学校をもっとよくするWebメディア

メガホン – School Voice Project

学校をもっとよくするWebメディア

学校には、教育目標をはじめとする様々な目標や方針があります。こうした多様な目標が、教職員の意識や教育活動のスタイルに影響を与えています。教職員がそれらの影響を受けながら、思い思いの学級経営や教科指導を行っている現状には、メリットもありますが、デメリットもあります。

こうした中で導入されたのが、カリキュラム・マネジメントです。そのねらいは、一人一人の教職員をつなぎ、学校、さらには地域も巻き込んだ “協働” を実現し、学年・学級経営や教科経営のあり方を変えることです。

この記事では、カリキュラム・マネジメントの概要と進める手順を、いわゆる「3つの柱」を軸に解説します。また、先行事例を通じ、カリキュラム・マネジメントの運用でよくある課題と、その対処法についても紹介します。

カリキュラム・マネジメントとは?

カリキュラム・マネジメントとは、子どもたちや地域の実態を踏まえ、各学校が学校教育目標を実現するために、教育課程を編成・実施・評価・改善していくことです。

カリキュラム・マネジメントは現行版、つまり平成29・30年改訂学習指導要領から、小学校、中学校、高等学校それぞれに明記されました。

各学校においては,児童や学校,地域の実態を適切に把握し,教育の目的や目標の実現に必要な教育の内容等を教科等横断的な視点で組み立てていくこと,教育課程の実施状況を評価してその改善を図っていくこと,教育課程の実施に必要な人的又は物的な体制を確保するとともにその改善を図っていくことなどを通して,教育課程に基づき組織的かつ計画的に各学校の教育活動の質の向上を図っていくこと(以下「カリキュラム・マネジメント」という。)に努めるものとする。

引用「小学校学習指導要領(平成29年告示)」「中学校学習指導要領(平成29年告示)」(文部科学省,2022年12月14日参照)

各学校においては,校長の方針の下に,校務分掌に基づき教職員が適切に役割を分担しつつ,相互に連携しながら,各学校の特色を生かしたカリキュラム・マネジメントを行うよう努めるものとする。

引用「高等学校学習指導要領(平成30年告示)」(文部科学省,2022年12月14日参照)

平成29・30年改訂学習指導要領について詳しくはこちら。

カリキュラム・マネジメントの三つの柱

中央教育審議会は、カリキュラム・マネジメントを以下の三つの側面から解説しています。

  • 教科横断
  • PDCAサイクル
  • 地域と連携

1. 教科を横断して教育課程を編成

一つ目は、教科横断的に教育課程を編成することです。

教科ごとの教育内容を相互に関連づけ、学校教育目標の達成に必要な内容を組織的に配置していきます。

2. PDCAサイクルで教育の質向上を

二つ目は、教育内容の質を向上させるために、PDCAサイクルを回すことです。

子どもたちや地域の現状に関する調査・デ ータ等を基に、教育課程の編成・実施・評価・改善を行います。

3. 地域と連携した授業の編成

三つ目は、教育活動に必要な資源を効果的に活用することです。必要な資源とは、地域などの外部の資源も含む人的・物的資源を指します。
参考「4.学習指導要領等の理念を実現するために必要な方策」(文部科学省,2022年12月14日参照)より

カリキュラム・マネジメントの手順

以上のように、カリキュラム・マネジメントは、学校がPDCAを回して教育課程を運営することを意味します。

その具体的な手順は以下の通りです。

1. 学校のグランドデザイン
 学校教育を通じて児童・生徒に育成すべき資質・能力を考えます。

2. 各学年で育成すべき資質・能力のグランドデザイン
 学年ごとにどのような資質・能力を育成すれば良いかを計画します。

3. 各教科等の年間指導計画
 グランドデザインを踏まえ、各教科では年間でどのような教育活動を行うべきかを計画します。

4. 各教科等の単元指導案(単元の指導計画)
 年間指導計画で考えた内容を、単元に落とし込みます。

5. 各教科等の単元指導案を基にした「学びのプラン」
 単元指導案を基に、授業の計画を立てます。

6. 上記 1 から 5 の自己点検・自己評価、改善の方向性
 計画を実行し、うまくいった点や改善点を洗い出し、次の計画に繋げます。

参考「カリキュラム・マネジメント~新学習指導要領とこれからの授業づくり~」(髙木展郎,独立行政法人教職員支援機構,2022年12月14日参照)より

カリキュラム・マネジメントの導入方法

ここからは、カリキュラム・マネジメントを行う際の課題について解説します。

カリキュラム・マネジメントの実施では、「何から始めれば良いかわからない」「学校全体で取り組むのが難しい」という課題に直面しやすいです。

以下では、それぞれの解決策を先行事例とともにご紹介します。

何から始めればよい?まずは「実態把握」から

カリキュラム・マネジメントを行う際にぶつかるのは、「何から手を付ければ良いかわからない」という課題です。そこで、枚方市立招提(しょうだい)小学校の事例をご紹介します。

枚方市立招提小学校は、児童の実態を把握し、学校教育目標や目指す子ども像を基に、児童に「つけたい力」を絞り込むことからスタートしました。

「つけたい力」が決まったら、その力をつけるために各教科でどんな学習を行うか、教科同士をどう繋げるかを考え、年間指導計画に落とし込んでいます。

参考「国語科を軸とした教科等横断的な視点でのカリキュラム・マネジメントを通して、子どもたちの言語能力の育成を図る」(枚方市立招提小学校,2022年12月14日参照)より

このように、枚方市立招提小学校は児童の実態を把握するところから始めていますが、その具体的な方法には以下のようなものがあります。

実態把握・課題共有の方法

  • 児童の様子を見取る
  • テスト等の採点、分析
  • 児童生徒アンケートから課題を発見
  • KJ法で課題や進むべき方向性を出し合う
  • 学校関係者評価、学校関係団体からの意見や要望の聴取など

参考「カリキュラム・マネジメントの手引き」(大阪府教育庁市町村教育室 小中学校課,2022年12月12日参照)より

KJ法とは、断片的な情報・アイデアを効率的に整理する目的で用いられる手法。カードやふせんにアイデアを書き込み、それらをまとまりごとにカテゴライズしたりして整理する方法をとる。

グランドデザインを作成する準備のために、児童の実態を把握することが大切です。その際、データに基づいて客観的に把握することが望まれます。

また、カリキュラム・マネジメントを学校全体で推進していくためにも、できる限り全教職員が参加して行うことが重要となります。

学校全体でカリキュラム・マネジメントの取組みを進めるためにはどうすればよい?

カリキュラム・マネジメントは、学校全体で取り組むことが重要です。そのための方策として、次の3つの事例をご紹介します。

・まずは一つの学年で集中的に行い、それを全校へ波及させる(枚方市立第一中学校)
・全教職員でゴールと実行のプロセスを共有(和泉市立信太小学校)
・視覚的カリキュラム表の作成(上越市教育委員会)

一つの学年で集中的に行い、それを全校へ波及

全校でカリキュラム・マネジメントをスタートするのは簡単なことではありません。そこで、枚方市立第一中学校は、まず一学年でカリキュラム・マネジメントに取り組みました。これにより、教職員のリソースを集中させることができます。そして、一学年の取り組みで得られた子どもの変化を全校へ発信することで、カリキュラム・マネジメントの必要性が学校全体に波及しました。

参考「カリキュラム・マネジメントの手引き」(大阪府教育庁市町村教育室 小中学校課,2022年12月12日参照)より

全教職員でゴールと実行のプロセスを共有

和泉市立信太(しのだ)小学校では、カリキュラム・マネジメントのゴールと手だてを研修で全教職員に共有しています。そして、研修通信を発行して取り組みの成果や課題を継続的に発信することで、取り組みやその方向性を学校全体に広げています。

以上2校について、参考「カリキュラム・マネジメントの手引き」(大阪府教育庁市町村教育室 小中学校課,2022年12月12日参照)より

視覚的カリキュラム表

また、カリキュラム・マネジメントの優良事例として挙げられる上越市教育委員会は、「視覚的カリキュラム表」の作成を推奨しています。この表を作成することで、重点目標等が意識化されやすくなり、教職員の協働を促す効果があります。

引用:「視覚的カリキュラム表」(上越市雄志中学校,2022年12月7日)より

地域との連携をどのように行えばよい?

カリキュラム・マネジメントでは地域資源の活用も求められています。

地域との連携のためには、まず地域を知ることが重要です。地域にはどんな資源(人、産業、自然など)があるのかや、地域にある大学などの教育機関・企業などにも目を向けましょう。その上で、地域とともにどんな学校づくりをしたいのかを明確にし、地域の理解を得る必要があります。

また、単に教育目標を共有するのではなく、地域や保護者の想いも踏まえて目指す子ども像を作る姿勢が望まれます。

「学校と地域の連携について」アンケート実施結果

School Voice Projectは2021年、全国の小〜高校年齢の児童生徒が通う一条校に勤務する教職員に対し、「学校と地域の連携について」というテーマでアンケートを実施しました。そこから、地域との連携をどのように行えばいいのかのヒントを探ってみます。

既に実施されている地域連携の取り組みの割合が多いものとして、以下の3つがあります。

  • 地域の方をゲストスピーカーとして招く
  • 地域人材による学校サポート
  • 総合学習等で地域の課題解決に取り組む

【教職員アンケート結果】学校と地域の連携について

地域連携がこれからという学校にとっては、これらの活動が地域連携の入口として取り組みやすいと考えられます。

北海道や東北圏では「農家や施設等で体験学習を行う」活動も上位にあり、地域の特色を生かした連携方法が採用されているようです。

一方、地域連携は、概ねどの地域でも重要だと感じている一方、仕事の負担が増えたり、取り組みが形骸化するなどの懸念やジレンマを感じる意見もあがっていました。

こちらのアンケート解説記事では、さらに多様な地域連携の具体例や、教職員の方の意見について紹介、分析していますので、ぜひ参考にしてください。

また、こちらでも、小学校の教科担任制について、カリキュラム・マネジメント上の効果を述べた意見を紹介しています。

まとめ

カリキュラム・マネジメントは、子どもたちや地域の実態を踏まえ、学校教育目標を実現するために、PDCAを回して教育課程を運営することです。

まずは客観的なデータを基に子どもたちの実態を把握し、学校のグランドデザインを作成しましょう。そして、グランドデザインの内容をより細かい計画に落とし込んでいきます。

また、学校全体でカリキュラム・マネジメントに取り組むための工夫も重要です。全教職員が参加する、学年を絞って徐々に波及させる、一目でわかるカリキュラム表を作成するなど、多様な工夫のやり方があります。

子どもや地域の実態をしっかりと捉え、全職員が協働することが必要です。

以前フキダシで行ったアンケート「修学旅行先では自腹で行動!? 旅行行事の教員負担調査」では、旅行行事での教員の“自腹”の現状について現場の声を集めました。

結果記事はこちら。

そのアンケートの中で、他の内容についての自腹も多くある、との意見も寄せられていたことから、今回フキダシでは教員の“自腹”についての連続アンケートを実施しました。

※このアンケートでは“自腹”を業務上の必要性の観点から、「業務遂行上絶対に必要であり本来公的に支出されるべきだが、個人の負担になっている費用」と「業務遂行上絶対に必要とは言えないがあった方がよいと思い個人で負担している費用」とに分けて取り扱っています。

第2回は「学級経営」に関わる費用について聞きました。

第1回では「教科指導・教材研究」、第3回では「部活動・課外活動」についての自腹について調査しました。その結果は下記をご覧ください。

アンケートの概要

■対象  :全国の小〜高校年齢の児童生徒が通う一条校に勤務する教職員
■実施期間:2022年10月16日(日)〜2022年11月14日(月)
■実施方法:インターネット調査(実施時のアンケートはこちら
■回答数 :42件

アンケート結果

設問1 「絶対必要なモノ」の自腹

Q1. 学級経営のためにかかる費用の中で 「業務遂行上絶対に必要であり本来公的に支出されるべきだが、個人の負担になっている費用」 が含まれているものを選択してください。(複数選択可)

小中学校に所属する人は、約半数が「教室内の備品代」「文具代」を選択。高校では通信費を選択した人が半数でした。「研修・講習費」「電子機器代」への出費は比較的少ない傾向がありました。「自腹はない」と回答したのは全体の2割程度でした。

設問1-2 具体的な内容は?

Q1-2. 内容を具体的に教えてください。

 個人の費用負担がある方の主な回答

教室内の籠やファイル立て、全員の名札を入れる壁掛け、引き出しを整理する小さいカゴや棚など100均で買いました。【小学校・教員】

クラスの整理整頓用のファイルボックス。各種回収用のかごや箱(100円均一等で購入)。【小学校/義務教育学校・教員】

教室で使用するマグネット、清掃用具(自在ぼうきやちりとりではなく、クイックルワイパーなどのフロアモップ、小さいちりとり(黒板受けの清掃用)マイクロファイバークロス、窓拭きスプレー)【中学校・教員】

経費では購入できない整理整頓グッズや清掃グッズを100均で買います。さらに、ミニホワイトボードとペンを200円×クラスの人数分購入するので、合わせて1万円弱はかかります。【中学校・教員】

・自分が業務で使用する文具の大半
・生徒が使用する画用紙やテープ類
・教室内に設置したプラスチック棚やレターケース【特別支援学校・教員】

クラス対話や学級をより良くするためのワークショップで使用するポストイットや模造紙、マーカーなど。ぞうきん【高等学校・教員】

 個人の費用負担がない方の主な回答

学年主任の先生が「自腹はだめです!」と仰ってくださったので、その話を周囲でもできています。100円でもレシートを持ってくるようにとおっしゃってくれます。【小学校・教員】

設問2 1の自腹額は?

Q2. 設問1で答えた額は、合計すると1年あたりどの程度になりますか。

小学校では出費金額のばらつきが大きく、「自腹はない」を選択した人がいる一方で、半数以上が年間1万円以上の出費をしていることがわかりました。中学校、高校では小学校ほど多い出費をしている人は少ないものの、多くの人が1万円未満の出費をしていることがわかりました。

設問3 「あった方がいいモノ」の自腹

Q3. 学級経営のためにかかる費用の中で 「業務遂行上絶対に必要とは言えないがあった方がよいと思い個人で負担している費用」 が含まれているものを選択してください。(複数選択可)

「業務遂行上絶対に必要とは言えないがあった方がよいと思い個人で負担している費用」 

でも、設問1と変わらず「教室内の備品代」と「文具代」が多い傾向がありました。小学校では「研修・講習費」を選択した人も多く、その数は小学校に所属する回答者の半数を超えていました。

設問3-1 具体的な内容は?

Q3-1. 内容を具体的に教えてください。

個人の費用負担がある方の主な回答

備品など:サイコロトークで使うサイコロ
文具:学年・学級だよりで使うイラスト・カット集
研修等:学級ゲームなどの書籍、セミナー参加費【小学校・教員】

忘れもののをした子どものための文房具
子どもたちが使うペン、ホワイトボード
ちゃぶ台やソファなどの家具
学級経営に関わる研修費
けん玉やコマ、カードゲームなどの遊び道具【小学校・教員】

児童用のブックスタンドや荷物入れ。ノートを見た時のスタンプ。掃除用のちりとりや水場のスポンジ。業務遂行上絶対に必要とは言えないというのが難しい。例えば、集金袋の金額や名目を手書きで全て書くことは可能だし、そのようにしか学校は用意してくれない。ただ、それでは集金のたびに途方もない時間がかかるので、金額用のスタンプや名目スタンプを購入している。購入しなければ、すべての業務に途方もない時間がかかる。【小学校・教員】

教室で使うティッシュ、ウェットティッシュ、貸出用筆箱とその中身、児童が何かしら持ち帰りたい時用のビニール袋やジッパー袋、割り箸、磁石やクリアファイル。
授業や学校生活に必要な消耗品で、家庭から持ってきてもらうことが可能なものもあるが、公費で用意できるとやりやすい。【小学校・教員】

掲示物を見やすくしたり、華やかにできるようなお洒落なステーショナリーなどがあると買ってしまう。また、朝には読書の時間があり、忘れた時だけでなく、ちょっと読んでもらいたいと思う本をおいて置くようにしている。【中学校・教員】

学級経営のための研修代金は、都市部までの交通費1万5千円、宿泊費1万円、セミナー代金4千円くらい1回参加するのにかかるでしょうか。それが年間3回くらいあるでしょうか。【中学校・教員】

学級文庫の書籍などは自分で揃えています。【高等学校・教員】

クラスで席替えをするのに、有料のアプリを購入。【高等学校・教員】

設問4 3の自腹額は?

Q4. 設問3で答えた額は、合計すると1年あたりどの程度になりますか。

設問3と変わらず、中学校や高校よりも小学校の方が出費金額にばらつきがありました。年代別に見ると、20代の人の約6割が年間1万円以上2万円未満の出費をしていることがわかりました。年代が上がるにつれて、1万円以上2万円未満の出費をしている人は減るものの、金額が減る人と増える人で大きく分かれる傾向が見られました。

設問5 学級経営についての自腹、どう思う?

Q5. 学級経営に関する自腹について、あなたの思っていることや意見、考えを教えてください。(任意)

困っていること

経験年数が積み上がると、自分の持ち物や必要なものも見通しがもて、ストックも増えてくるので年間の自腹総額は減ってきたが、3年目くらいまでの給料の中で自腹で支払うのは、結構辛かった。【小学校・教員】

購入したいものがAmazonでしかなかったり、便利だったりするのにボイントがつくからという理由で購入できないことが困る。結局、自腹で購入したほうが楽。【小学校・教頭】

業務上必要な消耗品は事務室が購入しているものの、発注や受け取りが非常に煩雑で、ついつい自分で購入してしまう。【特別支援学校・教員】

事務への申請だと、注文→発注→現物が届くまで数日~1、2週間ほどかかってしまうので、実際は「今日、明日にすぐ欲しい!」と思うものが、その時に間に合わないので、非常に不便になった。【中学校・教員】

改善のためのアイデアや要望

各学級で、例えば年間1万円と学級経営(運営)費として消耗品を購入するための予算があるとやりやすい。学級によって必要になるものや量に差があるが、決められた予算の中で各担任が裁量を決められると良いと思う。【小学校・教員】

予算で全て賄われるべきなのは基本であるが、教師側もこだわりを捨て、かけなくても良い自腹を止める事が働き方改革に繋がる。やらない、手を抜く、妥協をもっと増やすべき。【中学校・教員】

任意で行っているものは職務命令に基づいたものではないので、自腹を0にするのは難しいと思います。特に学級経営に関しては、決まりはなく、教員がそれぞれの考えで自分の強みを活かしてやっていることが多いと思うので、全員統一することも難しいです。【小学校・教員】

自己研鑽として書籍購入やセミナー参加などに自己投資をすることは、個人の裁量だと思う。しかし、業務遂行と職能発達はともに重要な仕事の範囲だと考えているため、公的な研修の設定だけでなく個人的な関心にもとづく自己研修に対しても予算を配当してもらえることが必要だと思う。【小学校・教員】

全体で注文するとなると、予算の枠の限度が出てきたり、ちょっとおしゃれに飾りたいなどと考えると自腹にならざるを得ない。少しでも教室が環境良くなるようにと考えるが、全体で購入されるものはどうしても無機質で事務的なものになるので仕方ないかもしれない。【中学校・教員】

まとめ

自由記述では、書籍代やセミナーの参加費など、「教材研究や自己研鑽のための予算をつけてほしい」という声が多く集まりました。一方で、任意で購入している物もあり、「ある程度は仕方がない」「自腹の方が気軽に購入できる」などの意見も集まりました。また、授業においては急遽教材の購入が必要なことも多く、経費申請の手続きをしていると準備が間に合わないため、やむを得ず自費で賄っているケースもあるようです。「立て替えで購入をした際に、後日経費申請ができるようにしてほしい」という声もありました。


▼ 自由記述の回答一覧は、以下よりダウンロードしてご覧ください。 ▼

アンケート資料ダウンロード 申し込みフォーム

* 記入必須項目

■お名前*
■メールアドレス*
■立場*
■データの使用用途*
■ご所属
■教職員アンケートサイトフキダシへの登録を希望する
※対象は教職員の方のみです。
■メガホンの運営団体School Voice Project への寄付に興味がある

※メディア関係者の皆様へ
すでに公開されている教職員アンケート結果やWEBメディアの記事の内容等は報道の際に使用いただいて構いません。その際は【出典:NPO法人School Voice Project 】クレジットを入れていただき、事後でも結構ですのでご一報ください。

近年、学校の運動会(体育的行事)の形やあり方が変化しています。以前はどの学校でもよく見られていた整列・行進・早朝練習や組体操などの取り組みも、実施の方法が見直されている例もあります。運動会(体育的行事)についてのあなたの考えを聞かせてください。

※このアンケートでの運動会(体育的行事)は、中学校や高等学校における体育祭・運動祭・スポーツフェスティバル等の行事を含みます。

アンケートの概要

■対象  :全国の小〜高校年齢の児童生徒が通う一条校に勤務する教職員
■実施期間:2022年11月11日(金)〜2022年12月5日(月)
■実施方法:インターネット調査(実施時の設問はこちら
■回答数 :62件

アンケート結果

設問1 運動会で実施している内容は?

Q1. 勤務校で行っている運動会(体育的行事)の各内容の実施状況を教えてください。(複数選択可)

小学校では、現在実施している内容の中で最も多かったのは「保護者の観覧」で、92%の人が選択。次いで、多かったのは、「団体演技」(72%)、「チーム(紅白等)分け」(69%)でした。逆に実施していると選択した人が少なかった内容としては、「1日を通しての開催」と「保護者や地域住民の参加」で、6%。次いで少なかったのは、「組体操」(11%)でした。また、コロナ禍以前には実施しておらず現在は実施されている内容では「保護者の観覧」(39%)、コロナ禍以前は実施していたものの現在は実施されていない内容では「1日を通しての開催」(89%)との声が多く集まりました。

中学校では、現在実施している内容の中で最も多かったのは「開会式・閉会式 」と「整列」で、全員が選択。次いで、多かったのは「点数・順位付けによる競争」と「保護者の観覧」(89%)でした。逆に実施していると選択した人が少なかった内容としては、「組体操」で、0%。コロナ禍以前に実施していた学校は28%。組体操の危険性については以前から指摘されており、コロナ禍をきっかけに取りやめる学校があったことが推測できます。次いで実施が少なかったのは、「保護者や地域住民の参加」(17%)、「行進」(23%)でした。また、コロナ禍以前には実施しておらず現在は実施されている内容では「開会式・閉会式」「整列」(39%)、コロナ禍以前は実施していたが現在は実施されていない内容では「保護者や地域住民の参加」(67%)と答える回答が多く集まりました。

設問2 運動会で実施する必要がある内容は?

Q2. 運動会(体育的行事)において、下記の内容は本来実施する必要があると思いますか。あなたの考えを教えてください。

小学校では、「やった方がよい」と答えた人が最も多かったのは、「保護者の観覧」で61%の人が選択。次いで多かったのは、「開会式・閉会式」(44%)、「全学年参加での開催」(39%)でした。逆に「やらない方がよい」と答えた人が最も多かったのは「体育の授業時間以外の練習」で86%の人が選択。次いで多かったのは、「1日を通しての開催」(72%)、「組体操」(67%)でした。

「団体演技」と「チーム(紅白等)分け」は約70%の人が、設問1で「実施している」と回答していたのに対し、「団体演技」は22%、「チーム(紅白等)分け」は33%の人が「やらない方がよい」を選択しました。

中学校では、「やった方がよい」と答えた人が最も多かったのは、「全学年参加での開催」で50%の人が選択。次いで多かったのは、「保護者の観覧」「開会式・閉会式」(44%)、「点数・順位付けによる競争」「チーム(紅白等)分け」(39%)でした。逆に「やらない方がよい」と答えた人が最も多かったのは「組体操」で94%の人が選択。次いで多かったのは、「進行」(89%)、「旗やクラスTシャツなどの制作」「1日を通しての開催」(72%)でした。「整列」は全員が、設問1で「実施している」と回答していたのに対し、31%の人が「やらない方がよい」を選択しました。

設問3 運動会(体育的行事)についての考え

Q3. 勤務校で行っている運動会(体育的行事)について、あなたの考えを教えてください。(プログラムの内容、当日までの準備、当日の運営、そもそもの在り方について、など)(任意)

当日までの準備に関する主な意見

小学校なので、表現があるが、見栄えや保護者の期待、教師の思いのため、練習日程以上の練習をする教員がいて、そこには疑問を感じている。【小学校・教員】

開会式や閉会式を「きちんと」やるために、貴重な時間を使って練習はいらないと思います。昼休みや放課後を使っての練習は、教師の負担となるだけでなく、参加したくない生徒まで強制されているような雰囲気があるのでよくないと思う。【中学校・教員】

9月に入って早々に、体育祭の準備や練習でまともに授業が進んだためしが無い。また、夏休みから教師は準備に追われるため、長期休みが休みとして機能していない。体育教師は「当然のもの」として捉えているが、教師の身体的、心理的負担を完全無視したやり方で、このような教師がいては昨今の採用試験倍率の低下も「そりゃそうなるよな」という印象だ。【中学校・職員】

まず基本的に学校行事なのに対して、体育科職員の負担が大きすぎる。勤務時間も朝も放課後も超過するのは当たり前となってしまっている。体育祭は学生にとって大切な思い出となり、教育的な意義もあるかと思うが、その体制をどうしていくのか考えるべきである。【高等学校・教員】

プログラムの内容についての主な意見

保護者は今までの運動会を求めている。リレーがあって、団体競技があって、表現ダンスがあって。それに応えたい先生もいる。でも、キャパオーバー。暑い春や秋では観覧も練習も厳しい。無謀である。【小学校・教員】

クラス対抗を廃止し、その日限りのチームを結成しても良いと思う。インクルーシブ視点から従来の競技内容を、誰でも参加可能なものに見直していくべきである。【中学校・教員】

コロナで組体操やダンスがなくなって、生徒も教員も負担が減った。特に困ることもないので、今後もなくてよい。入場行進も簡素化されたが、全く問題はない。できるだけ練習は少なく、運動が苦手な生徒も楽しめるよう、生徒が作る体育祭が好ましい。【中学校・教員】

当日の運営についての主な意見

学年を半分に分けて、1,3,5年生が外で運動会をしている間、残りの学年は教室でオンラインで参加。盛り上がりに欠けるし、全学年が外で直接応援しても良いのではないかと感じた。【小学校・教員】

コロナ禍以前は、多くの種目に時間をかけて1日かけて実施をしていた。しかし、プログラムをなど必要最低限度の内容に精選していき、半日で終わることができている。今更、プログラム内容をコロナ禍まで戻す必要はないのではないか。そうすることで、準備や当日の運営などのコンパクトにでき、必要以上の仕事を作る必要もないと思う。【中学校・教員】

運動会(体育的行事)のあり方についての主な意見

体育科の目標は、生涯通して運動に親しむことが挙げられています。運動会で体育嫌いになってしまう子が少なからずいるのであれば、目的から問い直し、どのような運動会を作っていくのかを子どもの意見も交えながら話し合い、作り変えていく必要があると思います。【小学校・職員】

保護者として、子どもが思い切り体を動かしている姿が見られれば十分だなと思うが、学校は厳密な競争や得点配分、整然とした集団行動をとても重視していると感じる。そうさせている社会の目は、本当にあるのだろうか。子どもと保護者と一緒にどんなことをしたいか、見たいかを話しあえるといいのかもしれない。しかし、そういう根本から考えるだけの余力が学校には無いことが大きな問題なのだろう。【小学校・教員】

まとめ

コロナ禍により、多くの学校でこれまで実施してきた内容を変更せざるを得ない状況がありました。設問1では「コロナ禍以前は実施していたが現在は実施せず」を選択した人がそれぞれの項目で目立ちました。「1日を通しての開催」や「行進」、「保護者や地域住民の参加」は、コロナをきっかけに実施しなくなった学校が比較的多いようです。

回答者の意見を見ると、小中学校ともに「保護者の観覧」や「開会式・閉会式」はやった方がよいという声が多く集まりました。運動会のあり方を問う声も多く、子どもたちが楽しんだり話し合ったりすることの重要性を訴える意見もありました。また、教員の立場では、準備や当日の運営への負担が大きく、コロナ禍で簡素化されたことで負担が減ったという声が目立ちました。


▼ 自由記述の回答一覧は、以下よりダウンロードしてご覧ください。 ▼

アンケート資料ダウンロード 申し込みフォーム

* 記入必須項目

■お名前*
■メールアドレス*
■立場*
■データの使用用途*
■ご所属
■教職員アンケートサイトフキダシへの登録を希望する
※対象は教職員の方のみです。
■メガホンの運営団体School Voice Project への寄付に興味がある

※メディア関係者の皆様へ
すでに公開されている教職員アンケート結果やWEBメディアの記事の内容等は報道の際に使用いただいて構いません。その際は【出典:NPO法人School Voice Project 】クレジットを入れていただき、事後でも結構ですのでご一報ください。

この社会には、さまざまな個性や特性、社会背景を持った、多様な人たちが生きています。学校も同じで、教室には多様な子どもたちがいます。そのことを前提に、すべての子どもたちの学びを保障しようと理念のもと、世界でも、そして日本でも、インクルーシブ教育が推進されています

一方で、世界におけるインクルーシブ教育の理念(ユネスコの推奨するインクルーシブ教育)と、今の日本の学校教育のあり方や現行制度、そして社会における認識との間には、ズレやギャップも多くあります

この記事では、世界潮流としての「インクルーシブ教育」について、キーワードや現状を解説するとともに、日本で現在行われている「特別支援教育」についても合わせて見ていきたいと思います。

インクルーシブ教育とは

ユネスコ(国連教育科学文化機関)によると、インクルーシブ教育とは「すべての子どもを包摂する教育」のことで、障害がある、性的マイノリティである、外国にルーツがある、ヤングケアラーの子どもなど、多様な子どもがいることを前提として、すべての子どもの教育の保障を目指すものです。重要な点として、インクルーシブ教育は「結果」ではなく「プロセス」であることが挙げられます。多様なニーズを持つ全ての学習者が排除されず、学びに参加できるように取り組み、対応するプロセスそのものが、インクルーシブ教育ということです。

そして、そのゴールには、多様なすべての子どもが共に学び、さらには人々が互いに、多様なあり方を認め合える全員参加型の「共生社会」の実現があります。

世界潮流としての「インクルーシブ教育」の3つのキーワード

まずはじめに、いくつかの重要なキーワードをもとに、インクルーシブ教育の考え方や対応の歴史を紐解いていきます。

サラマンカ宣言

国際文書に初めてインクルーシブ教育が明記されたのが「サラマンカ宣言」です。1994年、スペインのサラマンカで開催された「特別ニーズ教育世界会議」において、ユネスコとスペイン政府によって採択されました。障害の有無に限定せず、「どんな特別な教育的ニーズを持つかにかかわらず、万人が教育を受けられるようにしないといけない」という「万人のための教育(Education for All)」を宣言している点で、国際標準としてのインクルーシブ教育の理念をよく表していると言えるでしょう。

障害者の権利に関する条約

2006年、国連は「障害者の権利に関する条約」を採択し、より具体的なインクルーシブ教育システムの構築について言及しました。
多様性を尊重し、障害のある者が一般的な教育制度から排除されず共に学ぶこと、個人に必要な「合理的配慮」が提供されること等が求められています。
2022年6月現在、条約の締結国は185ヶ国に上り、日本も2014年に批准しています。イタリアのように、条約の理念に則って、法律で特別な学校や学級を廃止した国もありますが、日本も含め、多くの国々はそれらを教育システムの中に維持し「障害のある者が一般的な教育制度から排除されず共に学ぶこと」の実現には課題が残ります。

「医療モデル」から「社会モデル」へ

多くの社会では従来、障がいとは「その個人が抱えている不自由さやハンデキャップ」であると考え、その個人の問題として捉える考え方をしてきました。つまり、”耳が聞こえないこと”、”足が動かないこと”=障がいであるとう考え方です。これを「医療モデル」や「個人モデル」と言います。この考え方のもとでは、その障がいを解消するためには、その個人がリハビリをしたり矯正をしたりして、努力改善することが求められ、また障害とは、医療・福祉の領域の問題と捉えることになります。

一方、世界潮流のインクルーシブ教育においては「社会モデル」という考え方を採用します。障がいはマジョリティにのみ合うようにつくられている社会(人的・物理的環境)の側にあり、障がいを解消する責務は、社会にあるという捉え方です。つまり、”足が動かなくて車椅子に乗っている個人”が問題なのではなく、”段差だらけの街”が問題なのであって、そちらを変えていこうよというベクトルです。

「社会モデル」は、上記の「障害者権利条約」で考え方が示されており、障がいについての考え方はこちらが主流となってきています。マイノリティの生きづらさや困難を個人の問題に期さずに社会問題として捉えるという「社会モデル」の考え方は障がいの分野のみならず、幅広い人権問題・社会問題の解決のヒントになり得るものです。

日本型「インクルーシブ教育システム」と「特別支援教育」

障害者の権利に関する条約を批准したことで、日本も条約が求める「インクルーシブ教育システム」の構築に着手しています。特徴的なのは、日本型「インクルーシブ教育システム」においては、基本的に障がいのある子どもたちが対象として想定されている点。また、その中で「特別支援教育の推進」を大きく位置付けている点です。

特別支援教育

「障害者の権利に関する条約」が、すべての子どもが合理的配慮のもと同じ環境で学ぶ「包摂」を理想とする一方、現在、日本の特別支援教育は特別な学校や学級を設置する、いわゆる「分離」の段階にあると言えます。

文部科学省(文科省)は、特別支援教育はインクルーシブ教育システム構築に不可欠なものであるとし、以下のように述べています。

基本的な方向性としては、障害のある子どもと障害のない子どもが、できるだけ同じ場で共に学ぶことを目指すべきである。その場合には、それぞれの子どもが、授業内容が分かり学習活動に参加している実感・達成感を持ちながら、充実した時間を過ごしつつ、生きる力を身に付けていけるかどうか、これが最も本質的な視点であり、そのための環境整備が必要である。

文部科学省|共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進(報告)概要より

「共に過ごすこと」は目指すものの、「子ども本人に力がついているかどうか」をより重視していることが読み取れます。

また、特別支援教育の推進において重要なこととして下記の3点を挙げています。

  • 社会全体の様々な機能を活用し、障害のある子どもの教育の充実を図る
  • 地域の同世代の子どもや人々との交流等を通じ、地域での生活基盤を形成する
  • 障害者理解を推進することにより、周囲の人々が障害のある子どもや人々と学び合うことで、公平性を確保しつつ社会の構成員としての基礎を作る

参考「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進(報告)概要」(文科省,2022年11月17日参照)

多様な学びの場

では、具体的にはどのような学びの場が保障されているのでしょうか。
障害と一言で言っても、その種類や程度は様々です。一人ひとりの教育ニーズに合った学びの環境を選択できることが求められます。
それらが、現在整備される小・中学校における通常の学級、通級による指導、特別支援学級、特別支援学校といった学びの場です。


※なお、以下の表はあくまで「傾向」を示すものです。一概に言えないことも多いため、ご留意ください。

概要メリット デメリット 
通常学級40人程度からなる通常カリキュラムによる学級
通級による指導“通常学級”に在籍し授業を受けながら、一部、障害に応じた特別な指導を受ける・一部、障害に応じた指導が受けられる
・基本的には通常学級の子どもたちと過ごし、同じ授業が受けられる
・職員に専門性が乏しい場合がある
・設備・器具が整っていない
・障害に応じた指導が受けられる時間に限りがある
特別支援学級校内に設置された、障害のある児童生徒(のみ)が通うクラスに在籍し、障害に応じた指導を受ける・障害に応じた指導が受けられる
・少人数(教師1:子ども8)
・通常学級の子どもたちとの交流がある
・同じ立場の保護者同士のつながりが得やすい
・職員に専門性が乏しい場合がある
・設備・器具が整っていない
・通常学級の子どもたちとの交流に限りがある
特別支援学校障害のある児童生徒(のみ)が通う(“通常学校”とは学校自体が分かれている)・障害に応じた指導が受けられる
・専門免許を有した教員がいたり、専用の設備・器具などがある
・“通常学校の特別支援学級”よりもさらに少人数
・同じ立場の保護者同士のつながりが得やすい
・地域の学校/通常学級の子どもたちとの交流の機会がほとんどない
・学力向上を目指す授業が少ない

合理的配慮

共生社会の実現に向け、具体的な対応を考える上で欠かせないのが「合理的配慮」と「基礎的環境整備」の視点です。
文科省は、合理的配慮を「障害のある子どもが、他の子どもと平等に『教育を受ける権利』を享有・行使することを確保するために、学校の設置者及び学校が必要かつ適当な変更・調整を行うこと」と定義しています。
そして、障害のある子どもに対して個別に必要とされるものであると同時に、学校設置者及び学校に対しては均衡を失しない、また過度の負担を課さないものとしています。

参考「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進(報告)概要」(文科省,2022年11月17日参照)

例えば内閣府は、下記のような例を学校における具体的な合理的配慮であるとしています。

合理的配慮の提供の例

  • 車いす利用者のために段差に携帯スロープを渡すなどの物理的環境への配慮を行う
  • 筆談、読み上げ、手話などによるコミュニケーション、分かりやすい表現を使って説明をするなどの意思疎通の配慮を行う
  • 障害の特性に応じた休憩時間の調整などのルール・慣行の柔軟な変更を行う

一方で、合理的配慮の提供を受けたことを理由に、試験などにおいて評価対象から除外したり評価に差をつけたりすることは、不当な差別的取扱いであると述べています。

引用「全般 合理的配慮等具体例データ集(合理的配慮サーチ)」(内閣府 障害者制度改革担当室,2022年11月17日参照)

どの程度が適切な配慮であるかは、当事者の事情や環境によって異なり、一概には言えない面もあります。
重要なのは、障害のある子どもが主体的に自分の力を発揮していくために、適切な相談体制や合意の形成に向けた努力を組織で行う、そのプロセス自体であるとも言えるでしょう。

基礎的環境整備

合理的配慮を実現する基盤となるのが、「基礎的環境整備」です。国や自治体はインクルーシブ教育システムの構築に向け、必要な財源を確保しながら必要な環境整備をする必要があります。

基礎的環境整備は、下記のような観点に分けることができます。

  • ネットワークの形成・連続性のある多様な学びの場の活用
  • 専門性のある指導体制の確保
  • 個別の教育支援計画や個別の指導計画の作成等による指導
  • 教材の確保
  • 施設・設備の整備
  • 専門性のある教員、支援員等の人的配置
  • 個に応じた指導や学びの場の設定等による特別な指導
  • 交流及び共同学習の推進

各自治体の財政状況や支援体制に応じて、基礎的環境は異なります。それぞれの環境をもとに個別に決定されるのが「合理的配慮」であるため、学校によって、提供される「合理的配慮」は異なることとなります。

参考「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進(報告)」(文科省,2022年11月17日参照)

インクルーシブ教育をめぐる論点

ここまで、「すべての子どもを包摂する教育」としてのインクルーシブ教育、そして、日本における「特別支援教育」や「多様な学びの場」といった取り組みや、文科省の見解について解説しました。
実は、インクルーシブ教育をめぐっては長年、「発達保障(分離)か共生教育(統合)か」という議論が続いており、いまだ決着がついていません。

インクルーシブ教育をめぐるそもそも論として、この2つの立場について紹介するために、国際標準としてのインクルーシブ教育が目指すところを今一度整理したいと思います。

インクルーシブ教育の目指すところ

インクルーシブ教育が目指すゴールは、誰もが互いに人格と個性を尊重し支え合い、人々の多様な在り方を認め合える全員参加型の「共生社会の実現」です。

そのために国連は、すべての子どもが、障害の有無やその特性、ルーツや社会的状況にかかわらず、合理的配慮のもと同じ環境で学ぶことを目指すべきであるとしています。「同じ環境で」とする背景には、多様な子ども同士が交流し共に学ぶことが、偏見や差別を減らし、多様性を尊重する心を育むことにつながるという考えがあります。インクルーシブ教育は、単に特別なニーズのある子どもの自立や社会参加のためのものではなく、あくまで成員全員が当事者となる、共生社会の実現に必要な要素ということです。

「分離か統合か」という議論

しかし、インクルーシブ教育をめぐっては、長らく「発達保障(分離)か共生教育(統合)か」という議論が続いています。

前者は、障害の種類や程度によって学ぶ場を分けることで、個々人の事情に即した適切な教育が受けられる、と主張します。
一方で後者は、分けること自体が「排除」であり差別につながり、あくまで同じ場で学べることを目指すべきだ、と訴えます。
さらに「共生教育(統合)」の中でも、単に学ぶ場所を統合するインテグレーションと、多様な子どもたちが共に学べるように「枠組み」の方の変化を志向するインクルーシブの違いが問題となることもあります。

いずれの立場をとるにしても、実際の学校現場では次に挙げるような諸課題(=要するに教育リソースの不足)があり、これらを乗り越えながら、インクルーシブ教育を実現していく必要があります。

日本の現状と課題

国際標準でのインクルーシブ教育が目指す共生社会と、その実現に向けた議論について解説してきました。
今後に向けた日本の具体的な課題は、どこにあるのでしょうか。現場の課題は大きく以下の3つです。

  • 環境整備
  • 人員の確保
  • 少人数学級

環境整備

インクルーシブ教育の実現にあたり、学校にはユニバーサルデザインの考え方に基づいた環境整備と、そのための予算の確保が求められます。設備・器具の充実を含む環境整備と、それに基づく合理的配慮は、特に特別支援学校から特別支援学級、通級による支援を検討する際に、大きな判断基準となる重要な観点です。ところが、「合理的配慮」「基礎的環境整備」に関する明確な予算や判断の基準はなく、あいまいなのが現状です。文科省は「合理的配慮」について、国としての「合理的配慮」のデータベースの整備や、PDCAサイクルを確立することが重要だとしています。

人員の確保

障害のある子どもたちの多くが通常の学級に在籍していることから、すべての教員に発達障害に関する一定の知識・技能が必須であると考えられており、教員養成段階で、もしくは研修等の実施によってそれらを保障することや、外部の専門人材を確保することも必要です。

しかし専門人材も、そもそも学校教育全体として教員も不足しているのが現状です。予算面、採用面での改革が求められます。

少人数学級

例え、専門性を持った人員が確保できたとしても、一学級の人数が多すぎれば、教員のきめ細かい指導は困難です。子どもの様々な個性や特別なニーズに応え、インクルーシブ教育を実現するために、少人数学級の実現が求められています。

参考「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進(報告)」(文科省,2022年11月17日参照)より

まとめ

国際社会におけるインクルーシブ教育の考え方や、日本における特別支援教育の取り組みやその課題について解説しました。
いまだに議論が続く部分であり、その実践は発展途上な面もありますが、「すべての子どもが共に学び、人々が互いに多様なあり方を認め合える共生社会の実現」というゴールの実現に向けては、誰もが当事者となります。

School Voice Projectはこれからも、児童生徒や先生がいきいきと学び合える社会を一緒に実現していけるよう、情報提供を続けていきます。

※この記事は、一般社団法人かたりすとが運営する「カタリストfor edu」とのコラボ記事です。記事を「メガホン」、ビジュアルコンテンツを「カタリスト for edu」が制作しました。

関連記事


全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)のあり方について、新たな議論が起こっています。

全国学力テストについては、実施開始当初から「全国悉皆調査(すべての学校で行う調査)である必要はあるのか」「平均点を公表する必要はあるのか」などの議論がありました。さらに先日、特別な授業や過去問題の配布など、行き過ぎた事前対策をしている学校があるとの報道がなされたことで、全国学力テストのあり方自体が問われています。

教職員を対象に、事前対策の実施の有無や学力テストに対する意見を聞きました。

参考「全国学力テスト 行き過ぎた事前対策 トップクラス石川県で何が 」(NHK,2022年10月14日公開,2022年12月20日参照)より

アンケートの概要

■対象  :全国の小〜高校年齢の児童生徒が通う一条校に勤務する教職員
■実施期間:2022年10月22日(土)〜2022年11月14日(月)
■実施方法:インターネット調査(実施時の設問はこちら
■回答数 :55件

アンケート結果

設問1 全国学力テストの事前対策は行われている?

Q1. 全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)について、あなたの勤務校では事前対策が行われていますか。

「行われていない」と回答したのは、小学校で約4割、中学校で約6割でした。小学校では学校や管理職の方針によって行われているケースが多く、中学校では教員の判断によって行われているケースが多いという結果となりました。事前対策の内容については、授業内で過去問や独自の対策問題を解く時間を設けることが多いようです。中には「過去問を配布するのみ」という回答もありました。

なお、各地で行き過ぎた事前対策が行われていることが問題となり、文科省からは2016年4月にテスト本来の趣旨を学校に浸透させ、適切に対応させるよう求める通知が出されています。

参考「全国学力テスト 行き過ぎた事前対策 トップクラス石川県で何が 」(NHK,2022年10月14日公開,2022年12月20日参照)より

設問1-2 事前対策の状況・内容は?

Q1-2. 詳しい状況や内容(対策授業を◯時間行った、宿題として過去問を配布した、等)を教えてください。(任意)

教育委員会等の指導により事前対策が行われている

過去問を使った授業が行われている。授業で過去問を解かせている。市町村独自に1月に全学年学力調査が行われている。【大分県・小学校・教員】

市教委主導で過去問等から作成した学力向上ワークシートの実施、模擬テストの実施、年度末の過去問実施、事前対策2〜3時間。【埼玉県・小学校・教員】

教育局からほぼ毎月配信されるサポート問題をやらなくてはいけない状況にある。【北海道・中学校・教員】

学校・管理職の方針により事前対策が行われている

以前の学力状況調査の問題と似た問題を、朝タイムで取り組む。【福岡県・小学校・教員】

授業や宿題として過去問を解かせたり、過去問の解説を行っている。【大阪府・中学校・教員】

教員の判断により事前対策が行われている

年間を通じて、単元ごとに練習問題として少しずつ取り組ませている。また、定期テストにも活用し、準備をしている。【北海道・中学校・教員】

教科によっては、学年末の授業として、全国学力テスト対策が行われています。【福島県・中学校・教員】

過去問を自由課題として、配布する程度。【大阪府・中学校・教員】

正式に事前対策をしなさいという指示はありませんが、正直見えない圧を感じて職員が学年部ごとに過去問を解かせているという実態はあります。【大分県・小学校・教員】

設問2 全国学力テストの結果の活用方法は?

Q2. 全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の結果を、あなたの勤務校ではどのように活用していますか。(複数選択可)

小学校では、「児童の学習状況の把握」を選択した人が最も多く約6割。次いで多かったのが、「日々の授業改善」で5割弱でした。中学校では、「日々の授業改善」を選択した人が最も多く約5割。次いで多かったのが、「生徒の学習状況の把握」で4割弱でした。小学校、中学校ともに「特に活用していない」と回答した人は3割を超えていました。

設問2-2 具体的な活用方法は?

Q2-2. あなたは実際にどのように活用していますか。具体的にあげてください。

児童生徒の学習状況の把握

結果に対して、どういった問題が苦手なのかを把握し、その部分をどのようにすれば力がつくか話し合いを行う。【埼玉県・小学校・事務職員】

分析の結果を家庭へも公表。分析を踏まえ、今後の学校が取り組む課題と具体的な施策、家庭へのお願いを文書で出している。【大阪府・小学校・養護教諭】

日々の授業改善

全教職員で結果を考察。本校の特徴をつかみ、低学年から何を大切にすべきか、高学年では何を重点的に復習すべきか、研修します。また個人の非認知能力等にも注目し、指導の個別最適化を目指します。【埼玉県・小学校・教員】

自分が教えた内容の定着を確認し、必要があれば再度復習を行う。【千葉県・中学校・教員】

傾向を見て日々の授業のやり方を考える程度。【北海道・中学校・教員】

児童生徒への個別の学習支援

個々の生徒への質問項目を把握して、個々に適した対応を心掛けている。【新潟県・中学校・教員】

特に活用していない

活用する暇がない。日々忙しく、そこに時間は使えない。【広島県・小学校・教員】

対外的には、「結果を受けて対策をしている」としているが、具体的に特別にしていることはない。【大阪府・中学校・教員】

その他

市教委に分析(市教委が作成した形)を提出。ホームページで公開。【大分県・小学校・教員】

学力テストで何が求められているのかを探る。【北海道・小学校・教員】

教員の評価に使われていて、児童への指導には反映されていないと思います。【群馬県・小学校・教員】

特別支援学校のため、ほとんど実施されていない。【福岡県・特別支援学校・教員】

設問3 全国学力テストの実施方法について、どう思う?

Q3. 現状の全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の実施方法について、あなたはどう思いますか。
* 悉皆調査…全員に行う調査のこと

「自治体ごとの平均点が公表される」ことについては、全体の約8割の人が反対を選択。特に特に小学校の教職員からの反対が多く集まりました。「全国悉皆調査である」「小学6年生と中学3年生に実施される」ことについては、小学校よりも中学校の教職員からの方が反対する意見が多く集まりました。

設問4 全国学力テストの実施について、どう思う?

Q4. 全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の実施について、あなたはどう思いますか。

全体の6割以上が全国学力テストの実施に対して反対する意見を持っていました。特に20代ではその傾向が強く、30代以上の方が実施に対して肯定的な意見を持つ人が多い傾向がありました。校種別に見ると、実施に対して肯定的に捉えている人は、中学校よりも小学校の方が多い結果となりました。

実施に対する肯定的な意見

現在の子どもたちの一部の学力を測るという点では、無駄でないように思います。ただ、そのあとは外部に調査を依頼して個人別、学級別、学校別の対策を打ち出してほしい。事前の対策なんかも、働き方改革と逆行してしまうので、なし。【埼玉県・小学校・教員】

子どもの学力や学習状況を調査する点、その結果から教員の指導方法のふり返りや改善に活用する目的であれば、実施するべきであると考える。数値化されたくない子どもがいることも踏まえれば、保護者とも連携した希望者で実施するのも1つの方法ではないだろうか。子どもや保護者にとって、子ども自身の能力を測定する機会を損ねるのだけは避けたい。【鹿児島県・小学校・教員】

現状では点数優位で学校間競争として、保護者が点数や順位だけを見とる傾向にあることの弊害があります。一方で児童の学習を個別最適化するための調査として実施するのであれば、教員のさじ加減的な現在の評価を是正することに寄与するはずだと思います。点数や順位は児童、生徒にとって、結果は学習動機には結びつかないことは認知科学の視点でも明らかです。リセットが必要だと思います。【群馬県・小学校・教員】

活用のされ方が間違われなければ有効である。自分の自治体が平均と比べてどうなのかを知ることは大事。なので、実施は悪くない。その結果が、日ごろの学習指導の改善に生かされるのならいいが、ただ順位をあげたいがために、学力テストの対策がとられるとか、順位が低いがために、自治体行政が現場に圧力をかけるようなことはあってはならない。【愛知県・小学校/中等教育学校・教員】

実施に対する否定的な意見

ただただ数字で教育を考えるようになってしまうから。人を育てるという本来の目的が、学力を上げるという目先の目的にすり替えられてしまい、教育が大きく歪む原因になっていると思います。【大分県・小学校・教員】

全国学力テストが生徒の学習状況や教員の授業実践に役立っているという実感を得たことがない。また、校内での定期テストや実力テスト、大阪府ではチャレンジテストと中学3年生が受けるテストの数が多く、精神的にも実質的にも生徒・教員ともに負担が増す。【大阪府・中学校・教員】

1日授業が潰れることになるし、受験した生徒になんにも還元されていない現状だから。【神奈川県・中学校・教員】

負担でしかないから。英語はさらに話すことの実施が増え、英語科としての負担も増した。これ以上もう何も増やしてほしくない。【東京都・中学校・教員】

テスト監督や返却などの負担があります。テストの仕分けや、テスト監督のマニュアルを確認する会議などもあります。全国学力テストで測られている学力が、ほんとうに今の生徒たちに身に着けないといけない力なのかどうかと疑問に思います。【大阪府・中学校・教員】

まとめ

事前対策が行われている学校と行われていない学校の数は、ほぼ半々という結果となりました。対策の内容については、「授業内で過去問や独自の対策問題を解く時間を設ける」や、「過去問を配布するのみ」など学校や教員によってばらつきが見られました。

全国学力テストの実施に対しては、反対する意見が多く集まりました。その理由として上がっていたのが、点数を取ることが目的となってしまい本来の教育の目的を見失っていると感じる声。それと同時に、教員の業務負担やテストを繰り返し受けることでの児童生徒の負担が増えている点について懸念を示す意見もありました。一方で、児童生徒の日々の学びに活かされるのであれば実施する意味があるという意見もありました。

また、実施に賛成する人でも、結果を公表することによる学校間の競争に繋がることには、反対する意見が多数集まりました。


▼ 自由記述の回答一覧は、以下よりダウンロードしてご覧ください。 ▼

アンケート資料ダウンロード 申し込みフォーム

* 記入必須項目

■お名前*
■メールアドレス*
■立場*
■データの使用用途*
■ご所属
■教職員アンケートサイトフキダシへの登録を希望する
※対象は教職員の方のみです。
■メガホンの運営団体School Voice Project への寄付に興味がある

※メディア関係者の皆様へ
すでに公開されている教職員アンケート結果やWEBメディアの記事の内容等は報道の際に使用いただいて構いません。その際は【出典:NPO法人School Voice Project 】クレジットを入れていただき、事後でも結構ですのでご一報ください。

2022年4月27日付けで文科省から出された「特別支援学級及び通級による指導の適切な運用について」の通知に対する関心が高まっています。Webアンケートサイト「フキダシ」では2022年7月に実施したアンケートでこの通知の影響についての調査を行い、その結果を公表しましたが、その時点から次年度以降の体制がより詳しく分かった自治体や、検討の結果体制の内容に変更があった自治体もあるようです。

フキダシでは、そういった全国の学校現場の声を集めるため、再度アンケートを実施しました。

※文科省からの通知はこちら
この通知において文科省は、昨年度に実施した実態調査をもとに、「特別支援学級に在籍する児童生徒が、大半の時間を交流及び共同学習として通常の学級で学び、特別支援学級において障害の状態や特性及び心身の発達の段階等に応じた指導を十分に受けていない事例がある」とし、各教育委員会等に対して、特別支援学級に在籍している児童生徒については、原則として週の授業時数の半分以上を目安として特別支援学級において授業を行うことを求めました。

アンケートの概要

■対象  :全国の小〜高校年齢の児童生徒が通う一条校に勤務する教職員
■実施期間:2022年10月7日(金)〜2022年11月23日(水)
■実施方法:インターネット調査(実施時の設問はこちら
■回答数 :31件

アンケート結果

設問1 特別支援教育の運用に変更は?

Q1. あなたの勤務する自治体では、文科省通知「特別支援学級及び通級による指導の適切な運用について」によって、昨年度までの特別支援教育の運用の具体的な変更がありますか。

昨年度までの特別支援教育の運用の具体的な変更については、回答者全体の約4割が「今後影響が出るとの話が出ているが、まだ具体的には示されていない」を選択しました。中学校に所属する人では、その割合は6割を超えていました。

その他の選択肢である「今年度の特別支援の体制がすでに変更されている」「来年度から特別支援の運用変更が決定している」「運用変更が示されているが、一定の経過措置(猶予期間)が設けられている」「もともとこの通知に書かれている条件を満たしているので、運用が変更される予定はない」「もともとこの通知に書かれている条件を満たしていないが、運用が変更される予定はない」は、それぞれ2〜5人が選択し、ばらつきが見られました。

設問2 退級する予定の児童・生徒はいる?

Q2.「運用がすでに変更されている」「変更が決定している」と選んだ方にお聞きします。今回の運用変更によって、実際に退級する予定の児童・生徒はいますか。

「今年度の特別支援の体制がすでに変更されている」もしくは「来年度から特別支援の運用変更が決定している」を選んだ方は31人中8人。「実際に特別支援学級を退級する児童生徒はいますか?」という問いに対しては、この内4人が「いる(すでに意思の確認済み)」を選択しました。

設問3 保護者への説明・面談は行った?

Q3.「運用がすでに変更されている」「変更が決定している」と選んだ方にお聞きします。運用の変更について、保護者への説明・面談は行われましたか? 当てはまるものをお選びください。

「今年度の特別支援の体制がすでに変更されている」もしくは「来年度から特別支援の運用変更が決定している」を選んだ方は31人中8人。運用変更についての保護者への説明・面談は、「情報が不十分な中で行われ、納得感の得にくい内容だった」を選択した人がこの内4人でした。

設問4 新たな整備の予定は?

Q4.「運用がすでに変更されている」「変更が決定している」と選んだ方にお聞きします。あなたの自治体では、運用変更に当たって、新たに人的・環境的な整備は予定されていますか。

「今年度の特別支援の体制がすでに変更されている」もしくは「来年度から特別支援の運用変更が決定している」を選んだ方は31人中8人。この内、通常学級に配置される支援員等の配置や増員が「予定されている」と回答したのは0人でした。通級指導教室の増設や3人、その他の具体的措置は1人が「予定されている」と回答しましたが、「予定されていない」もしくは「わからない」という回答が目立ちました。

設問5 今回の通知、運用変更についての意見

Q5. 今回の通知や、それによる各自治体の特別支援の運用変更について、ご意見があればお書きください。(任意)

運用変更に対する不安や懸念の声

特別支援教育とは、そもそも個別最適化を目指すもののはずなのに、学習形態を絞りこもうとするのは、それに逆行する事であると思う。なにかしら不適切な運用があるのであれば、個別に対応して欲しい。【神奈川県・小学校・教員】

今回の通知は、インクルーシブ教育と逆行するものだと捉えています。個別学習や入り込み対応は、支援学級児童の実態に応じて指針を決めることが大切だと考えます。強制的に個別学習をさせる、個別学習をしない児童は退級というのは、支援学級の在り方を問われる話だと思います。【大阪府・小学校・教員】

通常の学級での授業を半数以下にする根拠が示されておらず、人権を侵害しているように思われる。個々に応じたあり方を考えるなら、取り出す回数に制限を設けるより、個別の支援計画を策定するための本人、保護者との対話の機会を十分に設ける仕組みづくり、支援体制の充実が大事だと考える。【茨城県・小学校・教員】

国や自治体への要望や願い

私の学校では、交流は一人で参加できる子しか行っていません。(というより、教員が足りず、行うことができません。支援員は通常の学級の子にしかつくことができないきまりです。)なので、文科省の通知を超える交流をしている子はいませんが、とにかく教員を増やして欲しいです。そうすれば、支援級の子にも通常の学級で支援が必要な子にも、もっと一人ひとりに応じた教育ができるはずなのに…と思っています。【愛知県・小学校・教員】

市教委からの指示伝達が、指導主事内でも共通認識が持てておらず、学校現場は混乱している。今年度、すでに3回通知内容が変わっている。来年度は現状で行くと職員向けの説明会では説明されたものの、就学相談の場では、新制度の説明がなされている。子どもたちが子どもたちらしく、すごせる学校、社会になることを切に願います。【大阪府・小学校・教員】

私の県では、具体的な話は出ていません。意図的に関係者はみんな黙ってる感はありますが、よくわからないという人もまだたくさんいるのも事実だと思います。ただ、今後は全国の動きに連動していくのは目に見えているので、自分の県のことだけでなく、広く国全体のこととして議論していくべきだと思います。【大分県・小学校・教員】

まとめ

昨年度までの特別支援教育の運用の具体的な変更については、回答者全体の約4割が「今後影響が出るとの話が出ているが、まだ具体的には示されていない」を選択。具体的な内容変更までには至っていない学校が回答者全体の半数近くに上ることがわかりました。

「今年度の特別支援の体制がすでに変更されている」もしくは「来年度から特別支援の運用変更が決定している」を選んだ方は31人中8人。その内の半数である4人は「実際に特別支援学級を退級する児童・生徒がいる」と回答。運用変更についての保護者への説明・面談は、「情報が不十分な中で行われ、納得感の得にくい内容だった」を選択した人も同数の4人でした。また、通常学級に配置される支援員等の配置や増員が「予定されている」と回答したのは0人でした。

特別支援の運用変更に対する意見としては、肯定的な内容は見られず「インクルーシブ教育と逆行する」「支援学級の在り方を問われる」「人権を侵害しているように思われる」など、不安や懸念の声が多く集まりました。また、「現場は混乱している」「よくわかっていない」など、学校現場の状況を訴える内容や、一人ひとりに応じた教育をするために教員を増やしてほしいという要望もありました。


▼ 自由記述の回答一覧は、以下よりダウンロードしてご覧ください。 ▼

アンケート資料ダウンロード 申し込みフォーム

* 記入必須項目

■お名前*
■メールアドレス*
■立場*
■データの使用用途*
■ご所属
■教職員アンケートサイトフキダシへの登録を希望する
※対象は教職員の方のみです。
■メガホンの運営団体School Voice Project への寄付に興味がある

※メディア関係者の皆様へ
すでに公開されている教職員アンケート結果やWEBメディアの記事の内容等は報道の際に使用いただいて構いません。その際は【出典:NPO法人School Voice Project 】クレジットを入れていただき、事後でも結構ですのでご一報ください。

はじめに

 “生徒指導のガイドブック”として位置づけられる「生徒指導提要(せいとしどうていよう)」が2022年に一新され、2010年以来12年ぶりに改定となりました。子ども基本法の成立や、学校現場の課題や現状、時代の変化を踏まえて、文科省の協力者会議にて議論が進められてきました。今回は、生徒指導提要の意義や目的、今回の改定のポイントについて紹介します。

生徒指導提要とは

「生徒指導提要」作成の目的

 生徒指導は、学校がその教育目標を達成するための重要な機能の一つであり、児童生徒の人格の形成を図る上で、大きな役割を担っているとされています。しかし、実際の学校現場において生徒指導が、問題行動等に対する対応に留まってしまっていた2010年当時の現状もあり、『学校教育として組織的・体系的な取組を行っていくことが必要であることが指摘されてきました』。また、これまで、小学校から高等学校段階までの生徒指導の理論・考え方や実際の指導方法等についての基本書等が存在せず、生徒指導の組織的・体系的な取組が進んでいないことも課題となっていました。

 このような情勢の中で生徒指導の実践に際し、教員間や学校間で共通理解を図り、組織的・体系的な生徒指導の取組を進めることができるよう、 学校・教職員向けの基本書として、2010年に初めて作成されたものが「生徒指導提要」になります。

引用「生徒指導提要 表紙・まえがき・目次」(文科省,2022年10月14日参照)より
参考「生徒指導提要」(文科省,2022年10月14日参照)より

12年ぶり改訂の経緯

 「生徒指導提要」が2010年に作成されて以降、「いじめ防止対策推進法」など関連法案が施行され、学校を取り巻く状況は変化してきています。近年、いじめの重大事態や暴力行為の 発生件数、不登校児童生徒数、児童生徒の自殺者数等が増加傾向にあるなど、 課題は深刻化してきています。事案発生等の後の対応のみならず、いじめ等を未然に防止し、全てのこども達が安心して学校に通学し、多様な児童生徒の状況に対応した支援・指導体制の確立等が必要となってきました。 このような時代の変化に即していくため、今回、12年ぶりの「生徒指導提要」改定の運びとなりました。

参考「生徒指導提要の改訂に関する協力者会議の設置について」(文科省,2022年10月14日参照)より

改訂のポイント&解説

生徒指導の定義と基本的な考え方

 生徒指導の定義について、現在と改訂された内容を比較してみると、児童生徒一人一人の人格に加え、「個性」を尊重し、児童生徒の「自主性」を重要視していることが読み取れます。そして、教職員の役割についても児童生徒が自発的・主体的に成長や発達するための「過程を支える」と明記されていることも改訂のポイントと言えます。

【現行版の定義】
生徒指導とは、一人一人の児童生徒の人格を尊重し、個性の伸長を図りながら、社会的 資質や行動力を高めることを目指して行われる教育活動のことです。

【改訂版の定義】
生徒指導とは、社会の中で自分らしく生きることができる存在へと児童生徒が、自発的 ・主体的に成長や発達する過程を支える教育活動のことである。なお、生徒指導上の課 題に対応するために、必要に応じて指導や援助を行う。

 また、改訂版「生徒指導提要」では生徒指導の目的が以下のように明記されています。

【生徒指導の目的】
生徒指導は、児童生徒一人一人の個性の発見とよさや可能性の伸長と社会的資質・能力 の発達を支えると同時に、自己の幸福追求と社会に受け入れられる自己実現を支える。

 この内容から改訂版の定義における「過程を支える」とは、「児童生徒一人一人の個性の発見とよさや可能性の伸長と社会的資質・能力の発達を支える」ということを示していることが読み取れます。また、生徒指導の目的を達成するためには、児童生徒が、深い自己理解に基づき、「何をしたいのか」、「何をするべきか」を明確にする。そして、主体的に問題や課題を発見し、自己の目標を選択・設定して、目標の達成のため、自発的・自律的、かつ他者の主体性を尊重し、自らの行動を決断・実行する力(=「自己指導能力」)を獲得することが重要と述べられています。

 生徒指導は「成長を促す指導」、「予防的な指導」、「課題解決的な指導」の3つに分類されます。「成長を促す指導」や「予防的な指導」を改めて認識することで、問題行動の発生を未然に防止し、全ての児童生徒が自ら現在や将来における自己実現を図っていくための能力の育成を目指していくことが求められます。そうした積極的生徒指導を実現するための理論と知識を学校に関わるすべての大人たちは習得していく必要があるとされています。

参考「生徒指導提要の改訂に関する協力者会議 資料3 生徒指導提要に関する素案」(文科省,2022年10月14日参照)より
参考「生徒指導提要の改訂にあたっての基本的な考え方に係る政策文書等における主な記載」(文科省,2022年10月14日参照)より

「児童の権利に関する条約」4つの一般原則を明記

 今回の「生徒指導提要」の改訂において、1989年の国連総会において採択された「児童の権利に関する条約」に基づき、児童の権利に関する4つの一般原則を明記しました。

【「児童の権利に関する条約」4つの一般原則】
 ① 児童生徒に対するいかなる差別もしない
 ② 児童生徒にとって最もよいことを第一に考えること
 ③ 児童生徒の命や生存、発達が保証されること
 ④ 児童生徒は自由に自分の意見を表明する権利をもっていること

 「児童の権利に関する条約」は、1948年の「世界人権宣言」をきっかけに1989年11月20日の第44回国連総会において採択された世界で初めて児童※1の権利について定めたものになります。日本では、1990年にこの条約に署名し、1994年に批准しました。

 しかし、Save the Childrenが2019年に実施した調査※2によると、日本国内で同条約を「内容までよく知っている」と答えたのは、子ども8.9%、大人2.2%に過ぎず、「聞いたことがない」という回答は、子ども31.5%、大人42.9%となり、児童の権利に関する認知度が低いという現状が明らかになりました。

 また、日本には「児童福祉法」や「教育基本法」など子どもに関わる様々な個別の法律は定められていますが、子どもを権利の主体として位置づけ、その権利を保障する総合的な法律が存在していませんでした。そこで定められたのが「子ども基本法」です。同法律は、2022年6月15日に国会で可決成立し、2023年4月1日の施行となります。それに併せて「こども家庭庁」が発足される予定となっており、児童の権利を保障するための整備が着々と進められています。こうした変化を踏まえ、今回の「生徒指導提要」にも子どもの権利が盛り込まれています。

※1 ここで述べている「児童」とは18歳未満のすべての者を指しています。
※2 Save the Children 『3万人アンケートから見る子どもの権利に関する意識』

参考「子ども基本法Webサイト」(2022年10月14日参照)より
参考「こども基本法説明資料」(内閣官房こども家庭庁設立準備室,2022年10月14日参照)より

「チーム学校」としての生徒指導のあり方

 平成27年12月に中央教育審議会により「チームとしての学校の在り方と今後の改善方策 について」が答申されました。それに伴い、今回、生徒指導提要の改訂された内容の中に「チーム学校による生徒指導体制 」と新たな章を設け、その必要性について述べられています。

 チーム学校が求められる背景として、次の3つの観点が挙げられています。 

【「チーム学校」が求められる背景】
 ① 新しい時代に求められる資質・能力を育む教育課程を実現するための体制整備
 ② 複雑化・多様化した課題を解決するための体制整備
 ③ 子供と向き合う時間の確保等のための体制整備 

 日本は、諸外国に比較し、学校内の専門職として教員が占める割合が非常に高い国となっています。一方で児童生徒の問題や課題が複雑化・多様化している中で、教員の専門性をもって全ての問題や課題に対応することが、児童生徒の最善の利益の保障や達成につながるとは必ずしもいえない状況になっています。そのような状況をふまえ、校内の生徒指導体制を整えていくうえで、教員とともに多様な専門職、あるいは、専門職という枠組みにとらわれない地域の様々な「思いやりのある大人」が学校内で連携・協働する体制を整えることが求められています。

 学校を基盤としたチームによる連携・協働を実現するためには、教職員、多職種の専門家 など、学校に関係する人々に次のような姿勢が重要だとされています。

【「チーム学校」を実現するために求められる教職員の姿勢】
 ① 一人でやろうとしない
 ② どんなことでも問題を全体に投げかける
 ③ 管理職を中心に、ミドルリーダーが機能するネットワークをつくる
 ④ 同僚間での継続的な振り返り(リフレクション)を大切にする

参考「チームとしての学校の在り方と今後の改善方策について(答申(案))」(文科省,2022年10月14日参照)より

ICTを活用した生徒指導

 「令和の日本型学校教育」の実現に向けて、GIGAスクール構想を踏まえ、今後ICTを活用した生徒指導を推進すること が大切とされています。生徒指導提要の中では、生徒指導にICTを活用することで次の教育効果が期待されるとしています。

【ICTを活用した生徒指導における教育効果】
 ① データを用いた生徒指導と学習指導との関連付け
 ② 悩みや不安を抱える児童生徒の早期発見・対応
 ③ 不登校児童生徒等への支援

 ①に関して、学習指導要領では、「学習指導と関連付けながら、生徒指導の充実を図ること。」と 明記しています。ICTを活用することで、学習指導と生徒指導の相互作用を、デー タから省察を通じて、児童生徒の自己肯定感や自己有用感を高めるきっかけになることが期待されています。②に関して、ICTを活用することで、児童生徒の心身の状態の変化や児童生徒理解の幅の広がりにつながると考えられ、悩みや不安を抱える児童生徒の早期発見・早期対応の一助になると考えられています。③に関して、ICTを活用した支援によって教育の機会の確保を実現することが目指されています。

参考「教員の情報化に関する手引き 第7章 教員のICT活用指導力の向上」(文科省,2022年10月14日参照)より

「校則の運用・見直し」の明文化

 「改訂版の「生徒指導提要」では、少数派の意見の尊重が重要であることや、校則制定の権限が校長にあることなどが明記されました。また、「校則」は、児童生徒個人の能力や自主性を伸ばすものとなるものであり、指導を行うにあたっては、校則を守らせることにばかり拘ることなく、「何のために設けた決まり」であるのか、教職員がその背景や理由を理解し、児童生徒が「自分事」としてその意味を理解して自主的に校則を守るように指導していくことが重要ということが今回の改訂によって明文化されました。

 上記内容もふまえ、校則の運用については、普段から学校内外の者が参照できるように学校のホームページ等に公開しておくこと、校則を制定した背景についても示しておくことなど具体的な運用方法が示されたことが大きな改訂のポイントになります。

 校則の見直しについては、社会の変化や教育的意義をふまえ絶えず見直しを行うことと記されました。また、校則の在り方について児童会・生徒会や保護者会といった場において、校則について確認したり議論したりする機会を設けることの必要性が明記され、校則を策定、見直しを実施する必要がある場合に、「どのような手続きを踏むべきか、その過程についても示しておくことが望まれる」という内容が示されました。 また、今回の改訂となった生徒指導提要の「校則」に関する内容に「児童生徒の参画」という項目が新たに加えられました。校則を見直す際に児童生徒が主体的に参加することで生徒指導の目的とされる「自己指導能力」の育成を図る具体的な取組として校則の見直しが位置づけられていることが示唆されます。

「懲戒と体罰、不適切な指導」について

 今回の改訂において「懲戒と体罰」と「不適切な指導」に関する記述が現行生徒指導提要より詳細に記されています。

【不適切な指導】
また、たとえ身体的な侵害や、肉体的苦痛を与える行為でなくても、いたずらに注意や 過度な叱責を繰り返すことは、児童生徒のストレスや不安感の高まり、自信や意欲の喪失 など児童生徒を精神的に追い詰めることにつながりかねません。教職員にとっては日常的 な声掛けや指導であっても、児童生徒や個々の状況によって受け止めが異なることから、 特定の児童生徒のみならず、全体への過度な叱責等に対しても、児童生徒が圧力と感じる 場合もあります。

 「不適切な指導」は、主に欧米では「チャイルド・マルトリートメント」という表現が広く知られています。「マルトリートメント」とは、「大人の子どもへの不適切な関わり」を意味しており、児童虐待の意味を広く捉えた概念とされています。今回の改訂において記された「不適切な指導」は、先述した生徒指導の目指す「成長を促す指導」や「予防的な指導」の弊害となりえることを示唆していると考えられます。

 また、「不適切な指導」と捉えられ得る例について、以下のように記されています。

【不適切な指導と捉えられ得る例】
・大声で怒鳴る、ものを叩く・投げる等の威圧的、感情的な言動で指導する。
・児童生徒の言い分を聞かず、事実確認が不十分なまま思い込みで指導する。
・組織的な対応を全く考慮せず、独断で指導する。
・殊更に児童生徒の面前で叱責するなど、児童生徒の尊厳やプライバシーを損なうような指導を行う。
・児童生徒が著しく不安感や圧迫感を感じる場所で指導する。
・他の児童生徒に連帯責任を負わせることで、本人に必要以上の負担感や罪悪感を 与える指導を行う。
・指導後に教室に一人にする、一人で帰らせる、保護者に連絡しないなど、適切な フォローを行わない。

 懲戒は、学校における教育目的を達成するために、教育的配慮の下に行われるべきものであるとされています。そのため、児童生徒への指導等、対応については、「チーム学校」として組織的に指導の方向性や役割分担を検討して望む必要があります。具体的な指導にあたっては、児童生徒の特性や心情に寄り添いながら本人や関係者の言い分を聴くこと、それ以外にも必要な情報を集めるなど、事実関係の確認を含めた適正な手続きを経るよう努めることが大切であるとされています。また、指導後においても、児童生徒を一人にせず、心身の状況の変化に注意を払うことに留意するとともに、家庭等の理解と協力を得られるようにし ていくことが重要となります。

参考「養護教諭のための児童虐待対応の手引」(文科省,2022年10月14日参照)より

性の多様性と個性の尊重

 近年、「LGBTQ+」を中心に性の多様性が少しずつ日本国内においても認知されてきています。しかし、依然として「性的マイノリティ」に関して偏見や差別が起きているのが現状であり、不安や悩みを抱えながら学校生活を送る児童生徒も少なくはありません。こうした現状を変えていくためには、児童生徒への人権意識を育むとともに教職員や関わる大人たちの中で性の多様性への理解と改めて生徒一人一人の個性を尊重する意識を持つことが重要となります。改訂された生徒指導提要では、学校における具体的に求められる対応として次の内容を明記しました。

【「性的マイノリティ」とされる児童生徒への具体的対応】
① 学級・ホームルームにおいては、いかなる理由でもいじめや差別を許さない適切な生徒指導・人権教育等を推進することが、悩みや不安を抱える児童生徒に対する支援の土台となります。教職員としては、悩みや不安を抱える児童生徒の良き理解者となるよう努めることは当然であり、このような悩みや不安を受け止めることの必要性は、「性的マイノリティ」とされる児童生徒全般に共通するものです。

②「性的マイノリティ」とされる児童生徒には、自身のそうした状態を秘匿しておきたい場合があることなどを踏まえつつ、学校においては、日頃から児童生徒が相談しやすい環境を整えていくことが望まれます。このため、まず教職員自身が理解を深めるとともに、心ない言動を慎むことはもちろん、見た目の裏に潜む可能性を想像できる人権感覚を身に付けていくことが求められます。

③ 当該児童生徒の支援は、最初に相談(入学などに当たって児童生徒の保護者からなされた相談を含む。)を受けた者だけで抱え込むことなく、組織的に取り組むことが重要であり、学校内外に「支援チーム」を作り、ケース会議などのチーム支援会議を適時開催しながら対応を進めるようにします。

 また、学校生活での各場面における支援の一例も示されています。

項目学校における支援の事例
服装自認する性別の制服・衣服や、体操着の着用を認める。
髪型標準より長い髪形を一定の範囲で認める(戸籍上男性)。
トイレ保健室・多目的トイレ等の利用を認める。
呼称校内文書(通知表を含む)を児童生徒が希望する呼称で記す。
自認する性別として名簿上扱う。
授業体育又は保健体育において別メニューを設定する。
水泳上半身が隠れる水着の着用を認める(戸籍上男性)。
補習として別日に実施、又はレポート提出で代替する。
運動部の部活動自認する性別に係る活動への参加を認める。
修学旅行等1人部屋の使用を認める。入浴時間をずらす。 

 学校においては、「性的マイノリティ」とされる児童生徒への配慮と、他の児童生徒へ の配慮との均衡を取りながら支援を進めることが重要となります。また、学校として先入観をもたず、その時々の児童生徒の状況などに応じた支援を行うことが必要です。そして、児童生徒と関わっていく中で教職員間のみの連携に留まらず、保護者や各種専門機関との連携も含めて「チーム学校」として生徒指導にあたることが最も重要なポイントになります。

参考「性同一性障害や性的指向・性自認に係る、児童生徒に対するきめ細かな対応等の実施について(教職員向け)」(文科省,2022年10月14日参照)より

おわりに

 今回は、生徒指導提要の意義や目的、今回の改定のポイントについて紹介してきました。学校現場の状況は刻一刻と変化しています。多様な児童生徒の状況に対応した支援・指導体制の確立の実現が求められます。より多くの学校・教職員の方々、家庭や地域へ生徒指導の基本書として「生徒指導提要」の認知と学校内外での活用が進むきっかけとなることができればと思います。

※改訂版生徒指導提要は、2022年12月に公開されています。※

2022年11月下旬に、School Voice Project主催で「日本のインクルーシブ教育のこれから」について考えるイベントを大阪で開催しました。ゲストにお招きしたのはDPI日本会議(※1)の崔栄繁(さいたかのり)さん。日本と世界のインクルーシブ教育の在り方や現状を学んだあと、現職の先生たちを交えて学校現場の課題と展望を話し合いました。

この記事は、イベントの様子をまとめたレポートです。インクルーシブ教育について知り、学校での課題やこれからできることを考えるきっかけとなれば嬉しいです。

(イベント広報の際のアイキャッチ画像)

ゲストプロフィール

崔栄繁(さいたかのり)さん
1966年、神奈川県生まれ育ち。早稲田大学法学部卒業後、韓国のソウル大学大学院に留学(国際法専攻)。1999年にDPI権利擁護センターのスタッフとなり、現在、(特定非営利活動法人)DPI日本会議議長補佐。日本障害フォーラム(JDF)障害者権利条約に関するパラレルレポート特別委員会委員。趣味は山登りなど(たしなむ程度のお酒も含む)。明治大学法学部比較法研究所客員研究員(2021年〜)障害者権利条約、インクルーシブ教育についての著書、共著多数。

※1)DPI日本会議とは?
世界組織であるDPI(Disabled Peoples’ International)の日本国内組織として、1986年に発足。身体障害、知的障害、精神障害、難病等の障害種別を超えた92団体が加盟しています(2022年8月現在)。地域の声を集め、国の施策へ反映させ、また国の施策を地域へ届ける活動を行う。活動の目的は、 “すべての障害者の機会均等と権利の獲得”。
<3つの特徴>
・障害者本人(当事者)の集まりです
・障害種別(身体障害、知的障害、精神障害、難病など)を超えた活動をしています
・障害者問題を個人の問題ではなく、社会の問題として捉え、活動をしています

インクルージョンとは何か

ーーゲストの崔さんによる参加者へ問いかけからイベントがスタートしました。まずは、「さまざまな人がいる社会が当たり前」という前提に立ち返ります。

2020年度、ユネスコが出したグローバルエデュケーションレポート(GEMレポート2020)には、「世界中すべての人が持っているもの」について書かれていました。3文字の言葉が入ります。なんだと思いますか?

答えは「ちがい」です。GEMレポート2020の一部より、簡略化させたものを紹介させてもらいます。

「何が正常なのか、何が異常なのか、何が特別なのか、というのはもともと決まっているものではありません。(中略)なので、特別なニーズという考え方をやめて、社会への参加や学びに、周りの環境を見てなにがバリアになっているのか、という考え方にすべきです」

「さまざまな人がいる社会が当たり前で、誰も仲間はずれにあわない社会がインクルーシブ社会です」

インクルーシブ教育とは、インクルーシブ社会の実現のために行われるものです。学校などの「教育」のためにインクルーシブ教育を行うのではありません。

ーーそもそも「インクルーシブな社会」とは、どのような社会なのでしょうか。フランスの政府が作成した4つの図を見せながら説明してくれました。

1つ目は、「排除:Exclusion(エクスクルージョン)」。

円の中には男性と女性が整然と並んでいます。これができる人、ここに当てはまる人のみが中に入ることができます。

2つ目は、「隔離・分離:Segregation(セグレゲーション)」。

大きな円の中には、1つ目の図と変わらず男性と女性が整然と並んでいます。「隔離・分離」では、この円の外に出た人たちだけを1つの円に集めています。

3つ目は、「統合:Integration(インテグレーション)」

男性と女性が整然と並んでいる中に、「隔離・分離」されている人たちも仲間に入っています。でも、あくまでメインは健常者。「健常者と同じようにできるのであれば、こっちにきてもいいですよ」という基準です。

4つ目は、「包摂・包容:Inclusion(インクルージョン)」

1〜3の図では男性と女性が整然と並んでいたのに対して、ここではバラバラ。一つの円の中にいろんな人がいて、障害のあるなしは関係なく、ごちゃ混ぜになっています。

個人が“意思決定”できるようなサポートが必要

ーー2022年夏、日本の障害者権利条約の取り組み状況について、国連による初の審査が行われました。審査の結果、日本はどのようなフィードバックを受けたのでしょうか。

日本は障害者権利条約に批准しているので、約2年ごとに政府やNGOが取り組み状況についての報告書を国連に提出する必要があります。障害者の権利が守られているかどうかさまざまな項目についてチェックされます。最終的に国連から公表されるのが「総括所見(勧告)」です。

日本への総括所見の内容として特に注目したいのが、第19条(自立した生活および地域社会へのインクルージョン)と第24条(教育)に関しての文言です。第19条には「障害児を含む障害者の施設収容を廃止するため、予算配分を障害者の入所施設から、障害者が地域社会で他の人と対等に自立して生活するための手配と支援に振り向けることによって、迅速な措置をとること」、第24条には「障害のあるすべての子どもたちが、個々の教育的要求を満たし、インクルーシブ教育を確保するための合理的配慮を保証する」とあります。

ここに書かれている「自立」とは、自分で着替えられる、自分でご飯を食べられるなどの身辺自立のことではありません。必要なサポートを受けながら、自分で決めることができるようにすることを意味しています。つまり、代替意思決定の仕組みではなく、本人の意思と思考を尊重した意思決定支援の仕組みが必要だということです。

障害者権利条約が目指すのは、合理的配慮を受けながら障害の有無に関わらず一緒に生活することができるフルインクルージョンの社会です。教育においては、あくまで分離をやめることが目的であり、支援をやめることが目的ではありません。

そうした社会づくりのためには、小さいときから障害のある子どももない子どもも、それ以外にさまざまな特性や背景のある子どもが一緒に学び育つインクルーシブな教育体制が重要なんです。学校の先生には、子どもたちが大人になってからどんな暮らしをするのかを考えて、今の教育を考えてほしいなと思います。

世界と日本のインクルーシブ教育

ーーここで、世界のインクルーシブ教育に目を向けてみましょう。アメリカ、イタリア、韓国ではどのような教育が行われているのでしょうか。

まずアメリカでは障害がある子どもの95%が通常学級で学び、残りの5%は、「特別学校」「寄宿施設」「学校・病院」「矯正病院」などで教育を受けます。基本的には通常学級で個別に支援を受けることができて、必要に応じてリソースルームと呼ばれる場所で個別に学習サポートを受けることができます。

イタリアはごく少数を除き、ほぼフルインクルージョンな教育が実現されています。障害のある子どももない子どもも同じ教室で学び、支援学校はほとんどありません。1970年代に移民の増加や貧富の差の拡大の影響もあり不登校が増え、そこから「どんな子どもでも学校に来れるようにしよう」と数十年かけて教育を変えていった背景があります。

韓国は本人や保護者が希望すれば通常学級で学ぶことができます。通常学級に籍を置きながら、特殊学校での個別支援計画をもとに、個別に必要な教育を受けることもできます。一方で、韓国は日本以上に学歴が重視される社会の影響もあり、障害のある子どもは年齢が上がるにつれて、特殊学校に転校するケースが多いようです。

障害者権利条約のベースは「社会モデル」、日本の現状は?

ーー日本では、どのような目的で特別支援教育がなされているのでしょうか。障害者権利条約が目指すインクルーシブ教育と、日本で行われている特別支援教育の違いについて説明がありました。

日本の学校教育法72条に書かれている特別支援学校の目的には、「障害による学習上又は生活上の困難を克服し自立を図るために必要な知識技能を授けることを目的とする」と書かれています。

つまり、社会の中でみんなと一緒に学んでいくことではなく、個人ができないことをできるようにしていくことに焦点が当たっています。ベースとなっているのは、「医学モデル」。通常学級や通級、特別支援学級、特別支援学校など多様な学び場が選べるような体制をつくっていることは一見すると悪いことではないように感じられます。ですが、実際は通常学級で必要な支援を受けられる状況にないため、特定の場所を選ばざるを得ないのです。

2022年4月27日付けで、文科省から「特別支援学級及び通級による指導の適切な運用について」通知が出されました。昨年度に実施した実態調査をもとに、「特別支援学級に在籍する児童生徒が、大半の時間を交流及び共同学習として通常の学級で学び、特別支援学級において障害の状態や特性及び心身の発達の段階等に応じた指導を十分に受けていない事例がある」とし、各教育委員会等に対して、特別支援学級に在籍している児童生徒については、原則として週の授業時数の半分以上を目安として特別支援学級において授業を行うことを求めました。

一方で、障害者権利条約には、「障害者が、その人格、才能及び創造力並びに精神的及び身体的な能力をその可能な最大限度まで発達させること。障害者が自由な社会に効果的に参加することを可能とすること。(第24条1項)」と書かれています。通常学級で学ぶことを原則として、障害の種別や程度で分離されないようにすべきだと言っています。インクルーシブ教育は、通常学級の改革のプロセスを含んでいるわけです。障害者権利条約に書かれていることは、社会や環境のあり方が障害をつくり出しているという「社会モデル」がベースになっています。

分けない教育は、生涯の友人をつくる

ーー崔さんが目指すのは、障害の有無に関わらずいろんな子どもがごちゃ混ぜで学ぶ教育。思い出の写真とともに、理想の社会について語ってくださいました。

インクルーシブ教育とは、インクルーシブな社会をつくるために行われるものです。いろいろな子どもがごちゃ混ぜで一緒に学び育つ教育。そして、障害者や障害のある子どもの親だけが悩んだり泣いたりしないで済む教育の実現ができると良いなと思っています。

最後に私のお気に入りの写真を紹介させてください。

これは20年前に撮影された、大阪の小学校での運動会の様子です。車椅子に乗っている児童は医療的ケアが必要で、しゃべったり歩いたりすることはできません。コミュニケーション手段は、表情。友達はずっと一緒にいるので、彼女が何を伝えたいのかはわかるんです。障害の有無に関係なく一緒に運動会に参加するために、この学校ではルールを少し変更しました。当時はインクルーシブ教育という言葉はなかったけれど、こういったことが実践されていたんです。

これは車椅子に乗っていた児童とその横に立っていた児童の今の様子です。20年たった今も友達なんです。分けない教育は、こういうところに繋がっていく。私は、これが当たり前になる社会を目指したいと思っています。

現職の先生たちを交えて、インクルーシブ教育について考える

後半は公立学校に勤める教員3名、スクールソーシャルワーカー1名、元教員1名を交えて座談会が行われました。大阪府下の小学校に勤める豊田さんは、先ほどの写真を見て大阪で行われてきた教育について振り返ります。

「大阪では、障害の有無に関係なく一緒に学ぶ姿が当たり前の光景としてあったんですよね。子どもたちも楽しそうでした。地域の学校に通いたいという子どもやその保護者のニーズにも応えてきました。いろんな課題はあると思いますが、今考えると先進的な取り組みをしてきたんだなと思います」

同じく小学校教員の橋本さんは、「支援学校に行くと、わが子が地域から切り離されてしまうから嫌だ。と涙を流す保護者に出会ったことがあります。地域の学校に通い、地域の子どもたちと共に学ぶことが、地域で暮らすことに大きく影響することを痛感しました。また、通常学級で過ごす時間を制限されることに危機感を覚えている保護者の声もたくさん届き、地域の学校に通う意味を考えさせられています。」と話されました。

特別支援学級担任の岩佐さんからは「通常学級に在籍しながら支援学級でも学べる仕組みをつくる必要があるのでは」「教員側にも余裕がないと、一人ひとりのニーズに応えるような教育はできない」という意見も。教室環境の自由度を上げるとインクルーシブな教育には近づくけれど、それによってクラス全体の秩序が乱れることへの恐れを感じる先生はきっと多い・・・という話題にもなりました。

一方で、十数年前と今の子どもの変化を感じるという元教員の塚本さんからは、「支援が必要な子どもにとって必要な環境を考えていくことは、他の子どもたちにとっても学びやすい環境づくりにつながっていく。それは、学校を変えていく大きな力になると思います」とインクルーシブ教育を進めていくことの重要性を話してくれました。

また、障害者運動に関わってきた経験を持つスクールソーシャルワーカーの小谷さんは、自身の経験を踏まえ、インクルーシブな社会をつくっていくために必要な教育のあり方を話してくれました。

「障害のある方でも必要な介助を受けることができれば、地域で生活することはできるんですよね。でも、まだまだ保護者も先生もそれが見えてきていないんだと思います。だから、不安になってしまう。自立生活(地域生活)のあり方が世の中に浸透していないことは、インクルーシブな教育を進めることに制限をかけてしまっているのではないかなと思います。子どもたちが大人になったときの生活を見据えた上で、今の教育のあり方を考えていけるといいですよね」

最後は崔さんから、「 “地域の入り口は学校から”。地域で障害を持つ人が当たり前に暮らす社会のために、インクルーシブ教育が必要」とのメッセージが改めてあり、これからも現場の教職員と当事者運動のそれぞれの立場でつながりながら、一緒に考えていくことを約束して会は締めくくられました。

最後に

School Voice Projectでは、今後、全国の学校でインクルーシブ教育が実現されるために何をしていけば良いかを制度面を含めて考えていきたいと思っています。2023年度は、「働き方改革」「学びの転換」「インクルーシブ教育」を三本柱として、政策提言書をまとめていきます。今回は、そのための学びの一環としてのイベント開催でした。

School Voice Projectの、現場の声から“仕組み”を変える政策提言活動については、団体ホームページより公開しています。ぜひ今後の取り組みにもご注目いただければ幸いです。

関連記事


学校経営や各教科の授業を行うにあたって、文科省が作成した大綱的な基準である「学習指導要領」。現行の学習指導要領は、小学校・中学校の完全実施を経て、今年度から高等学校でも段階的な実施が始まっています。

今回は、現行の学習指導要領について文科省が掲げている 「改訂のポイント」 について教職員が感じていることを聞きました。

アンケートの概要

■対象  :全国の小〜高校年齢の児童生徒が通う一条校に勤務する教職員
■実施期間:2022年10月7日(金)〜2022年10月31日(月)
■実施方法:インターネット調査(実施時の設問はこちら
■回答数 :46件

アンケート結果

設問1 業務に関係のある学習指導要領は?

Q1. あなたの通常業務に関係のある学習指導要領を選択してください。

(例:特別支援学校中等部→中学校および特別支援学校を選択)(複数選択可)

設問2 全体的な影響は?

Q2. 現行の学習指導要領で文科省が掲げている「改訂のポイント」について、学校現場に良い影響が出ていると思いますか? それぞれ当てはまる内容を選択してください。

学校現場に良い影響が出ていると思うか?という問いに対して、最も多くの人が「そう思う」と答えたのは、「主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)の視点からの授業改善」(46人中20人)でした。次いで、「育成を目指す資質・能力(「知識及び技能」「思考力、判断力、表現力等」「学びに向かう力、人間力等」の三つの柱)」(46人中17人)「そう思わない」と答えた人が最も多かったのは、「カリキュラム・マネジメント」(46人中15人)でした。

設問3 小・中学校への影響は?

Q3. 小学校・中学校の現行学習指導要領について文科省が掲げている「改訂のポイント」について、学校現場に良い影響が出ていると思いますか? それぞれ当てはまる内容を選択してください。

「学校現場に良い影響が出ていると思うか?」という問いに対して、「そう思う」と答えた人は、「体験活動の充実」を除いて1〜3人(32人中)でした。「体験活動の充実」は6人が「そう思う」と回答。「そう思わない」と答えた人は、すべての項目で10人を超えました。

設問4 高校への影響は?

Q4. 高等学校の現行学習指導要領について文科省が掲げている「改訂のポイント」について、学校現場に良い影響が出ていると思いますか? それぞれ当てはまる内容を選択してください。

「学校現場に良い影響が出ていると思うか?」という問いに対して、最も多くの人(13人中4人)が「そう思う」と回答したのは、「教科・科目構成の見直し(地理総合・歴史総合の新設)」、「言語能力の確実な育成」、「外国語教育の充実」、「上記以外(主権者教育、消費者教育、防災・安全教育、情報教育(プログラミング教育含む)、子供たちの発達の支援、など)」の4項目でした。「道徳教育の充実」に関しては8人が「そう思わない」と回答し、回答者の半数を超えました。

設問5 特別支援学校への影響は?

Q5. 特別支援学校の現行学習指導要領について文科省が掲げている「改訂のポイント」について、学校現場に良い影響が出ていると思いますか? それぞれ当てはまる内容を選択してください。

「学校現場に良い影響が出ていると思うか?」という問いに対して、「一人一人に応じた指導の充実」と「自立と社会参加に向けた教育の充実」についてはそれぞれ5人中1人が「そう思う」と回答しました。「学びの連続性を重視した対応」については、「そう思う」と回答した人は0人でした。

まとめ

全体を通して、新学習指導要領に対して良い影響があると感じる声は少数にとどまりました。良い影響があると感じない声がある一方で、「どちらとも言えない」「分からない」という回答も目立ちました。効果を実感するには、一定の時間が必要な側面もあります。今後、さらに学習指導要領改訂に伴う現場の声について深掘りしていきたいと考えています。


▼ 自由記述の回答一覧は、以下よりダウンロードしてご覧ください。 ▼

アンケート資料ダウンロード 申し込みフォーム

* 記入必須項目

■お名前*
■メールアドレス*
■立場*
■データの使用用途*
■ご所属
■教職員アンケートサイトフキダシへの登録を希望する
※対象は教職員の方のみです。
■メガホンの運営団体School Voice Project への寄付に興味がある

※メディア関係者の皆様へ
すでに公開されている教職員アンケート結果やWEBメディアの記事の内容等は報道の際に使用いただいて構いません。その際は【出典:NPO法人School Voice Project 】クレジットを入れていただき、事後でも結構ですのでご一報ください。