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メガホン – School Voice Project

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学校経営や各教科の授業を行うにあたって、文科省が作成した教育課程の大綱的な基準である「学習指導要領」。現行の学習指導要領は、小学校・中学校の完全実施を経て、今年度から高等学校でも段階的な実施が始まっています。

Webアンケートサイト「フキダシ」では、学習指導要領の内容改訂に伴う学校現場の声を集めるため、現行学習指導要領における「改訂のポイント」についての調査を行いました。

今回フキダシでは、その調査で特徴的な結果が出た内容について、更に深掘りをしていくアンケートを実施しました。この記事では、「主体的・対話的で深い学び(アクティブラーニング)」「伝統や文化に関する教育の充実」「道徳教育の充実」「外国語教育の充実」の4項目についてのアンケート結果をまとめています。

※「道徳教育の充実」「外国語教育の充実」についてのアンケート結果は 次のページ をご覧ください。

アンケートの概要

■対象  :全国の小〜高校年齢の児童生徒が通う一条校に勤務する教職員
■実施期間:2022年12月9日(金)〜2022年1月23日(月)
■実施方法:インターネット調査
■回答数
 ① 主体的・対話的で深い学び(アクティブラーニング):31件 (設問
 ② 伝統や文化に関する教育の充実:21件 (設問
 ③ 道徳教育の充実:26件 (設問
 ④ 外国語教育の充実:26件 (設問

アンケート結果

①主体的・対話的で深い学び(アクティブラーニング)

設問1 調査結果について、どう思う?

Q1. 現行学習指導要領における「主体的・対話的で深いび(アクティブラーニング)」について、フキダシで実施したアンケートでは全体的に「良い影響が出ている」という回答が多かったものの、特に小学校では「良い影響が出ていると思わない」という回答も目立つ結果となりました。この結果について、あなたはどう思いますか。(任意)

 教員によって、捉え方が違うのではないか

「そう思わない」と回答している方は、全てが主体的で対話的でないといけないと考えているのではないかと感じる。教えることと学ぶことは両方とも必要だし、子どもの発達段階や教科の単元によっても、教えることと学ぶことの割合を考えていく必要はあると思う。小学校段階の授業では以前から良い授業は主体的な授業であり、対話的であった。【小学校・校長】

学習指導要領を読んでいないことも考えられます。「主体的で対話的で深い学び」の本質的な意味の理解が違う形で伝わっているように思います。これまでの指導方法に固執している人には、きちんと理解できても受け入れがたいのだと思います。【小学校・教員】

発達段階によっては、実践が難しいのではないか

発達段階に応じて、「主体的・対話的で深い学び(アクティブラーニング)」が効果的になるのかが模索されている段階だからなのではないだろうか。子どもたちの意見が活発に交わり発展していくには知識と表現が一定求められると考えられているからではないだろうか。【中学校・教員】

基礎学力がない小学生の子どもたちに主体的・対話的で深い学びができるかというと、無理です。闇雲におしゃべりをさせて考えさせたような気分になっても、結局のところ一部の学力が高い子どもたちが満足しているにすぎません。学力が高い子どもたちにとっては探究的な学習は効果があるかもしれませんが、何をやらされているわかからない子どもも少なくありません。【小学校・教員】

教員の忙しさから、実践が進まないのではないか

私は高校なのでわかりませんが、小学校には道徳教育やGIGAなどのたくさんのタスクが降ってきているので、それによる副作用が出ているのかなと思いました。【高等学校・教員】

教員自身がアクティブラーニングを受けてきていない。アクティブラーニングの指導法を学んできていない。とにかく多忙で新しいことを取り入れ実践していく余裕がない。多くの教師の仕事の大半を占めるのは「学習指導」より「事務仕事」「保護者対応」「教育相談」「生活指導」である。そういった状況を鑑みると、小中学校の「そう思う」が5割に達しないことは妥当だと思います。【中学校・教員】

前提として、「主体的・対話的で深い学び(アクティブラーニング)」とはどのような授業なのかを教員自身が理解しきれていないのではないか、という意見が一定数集まりました。「主体的・対話的で深い学び」の成果は見えづらかったり、影響が出るのに時間がかかるため、「良い影響が出ている」と言える状態になっていないケースもあるようです。

設問2 あなたの学校の実態は?

Q2. 現行学習指導要領における「主体的・対話的で深い学び(アクティブラーニング)」について、あなたの学校の実態を教えてください。

「主体的・対話的で深い学び」への十分な理解が進んでいない

方法論に進みすぎて、「主体的・対話的で深い学び」がどんな学びなのか、どんな子どもの姿なのかが、共通理解されていない。ただグループ活動を多く取り入れればよいという風潮。【小学校・教員】

ICTを使ってAL(アクティブラーニング)的な授業をしようとする人が多い。けれど、ICTでアプリやツールを使えば自動的に協同的な学習になると信じている人がいたり、逆に一人ひとりがPCに向かって入力しているので「一蘭(天然とんこつラーメン専門店)」の店内みたいな『個別最適化』のような授業になってしまっていることに課題を感じている。【中学校・教員】

これまでのやり方を変えることへの難しさを感じる

これまでの教師主体の授業からの脱却は簡単ではないと思う。しかし、そこに部分的にも子どもたちの主体性や子どもたちが学ぶ、という視点が入ってくることで少しずつ変わっていくようにも思うし、それを期待したい。【小学校・教員】

子どもたちが意欲的に課題に取り組むような工夫など、授業や単元の導入部分に工夫をするようにしています。アクティブラーニングとか言われても授業づくりの原点は大切にしようと取り組んでいます。実際はじっと座ってられない子、教室を飛び出す子、コミュニケーションが苦手な子、他者に攻撃的な言動をする、自分勝手な子など一人の授業者が見るクラスには色んな子どもがいるのでアクティブラーニングの授業づくりが難しいところがあります。【小学校・教員】

ICTの活用と併せて、部分的に取り組もうとしていることはうかがえつつ、実践としては発展途上な印象があります。限られた時間の中で、学習指導要領にあるような伝えるべきとされることを扱うとなったときに、なかなか一気に変えることは難しいだろうと想像します。また、学校ごとで何を求められているか・生徒がどうしたいかによっても変わるように思うので、必ずしも本校でアクティブラーニングを求められていなければ先生が準備にかけるモチベーションも上がりにくいのかもしれません。【高等学校・事務職員】

「主体的・対話的で深い学び」が広がってきていると感じる

観点別評価が導入されて、パフォーマンス課題が増えた。反復学習で暗記するだけよりは、実践的な取り組みが増え、生徒が能動的に動くようになった。【高等学校・教員】

さまざまな教科で取り入れられていると感じます。創意工夫をしながら、現場はよく頑張っていると思います。【高等学校・教員】

高校に所属する方からは、良い変化を実感しているという内容の回答が比較的多く寄せられました。小学校や中学校では「主体的・対話的で深い学び」を実践していくことへの難しさを感じる声が多く集まりました。教員の理解が及んでいたとしても、これまでのやり方を変えることや児童生徒の実態に合わせた授業展開をしていくことには難しさを感じることがあるようです。

②伝統や文化に関する教育の充実

設問1 調査結果について、どう思う?

Q1. 現行学習指導要領における「伝統や文化に関する教育の充実」について、フキダシで実施したアンケートでは全体的に「良い影響が出ていると思わない」という回答が「良い影響が出ていると思う」という回答を大きく上回る結果となりました。この結果について、あなたはどう思いますか。(任意)

教員の忙しさから、実践が進まないのではないか

ただでさえ忙しく余裕がないのに、あれこれやらなければならないことが増え、事前準備が増えることにより、業務を圧迫しているために良い影響が出ているとは思えない、と思っている人が多いのではないでしょうか。【中学校・教員】

伝統や文化に触れて、色んな体験をさせたいのですが、他にもやるべきことが多すぎて、一応、年に一回は芸術鑑賞の行事はありますが、「ただ見せただけ」で終わっているところもあり、充実しているかと言われると難しい。【小学校・教員】

教員自身の興味関心が向いていないのではないか

結果のとおり、学校への影響は小さいと思う。そもそも、職員室で「伝統や文化に関する教育の充実」という言葉が出てくることがあまりない。【小学校・教員】

その大切さはわかるけれど、実際この分野について校内研究の対象にもならないし、話題にもなりにくいので、良い影響も何もありませんという感じだと思う。【小学校・教員】

伝統や文化に触れることの必要性は感じるものの、取り組みができていない現状があり、結果として「良い影響が出ているとは思わない」という回答が多くなっているのではないかと推測する声が多く集まりました。

設問2 あなたの学校の実態は?

Q2. 現行学習指導要領における「伝統や文化に関する教育の充実」について、あなたの学校の実態を教えてください。

教員の忙しさから、実践が進まない

重要視されていません。はっきり言って、学校で教えるべきとされていることが増えすぎています。【小学校・教員】

年に1回の「文化芸術鑑賞」を何とか行っています。本来なら外部の方を呼んで、子どもたちに色んな経験をさせたいが、アポを取ったり、窓口が分からない、日々に余裕がないのでできていません。【小学校・教員】

教員の関心があまり向いていないように感じる

そもそも、職員室で「伝統や文化に関する教育の充実」という言葉が出てくることがあまりない。【小学校・教員】

「伝統や文化に関する教育」は特別に位置づけるものというより、折に触れて行うもの、という認識の教師が多いと思います。小学校では生活科や社会科で扱えるかもしれませんが、中学校では単元の中で触れる場面があれば紹介する程度でしょう。そもそも教師自身が「伝統や文化」に関して関心が低かったり知識が乏しかったりする面もあります。【中学校・教員】

特定の価値観の押しつけを感じる

「伝統や文化に関する教育の充実」には、保守派団体の影響を強く感じるという点で、賛同できない。当然、子どもたちに伝えたい地元の伝統行事や文化があればそれは扱うが、今回の「伝統や文化に関する教育の充実」にはどうしても愛国主義や国粋主義が見え隠れして、前向きに捉えることができない。何をどう充実させるのかは現場の教師が選択することである。【小学校・教員】

「伝統や文化」と言えば聞こえが良いが、結局は国の価値観の押し付けでしかなく、「日本スゴイ」的な排他性が強いものとなっている。道徳なども愛国心など戦前の軍国教育への回帰が垣間見える内容で、一方的過ぎる。【中学校・教員】

学校全体で実践している

全学年で日本各地の民族舞踊をやっている。その程度。ことさら日本文化を強調することはないが、外国との交流では力を発揮している。【小学校・教員】

もともとお箏に取り組んでいたり、お正月遊びの日があったり、狂言教室があったりと、伝統や文化に接する機会があったため、特にそれによって変えたことはありません。【小学校・教員】

業務量の多さや教員自身の関心の薄さから、あまり実践が進んでいないという回答が目立ちました。中には、国からの特定の価値観の押しつけを感じることで、伝統や文化に関する教育の充実に抵抗感のある方もいるようです。

ほかの調査結果は?

次のページでは、
 ③道徳教育の充実
 ④外国語教育の充実
についてのアンケート結果をまとめています。

全国のほとんどの学校にあるPTA。PTAは保護者と教員でつくる任意団体として各校で活発な活動がなされる一方、加入の強制性や活動負担の重さについてたびたび話題に上がっています(報道事例は こちら など)。

PTAへの加入の仕組みやPTAのあり方について、全国の教職員に聞きました。

アンケートの概要

■対象  :全国の小〜高校年齢の児童生徒が通う一条校に勤務する教職員
■実施期間:2022年12月9日(金)〜2023年1月9日(月)
■実施方法:インターネット調査(実施時の設問はこちら
■回答数 :74件

アンケート結果

設問1 保護者はPTAへの加入を選択できる?

Q1. あなたの勤務校では、保護者はPTAに加入するかしないかを選択することができますか?

保護者がPTAへの加入を「選択できる」と回答したのは全体の約10%にとどまりました。約60%は「選択できない(もしくは、選択できると知らない)」、約30%は「選択できるが加入を推奨される」という結果となりました。

設問2 教員はPTAへの加入を選択できる?

Q2. あなたの勤務校では、教員はPTAに加入するかしないかを選択することができますか?

教員がPTAへの加入を「選択できる」と回答したのは全体の約5%にとどまりました。約80%は「選択できない(もしくは、選択できると知らない)」、約15%は「選択できるが加入を推奨される」という結果となりました。保護者よりも教員の方が「選択できない(もしくは、選択できると知らない)」傾向が強いことがわかりました。

設問3 保護者の“PTA強制加入”、どう思う?

Q3.保護者がPTAに加入するかどうかを選択できない事例が多いことについて、あなたの意見を教えてください。

保護者がPTAへ参加するかを選択できないこと(必須加入であること)について、全体の約30%の人が賛成と回答。主な理由としては、「手伝って!と声をかけるネットワークが必要」「学校と保護者が協力するのは当然」「全員加入にしておかないと、加入者と未加入者の区別がわからない」などの声が寄せられました。

一方で、約70%の人が必須加入であることに反対。主な理由としては、「加入については納得の上で考えてもらうべき」「PTAの役割などを整理して、見直す必要がある」「PTAが発足した当時とは社会背景が異なる」などの意見が寄せられました。

肯定的意見

学校と保護者の信頼関係や協力体制をつくるために必要なため

PTAは基本的に自主的な組織であると考えています。内容として必ずしなければならない仕事がある、というのは反対ですが、誰かが何かしたいと思った時に、手伝って!と声をかけるネットワークは必要だと考えるからです。【小学校・教員】

強制さにバイアスや同調圧力があると別ですが、参加できた保護者が繋がりを作る姿を見たので、そう簡単になくしたほうがいいみたいには言うことはできません。【小学校・教員】

現状の学校との関係においては、保護者と学校のつながりを表現する組織がないので、活動への協力や会費は関係なく組織は残しておくほうが良いという理由です【中学校・教頭】

内容にもよるが児童や生徒のためになる活動を行うのであれば、学校と保護者が協力するのは当然ではないか?【中学校・教員】

支援校ですので、強制でも加入してくれないと、何があったときに困ります(事故発生時など)。【特別支援学校・教員】

手続きの煩雑さや管理のしづらさに繋がるため

全員加入してくれないと煩雑になり、教員、特に教頭の多忙化につながるから。【小学校・教頭】

役員になるかならないかは別として、とりあえず全員加入にしておかないと、加入者と未加入者の区別がわからないので。【中学校・教員】

否定的意見

PTAは任意団体なので、保護者の意思を尊重するべき

任意団体に強制的に入れられる必要はない。【小学校・教員】

PTAには賛否両論ありますが、加入については納得の上で考えてもらうべきだと思います。
学校とは別の組織であるにも関わらず、学校が強制的に加入させているように思われていることにも違和感があります。協力はすべきですが、納得の上で加入してもらわないと、不信感に繋がると思います。【小学校・教員】

選択できるはずなのに、慣習的に入らざるをえないのは、おかしい。しかし、PTA会費で部活動の大会費用などに使われていると考えると、金銭的には保護者全員から会費徴収した方が平等感がある。【中学校・教員】

任意団体なので加入も選択できるのが良い。選択できない強制されることにやらされ感が出てしまう。【中学校・教員】

PTAの意義やあり方、活動内容の見直しが必要

参加は任意である、ということを前提に組織をつくっていくことで、参加者の人数に合わせた業務の改善も考えられると思う。【小学校・教員】

PTAが発足した社会背景とは現在はまったく異なるので、存在意義がないと思うから。【中学校・教員】

PTAの組織が見直されることなく、当番や仕事、任命の仕方などが動いている。PTAの役割などを整理して、役割を見直すことが大事だと思います。【高等学校・教員】

設問4 教員の“PTA強制加入”、どう思う?

Q4.教員 がPTAに加入するかどうかを選択できない事例が多いことについて、あなたの意見を教えてください。

教員がPTAへ参加するかを選択できないこと(必須加入であること)について、全体の約25%の人が賛成と回答。保護者の必須加入よりも、賛成がやや少ない結果となりました。主な理由としては、「保護者との関係づくりのため」「保護者とのつながりがあることで支えられることもある」などの声が寄せられました。

一方で、約75%の人が必須加入であることに反対。主な理由としては、「労働ではないのに、強制されるのはおかしい」「公務でやっているのに会費を支払うことに疑問」「仕事が増える」「保護者の組織に教員が所属することへの疑問」などの意見が寄せられました。

肯定的意見

学校と保護者の信頼関係や協力体制をつくるために必要なため

保護者とつながるための位置は手っ取り早いのがPTAです。過多になるのが問題だと思いますが、保護者とつながることができない教職員がつながるためにも、代替案がないなら、続けたほうが良いと思います。【小学校・教員】

全ての活動に参加を求められるのは大変だが、そもそもその学校に勤める教員と保護者との関係づくりもあると思うので、双方にとってメリットのあるものになるといいと考えます。【小学校・教員】

PTAなのであれば、教員も同じだと思う。教員だけではできないことを保護者と一緒に行なったり、助けてもらうこともあるので、PTAという組織があるのなら教員も加入して活動の支援ができなくても会費という形でサポートすることは悪くはないと考える。保護者とのつながりがあることで、地域の情報や行事など支えられることもあると思う。テントが欲しいなど教員がほしくても学校予算で買えていないものもPTA費で簡単に購入できている。win-winの関係を取ろうと考えて活用すればよいと思う。【中学校・職員】

保護者から多くの会費が集まっているため

PTA会費からまぁまぁの費用が出ている実態を考えると(出所がそこしかない)、やむを得ないと思います。【特別支援学校・教員】

否定的意見

PTAは任意団体なので、教員の意思を尊重するべき

教員の労働として位置付けられていないものを強制されるのはおかしい。【中学校・教員】

教員だからPTAに入るのは当たり前、という無言のプレッシャーがある。加入しなければ、教員としてはダメだという考えをなくしてもらいたい。【中学校・教員】

教員に関しては保護者と一緒にやらなければ回らない案件もあると思うので、一応やった方がいいと思っています。ただ、強制と言うと全面的に賛成はしかねます。関わり方が選択できる方がいい。【高等学校・教員】

PTA会費を徴収されることに疑問を感じる

加入ではなく業務の一環としての連携という形を目指した方が良いと思う。【小学校・事務職員】

加入については別に構わないが、公務でやっているのにもかかわらずPTA会費が取られることに納得がいかない。【中学校・教員】

PTA会費を徴収されるのはおかしい。【高等学校・教員】

業務が増えることへの負担が大きい

そもそも選択できることを知らされていないし、調べようともしない方がほとんどです。教務になってしまうと、役割が自動的に振り分けられます。校務の負担軽減は考慮されないので、個人の負担ばかり増える仕組みです。【小学校・教員】

校務分掌かのように、業務の分担がされている。週休日のPTA活動への参加を余儀なくされ、振替休ではなく、調整扱いとされる。(実際、取得できない)【小学校・教員】

カウントされない仕事がどんどん増えていくから。【中学校/高等学校・教員】

PTAに教員が加入する必要性を感じない

親の組織になぜ教員が所属しているのか、いつも疑問に思っている。親もやりにくそうなので。【小学校・教員】

教員がPTAに入ることによる、メリット・デメリットがわからない。【中学校・教員】

設問5 今後、PTAはどうなるといい?

Q5.今後のPTAのあり方について、あなたの意見を教えてください(任意)

PTAのあり方や意義を見直した方がいい

加入が任意かどうかは問題の本質ではなく、学校を支える組織のあり様が問われていると思います。管理組合でも商店組合でも、入る入らないの自由が前面に立てば協同性が脆弱になります。教員と親とが子どもたちの学校生活を支えていくために有用なPTA組織の在り方を考えていくべき。【小学校・教員】

正直難しい問題で、まだまだ自分でも答えが出ません。まずはいろんな立場の方の意見を聞く場がほしいところです。子どもたちを育てるのに一番良い形を、みんなで対話しながら模索していけたらと思います。【小学校・教員】

あり方を変える必要がある。ただあり方が同一である必要はなく、地域団体とまとまることや、保護者会として明確に立ち位置を考え直すなどそれぞれの学校に応じた良い形になれば良い。良いんだけど、どうしても同一形態になってしまうのが課題。【小学校・事務職員】

子どもを中心において活動できるPTAであってもらいたい。行事ごとのお手伝いのための、毎年これをしなければならない組織では、活動していても・参加していても義務でしかないのは苦痛ではないでしょうか。【中学校・教員】

子どもの在学期間で入れ替わるので、今までやっていたから‥という活動をなかなかやめられない中、役割分担がまわってきて負担になるケースが多いのかなと思います。ただ、保護者の意見を聞いたり、議論をしたりするときにはPTAという組織がないと、個々の保護者の意見を聞くだけで、学校との対話になりにくいと思いました。負担は減らしつつ、保護者が学校の活動に参加したり、意見を話し合って伝えたりする場は保障されていけばいいなと思います。【中学校・教員】

任意で活動に参加できるようにした方がいい

PTAのやり方を改善した上で、任意制に移行できるとよい。【小学校・職員】

我が子の学校のPTA役員も、毎年のように役が回ってきて負担である。活動の精選を行い、無くても困らないものは辞めていくべき。【小学校・教員】

どこかの学校で実践した例のように、子どもが参加する学校行事の中で、どれか1つの行事に参加することだけを全員に課して、どの行事に参加するかは、選んでもらえばよいと思う。そして、その行事の参加者が、その行事で行うPTA活動をする、というふうにすればよいと思う。PTA席は、参加しない人より、写真がよく撮れる席にするとかメリットもつければよいのではないか。【中学校/高等学校・教員】

PTAは学校とは切り離した団体にした方がいい

学校から独立した組織が望ましい。【中学校・教員】

地域本部や保護者の会等に組織を変更し、学校と少し切り離して活動すべき。【中学校・教員】

PTAは廃止した方がいい

なくてもよい。コミュニティスクールに一本化すればよい。【小学校・教頭】

PTAが発足した社会背景とは現在はまったく異なるので、PTAは廃止していいと思う。この指とまれ方式で「このお手伝いには10名の協力が必要です。どなたかお願いできませんか?」のようなシステムになればいいのにな、と思う。【中学校・教員】

PTAという組織をなくすべき。コロナで例年通りの活動ができなくても学校運営に支障を感じなかった。現在のPTA活動の精査をし、どうしても必要なものは外注やその都度ボランティアを募るなどしていく必要がある。【中学校・教員】

必要なことは学校や自治体の責任で行った方がいい

学校の教育活動を支えると称して、様々な行事の「お手伝い」や「寄付」「教員の部活動交通費の補助」などをするのは、おかしい。本来、学校の責任、設置自治体の責任としておこなうべきことを肩代わりするのはやめるべき。【高等学校・教員】

保護者や地域との繋がりをつくることは大切

いろんな課題があると思いますが、つながりを作らないといけない今の世の中。希薄になっている危機を強く感じています。地域に耳を傾け、地域で育つ教職員じゃないと、つながりを持てない保護者が孤立していくかもしれません。【小学校・教員】

PTAへの加入が必須か任意かどうか以前に、PTAのあり方や活動内容を見直すことの必要性を訴える声が多く集まりました。「教員と親とが子どもたちの学校生活を支えていくために有用なPTA組織の在り方」「子どもたちを育てるのに一番良い形」など、PTAがあることの目的を問い直す意見も寄せられました。

また、保護者や教員の負担を懸念する声も多く集まりました。主な意見は、「任意制に移行できるとよい」「なくても困らないものは辞めていくべき」「どの行事に参加するかは、選んでもらえばよい」など。必要性に応じて活動内容を減らしたり、任意で参加できるようにするなどのアイデアが寄せられました。

まとめ

保護者、教員ともに、PTAへの加入を「選択できる」と回答したのは全体の約5〜10%。大多数は、「選択できない(もしくは、選択できると知らない)」または「選択できるが加入を推奨される」という結果となりました。

保護者、教員ともにPTAへの加入を選択できないこと(必須加入であること)について賛成する意見は少数で、約25〜30%にとどまりました。賛成する主な理由としては、「手伝って!と声をかけるネットワークが必要」「学校と保護者が協力するのは当然」「保護者とのつながりがあることで支えられることもある」など。

一方で、約70〜75%の人が必須加入であることに反対。保護者においては、「加入については納得の上で考えてもらうべき」「PTAの役割などを整理して、見直す必要がある」「PTAが発足した当時とは社会背景が異なる」などの理由が寄せられました。教員においては、「労働ではないのに、強制されるのはおかしい」「公務でやっているのに会費を支払うことに疑問」「仕事が増える」「保護者の組織に教員が所属することへの疑問」などの理由が寄せられました。

また、PTAへの加入が必須か任意かどうか以前に、PTAのあり方や活動内容を見直すことの必要性を訴える声が多く集まりました。時代の変化に伴い、活動への負担を感じる保護者や教員も多くいることも予想されます。今一度、何のためにPTAがあるのかを問い直し、活動を見直していく必要があるのではないでしょうか。

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学校の教室にあるのは机と椅子。できる限り、余計なものは置かない。

そんな環境とは対照的な教室をつくるのは、大阪府の公立小学校に勤める豊田哲雄さん。現在は理科の専科教員として、理科室にソファやクッションを置き、子どもたちがリラックスして学べる環境をつくっています。中には仮装をして授業を受ける子どももいるのだとか。

豊田さんが考える居心地の良い空間と、教室にさまざまなものを置くねらいを伺いました。

教室の中で「子どもの居心地」を追求した

ーー 教室環境を変えようと思ったきっかけを教えてください。

10年ほど前に、元小学校教員で現在は軽井沢風越学園校長をされている岩瀬直樹さんの著書『クラスづくりの極意―ぼくら、先生なしでも大丈夫だよ』を読んだことがきっかけでした。「教室リフォームプロジェクト」(※1)といって、教室のレイアウトを子どもたちが話し合いながら決めていく実践が紹介されています。そこに畳が置いてある写真が載っていて、とりあえずそれを真似してみたのが教室環境を変える一番最初の実践だったと思います。

その数年後、イエナプラン教育(※2)の実践に影響されて、ベンチを教室内に置き始めました。同じ頃、学校の倉庫にソファがあることに気づいて、それも教室に置いてみたりと、長い年月をかけていろんなものを置くことが当たり前になっていきました。

( 以前に担任していた学級の様子。置いていたソファには、休み時間になると必ず子どもたちが集まって、楽しそうに会話していた。)
( 畳スペース。休み時間になるとここでよくカードゲームが行われていた。授業中にはこの場所で学習している子どももいた。)
( 廊下にもベンチを置いて、座れるようにしていた。)

※1 「教室リフォームプロジェクト」とは、子どもたちが教室を自分たちでデザインして、自分たちの居場所に変えていくプロジェクトです。このプロジェクトを通して、学級に対するオーナーシップを育てることを目指します。詳しくは、『クラスがワクワク楽しくなる! 子どもとつくる教室リフォーム』をご覧下さい。

※2 イエナプラン教育とは、ドイツで始まりオランダで広がった、一人ひとりを尊重しながら自律と共生を学ぶオープンモデルの教育です。(日本イエナプラン教育協会HPより引用)

ーー 教室環境を変えていったときの子どもたちは、どんな様子でしたか?

休み時間になると、子どもたちはみんな畳スペースに集まってカードゲームをしたり、ソファやベンチに座って話をしたりしていました。教室の中に集まれるような場所があれば、自然とそこに集まり、遊びが始まります。子どもたちは、狭いスペースに集まって遊ぶことが好きなんです。休み時間に十分遊べているから、授業にも集中できていたと感じます。

授業に関して言うと、僕の授業では元々、立ち歩いたり机を動かしたりできる時間を多く取っていたのですが、畳やソファ、ベンチがあることで、さらに「学ぶ場所」に関して、多様性が生まれました。

国語の時間で時々やっていた「読書家の時間」(※3)では、畳スペースの狭いところに子どもたちが集まって本を読む姿が微笑ましかったです。中にはベンチに寝転んで本を読んでいる子もいました。そうやって、思い思いの場所や姿勢で過ごす姿が素敵だなと思っていました。

※3 「読書家の時間」とは、子どもが「読書家」になりきって、たくさんの本を読む中で、選書の仕方や優れた読み方、本を介した対話などを、体験的に学んでいくワークショップ形式の実践です。詳しくは『改訂版 読書家の時間 自立した読み手を育てる教え方・学び方【実践編】』をご覧下さい。

ーー 子どもたちが自由に選択できる環境をつくる上で、気をつけていることはありますか?

2年前にタブレットが導入されたとき、僕のクラスではホーム画面の壁紙を自由に設定していいことにしていました。ある日、子どものタブレットを整理していたら、性的な要素の強いアニメの画像を壁紙に設定している子がいることに気づいたんです。それを見たときは「ちょっとまずいなぁ…」と思いましたが、その子が「この画像が可愛い」と思う気持ちは尊重したいなと思いました。

悩んだ末、翌朝子どもたちに「みんな好きな壁紙にしていいと思うけど、他の人がどう感じるかも考えてみてね」という話をしました。すると、該当の壁紙を設定していた子はすぐに気づいて、子どもたち同士で「私のはどう見えるかな?」とお互いの感性を聞き合うようなやり取りが始まりました。みんなの意見を聞くことで、その子は納得して他の壁紙に変えていましたね。

自由にできることを多くしたら、やはり既存のルールから外れるような出来事はたくさん起こるものです。そのときに教員自身が「これは良くないかな」と思うことがあったら、それはちゃんと子どもたちに伝えた方がいい。

教室は公共の場なので、お互いの感覚や感性を伝え合うことで、みんなで一定の基準を決めていくことが大切だと思います。そのやり取りも、子どもたちにとっての学びなんです。さらにそれが、インクルーシブな環境づくりにもつながっていくと思っています。

理科室では仮装OK。置いてあるのは「謎の石」

ーー 今は、理科の専科を担当されていますよね。理科室ではどのような環境をつくっているのでしょうか?

学級担任をしていた頃のように、理科室にはソファとクッションを置いています。

( 現在、理科室に置いているソファ。)

他にも、ハロウィンやクリスマスの季節になると、関連する衣装を置いて、仮装をしながら授業を受けられるようにしています。理科では実験をすることもあるので、安全面には十分に配慮しています。

( 理科室に置いている衣装。これを着て授業を受けることもできる。)

理科室の前には模型の骸骨が置いてあって、子どもたちは自由に衣装を着せたりしています。「骨田骨雄(ほねだほねお)」という名前もついているんですよ(笑)季節やイベントによって、衣装が変わります。

( 理科室名物の骨田骨雄先生。夜になったら歩き回るという設定になっている。)

あとは、「呪いの石」と「呪いを解く鐘」、「幸せの石」、「願いが叶う石」など、うけ狙いのグッズを置いたりしています。休み時間に来た子どもが、目をつぶって「願いが叶う石」をぎゅっと握りしめている様子を見かけることもありますね。他の授業で子どもたちが作った作品などを置いて、遊べるようにすることもあります。

(のろいの石など。ここに置いているものも、少しずつ変化していく。)

ーー なぜそのようなものを置いているのでしょうか?

衣装や石は、最初は「面白そうだから」という理由で置いてみたのですが(笑)、実はこれがインクルーシブな環境をつくっているんじゃないかと思うようになりました。

( 仮装をして授業を受けている子どもたちの様子。)

日本の学校ではあまり多様性が受け入れられていないなとずっと感じていて。みんな同じであることが普通だと、少し違う子が目立ってしまう。そうすると、いじめも起こりやすくなると思っています。合理的配慮が必要な子に対しても、「ずるい」という声が聞こえることもあります。

「インクルーシブ教育」と聞くと、障害のある子どもが支援を受けて、みんなと同じようにできるようになることを目指すものかのような誤解もあると思います。本来のインクルーシブの意味はそうではなくて、みんながバラバラの状態で尊重されることです。

だから、みんなが同じになりがちな教室の中で、ソファや仮装道具を置いたりして、わざと多様性を持たせるようにしているんです。ソファで勉強している子がいたり、仮装して授業を受けている子がいる中で、防音のためのイヤーマフを着けている子がいたとしても目立たないですよね。そういう意味で、いろんな学び方を保障することにつながると思っています。

( 理科室には遊び道具もたくさん置いている。)

居場所があることで、子どもたちは安心して学べる

ーー 理科室の中に、子どもたちの居場所があるように感じますね。

そうですね。実はそれも意図して環境づくりをしています。

ソファの設置に関して言うと、学校や教室の中に座る場所が1つだけしかないのは、子どもたちの権利を大切にしていないことの表れなんじゃないかなと思っています。休みたいときに休めることは、人間の基本的な権利ですよね。学校の中では、まるで硬い椅子に座り続ける訓練をしているように感じることもあります。リラックスできる環境をつくることは、子どもの権利を保障するという側面でも大切なことだと思います。

また、学校では学力や体力を向上させることが重視されますが、そればかりが強調されることによってしんどい思いをする子どももいます。例えば、「おしゃれをすること」や「笑いをとること」など、違う価値観のベクトルがあれば、それによって救われる子どもがいるんじゃないかと思っています。仮装道具や石を置くことには、あえて教室の中のベクトルがいろいろな方向に向くようにする意図もあったりします。

( ぬいぐるみなども複数置いている。中にはお気に入りのぬいぐるみをテーブルの上に置いて授業を受ける子もいる。)

ーー 最後に、学びの環境づくりについて、豊田さんが目指していることを教えてください。

僕はあくまで理科の授業をする人なので、そこは崩してはいけないと思っています。質の高い授業をすることで、子どもたちの学びを保障する。それと同時に、学力を高めることや体力をつけることばかりを重視するのではなく、「余白」をつくっていくことも大切にしたいです。

一見すると授業には関係ないように見えることでもいいから、子どもたちが自分なりに考えたりやってみたりできる「余白」を、教室の中に残しておく。そうやって、一人ひとりにとっての“自分の居場所”を学校や教室の中につくり、子どもたちが安心して学びに向かえる環境をつくっていきたいですね。

「先生たちが変われば、子どもたちの学びが変わる」

そう話すのは、対話を中心とした組織開発の専門家として、全国の学校でコンサルティングを行う澤田真由美さん。

約10年間小学校教員を務めた経験があり、子どもとの関わり方や働き方に悩んできたと言います。自身の経験から、先生がゆとりを持って働き、子どもたちの学びの質を高めていける学校を増やしたいと考え、2015年に学校専門コンサルタントとして独立。

現在、株式会社先生の幸せ研究所の代表を務める澤田さんに、改革を進めていくときのポイントと、教職員一人ひとりが改革のためにできることを伺いました。

教職員が思っている「変えられない」を「変えられるかも」に変換する

ーー学校コンサルティングでは、具体的にどのようなことをされているのでしょうか。

2022年4月から関わらせてもらっている埼玉大学教育学部附属小学校(以下、埼玉大附属小)では、組織開発をしていくために月1回ほど学校を訪問しています。それまでにICTツールの導入などでハード面は整ってきており、学校で働く教職員の意識など、ソフト面を変えていくことの必要性を感じておられました。

「教職員が自分たちで課題を解決していけるような組織にしていきたい」というニーズから、お声をかけていただきました。今は、それぞれの先生たちから発案があった12個のプロジェクトを並行して進めているところです。

ーー12個ものプロジェクトが発案されたのですね。教職員からそこまで多くの意見やアイデアが出るのは、一体なぜなのでしょうか。

どの学校も教職員のうち5%くらいの方は「学校を改革していきたい」という強い思いがあり、実現に向けてすでに行動しています。逆に、「変えずに現状を守りたい」という方も5%くらい。両者ともに、自分の信念を持って行動していることは共通しています。

1番多いのは、「変えられるなら変えたいけど、自分やこの組織には無理」と思っている方です。コンサルタントとして学校に関わらせてもらうときの最初のワークショップでは、「変えられるはずがない」と思っている方に「変えられるかもしれない」と思ってもらうこと、「変えずに現状を守りたい」と思っている方に「変えた方がいい場合もあるかも。案外いいかも」と思ってもらうことが最も重要なことだと思っています。

ーー研修やワークショップでは、具体的にどのようなことをするのでしょうか?

教員だけではなく誰しもが「こうするべき」という思い込みに無自覚のうちに縛られていることが多いので、それが当たり前ではないのだと感じられるような話をしたり、思い込みの枠を外せるようなちょっとしたワークをやったりします。

その後、埼玉大附属小のときは、3、4人ずつのグループに分かれて「これから変えていきたいこと」について話し合ってもらいました。私はいろんなテーブルを周りながら、出てきた意見を教職員全体に紹介したり、「最初は小さいことからでいいですよ」と声をかけたりします。盛り上げ役のような感じですね。

誰もが「本当はこうだったらいいのに」「ちょっとやりにくいな」と思っていることが必ず1つはあるものなんです。まずは勇気を出して、変えたいと思っていることを声にしてもらうことからだと思っています。

価値観を共有し、人として関わりながらプロジェクトを進める

ーー現在進めているプロジェクトについて、もう少し詳しく教えてください。

「学校の中でジェンダー平等の視点を広げたい」という思いを持った先生が発案したプロジェクトでは、男女別の名簿を見直したり、先生の性別によって受け持つ学年に偏りがある現状を見直したりする動きを進めています。

また、「それぞれの先生が自律分散的に動いていくティール組織のような場にしたい」という思いを持った先生からの発案で、週3回、子どもたちが下校した後の20分間はそれぞれが創造的なことに使える「クリエイティブタイム」を設定しています。

ルールとして決まっているのは会議を入れないことくらいで、その時間をどう使うかは個人に委ねられています。丸つけや事務作業をする以上に、それぞれが新たなアイデアを生み出したり、自分のやりたいことを深堀りしたり、教職員同士で対話をしたりするような時間にしていけるといいなと思っています。

ーー意見を出したり実際にプロジェクトを進めていくには、教職員同士の関係性も大切だと思います。信頼関係をつくっていくために、工夫していることはありますか?

埼玉大附属小では、教職員がお互いに自己開示をするワークショップをやりました。校内でプロジェクトリーダーをされていた先生が、この頃にはすっかり「自走」を地で行くようになっていたので、進行は私ではなくその先生にお任せしました。

ワークショップでは、3、4人のグループに分かれて、それぞれが大切にしている価値観や生い立ち、プライベートのことなど自由に話していきます。

幼少期の経験を話す中で「ひとり親家庭で育った」という方の話を聞いて、「実はうちもそうだよ」という会話が生まれたり。それまでは「先生」という役割を持った人として関わっていたのが、さまざまな背景を持った「人」としての関わりに変化していくんです。

校長先生のこれまでのストーリーを聞いて、「1本の映画を見ているような気持ちになった」と仰る方もいました。中には自己開示をすることに対して抵抗感があった方もおられましたが、「今までの研修の中で1番有意義だった」という声も上がりました。

最後にそれぞれの価値観を紙に書いてもらうと、いろんな言葉が集まりました。それぞれの価値観って、とても多様なんです。だからこそ、組織開発を進めていく中では目に見える成果だけを追い求めるのではなくて、先生たちと一緒に「どうありたいか」を考えながら目指す方向性を決めていきたいと思っています。

大切なのは、自分から手を挙げてもらうこと

変わっていく学校には、どのような要素があるのでしょうか?

まずは本音で話し合う時間を少し無理してでも確保することが重要です。そうでないと、変わるきっかけをつくれないので、現状維持のままになりがちです。先頭を切って改革を進めていくような校長がいれば変わりますが、結局その校長が異動したら元に戻ってしまいます。

話し合いの時間が楽しかったり、実際に変えていける実感を持った人が1人、2人と増えていけば、さらにその動きが周りに波及していきます。そうすると、最初は非公式の時間でやっていた話し合いが、学年会議や教科会議のような公式の時間に位置付けられていくわけです。

過去には先生たちへのヒアリングを元に、必要だと思ったアイデアを私から提案したことがありますが、それでは上手くいきませんでした。先生自身が心から「やりたい」と思うことが何かに目を向け、自ら「やろう」と声を上げることが、学校を変えていくためには必要なことだと思っています。先生たちのアイデアから生まれたプロジェクトを日常の業務と並行して進めていく中で、学校改革を進めていく“当事者”を増やしていくのです。

ーー学校を変えたいと思っている教職員一人ひとりができることは、何かあるでしょうか?

管理職ではなかったり経験年数が浅かったりすると、「できることはない」と思いがちですが、決してそうではありません。おすすめの方法は、「問いで耕す」ことです。

つまり、いろんな方に「問い」を投げかけるのです。例えば、「校内研修で何か困っていることはないですか?」と質問して、相手が「こんなことに困っていて…」と話してくれたら、そこから対話を続けていきます。あくまで「どう思いますか?」と聞くスタンスで、「こうしましょう」とは言いません。

実際に「問いで耕す」ことで、学校改革への情熱を持った教職員を増やしていき、研修やワークショップなどを一切せずに学校のあらゆる決まりごとを変えていった先生がいます。校内研究の講師を授業者が選べるようにしたり、通知表の作成週は毎日4時間授業にしたり、通知表の印鑑を廃止したり、各家庭でランドセルかリュックかを選べるようにしたり。すごいですよね。

先生だけではなく、校長や管理職の立場の方にもおすすめです。まずは「みんなどう思う?」と聞いていくところから始めてみてください。

先生たちが自由になれば、子どもの学びは変化する

ーー澤田さんがコンサルタントとして学校の教職員の方と関わるときに、気をつけていることはありますか?

改革を進めるときに欠かせないのが、「組織には見えやすい部分と見えにくい部分の両方がある」と理解することです。見えやすい部分とは、制度や時間割、環境設定などです。見えにくい部分は、教職員それぞれの思い込みや組織風土、個人のモチベーションなどです。他の学校が改革に成功した事例があると、同じ取り組みをそのまま導入しがちですが、それでは上手くいきません。組織ごとに目に見えにくい部分の課題が違うからです。

私たちコンサルタントは、組織ごとの課題をメタ認知して、プロジェクトの実行を進めるペースメーカーとして関わったり、壁打ち相手になったりすることもあります。組織にいる立場では言いにくいことも、外部の人間であれば「やってみましょう」と言える部分もあります。そんな風に、組織開発を進めていくための程よいプレッシャーを与えることが役割だと思っています。

ーー最後に、澤田さんが思い描いている学校教育のあり方を教えてください。

学校教育では、探究的な学びやプロジェクト学習が重要だと言われていますが、学校内で先生がクリエイティビティを発揮しにくい状況になっているという相談がとても多いです。それと同時に、これまで聞いてきた先生たちの話からは、「もっと自由にやりたい」と思っている方が多いことにも気づきました。

先生たちが「本当にやりたい」と思っていることを学校の中で実現できれば、子どもたちの学びは変化していくと思っています。実際に、教職員間で体験した話し合いやプロジェクトの進め方を、教室内で子どもたちを対象にやってみた先生もいました。すると、子どもたちからはどんどんアイデアが出てきたそうです。

先生たちには、学校の中で自由と可能性を感じてほしいと思っています。私は、それを実現するための手段として、学校コンサルティングや講演活動を行っています。まずは先生たち同士が何でも言える関係でわくわくと学校をつくっていくこと。その変化を、子どもたちの学びの変革につなげていきたいと思っています。

茅ヶ崎市立香川小学校(児童数:1,013人、教職員数:55人)といえば、「通知表をなくした学校」として多くの人に知られています。メガホン編集部では、通知表廃止だけでなく、教室の配置転換や運動会のあり方の見直しなど独自の取り組みを進めつつ、「5年間教職員の療休が出ていない」「不登校児童が少ない」など、教職員も子どもたちも自分らしく過ごす香川小の学校風土に注目。

同校の総括教諭(主幹教諭)である小林良平さんへのインタビュー、学校訪問、國分一哉校長をはじめとする教員の方々への取材を通し、その真髄を探ります。

ミドルリーダー・小林良平さんインタビュー

「大好きな職場。月曜日が来るのが嫌ではない」理由

「香川小最高ですよ、本当に。大好きな職場です。月曜日が来るのが嫌ではないですから(笑)。香川小の何がいいって、教職員一人ひとりが自分らしく働くことができていることですね。『ここは自分の居場所』と心から思いますし、人生の一部のような位置付けです」という小林良平さん。

教員生活15年目で、2018年4月に茅ヶ崎市内の小学校から香川小に総括教諭(主幹教諭)として異動。4年生のクラス担任に加え、児童の特性や個々の問題に応じた指導や支援を行う「支援グループ(※)」のグループリーダーをつとめています。(※参照「神奈川県における学校運営組織と総括教諭」)

「支援グループの方針として『全校での支援』を掲げ、課題を抱える子、支援が必要な子を教職員全員で支えるようにしています。また、『子どもたちだけでなく、先生たちも支え合いましょう』ということで、たとえば学級経営等でピンチに陥っている先生がいたら、周りの先生の空き時間を調整してシフトを組み、交替でそのクラスに入ってサポートしたり、同じ学年の先生同士で助け合ったりするようにしています。

支援に限らず、カリキュラム、学校運営など学校にまつわるさまざまなことを『だれかに押し付けるのでなくみんなでやる』『みんなで参加し、みんなで考える』という風土が根づいていることが、当校の大きな特徴だと思います。さまざまなキャリア、さまざまな家庭環境の先生一人ひとりがそれぞれのベストを尽くしながら自分らしく働くことができる、多様性のある職場です」といいます。

もちろん、このような風土が一朝一夕に出来上がったわけではありません。

「前任校から当校に赴任した当初は、ルールが多いことに加え、ちょっとしたことですが、鍵による開閉が必要な教室が校内にたくさんあることなどから、『堅い学校だなぁ~』というのが第一印象でした」と、当時を振り返る小林さん。

しかし同時期に、國分一哉校長が着任。

「國分校長は教職員組合の委員長もつとめられていた方で良く知っていましたし、『何か面白いことをやってくれそう』という期待感はありました。といっても、校長先生ひとりが力を発揮しワンマンでおし進めていくのではなく、着任当初から『みんなと話がしたい』と口癖のようにおっしゃっていて、それを実行されていました。

管理的ではなく、教職員が対等に、自由にディスカッションできる職場環境をつくろうとしてくださっていることを肌で感じ、先陣を切って言いたいことを言っていましたね」

教室配置の変換をめぐる議論の中で芽生えた「学校はみんなでつくる」という意

メディア等で大きな注目を集めた香川小の改革・「通知表廃止」は2020年度からスタートしましたが、

「実はその前から、通知表以外の要素で改革の動きがあったのです」と、小林さんは言います。それは、教室配置の転換でした。

(香川小学校の教室配置は現在、6年生と1年生の教室が交互に並ぶ「市松配置」)

「2018年のある時期、支援グループに属する現場の先生から『日常生活の中で子ども同士がお互いを認め、助け合う関係を築くため、1年生と6年生の教室を隣り合わせにしてはどうか』というアイデアが出て、それいいね、と。

これを実現させたいと思い、校長先生、教頭先生、現場の先生たちによびかけたところ、校長先生、教頭先生は賛成してくださいました。いっぽうで、『体格が異なる6年生と1年生がぶつかったりして危ないのでは』『そんな取り組みは今まで聞いたことがない。やる意味はあるの?』など、反対意見や慎重意見も少なくありませんでした」(小林さん以下同)

クラス数の関係で、同じフロアに同じ学年が全クラス並ばないという物理的な要因もあり、小林さんの働きかけを中心に学校全体で議論が活発化。賛成派、反対派と意見がまっぷたつに分かれることもあったというなか、数か月続いた最後の話し合いは、視聴覚室で教職員全員が車座になって行いました。

「職員室で行うと職員会議の延長のような雰囲気になり、発言しやすい人が決まってしまいがちで意見が偏りやすい」という理由からだそうです。

それでも賛否が拮抗してなかなか結論が出ず、「多数決で決めようか」という空気に一瞬なったといいますが、

「これまで本当にたくさん皆で話し合ってきたのにそれはおかしいよね、と。最終的に、校長先生に判断をゆだねることになりました」

翌日、校長先生がくだした結論は、「市松の(1年生と6年生の隣り合わせ)教室配置はしない」。

といっても全面的な「NO」ではなく、

「反対も多いので全面的にはやらない。けれど、まずは実験的に同じフロアに1年生と6年生の教室を配置して、隣り合わせでない形で様子をみてみましょう」という判断でした。

こうした学校をあげての一連の議論をきっかけに、

「教職員一人ひとりが、『キャリアが浅くても意見を言っていいんだ』『新しいことを始めてもいいんだ』『校長先生がすべてを決めるわけではないんだ』『一度に結論を出さず、トライアル的に様子をみていく進め方もあるんだ』などの思いを抱くようになり、学校はみんなでつくっていくものという意識が芽生え始めたと思います」といいます。

2019年度に1年生と6年生の教室を同じフロアに配置したところ特に問題は起きなかったため、2020年度から1年生と6年生、2年生と5年生の教室を隣り合わせに配置することに。

「またそこで議論になるのかなと思ったら、拍子抜けするくらいあっさり話がまとまりました。『やってみたら大きな問題もなく、なにか新しく始めることはそう大変でもないな』と皆で実感できた部分も大きかったと思います」と、小林さん。

「6年1組と1年1組」、「5年2組と2年2組」のように上級生と下級生のクラスを兄弟クラスにし、昼休み前の清掃時間には、上級生が下級生のクラスに出向いていっしょに掃除をしたりするようになりました。

前例があったからこそスムーズに進んだ「通知表廃止」の議論

「通知表廃止」についての議論は、そんな流れの中で始まりました。

「議題としてあがりはじめたのは、2019年度です。学校の実情に応じたカリキュラムを編成し、通知表の更新や校内研究の企画・運営を行うカリキュラムグループから、『通知表はなくしてもいいのではないか』という意見が出始めたのです」

2020年度から学習習指導要領が大きく変わり、通知表も評価の観点が4観点から3観点に。「必然的に通知表のあり方を変える必要があった」という背景も手伝い、教室配置の転換のときと同様に、学校全体で議論が始まりました。

「教室配置の転換について喧々諤々の議論を経験していたこともあり、話し合いそのものはスムーズに、建設的に進みましたね。最初は『通知表はあったほうがいい』という考えの先生が多数派だったのですが、時間をかけて対話を重ねていくうちに、『なしにするのもありなのかな』という流れになり、『じゃあ、やめてみよう』と。最終的には校長先生が判断くださいました」

通知表は2020年度から廃止され、これまで通知表を作成するために割かれていた膨大な時間は、子どもたちの成長を見る時間に使われるようになりました。

通知表の代わりになるようなものも特に存在せず、各担任の裁量により、面談等を通して子どもたち、保護者へのフィードバックが行われています。

「個人的には、『評価のために◯◯をしなくてはならない』など手段が目的化してしまうような時間が減ったぶん、教育過程を自由に組むことができるようになりました。通知表がないことを生かした教育を、模索しながら実践しています」

ボトムアップな学校風土醸成のキーワードは、「感情」「エピソード」「あいまいさ」

教職員の声に耳を傾け、フィードバックや対話を地道に重ねながら組織を活性化させる支援型リーダーシップで導く國分校長のもと、小林さんらミドルリーダーが中心となり、

教職員全員でボトムアップな学校風土を作り上げながら、これまでの学校の「当たり前」を見直し、新たな取り組みを進めてきた香川小。

このような風土改革実現のキーワードとして、小林さんは、3つの言葉をあげてくれました。

それは、「感情」「エピソード」「あいまいさ」

「最初に教室配置転換についての議論を重ねていたときに感じたのは、『◯◯は△△であるべき”といった正論で人は動かないし、私はこう思うと意見を述べ合うだけでは対立を生むだけ』ということ。特にうちのような人数が多い職場では、段階をふんだ合意形成は難しいと感じました。

その流れもあってか、通知表について議論するとき、『通知表つけるのって大変だよね』『通知表って、子どもたちの成長に本当に役に立っているのかなぁ』など、教職員同士がお互いの感情を吐露することから自然とスタートできたのは良かったと思います。

加えて、『たとえば社会科で、子どもが一生懸命新聞を作ったとしても、テストが高得点でなかったことで3段階評価の2をつける。その評価を子どもが目にしたときのがっかりした表情を目の当たりにすると、通知表の存在意義に疑問を抱く』などの具体的なエピソードも、皆の気持ちをゆさぶりました。

何かを変えようとするとき、そのメリット、デメリットを議論するだけでなく、お互いの感情やエピソードを話し合うほうが共感できるし、人の気持ちがぐっと変わったり議論が深まったりするきっかけになるのではないでしょうか」

小林さんが続けます。

「あいまいさについては、先ほど香川小は人数が多い職場といいましたが、人数が多いからこそあいまいなまま白黒はっきりせずにいろんなことが進みがちなところも、じつは良かったのではないかと。

『◯◯については、今どうなっているんだっけ』『この前の会議で出た△△の意見って、まだ生きているんだっけ』など、あいまいな部分を残したまま物事が進み、歩きながら考える空気が学校全体に流れていることで教職員一人ひとりの創造性が発揮され、意見やアイデアを出しやすくなる。これも、職場が活性化した理由のひとつなのではないかと思っています」

〜後半に続く〜

英検(実用英語技能検定)や漢検(日本漢字能力検定)、予備校の模擬試験など、外部機関の検定・試験を学校内で行うことは多いですが、「実施に大きな負担がかかる」という声も聞かれます。また、担当教職員が手続きを忘れていたことでトラブルになるケースも報道されています。

今回は、教職員の方を対象に、英検や漢検、外部模試の業務負担について、勤務校での実態を聞きました。

アンケートの概要

■対象  :全国の小〜高校年齢の児童生徒が通う一条校に勤務する教職員
■実施期間:2022年11月18日(金)〜2022年12月12日(月)
■実施方法:インターネット調査(実施時の設問はこちら
■回答数 :42件

アンケート結果

設問1 検定・模試の校内実施の状況は?

Q1. あなたの勤務校では、英検・漢検・外部模試等の外部機関の検定や試験を校内で実施していますか?(国や自治体ごとに行う学力調査等は除きます)

小中学校では半数の学校で、高校では全ての学校で、外部期間の検定や模試を校内で実施していると回答がありました。

設問2 実施するうえでの負担は?

Q2. 設問1で「実施している」と答えた方にお聞きします。実施にあたって負担に感じていることを選択してください。(複数選択可)

負担に感じていることとして最も多かったのは、「事務処理(申込手続等)」。28人中24人が選択しました。次いで「金銭処理(検定費用等)」、「時間外や休日に実施すること」の順で多い結果となりました。

設問3 校内での検定・模試の実施、どう思う?

Q3. 学校内で外部機関による検定・試験を行うことについて、あなたの意見をお聞かせください。(任意)

事務や金銭処理への負担

申し込みの事務処理や代金処理を業者委託し、勤務時間内(当然、休憩時間を除く)に実施できるなら、やってもよいとは思う。が、本来、教育課程外の活動であり、希望する生徒が学校外で受ければすむことだと思う。【中学校・教員】

公立中学校勤務時代は英検を学校で実施していました。集金や申込にも気を使い、申込手続きで受験者側にミスがあっても学校側が責任を取るようになっていました。また実施日に部活動があると音がうるさくて聞こえないという課題やチャイムを切ったり戻したりすることやダブル受験者がいると放課後7時過ぎまでかかることなどもありました。受験者側の自己責任の部分が共有されず学校側に責任転嫁されることが学校で実施することの一番の課題だと思います。【小学校・教員】

生徒の負担減(学校での団体受検だと受検料が少し安くなる、会場が学校になる)にはつながるが、教員の負担が大きい(全生徒へのお知らせ、生徒とのお金のやりとり、郵便局への入金、当日の時間外勤務、手続きなどでミスをしてはいけないという精神的負担など)。また、英検は英語科教員の仕事だとされて、負担が偏る。(誰がやっても一緒なのに…)【中学校・教員】

市として補助金を出して英検を実施しており、授業をカットして検定を行うため2コマ授業が潰れること。また申し込みには担任が申込用紙を回収してチェックを行い、振込関係は教頭が行うなど負担である。さらに保護者からの問い合わせや入試に活用されることもあり、授業よりそっちの勉強に力を入れる学生もいる。【中学校・教員】

部活動等で休日開催だと出れない生徒がいるので開催は賛成だが教員負担はかなりある。昼休みの時の面接対策や外部検定と言いながら説明などするために教員にも説明する労力。大学入試と直結することでやらざる負えない。【高等学校・教員】

時間外や休日業務への負担

週休日の実施となるが、明確な振替が与えられていなかった。【小学校・教員】

地方で予備校が近くになく、生徒の実力を知る機会として業者模試を土日に、教員が兼業兼職願いを出して監督している。高3の後半半年は毎週末全て各社の業者模試が入り、3年正副担が交代で監督を強制されている。当然子育てや介護とは両立が難しく、そのような「事情」を持つ方が3年正副担を断らざるを得ない現状がある。「事情」を持たない人は兼業なのに断る権利がない。模試監督は教員でなくてもできる業務だ。校内で実施するにしても監督は学生アルバイトなどを雇えないのか。何十回もこういう交渉をしたが認められない。【高等学校・教員】

校外模試については、進学校の3年生になると、かなり頻繁に実施されるため、土日にかなりの時間を試験監督に費やさなければなりません。正直、受験の指導だけでもたいへんなのに、休ませてほしいと本気で思います。部活動問題だけではなく、検定や模試も教員の長時間労働につながっていると思います。検定を主催している団体や模試の会社にいいように利用されている気がしてなりません。【高等学校・教員】

まとめ

小中学校では半数の学校で、高校では全ての学校で、外部期間の検定や模試を校内で実施していると回答がありました。負担に感じていることは、「事務処理(申込手続等)」、「金銭処理(検定費用等)」、「時間外や休日に実施すること」の順で多い結果となりました。

事務処理や金銭処理を担うことで業務量が増えることへの負担のほか、ミスが許されないことへの精神的負担を感じるという声もありました。校内で実施することで生徒が受験しやすくなることには肯定的な意見が多く、校内で実施する場合は関連する業務を外部業者へ委託することを希望する声も寄せられました。


▼ 自由記述の回答一覧は、以下よりダウンロードしてご覧ください。 ▼

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※対象は教職員の方のみです。
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※メディア関係者の皆様へ
すでに公開されている教職員アンケート結果やWEBメディアの記事の内容等は報道の際に使用いただいて構いません。その際は【出典:NPO法人School Voice Project 】クレジットを入れていただき、事後でも結構ですのでご一報ください。

以前フキダシで行ったアンケート「修学旅行先では自腹で行動!? 旅行行事の教員負担調査」では、旅行行事での教員の“自腹”の現状について現場の声を集めました。

結果記事はこちら。

そのアンケートの中で、「他の内容についての自腹も多くある」との意見も寄せられていたことから、フキダシでは、教員の“自腹”についての連続アンケートを実施しました。

※このアンケートでは“自腹”を業務上の必要性の観点から、「業務遂行上絶対に必要であり本来公的に支出されるべきだが、個人の負担になっている費用」と「業務遂行上絶対に必要とは言えないがあった方がよいと思い個人で負担している費用」とに分けて取り扱っています。

第3回は「学級経営」に関わる費用について聞きました。

第1回では「教科指導・教材研究」、第2回では「学級経営」についての自腹について調査しました。その結果は下記をご覧ください。

アンケートの概要

■対象  :全国の小〜高校年齢の児童生徒が通う一条校に勤務する教職員
■実施期間:2022年11月11日(金)〜2022年12月5日(月)
■実施方法:インターネット調査(実施時の設問はこちら
■回答数 :28件

アンケート結果

設問1 「絶対必要なモノ」の自腹

Q1-1. 部活動やその他課外活動のためにかかる費用の中で「業務遂行上絶対に必要であり本来公的に支出されるべきだが、個人の負担になっている(自腹となっている)費用」が含まれているものを選択してください。(複数選択可)

業務遂行上絶対に必要であり本来公的に支出されるべきだが、個人の負担になっている(自腹となっている)費用としては、「備品・用具代」「交通費」「文具代」の順で多いことがわかりました。中学校では、回答者の7割以上が個人で「交通費」を負担することがあるようです。「自腹はない」と回答したのは回答者28人のうち、1人でした。

設問1-2 具体的な内容は?

Q1-2. 内容を具体的に記入してください。

備品・用具代

大会のための審判服、ホイッスル、その他道具代。【中学校・教員・バレーボール部】

指導用、自分で技術習得する目的で買う道具やスポーツウェア代は自腹。【中学校・教員・卓球部】

スキー指導のためのスキー道具。【小学校・教員】

公式戦に参加する場合、監督も選手と同一のユニフォームを着用しなければならないので、ユニフォーム、アンダーシャツ、ベルト、スパイクなどの費用は自分持ちです。自分が練習時に着るウェアはそれなりにお金がとられます。寒いのが嫌なので、意外と寒い時期の防寒具にお金がかかっているかもしれません。また、部費だけではお金が足りないときもあるので、部のバットのグリップテープなどは自分で購入しています。【中学校・教員・野球部】

交通費

大会や遠征の交通費は全て自腹になる。生徒引率のための折り畳み自転車を購入した。(学校の自転車は大会集中日は利用希望者が多数いるため、私物を用意する必要があった)【中学校・教員・卓球部】

土日の部活動は、交通費が出ないし、大会引率の場合の交通費も支給されない。移動に2時間かかるような場所に引率の場合でも、交通費が出ないのは理解しがたい。【中学校・教員・陸上部】

休日の部活動の交通費が高額になる。遠距離通勤しているが、休日の部活動に係る交通費は支給されない。交通費だけで赤字になる為お金を払って指導に行っている状態である。【高等学校・教員・バスケットボール部】

通信費

土日や夜は学校の電話が留守電になるため、他校の顧問とのやり取りは個人のスマホを利用する必要がある。土日や早朝の欠席連絡はスマホで行うしかない。大会会場からの連絡もすべて顧問の自腹になる。【中学校・教員・卓球部】

部活動や課外活動では、緊急時などに連絡を取る必要が出てくる。しかし、使うのは個人持ちの携帯電話。通話料はもちろん自腹。【中学校・教員・演劇部】

飲食費

運営に来た先生方の飲み物代(役員会で、会場校で準備するよう言われた)。【中学校・教員・野球部】

研修・講習費

部活動指導で学ぶための書籍代・【中学校・教員・バレーボール部】

競技未経験者のための研修参加(土日)に必要な経費は自腹。【中学校・教員・卓球部】

研修費は、遠方なので最近は有料のウェブ記事を買って知識を更新しています。【中学校・教員・野球部】

合宿費

合宿を行う際には、宿泊費は自己負担になる。【高等学校・教員・バスケットボール部】

遠方の大会参加のために前入りで宿泊し、翌日勝ち残った場合に備えても宿泊している顧問の宿泊費は自腹。【中学校・教員・卓球部】

設問2 1の自腹額は?

Q2. 設問1で答えた額は、合計すると1年あたりどの程度になりますか。

業務遂行上絶対に必要であり本来公的に支出されるべきだが、個人の負担になっている(自腹となっている)費用の金額としては、年間5,000円以上1万円未満の人が全体の約3割でした。回答者の多くは5万円未満の費用の負担でしたが、中には10万円を超える負担をしている人もいることがわかりました。

設問3 「あった方がいいモノ」の自腹

Q3-1. 部活動やその他課外活動のためにかかる費用の中で 「業務遂行上絶対に必要とは言えないがあった方がよいと思い個人で負担している費用」 が含まれているものを選択してください。(複数選択可)

業務遂行上絶対に必要とは言えないがあった方がよいと思い個人で負担している費用としては、設問1と同様に「備品・用具代」が最も多い結果となりました。次いで多かったのは「電子機器代」「通信費」「交通費」でした。電子機器を用意したり通信環境を整えることが活動のしやすさに繋がることもあり、「必要とは言えないがあった方がよい」と判断して教職員が個人で負担していることが想定されます。

設問3-2 具体的な内容は?

Q3-2. 内容を具体的に記入してください。

備品・用具代

審判をするときの防具を購入する費用。【中学校・教員・野球部】

高額なバットがあるほうが長打が出るので顧問で分担して負担。試合の結果に影響するし、生徒が喜ぶので買ったが、お金で勝利を買っているような感じで、用具の高騰化に中体連が使用禁止などの規制をかけないことには納得いっていない。【中学校・教員・野球部】

部活で使用する物品を教員で購入することがあります。部費を集めると、会計報告やお金の管理、会計が合わないなど、万が一の際は始末書となりますので、ならばこちらが自腹を切った方が時間的に楽だという判断です。【中学校・教員・演劇部】

飲食費

生活困窮家庭の生徒の弁当代が顧問自腹になっていたときもある。練習試合相手校顧問への差し入れ飲料代。毎回慣習で必要。【中学校・教員・卓球部】

研修・講習費

部活動での指導や審判などを行うために講習会などに参加してスキルアップをはかっている(はからされているが実情)。場合によっては協会登録費などの名目で自腹でお金を払っている。また、子どもたちのために、選抜の子どもたちが参加する大会への遠征費や練習費などを顧問会でカンパとして集める。顧問会なので払わないと周囲からの視線が厳しくなるので、実質強制と一緒である。【中学校・教員・バレーボール部】

任意参加の講習会に連れて行ったり、自分が部活動を指導するために研修に参加する費用はすべて自腹。【中学校・教員・演劇部】

設問4 3の自腹額は?

Q4. 設問3で答えた額は、合計すると1年あたりどの程度になりますか。

業務遂行上絶対に必要とは言えないがあった方がよいと思い個人で負担している費用の金額としては、設問3と同様に5,000円以上1万円未満が最も多い結果となりました。また、同様に回答者の多くは5万円未満の費用の負担でしたが、中には10万円を超える負担をしている人もいることがわかりました。

設問5 部活動・課外活動についての自腹、どう思う?

Q5. 部活動やその他課外活動に関する自腹について、あなたの思っていることや意見、考えを教えてください(困っていること、改善のためのアイディア・工夫、その他)。

必要な備品の購入に予算をつけてほしい

自治体によっては、ジャージや道具を購入するための補助がそれぞれに年間数万円出るらしいので、それだとありがたいです。【中学校・教員・野球部】

個人で使うものだから、という理由で競技道具を自腹で購入する、という流れが自然にまかり通ってきていたのだなと思う。しかし、その道具はその教員が趣味で行うものではなく指導のために必要な道具であるのだから、学校で指導用備品として準備するということが当然であると思う。この道具に関する曖昧さはどこから生まれるのだろうか。【小学校・教員】

仕事として認められる場合はまだマシだが、プライベートの時間を使って自腹で活動してるのは補助してほしい。それでなくても、生徒に飲み物やお菓子を買って自腹をきっている。【高等学校・教員・美術部】

顧問としての業務に予算をつけてほしい

顧問での会食も自腹でなく会社の経費のような扱いにしてもらえたらと思う場面がある。【高等学校・教員・理科部】

大会運営役員を依頼されて行っているのに、特勤手当がつかない、昼食費が支給されない。資格取得費用も個人持ち。大会主催する団体や中体連がもっと予算を増やし、運営する人に対しての正当な報酬や費用を担保すべきだと感じる。【中学校・教員・バレーボール部】

休日の生徒を伴わない部活動に関する会議や大会運営者としての大会参加は、勤務扱いとなり部活指導としてお金は降りません。担任などは振り替え休暇がとれないため、部活動指導費として特別手当をつけて欲しいと思います。【中学校・教員・演劇部】

部活動のあり方を見直すべき

現在の学校部活動の体制もそうであるが、教員の自己負担と善意によってなりたっている活動はすべきではない。あくまでも業務とするならばそれ相応に制度と環境を整えるべきである。【高等学校・教員・バスケットボール部】

やはり部活全体を外部委託した方が良い。大会の運営も多大な負担となっているので、専属で業務する人が欲しい。【特別支援学校・教員・卓球部】

まとめ

「業務遂行上絶対に必要であり本来公的に支出されるべきだが、個人の負担になっている(自腹となっている)費用」と「業務遂行上絶対に必要とは言えないがあった方がよいと思い個人で負担している費用」では、その内訳や金額に大きな差は見られませんでした。金額の大きさに関わらず、多くの教職員が個人で費用の負担をしている現状があるようです。金額は年間5,000円以上1万円未満が多く、中には10万円を超える負担をしている人もいることがわかりました。

内訳としては、ユニフォームや審判服、ホイッスル、防寒具など、「備品・用具代」が最も多く、部活動に所属する生徒たちへ飲み物やお菓子を買うための費用を負担している人もいるようです。また、大会運営の役員を任されている人は、生徒の引率を伴わない大会運営や会議での出張では部活指導としての手当がつかないケースもあるようです。中には大会や練習試合の引率の際に発生する交通費や合宿費を個人で負担している人もいました。

部活動において教職員が個人で負担している費用がある現状に対しては、「予算をつけてほしい」という声があったほか、「そもそも部活動を外部委託するべき」という声も寄せられました。


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