【教職員アンケート結果】「通知表」どうしてる?
全国のほとんどの学校で学期末に配布されている通知表。しかし、指導要録や出席簿とは異なり、実は法的には作成義務はなく「校長の裁量で作成する、保護者への学習状況連絡票」という位置付けになっています。
一方で、通知表についての学校現場の実態はどのような状況なのでしょうか。全国の教職員の方に、それぞれの学校の現状について伺いました。
アンケートの概要
School Voice Project では、WEBアンケートサイト「フキダシ」に登録する教職員の方を対象に、通知表についてアンケートを取りました。
WEBアンケートサイト「フキダシ」は、現在ユーザー登録を受け付けています。教員の方だけではなく、事務職員や用務員、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー、ICT支援員の方など、学校現場で働く様々な立場・職種の方が対象です。
■ テーマ :「通知表」どうしてる?
■ 対象 :全国の小〜高校年齢の児童生徒が通う一条校に勤務する教職員
■ 実施期間:2022年2月26日(土)〜2022年3月21日(月)
■ 実施方法:インターネット調査
■ 回答数 :66件
アンケート結果
設問1 通知表の頻度は?
Q. あなたの勤務校では、通知表をどの頻度で出していますか。
設問2 通知表の形式は?
どのような形式ですか。
※数値評価は「よくできた」「がんばろう」などの到達度別評価も含みます。
※道徳や総合などの文章表記のみの教科については除いてお答えください。
設問3 通知表、どう思う?
Q. 通知表に関する疑問やモヤモヤ、または感じている意義についてなど、ご自由にご意見をお書きください(任意)
※ 全回答の中から抜粋して掲載しています。
※ 個別の意見の括弧書きはそれぞれ【校種、職種、通知表の回数】を表しています。通知表が数値評価のみの場合は【校種、職種、通知表の回数(数値評価のみ)】と記載しています。
※ 回答を「負担感」「地域差」「意義」「評価軸」の4つの軸にわけて、それぞれの軸にあてはまると思われるものを抜粋しています。
精神的、体力的な負担がある
説明責任があるため、成績処理から入力、印刷後の確認など慎重に作成している。1をつけずに空欄表記も希望により可能であるという制度のため、不登校などの家庭にその都度(教科ごとにも)確認作業が入り煩雑。毎学期末、通知表作成のための教育活動だと感じる。終業式・修了式後のクレーム対応(志望校合格のために評定を上げてくれ、他校では要求したら上げてくれている、授業に出ていないし提出物も出していないし点数も良くないが1ではなく2にしてくれなど)が負担。電話が鳴ると身構えます。【中学校、教員、3回(数値評価のみ)】
校務支援ソフトで随分と楽になりました。直感に頼らず変化を見とることができます。【小学校、教員、3回】
2期制のため、年間2回の作成です。前期は個人面談があるので数値のみで、後期は所見欄があります。所見はだいぶ減ってきたとはいえ、高学年では学習200字、道徳100字、総合的な学習100字と、1人あたり400字が基準です。現在37名のクラスですが、やはり時間がかかります。加えて作成時間を勤務時間内に収めることは難しく、休日を使って書きます。間に合わない時は、年休を取って帰宅し、籠もって書くこともあります。この時期は寝不足気味になり、体調も不安定です。加えて、添削する管理職によって文章の形式や表記がバラバラで、書く度に「もっと具体的」や「課題と指導の様子が伝わるように」等のリクエストがあります。特に初任者は「登竜門」のように、真っ赤になって返って来ることも多々。内容云々というより、「ここで苦労しないとあとから大変(何のこと?)」という訳の分からない揚げ足取りも見られ、本当に何のためにやってるんだろうという気持ちになります。
【小学校、教員、2回】
私の住んでいる市町村では3学期制ですが、最近通知表の所見をなくしていこうという動きが盛んになっています。働き方改革の一環です。通知表を渡す前に保護者との個別懇談があるから、そこで様子をしっかり伝えることを大事にする。保護者も子どもも特に問題は起きていません。来年度からは所見は年度末のみになる予定です。担任の立場からしたら残業時間が減るので非常にありがたいです。【中学校、教員、2回】
仕事量が多すぎる。支援学級の子がクラスにいた場合、支援級担任は国語算数しか教えていないので、交流級の担任の方が負担が大きい。所見に時間がかかりすぎる。道徳の評価はなくしてほしい。専科と支援級、普通学級の担任で仕事量が違いすぎて、帰る時間が違いすぎて不公平。【小学校、教員、3回】
地域によって差がある
ここの学校は所見があるけど、あっちの学校では所見がない、のような差のある状態は良くないと思います。【小学校、教員、3回】
「統合型校務支援システム」が来年度からようやく導入されます。今までは、市内の小中学校、各校独自の書式でバラバラでした。異動先でだいぶ苦労した例も絶えません。市内、ようやく統一されますが、県内、自治体ごとにバラバラで、市外へ異動だとまた書式が変わってしまいます。いい加減、こういった生徒の教育成果に関わる事務(成績処理・通知票・指導要録・調査書など)、校務全般は、全県・全国統一すべきだと思います。【中学校、教員、3回】
私の勤める市では、「各校の自主性を重んじる」ため、異動すると形式がガラッとかわり、その対応が大変だった。教科書も同じであることから、形式等、同じにできないものかと疑問に思っている。【小学校、教員、3回】
中学校です。学校によって評価基準が違うので、文科省で統一してほしい。他の学校に通う同じような実力の生徒が、学校の違いだけで評価が変わる可能性もある。AAAなら4はダメとか、そういう基準も全国で統一してほしい。印刷する手間がかかるため、デジタル化してほしい。成績をパソコンで見られるようにすれば仕事が減り、楽になると思う。【中学校、教員、4回以上】
通知表の意義を再考する必要がある
観点別の数値での評価は、どうしても数値の高い低いのみにこだわってしまう(親も子も)。どんなに所見でその子の良さや伸びを伝えようとしても難しい。通知表の評価だけが全てではないのに・・。そして、総合、道徳、中学年ならば外国語活動と分かれての記述欄。短い文章で表現することになるので、本当にあれでこどもの様子が伝わるのか。本当にあんなにたくさん書く必要があるのか?と思っています。【小学校、教員、2回】
中学校は、高校入試を考えると仕方がないかもしれないが、そもそも数字で評価しなければならないことに違和感がある。特に、主体的に学ぶ態度は、なかなか評価しづらい。よい評価をもらうために、主体的に学ぼうとする生徒も少なからずいるため、本来の学びの意欲につながっていないように思える。数字だけでなく、さまざまな評価の仕方があってよいと思うが、そうなると、1人で200人近い生徒を数字以外で評価するのは、時間や労力を考えたときに無理なので、今のやり方でやるしかないとも思う。【中学校、教員、3回】
所見は3学期のみ。1,2学期は懇談があることを理由に「よくできた」「できた」「がんばろう」のみの評価です。受け取った子どもたちは、評価の項目の文章も読まず、意味もわからず、ただ丸の数を数えて増減に一喜一憂。喜ぶのも悲しむのも「親に褒められる」「親に怒られる」「何か買ってもらえる」などが理由で、自分の学びがどうよくなったのか、これから何をがんばるべきなのか、などはほとんど考えていないように思います。学びが「自分ごと」ではないのです。保護者も通知表を見て、我が子にいったいどんな力がついたのか、は分かりにくいでしょう。そもそも学期の終わりにだけ自分の学びや我が子の学びを3段階で評価されるのを知らされるだけなんて…。評価は誰の何のためにあるのかをもう一度問い直し、子どもが学びを「自分ごと」と捉えられる評価(フィードバック)できるツールが必要ではないかと考えます。【小学校、教員、3回】
勤務校では毎学期の終わりに懇談資料として各教科の評定を保護者の方にお渡ししています。(道徳や総合の評価については記されていないものの、)同じような内容なのにわざわざ通知表を出す必要があるのかなと思います。
何よりも勤務校では(他の学校では違うかもしれませんが、)ハンコ文化が強く残っていて、校長印と担任印を押すことも負担かなとも思います。と言いつつ、私自身これまで学校でもらった通知表を残してきているので、なくなってしまったら無くなってしまったで寂しくも感じるかもと思いました。。。【中学校、教員、1回(数値評価のみ)】
来年度から、3学期のみ所見を書くことに学校評価では決まったが、次の校長がOKを出せば、そうなるが、そうではなかったらこれまで通り、3回所見を書くことになると言われ、なんとも言えない気持ちになっている。所見が子どもにとっても、先生にとっても、よいものになっているのか疑問。【小学校、教員、3回】
評価軸を作るのが難しい
絶対評価と言いながら、評定平均が3.1前後になるようにしないといけない。そこに合わせたら合わせたで「3が多すぎる」だ「もう少し4か2を増やせ」だと管理職から差し戻され、毎回毎回毎回毎回付け直しています。もはやただの相対評価でしかありません。何のための絶対評価なんでしょうか。【中学校、教員、3回(数値評価のみ)】
主体的に参加していた!という評価に困りました。数値だけの評価も心が痛むことが多かったです。所見の文字数を学年で合わせるように言われました。多いものを減らすことにはとても苦労しました。伝えたいことが伝わらないもどかしさがありました。合わせることの意味も分かりませんでした。【小学校、教員、3回】
絶対評価を謳っておきながら相対評価(管理職がAの数を指示。職員向けの通知表資料には、堂々とクラスの○%まで書かれている)所見に書く内容を制限されすぎて適切なフィードバックが機能していない。ネガティブなことは基本書かない、Aの内容を中心に、担任の目を通したその子の姿を伝えるなど、到底不可能と思うほどに書きづらい。【小学校、教員、3回】
数値評価に関しては、それぞれ教職員個人の経験や思いなども強く影響を受けて、年度や管理職がかわることで変更されることがある。できるだけ一貫したものをと考えているが、総括している担当が曖昧になると意見が左右されてしまう。校長の裁量で発行されるべき通知表は市内統一という形式を取りながら、数値評価に関することが中途半端に現場に任されている。【中学校、教員、3回】
まとめ
アンケート結果から、小学校では69%、中学校では59%、高等学校では83%が年に3回通知表を発行していることがわかりました。
また、評価の形式については、「数値評価+所見」という回答が小学校で59%、中学校で46%、高等学校で17%、「数値評価のみ」という回答が小学校で0%、中学校で41%、高等学校で83%という結果になりました。
個別の意見の中では、特に所見の作成や修正に時間を要しており負担が大きいという意見や、学校によって形式が異なることを懸念する意見がありました。また、現状の所見が本当に子どものために意味のあるものになっているのかについて疑問を持つ意見や、評価についての明確な評価規準がなく、絶対評価を謳いつつも現場の実態として相対評価での評価を促されることに疑問を持つ意見も見受けられました。
一方で、所見の回数を減らす、あるいは面談に替えているケースや、校務支援システムを利用することにより効率的に通知表を作成しているケースもあるようです。
そもそもの通知表の意義や現場の実態を考慮した評価方法、学校における働き方改革の視点も含めて、議論が進んでいくことを期待します。
▼ 自由記述の回答一覧は、以下よりダウンロードしてご覧ください。 ▼
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