったりするおそれがある

なお、通知表がないからと言って、本人や保護者に対し成長の様子や評価を共有しない、ということではありません。伊那小学校では、学期ごとの面談のほか、年度末には子どもたちによる学習発表会を実施して、学習の成果を披露する機会を設けているということです。

引用「60年通知表がない公立小の凄い「探究型総合学習」 」(東洋経済,2021年11月22日公開,2022年9月12日参照)

桐朋女子中学校・高等学校

続いて紹介する桐朋女子中学校・高等学校(桐朋女子)は、東京都調布市にある私立の中高一貫校です。

桐朋女子中高は、1970年に通知表を廃止しましたが、その理由について同校の記念誌には以下のように述べられています。

(通知表の欠陥は)「抽象的な点数によって、重大な判決を生徒に告げ、それによって(略)烙印を押されてしまう。しかもそれを見る親たちは、その数字の裏に隠されているものを見ようとは決してしない」

代わりに桐朋女子中高では、ことばによるコミュニケーションを介した成績のフィードバックを行っています。6年間で一冊の「成績伝達面談ノート」に、面談で担任から伝えられた内容を、生徒自身で書き込んでいくのです。

引用「テストはレントゲン」(桐朋女子中学校・高等学校,2022年7月2日公開,2022年9月12日参照)
参考「「定期試験なし、通知表なし」を50年前から続ける学校」(首都圏模試センター,2020年5月14日公開,2022年9月12日参照)

神奈川県茅ヶ崎市立香川小学校

最後に紹介する神奈川県茅ケ崎市立香川小学校では、2020年度に通知表を廃止しています。

「評価とは何か、評価はどうあるべきかを突き詰めた2年間」を経て、現場の教員たち全員で辿りついた選択でした。

参考「通知表をやめた公立小学校、2年後どうなった? 子ども同士を「比べない」と決めた教員たちの挑戦」(47NEWS,2022年4月21日公開,2022年9月12日参照)

このように、通知表を無くした3校を見てくると、この3校には共通点があることに気付きます。それは、「通知表に問題がある」から廃止したのではなく、自分たちの理想とする教育を突き詰めた結果として、「通知表は必要ない」という結論に至っている、ということです。

まとめ

この記事では、学校における評価制度や通知表について、様々な角度から解説してきました。

学校には、分析的に「評価(観点別評価)」をおこない、それを総括して「評定」を実施すること、そしてまたその結果を指導要録へ記録することが義務付けられていました。また評価に際しては、「目標に準拠した評価(絶対評価)」をおこなうこととされていました。

一方、通知表については法令上の規定はなく、各学校が任意で発行しているもの。その実態について、School Voice Projectで実施した「【教職員アンケート結果】「通知表」どうしてる?」のアンケートを紹介しました。

しかし、通知表が「任意」とは言っても、通知表のない学校は多くはありません。記事では最後に、そのような学校の実践例や通知表を無くすまでの過程を紹介しました。

2020年から2022年にかけ実施された学習指導要領の改訂においては、学習評価をめぐって指摘されている様々な課題に挑み、「学習評価を真に意味のあるものとする」のだ、という文科省の意向が度々示されてきました。最後に、これからの評価の道しるべとなるその基本方針を掲げ、結びとしたいと思います。

  1. 児童生徒の学習改善につながるものにしていくこと
  2. 教師の指導改善につながるものにしていくこと
  3. これまで慣行として行われてきたことでも、必要性・妥当性が認められないものは見直していくこと

引用「新学習指導要領の全面実施と 学習評価の改善について」p33(文科省初等中等教育局教育課程課,2022年9月12日参照)

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メガホン編集部

NPO法人School Voice Project のメンバーが、プロやアマチュアのライターの方の力を借りながら、学校をもっとよくするためのさまざまな情報をお届けしていきます。 目指しているのは、「教職員が共感でき、元気になれるメディア」「学校の外の人が学校を応援したくなるメディア」です。

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