学校をもっとよくするWebメディア

メガホン – School Voice Project

学校をもっとよくするWebメディア

【教職員アンケート結果】学校と地域の連携について

  • メガホン編集部

平成29・30・31改訂の新学習指導要領では、「社会に開かれた教育課程」の実現のために、地域と連携・協働することが重要なポイントとしてあげられています。

子どもたちが自分の力で社会をよりよくしていける実感を持つために、地域社会と連携した教育活動が求められており、教職員だけでなく地域の人たちの存在も、子どもたちの学びを支えるための環境づくりにおいて欠かせないものとなっています。

地域との連携を進める具体的な取り組みとしては、学校と地域の人たちが力を合わせて学校運営に取り組むことができる「コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)という仕組みも推進されています。

「カタリスト for edu」では、コミュニティ・スクールの仕組みについてわかりやすくまとめた記事を公開しています。こちらも合わせてご覧ください。

コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)とは – カタリスト for eduコミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)とは – カタリスト for edu

アンケートの概要

School Voice Project では、WEBアンケートサイト「フキダシ」に登録する教職員の方を対象に、学校と地域の連携についてアンケートを取りました。

WEBアンケートサイト「フキダシ」は、教員の方だけではなく、事務職員や用務員、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー、ICT支援員の方など、学校現場で働くさまざまな立場・職種の方が対象です。

■対象:全国の小〜高校年齢の児童生徒が通う一条校に勤務する教職員
■実施期間:2021年2月4日(金)〜2月27日(日)
■実施方法:インターネット調査
■回答数:51件

アンケート結果

設問1 どんな地域連携をしている?

Q. 現在あなたの勤務校ではどのような地域連携の取り組みを行っていますか?(複数選択可)

その他の回答

地域自治会、警察、小中で連携した見守り活動。公民館の放課後無料開放【小学校・福島県】

有志が地域活動、高校生対象の街づくり講座に参加する。【高等学校・静岡県】

お店、事業所の方に来ていただく【中学校・大阪府】

保幼小連携【小学校・大阪府】

市で行っている、一般市民に公開の屋外美術図工展(当該学年全員の参)【小学校・神奈川県】

設問2 教職員での意識共有はできてる?

Q. あなたの勤務校では教職員間で、地域と連携する取り組みの教育上の意義や目的が共有されていると感じますか?

設問3 地域の人との意識共有はできてる?

Q. あなたの勤務校では連携先の地域の人や団体との間で、取り組みの教育上の意義や目的が共有されていると感じますか?

設問4 地域連携の効果・意義は?

Q. 地域連携には教育上どのような効果・意義があると考えていますか?ご自身の経験をもとにお答えください。(任意)

小学校

子どもが本気になる。教師が、いかに世の中のことについて知らないのか明らかになる。
【教員・青森県】

・子どもの意欲向上
・地域の教育に参加するという意識
・専門知識や生きた知識を児童が学べる【教員・東京都】

子どもが所属する身近な社会(学級、学校、地域)にいる他者の生活やその背景、抱えている思いなどを学ぶことは、子どもが社会を創る力を育てるためには、大切だと考えています。【教員・滋賀県】

子どもの成長は、家庭・学校・地域の三つの協力によって育まれている。困難さを抱える家庭には、学校はもちろん地域の協力によって子どもたちのより良い環境が整う。さらに、学校にとっても学校だけでは賄いきれない子どもの安全・安心を守る活動や、地域ならではの資源を活用することで学習を子どもにとってより身近で深いものへと発展させる事ができる。地域にとっても、学校や家庭と連携することで、地域が抱えている問題点を子どももそうだが家庭へと届けて、問題解決の糸口につながっている。
こうして、家庭・学校・地域は切っても切れない関係があり、私自身も社会科の学習での地域教材の活用や、総合的な学習の時間での人手の応援など多くの場面で地域との連携によって活動を広げてきた。
【教員・神奈川県】

教科書では出会えない人やモノと出会えるので、豊かな経験値となる。地域で働く人の想い、願いが伝わり、自分の地域に想いを持つことができる。「あの人に出会いたい!」と子どもたちから出てくるので、学習意欲につながる。他種連携は、自己有用感にもつながり、小学校入学時の関わりにつながる。【教員・大阪府】こうして、家庭・学校・地域は切っても切れない関係があり、私自身も社会科の学習での地域教材の活用や、総合的な学習の時間での人手の応援など多くの場面で地域との連携によって活動を広げてきた。
【教員・神奈川県】

中学校

北海道下川町はSDGsと移住に力を入れています。そのため、いろいろな職業を経験した移住者が多いです。学校にゲストスピーカーとして、お仕事の話やこれまでの人生経験をお話してくれています。下川町だけだと、作曲家や国連職員など下川町には存在しない職種の話に子どもたちは触れることができます。また、その方のコネクションを頼りにしながら、将来の進学先や就職先をつなげてくれる可能性を、子どもたちは得られます。一度、子どもとかかわることで、ゲストの方も見捨てられない性分になるので、子どもたちのセーフティーネットを作ることにつながります。
ゲストの方も、移住者として町民のみなさんに仕事の宣伝ができるので、winwinだと感じています。
【教員・北海道】

子ども達が、キャリアについて具体的な意識を持つことができます。子ども達が目にする「働く人」は、テレビの中か、目につく場所の人だけです。自然と、子ども達はキラキラとしたお店や、テレビに映るような大企業のデスクにすわることが仕事だと思うことだと思うようになります。自分たちのまちの建物の中や現場で働き、地域を支え、地域を作る大人の存在を知りません。そうした、本気で働く地元の大人たちに出会える学びの機会が提供できることが良さだと思います。【教員・福島県】

社会に開かれた教育課程を実現するためには、まずは、地域との連携により、子どもに育てるべき資質・能力を共有することが大切である。
前任校では、そこが上手くいき、コミュニティ・スクールとして、上手く行っていた。【校長・東京都】

学校が提供できない「価値」を感じています。地域の方々にとっても子どもたちの触れ合いなどを通して学校が「学びの場」として機能する可能性もあると思います。子ども、地域住民双方にとっての「学びの場」がそこにはあると思います。【教員・兵庫県】

高等学校

学校が目指すべき教育目標と、地域社会が望む生徒像(将来の社会人像)がしっかりと共有できる。子どもの教育を学校任せにしないような、学校依存的な子どもへの教育の在り方を解消できる。(子どもの教育を学校だけの責任にするのではなく、そこに生きる全ての大人の課題であるという事を自覚してもらえることにつながる。)【実習助手/実習教員・大分県】

多くの大人と接することで子どもの職業観、自己肯定感が高まることを期待しています。ただ、地域の大人と言ってもいろいろな方がいるので、生徒と地域の大人を繋ぐコーディネーターは必須だと思います。社会教育士に期待しています。【教員・静岡県】

教育上の効果・意義かどうかは不明だが、生徒の自己肯定感・学習意欲・コミュニケーション能力等の様々な社会に出てよりよく生きていく力の向上が期待できる。先日、市の社会教育大会の司会を依頼され、生徒2名が参加したが、練習を重ね司会を見事やり遂げたその表情は、安堵や疲労もあったが、それ以上に自信に満ち溢れていた。【教員・山口県】

設問5 今後の地域連携はどう行うべき?

Q. 今後、地域連携はどのように行っていくべきだと思いますか?課題だと思うことも含めてお答えください(任意)

小学校

現在の学校は、あまりに一般的知識・技能からなる学力に重きを置きすぎていて、将来子ども達が地域社会の中でいかに暮らしていくかをないがしろにしていると思います。その反省をもとにして、地域連携を学校のオプションではなく、地域連携を学校教育のベースにしていくことが必要だと思います。「忙しいからできない」ではなく、地域連携を妨げる忙しさは本来公立学校ですべきことなのだろうか?という発想が大切だと思います。【教員・福島県】

教員や親など、教育、子育てに携わる人達、つまり子ども達を支援する人達を支援する仕組みとして機能して欲しいです。コミュニティスクールの多くは形骸化しています。【教員・岩手県】

小規模校の統合が進み、学校が地域から消えることが増えている。あまりに広い学区で深い地域連携は難しい。【主幹(首席)教諭・指導教諭(養・栄含む)・福島県】

意識して引き継ぎをしないと担当者が早いスパンで変わる、又は同じ人が担当者になるので、熱は冷めやすい。【教員・大阪府】

休日に地域のお祭りが行われて、教師だから行って当然のような風潮はおかしいと感じていました。その地域にずっと勤務するわけではないので、ドライだと思われてしまうかもしれませんが、そのような行事には関わりたくないのが本音でした。地域の行事は、学校を含めて考えるのではなく、学校という組織を介さないで、子どもたちと盛り上げる方法を模索してほしいです。【教員・東京都】

中学校

学校にどんどん入ってもらって、総合的な学習の時間を実施していきたい。しかし、管理職の理解が得られず、ゲストスピーカーを呼べないケースが多々あります。管理職だけではないですが、教員自身が「越境して学ぶ」ことが普通になっていないので、総合的な学習の時間で学校外に出たり、ゲストスピーカーを呼ぶ発想に至らないことが少なくない。【教員・北海道】

一部の教職員だけでなく、すべての教職員がなんらかの役割で地域の一員として共同参画する必要がある。【教員・大阪府】

学校も地域も子どもたちも、気軽に話したり関わったりできる空気作りをしていきたい。今の課題は、関わり合うことのハードルが高いこと。人を呼ぶにも手続きや調整が非常に煩雑。効果を考えて立案計画、反省等するが、業務量が膨大。少しでもリスクがあると中止にさせられる。管理職として危機管理に努めるのは当然だが、より良くしようとするこちらのモチベーションが持たない。【教員・茨城県】

地域の方と学校側と双方にメリットがあり、無理のない形での実施が理想だと思う。しかし、教職員が学校のある地域についてあまり知らず、連携をとりにくい場合も多いように感じる。地域と学校が歩みよっていくためには、まず大人が地域を知るための機会が必要になってくるのではないだろうか。その土台があって、教育の方針ができあがるのではないかと考える。すでに土台ができあがっている地域は、毎年恒例の行事ができるなど年間を見通した計画があり、学校も地域の人もそれに備えて準備ができるため、とても効果的な方法が実施できているように思う。【教員・大阪府】

高等学校

提案やマッチング、コーディネートしてくれる外部組織が必要だと思います。教職員だけだと膨大な仕事が増えてようやく成立するので。外に出ていかないといけない意識と行動力のある人がいなくなると取り組みが萎むか、取り組みが残っても形骸化するあたりが難しいですね。【教員・大阪府】

地域の大人と生徒のマッチングする場が必要です。地域でも子どもの居場所づくりに取り組む方が増えていますが、学校内にも地域の大人たちと子どもたちが交流できる場が必要なんだと思います。私はどの学校にもある学校図書館、地域交流の拠点となることを願っています。【教員・滋賀県】

校則など学校運営に関わる諸課題について、地域の方々の意見も取り入れていくなど、積極的に行っていくべきだと思います。ただ、担当者の負担は相当なものとなるため、結局のところ教職員数増や残業代の支給といった条件整備が必要不可欠。結局、この課題が解決されない限り、あらゆる面において公立学校は前に進めないと考えています。(工藤勇一さんのようなスーパーマンがたくさんいれば話は違いますが…)【教員・山口県】

まとめ

地域連携の取り組み内容は、「地域の方をゲストスピーカーとして招く」「地域人材による学校サポート」「総合学習等で地域の課題解決に取り組む」の順で高い割合となりました。地域別に見ると「地域人材による学校サポート」が関東圏で多く、「農家や施設等で体験学習を行う」は北海道や東北圏で多く見られました。

取り組みの実施状況について校種別に見ると、小学校>中学校>高等学校の順番で多く取り組まれており、連携の種類についても小・中学校の方が高等学校より多い結果となりました。

地域連携については、概ねどの地域でも重要だと感じている一方、仕事の負担が増えたり、取り組みが形骸化するなどの懸念やジレンマを感じる意見があがっていました。

その他、興味深い点としては、「地域と連携する取り組みの教育上の意義や目的」の共有ができているかについて、地域の人や団体とは「できている」が多く、教職員間では少ないという結果です。その背景に関しては別途調査が必要ですが、今後、地域連携を推進するにあたり、ボトルネックになり得る点でもありそうです。


このアンケートは教職員の声をまとめたものですが、地域連携は学校だけで完結するものではないため、大人一人ひとりが主体性を持ち学校教育に関わることが重要です。コミュニティ・スクールなどの仕組みが機能し、地域全体で子どもの教育環境を整えるためにも、大人一人ひとりの意識の変化や、保護者を含む一人ひとりの市民の働き方・ワークライフバランスの問題の解決など社会が変化していくことも大切なのではないでしょうか。



▼ 自由記述の回答一覧は、以下よりダウンロードしてご覧ください。 ▼

アンケート資料ダウンロード 申し込みフォーム

* 記入必須項目

■お名前*
■メールアドレス*
■立場*
■データの使用用途*
■ご所属
■教職員アンケートサイトフキダシへの登録を希望する
※対象は教職員の方のみです。
■メガホンの運営団体School Voice Project への寄付に興味がある

教職員WEBアンケートサイト

メガホンの記事は、教職員の方からの声をもとに制作しています。
教職員の方は、ぜひ声を聞かせてください。
教職員WEBアンケートサイト「フキダシ」について詳しく知りたい方はこちら

メガホンの記事は、
教職員の方からの声をもとに制作しています。
教職員の方は、ぜひ声を聞かせてください。
教職員WEBアンケートサイト
「フキダシ」について詳しく知りたい方はこちら

メガホン編集部

NPO法人School Voice Project のメンバーが、プロやアマチュアのライターの方の力を借りながら、学校をもっとよくするためのさまざまな情報をお届けしていきます。 目指しているのは、「教職員が共感でき、元気になれるメディア」「学校の外の人が学校を応援したくなるメディア」です。

関連記事・コンテンツ

記事

アンケートのお願い

記事の続きをお読みいただくには簡単なアンケートにお答えください。

※サイト運営の参考にさせていただきます。
※一度ご回答いただくと再表示されません。

ご職業やお立場をお選びください。

あなたの年代をお選びください。