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不登校が認知されるようになり長く経ちました。しかし、今なお不登校の生徒は増えています。さらに、不登校の定義には含まれていませんが、その傾向にある子どもも多くいるとの調査もあります。
これに対して、一概に学校復帰だけを目指すものでない、多様な不登校支援のあり方がされつつあります。今、改めて不登校の現在の課題や実践などについて説明します。
不登校とはどのような状態を指すのでしょうか。
文部科学省(文科省)は、不登校を「何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により、登校しないあるいはしたくともできない状況にあるために年間30日以上欠席した者のうち、病気や経済的な理由による者を除いたもの」と定義しています。
昭和時代では「学校ぎらい」を理由とした欠席を範囲としていましたが、平成10年以降「不登校」という言葉に置き換えられ、「学校に通いたいけど通えない」子どもたちまでを含めるものとなりました。
参考「不登校の現状に関する認識 – 文科省」(文科省,2009年以前公開,2022年10月31日参照)より
参考「生徒指導資料第1集(改訂版)第3章 不登校」(国立教育政策研究所 生徒指導研究センター,2009年3月公開,2022年10月31日参照)より
2023年度の文科省の調査では、小・中学校における不登校児童生徒数は過去最多の34万6482人と発表されました。前年度からは47,434人の増加となります。不登校の定義が現在と同じになった平成10年の時点では、小・中学校を合わせて127,692人でしたが、ここ10年ほどは増加の一途を辿っています。
では、実際の学校の中には、どれくらい不登校の子どもがいるのでしょうか。
小学校では13万370人で、全体の2.1%の児童が不登校にあたります。1学年3クラスの学校では学年に1人以上いる計算となります。中学校では21万6112人で全体の6.7%です。30人以上のクラスでは1クラスに2人はいる計算となり、学校・教員は必ず考えなければいけない問題であると言えるでしょう。
多くの子どもが直面する不登校について、より詳しく掘り下げていきます。
参考「令和5年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」(文科省,2024年10月31日公開,2025年5月15日参照)より
定義上当てはまらないけれど同様の苦しさを抱える子どもたちもいます。「隠れ不登校」「不登校傾向」などと言われる子どもたちです。
認定NPO法人カタリバによる2023年の調査では、「部分/教室外登校(保健室登校や一部の授業のみに参加する生徒など)」「仮面登校(ほぼ毎日、学校に通いたくないと思っている生徒)」に注目しました。教室に入らなかったり、登校していても遅刻や早退が多かったり、内心では「行きたくない」と感じていたりする中学生が推計41万人いるとしています。これは中学生の約5人に1人が「不登校」または「不登校傾向」に該当することを示しています。
参考「不登校に関する子どもと保護者向けの実態調査」(認定NPO法人カタリバ,2023年12月9日公開,2025年5月15日参照)より
また、実質的には不登校の子どもが教員や学校の判断に「長期病欠」とカウントされている事例も報告されています。
記事によると、行き渋る子どもが頭痛や腹痛を訴える場合、病欠とするか不登校による欠席と捉えるかは、「保護者や担任の判断」(中日新聞)とされ、「不登校かどうかの判断が学校ごとに異なる可能性はあり得る」(熊本市教育委員会,熊本日日新聞による)とも述べられています。
引用「不登校最多、出欠判断の基準はあいまい 学びの場多様化、実態反映せず」(中日新聞,2022年10月28日公開,2025年5月20日参照)より
引用「不登校のはずの娘が「長期病欠」扱い 明確な基準なく、学校が「総合的に判断」 数字に表れない〝隠れ不登校〟も存在か」(熊本日日新聞,2022年12月21日公開,2025年5月20日参照)より
実際、前述の文科省調査では「病気による長期欠席者」は2023年度に105,838人となっていますが、2013年度の文科省調査では、小・中学校における長期入院児童生徒数は全国で2,769人と報告されており、大きな乖離が見られます。近年のデータに絞っても、「病気による長期欠席者」は2021年度から2023年度の2年間で約5万人増加しているなど、このすべてが純粋な病気のみによる長期欠席とは考えにくく、本来「不登校」とカウントされるべき子どもが「病気による長期欠席」として報告されている可能性が示唆されています。
参考「長期入院児童生徒に対する教育支援に関する実態調査の結果(概要)」(文科省,2025年5月20日参照)より
なぜこれだけ多くの子どもが不登校、またはその傾向になるのでしょうか。
文科省による2023年度の学校に対する調査では、「長期欠席者の状況」で「不登校」と回答した不登校児童生徒全員につき、教職員が当てはまるものをすべて回答する形式をとっています。
同調査によると、小学校・中学校・高等学校共通して、「学校生活に対してやる気が出ない等の相談があった」の選択肢の回答割合が最も多く、いずれも3割を超えています。ついで「生活リズムの不調に関する相談があった」、「不安・抑うつの相談があった」が2割ほどと多く、「学業の不振や頻繁な宿題の未提出が見られた」と続きました。
学校から見た不登校の要因には、校種を問わず一定の傾向があることがわかりますが、校種や学年によってその実態は様々です。例えば中学校では、進学に伴う学習や生活の変化によっていじめや不登校が増加する「中1ギャップ」が広く認知されています。文科省は小学校高学年教科担任制を導入するなどの対策を打ちましたが、国立教育政策研究所は安易な表現に振り回されず、児童生徒の課題を見据える必要性を指摘しており、中1ギャップという問題の捉え方に注意を促しています。また、高等学校では、2000年以降減少傾向ではありますが中退というケースもあります。留年や通信制への転校など、おかれる状況も多種多様で、実態把握の難しさがあります。
参考「令和5年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」(文科省,2024年10月31日公開,2025年5月15日参照)より
参考「「中1ギャップ」の真実」(文科省,2014年4月公開,2025年5月20日参照)より
参考「高校生にみる不登校傾向に関する研究 : 意識調査を通して」(山下みどり, 清原浩,鹿児島大学教育学部教育実践研究紀要,2004)より
2024年3月には、公益社団法人 子どもの発達科学研究所から文部科学省委託の「不登校の要因分析に関する調査研究 報告書」が発表されました。
不登校のきっかけ要因を学校、家庭、本人それぞれを対象に調査した同資料によると、「学業の不振」、「宿題の提出」については、三者の回答割合が比較的近い値となりました。一方で、「いじめ被害」、「教職員への反抗・反発」、「教職員からの叱責」等については、教師の回答がわずか数%であるにもかかわらず、児童生徒・保護者は3割、4割が回答するなど、割合に大きな差がみられました。
また、「体調不良」、「不安・抑うつ」、「居眠り、朝起きられない、夜眠れない」といった心身不調・生活リズム不調についても、児童生徒や保護者の約7~8割が回答しているのに対して、教師の回答割合は2割弱と、低く留まりました。
不登校については様々なケースがあり、また一つのケースでも複合的な要因があることも多いため、唯一の原因を特定することはできません。教職員に対する調査だけでは視点に偏りが生じうるため、現場で児童生徒の個別の事例に向き合っていく必要がある一方で、不登校児童生徒本人や家庭の実態把握が今後ますます重要になりそうです。
参考「文部科学省委託事業 不登校の要因分析に関する調査研究」(公益社団法人 子どもの発達科学研究所,2024年3月公開,2025年5月15日参照)より
増え続ける不登校への対応として、国や教育委員会等ではどのような施策がとられているのでしょうか? また、実際に不登校になった子どもや家庭にとっては、現状どのような選択肢があるのでしょうか?
多様な要因・背景から、結果として不登校状態になっているため、「問題行動」と判断してはならないという認識があり、文科省は2019年の「不登校児童生徒への支援の在り方について」という通知で、
「学校に登校する」という結果のみを目標にするのではなく,児童生徒が自らの進路を主体的に捉えて,社会的に自立することを目指す必要があること。
としています。必ずしも学校への復帰をゴールとはしておらず、学業の遅れや進路選択の際の不利益を被りかねないことなどのリスクも指摘しつつも、多様な関係機関との連携、家庭への支援を基本的な考え方としています。
参考・引用「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」(文科省,2019年10月25日公開,2022年10月31日参照)より
COCOLOプラン
2023年3月には「誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策(COCOLOプラン)」が発表され、不登校により学びにアクセスできない子どもたちをゼロにすることを目指して、
という方針を示しました。具体的には、不登校特例校(学びの多様化学校)や校内教育支援センターの設置促進、1人1台端末を活用した心や体調の変化の早期発見の推進、教師やスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーなどから成るチーム学校による、早期支援の強化等が目指されることとなりました。
2023年6月に閣議決定された教育振興基本計画において、各都道府県・政令指定都市で1校以上を設置し、将来的には全国で300校の設置を目指すことが決定されました。また、同年8月に不登校特例校は「学びの多様化学校」へと改称されました。
参考・引用「誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策(COCOLOプラン)(文科省,2023年3月31日公開,2025年5月15日参照)より)
参考「第4期教育振興基本計画」(文科省,2023年6月16日閣議決定,2025年5月15日参照)より
不登校に関連する法律としては、2016年に教育機会確保法が施行されました。これは、不登校児童生徒を対象とする教育の機会の確保を推進しようという法律で、学校環境の整備、民間団体との連携などを自治体に求めています。
フリースクール等民間団体の支援については直接的に内容としては盛り込まれませんでしたが、不登校児童生徒の状況に応じて「フリースクールなどの民間施設」と連携したうえで「多様な教育機会を確保する必要がある」と明示されています。
参考「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律の公布について」(文科省,2016年12月22日公開,2025年5月20日参照)より
参考「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」(文科省,2019年10月25日公開,2025年5月20日参照)より
学校外の機関で学ぶ場合、出席の判断はどのようになるのでしょうか。
文科省は学校外の機関での学習が出席に認定されるための要件を「保護者と学校との間に十分な連携・協力関係が保たれていること。」「当該施設に通所又は入所して相談・指導を受ける場合を前提とすること。」など複数まとめています。
しかし、「適切な支援を実施していると評価できる場合,校長は指導要録上出席扱いとすることができる。」とされ、判断は校長裁量となっています。全国に共通するような明確な基準は示されておらず、運用実態は自治体ごと、学校ごとに大きく差がある状況です。
参考・引用「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)(別記1)義務教育段階の不登校児童生徒が学校外の公的機関や民間施設において相談・指導を受けている場合の指導要録上の出欠の取扱いについて」(文科省,2019年10月25日公開,2025年5月20日参照)より
文科省は、「一般に、不登校の子供に対し、学習活動、教育相談、体験活動などの活動を行っている民間の施設」と定義しています。民間の運営による主体性・自主性によって、規模や活動内容は多岐に渡ります。カリキュラムや授業があるところもあればないところもあり、公教育と異なる教育理念や教育方法を採り、学校への復帰にこだわらない団体もあります。比較的少人数で、それぞれが自由に過ごしたり、子ども中心の活動や学習のサポートなどを行っている場合が多いです。
参考「フリースクール・不登校に対する取組」(文科省,2022年10月31日参照)より
教育支援センター(旧称:適応指導教室)は、学校生活への復帰を目指しその支援をするために設置されている施設です。以前は学校以外の場所に設置されていることが多かったのですが、近年は「校内教育支援センター」として、学校内の空き教室等に設置されることが増えています。個別の学習支援の他、スポーツや芸術、調理体験や自然体験など集団での活動もされています。
参考「「教育支援センター(適応指導教室)に関する実態調査」結果」(文科省,2019年5月13日公開,2025年5月20日参照)より
教育支援センターは2023年時点で1743カ所設置されており、そのうちの1704カ所が市町村教育委員会による設置となっています。ただし、2023年度で教育支援センターを活用できている割合は、不登校児童生徒の8.8%にとどまり、ニーズに答え切れていない現状です。
また、以前より減ってきてはいますが、「社会的自立」が重要という文科省に対し、「学校復帰」を目標にしてしまっている適応指導教室が多いことが課題とされています。原因は職員に退職教員が多いことなどが挙げられています。
参考「「教育支援センター(適応指導教室)に関する実態調査」結果」(文科省,2019年5月13日公開,2025年5月20日参照)より
校内教育支援センターは、教育支援センターの機能を各学校内に持たせたもので、「スペシャルサポートルーム」や「校内フリースクール」などとも呼ばれています。2024年時点で全国の46.1%の公立小・中学校に設置されており、文科省の事業により今後も拡大していく見込みです。
参考「不登校の児童生徒等への支援の充実について(通知)」(文科省,2023年11月17日公開,2025年5月20日参照)より
学びの多様化学校(旧称:不登校特例校)は、学校と同じように出席扱いになる教育機関です。2025年5月現在、全国に58校の学びの多様化学校が設置されています。それぞれに特色のあるカリキュラムや教科を編成しており、不登校経験や、不登校傾向のある児童生徒でも学びを継続しやすい仕組みとなっています。
熱心な取り組みもあり、例えば星槎名古屋中学校は、教師全員がカウンセラーの資格を持っています。共感理解教育を掲げ、生徒もコミュニケーションや心理学を学ぶことができ、生徒同士で助け合える「ピア・チューター」の育成も行っています。
岐阜市立草潤中学校では、個に合わせた多様な学び方を徹底されています。オンライン学習によって家や学校内のさまざまな場所で学習ができ、日々の過ごし方や担任まで個々に応じて見直し、変更することができます。
参考「不登校特例校の設置者一覧」(文科省,2022年更新,2022年10月31日参照)より
参考「学校ブログ 12期ピアチューター研修(養成講座)が行われました!」(星槎名古屋中学校,2022年8月27日公開,2022年10月31日参照)より
参考「注目の不登校特例校「学校らしくない」草潤中の今」(東洋経済オンライン,2021年12月7日公開,2022年10月31日参照)より
これまで、教育支援センターや民間フリースクール、自宅等での学習を適切に評価に反映することが非常に難しい状況が続いてきました。
しかし、2024年8月の「不登校児童生徒が欠席中に行った学習の成果に係る成績評価について」という文科省の通知において、不登校児童生徒に対する支援を強化し、学校以外の支援機関や、自宅でのオンライン学習の学習成果の適切な評価への反映が目指されることとなりました。
学校現場と、フリースクールをはじめとした支援機関が、今後どのように連携や情報共有を深め、子どもたちの学びを保障していくのか、模索が続けられています。
不登校という社会課題に対し、社会的な認知も進み、教育機会確保法が制定されたことで学校や民間団体と学校や行政との連携が始まりました。
しかし、不登校傾向も含めると60万人以上と言われる子どもたちの数に対し、公的機関・民間機関を合わせても「学校にかわる居場所・学びの場」は足りておらず、学習権が保障できていないことが大きな課題です。
社会的自立を目標として、多様な選択肢のもとで子どもが学ぶためには、様々な機関の立ち上げや相互の連携が必要です。フリースクールでの学習が出席・単位として認定されたり、教育支援センターの設置が進み学校を中心としない学習の支援が整備されたり、学びの多様化学校の設置の拡大がなされることなどが求められています。また、これらは現在の学校が、不登校状態にある子どもたちを包摂できていないということでもあり、学校がもっとインクルーシブなものになる余地はまだあります。
不登校であっても様々な場所や方法で学ぶことができる「学びの選択肢」が拡大され、そもそも不登校にならなくていいように既存の学校が変容していく、その両輪が回り、噛み合っていくことが求められています。
メガホンでは2022年に、全国の学校の教室・職員室の温度状況について、教職員の方にアンケート調査をしました。
「学校環境衛生基準」で「18℃以上、28℃以下であることが望ましい」と定められている教室や職員室の温度ですが、アンケートの結果からは、実際に運用にはバラつきがあることがわかりました。
約2年半が経過し、教室・職員室の温度状況はどう変わったのか、改めて全国の教職員の方に聞きました。
■対象 :全国の小〜高校年齢の児童生徒が通う一条校に勤務する教職員
■実施期間:2025年2月10日(月)〜2025年3月24日(月)
■実施方法:インターネット調査(実施時の設問はこちら)
■回答数 :72件
Q1. 文部科学省の定める「学校環境衛生基準」において、教室の温度は「18℃以上、28℃以下であることが望ましい」とされていることを知っていますか?
教室の温度設定が「18℃以上、28℃以下であることが望ましい」という基準は、全体の25%の教職員が「明確に知っていた」と回答し、前回調査から2%増加する形となりました。また、「だいたい知っていた」と回答した方も、前回調査の41%から49%に増加しました。
校種別に見ると、「明確に知っていた」「だいたい知っていた」を選んだ割合は中学校、小学校、高等学校の順に多く、それぞれ83%、72%、67%となりました。
Q2. 夏季において、あなたの勤務校では学校環境衛生基準で望ましいとされている温度を守れていますか?
夏季については、全体の8割以上が教室・職員室において望ましいとされる温度を「しっかり守れている」「だいたい守れている」と回答。特別教室の5割、体育館の2割強がそれに続きました。
肯定的意見の割合を校種別に見ると、小学校では教室78%・職員室89%と職員室の方が多い一方で、中学校は教室89%・職員室78%と逆転したほか、高等学校は教室67%・職員室61%と控えめな結果に。校種によって、若干の違いがあることがわかりました。
Q3. 冬季において、あなたの勤務校では学校環境衛生基準で望ましいとされている温度を守れていますか?
冬季については、教室・職員室において全体の8割以上が「しっかり守れている」「だいたい守れている」と回答。特別教室、体育館と続き、おおまかな傾向は夏季と同様であることがわかりました。
校種別に見ると、肯定的意見は小学校では教室81%・職員室94%、中学校では教室100%・職員室83%、高等学校は教室83%・職員室72%。全体的に、夏季より「しっかり守れている」「だいたい守れている」が多い結果となりました。
Q4. 設問2で教室について「あまり守れていない」「全く守れていない」と答えた方への質問です。その理由として当てはまるものを選択してください。(複数選択可)
※設問の対象者(設問2で職員室について「あまり守れていない」「全く守れていない」と答えた方)は15名でした。
不具合→修理が多すぎる。また教員が設定温度を低くしすぎる【小学校・教員】
電力不足【小学校・教員】
夏季に教室において望ましいとされる温度を「あまり守れていない」「全く守れていない」理由としては、「冷房機器の能力不足」が最多の8人となりました。続いて「冷房機器が未設置、または不足している」を選んだ方が多く、機器の整備が追いついていない現状が伺えました。
Q5. 設問3で“教室”について「あまり守れていない」「全く守れていない」と答えた方への質問です。その理由として当てはまるものを選択してください。(複数選択可)
※設問の対象者(設問2で職員室について「あまり守れていない」「全く守れていない」と答えた方)は10名でした。
冬季に教室において望ましいとされる温度を「あまり守れていない」「全く守れていない」理由としては、「暖房機器の能力不足」が最多の8人となりました。続いて「予算不足」、「暖房機器が未設置、または不足している」を選んだ方が多く、夏季と同様に、機器や予算の問題が大きいことが伺えました。
Q6. 教室・職員室温度について、あなたの問題意識や考えを自由にお書きください。(任意)
近年の猛暑のせいで、夏季の冷房は欠かせないものでした。教育委員会が定めたエアコンの設定温度では、授業環境が適切には守れないので、多少は設定温度を下げたりして、何とか学習のできる環境を整えました。
しかし、冬季に入ると、電気代の予算がなくなり、エアコンが使えず、一部ストーブを使うなどして何とか対応しています。そこに校舎内に故障や不具合が起こると厳しくなると言われています。
異常気象に関しては予測は難しいと思いますが、電気代などの教育環境を整えるための予算は柔軟にしてほしいと思います。(もちろん、節電等の取り組みなど自分たちでやれることはした上で)【小学校・教員】
特別教室に冷房機器がなく、音楽、書道、美術の授業で苦慮している。図書室の取り合いになり、たとえば国語の授業で使えなかったりしている。また、会議室に冷房がついていないため、職員会議が職員室や図書室で行われる。そのため、図書室で部活動ができないときもある。教室はPTA費で支払われるため冷房がオンになるが、職員室は県費のため冷房が入れてもらえないときがある。予算が色々なところで割かれない中、私立高校に授業料無償化するなら、公立高校の施設を良くしてほしい。【高等学校・教員】
私立勤務ですが、ようやく数年前に補助金が出て、エアコンの整備が進みました。私学はいつも後回しになりますし、半分は学園負担になります。しかし、そのせいか近年電気代がすさまじいことになっていて経営を圧迫しています。どうにも減らせない部分なので、困っています。【小学校・教員】
空調は教室ではON,OFFができず、スイッチも設定温度も事務室が管理しているので、予算優先になってしまうが、猛暑で冷房代を使い過ぎれば、冬の暖房代が無くなってしまうので、やむを得ないのかもしれない。
初任の頃の学校では、夏に「電気代が払えないので冷房を切ります」と校内放送が流れて、最も暑くなる12時頃に冷房を切られてしまった。熱中症の危険が高まり、管理職に抗議をする教員もいたが、「水を飲ませるように」と指示が出ただけだった。【特別支援学校・教員】
千代田区はお金があるため、環境はとてもいい。しかし、都内でも地域によって差がある。そのような違いがあることが、平等性がない。【小学校・教員】
体育館が体育を行うには厳しい気候が続くようになっている。学校行事の合間を縫って器械運動などを行うが無理がある。体育館はどんな気候においても運動ができるよう整備してほしい。【小学校・教員】
教委の方針で、教科準備室には冷房設備がつかない。夏は過酷です。隣接する実験室を冷やして冷気を送っています。却って電気代がかかっていそう。【高等学校・教員】
まず、体育館を冷暖房完備にして欲しい。終業式等は温度によってはオンラインで開催するが、卒業式はそういうわけに行かず、寒さが耐え難い。
それなのに、式典だからという理由で生徒に防寒着を着せない。かつ、トイレに行くことも禁じる。教員も礼服や袴で非常に寒い。我慢大会にしかなっていない。そんなに厳粛にルールを守らせるなら、体育館を快適な環境にしてからにして欲しい。【高等学校・教員】
子どもが活用する部屋は冷暖房があるが、用務員室・配膳室等大人だけが利用する部屋は冷房がない(冬はストーブ使用)。労働者のための冷暖房設置予算は組まないのだと思いました。ひどいです。
体育館の冷房がないと、夏秋の体育が何もできません。グラウンドは暑さで使用できません。【小学校・事務職員】
職員室も教室も、常に換気することを意識しているため、隙間風が冷たいし、熱風が吹いてくる。トイレはほぼ外気温。体育館はようやく冷暖房が設置されたが、設備自体が古いため、どれくらい効果があるかは未知数。最上階の教室はとにかく暑くて寒い。建物の気密性によると思います。【中学校・教員】
暖房設備の不備や予算不足による対応が原因とみられることが多いと感じているが、そもそもの問題として旧来の学校施設において断熱の概念が全くと言っていいほど存在していないのが原因と感じている。
薄い窓ガラス1枚で外気と遮断されている現状であったり、気密性の問題や断熱材が施工されていない鉄筋コンクリート造りの建物など、いくら暖房機器の能力が向上しても結果的に効果が薄く予算を過剰に支出してしまう施設がほとんどと考える。
学校施設の更新、すくなくとも窓ガラスの入れ替えだけでも早急に進めることが一番の対応策ではないかと思います。【事務職員・小学校】
クラス数が多いため、使う電力も大きいが、それに見合った電力を供給できる設備ではないため、度々ブレーカーが落ち30度越えが当たり前になっている。子どもたちの集中できる環境とは言い難く、大人でも暑さで疲弊してしまう。また28℃設定は狭い教室に35人いる環境では体感温度としては高すぎて適温ではない。人数に応じた柔軟な対応をとりたい。【小学校・教員】
私としては、冷暖房機器があることを良いことに、窓やドアを開けっぱなしにしている教職員の感覚の方が気になっています。コロナ禍の名残で、それまで大事にされていた環境教育が校内で断たれている現実があります。地球温暖化を考えた時、学校の空調(トイレの温便座も)はどうい状態であることが良いのか、もう一度みなさんと考えたいものです。【小学校・教員】
教職員が冷暖房の仕組みを知らないため、教室の温度が均質にならず、寒い思いをしている児童と、暑い思いをしている児童との格差が生まれている。なぜ、冷房を18度に設定すれば、18度の冷気が出ると勘違いしているのか、もはやわからない。【小学校・事務職員】
学校衛生環境基準が周知されていない。そのためそれぞれの教職員の感覚で動いている。今でも、『エアコンを使うと子どもは体調を崩す。』と言う声が聞こえてくる。【小学校・教員】
校舎が新しく、現在地域内の新築校舎のZEB化も進んでいるようなエリアなので、比較的新しい私の勤務校はエアコンがちゃんと効きます。しかし、教員のエアコンの使い方がとても気になります。例えば、夏はエアコンは下げられるだけ下げて、冷蔵庫のような寒さ、冬はエアコンを上げられるだけ上げて、もわっとする暑さ。そのため、全館換気システムがあるとは言え、教室環境が快適ではないときもありますし、環境意識が欠如していて気になります。【小学校・教員】
夏の温度調整は難しいのもあるので、指導要領の内容を減らして、夏休みを増やす方向にしてほしい。【小学校・教員】
温度そのものについてというよりも、暑い、寒いといった感覚も人それぞれのはずなので、防寒着を教室で使用してはいけないという校則を何とかしたいです。【中学校・教員】
地域によっては校内一括で職員室で設定されていたが、現在の勤務地では教室ごとに冷暖房の調整ができるので、日光のあたりやすい教室や風が通りやすい教室であってもこっちで調整できるので助かっています。【小学校・教員】
学校環境衛生基準で示されている、室温では範囲が広すぎます。その基準と光熱費削減の観点で、エアコンの温度を設定しているが、それでは体調が不調をおこす環境である。したがって、20度以上、26度以下ぐらいに基準を狭めてほしい。【中学校・教員】
学校環境衛生基準で定められる「18℃以上、28℃以下であることが望ましい」という教室の温度設定について、「明確に知っていた」「だいたい知っていた」と回答した方は全体の74%。前回調査の64%から増加し、基準についての認知が向上していることがわかりました。
温度基準を守れているかという質問に対しては、夏季・冬季ともに「しっかり守れている」「だいたい守れている」と回答した方が全体の8割を超えましたが、校種別のばらつきや、特別教室・体育館の肯定的回答の低さなども目立ち、学校全体としての温度基準の順守にはまだ至っていない現状が浮かび上がりました。
「あまり守れていない」「全く守れていない」を選択した理由としては、「冷房機器の能力不足」「冷房機器が未設置、または不足している」「予算不足」が多数を占め、気温の変化に機器や予算の整備が追いついていない現状が伺えました。
自由記述では、現場の先生方の予算や冷暖房未設置の施設への問題意識が多数寄せられました。中でも体育館や特別教室、準備室などにおける設備不足は、年々気温が厳しくなる中で、生命の危機にもつながる問題だとする声のほか、そもそもの学校の断熱性や気密性に大きな問題がある、という意見もありました。
※ 学校の断熱性向上については、こちらの記事もご参照ください
その他、基準を定めても各々の教員の使い方や意識に差があるなど、学校の温度環境については、多層的な問題が絡んでいる様子が伺えました。
▼ 自由記述の回答一覧は、以下よりダウンロードしてご覧ください。 ▼