
【解説記事】[パブリックコメント実施中!]学習指導要領はどう決まる? 改訂の流れ・議論の焦点・現場の声の届け方
学校で何を学び、どのような力を育てるのか。その基準となる学習指導要領の改訂に向けて、議論が進んでいます。今回の改訂では、教科の内容だけでなく、学校での時間の使い方や、多様な子どもの学びへの対応、学習評価のあり方も検討されています。
こうした見直しに対し、専門家や教職員からは、学校の裁量が広がることへの期待とともに、人員や時間の確保、現場での運用に関する懸念も示されてきました。では、これらの意見は、どのような過程を経て改訂内容に反映されるのでしょうか。
2026年10月には、改訂の方向性を示す「審議まとめ」が公表されました。ただし、学習指導要領の本文が正式に決まったわけではありません。現在は、意見募集や関係団体へのヒアリングを通じて、さらに検討を進める段階です。
この記事では、学習指導要領の基本を整理したうえで、誰が、どのように改訂を進めているのか、何が議論の焦点となっているのかを解説します。あわせて、専門家・教職員の意見、パブリックコメントの仕組みも紹介し、今後の審議に合わせて内容を更新していく予定です。
現在の状況
| 状況(2026年10月22日時点) | |
|---|---|
| 改訂の段階 | 「審議まとめ」の公表後、意見募集・関係団体への意見聴取の段階 (答申・告示前) |
| 主な資料 | 次期学習指導要領等に向けた審議まとめ(2026年10月5日公表) |
| 意見募集 | 2026年11月5日(木)23時59分まで |
| 提出先 | e-Govの募集案内から指定のWebフォームへ |
参考「『次期学習指導要領等に向けた審議まとめ』に関するパブリック・コメント(意見公募手続)を実施します」(文科省,2026年10月6日公開,2026年10月22日参照)より
学習指導要領とは
学校教育の共通基準
まず、学習指導要領とは、どのようなものなのでしょうか。文部科学省が定める、学校の教育課程(カリキュラム)の基準です。全国のどの学校でも一定の教育水準を確保できるよう、各教科などで育てる力や、扱う学習内容を示しています。
ここでいう教育課程とは、学校の教育目標に向けて、何を、どのような順序や時間配分で学ぶかを組み立てた計画のことです。教科ごとの授業だけでなく、総合的な学習の時間や特別活動なども含まれます。日々の授業や時間割は、こうした学校全体の計画に基づくものです。
学習指導要領には、各教科などの「目標」「内容」「内容の取扱い」に加え、教育課程全体に関わる「総則」があります。各教科の部分が、そこで何を学び、どのような力を育てるかを示すのに対し、総則は、学校全体で教育課程を編成する際の考え方や、授業時数の取扱いなどを定めています。
そのため、学習指導要領の改訂は、教科で扱う内容の追加・削除にとどまりません。授業づくりの考え方や、学校全体の学びの組み立て方を見直すことにもつながります。
こうした基準は、社会の変化や学校教育の課題に対応するため、おおむね10年ごとに改訂されてきました。近年の主な変更には、次のようなものがあります。
(※改訂から実施までには準備期間があるため、表中の「改訂年」と学校で実施が始まった年には差があります。)
| 改訂年(小・中学校/高校) | 主な特徴の例 |
|---|---|
| 1998年/1999年 | 総合的な学習の時間の導入 高校での情報科の導入 |
| 2008年/2009年 | 小学校5・6年での外国語活動の導入 |
| 2017年/2018年 | 社会に開かれた教育課程 主体的・対話的で深い学び カリキュラム・マネジメントの重視 |
参考「『学習指導要領』とは?」(文科省,2026年10月22日参照)より
参考「平成29・30・31年改訂学習指導要領の趣旨・内容を分かりやすく紹介」(文科省,2026年10月22日参照)より
本文・解説・教科書
学習指導要領の改訂に伴って、その内容を説明する「学習指導要領解説」や、授業で使う教科書も見直されます。ただし、学習指導要領の本文、解説、教科書は、それぞれ役割が異なり、それぞれ以下のような位置づけになっています。
| 資料 | 主な役割 |
|---|---|
| 学習指導要領(本文) | 各教科等の目標・内容、教育課程の編成上の取扱いに関する基準 |
| 学習指導要領解説 | 本文の趣旨や解釈、指導上の留意点などを説明 |
| 教科書 | 学習指導要領等に基づく編集・検定などを経て、授業で使用する教材 |
学習指導要領の本文は、目標や内容の大きな枠組みを示すものです。そのため、一つひとつの記述は簡潔で、授業の進め方まで詳しく書かれているわけではありません。そこで、記述の意図や背景、指導に当たっての留意点などを詳しく説明しているのが「解説」です。
一方、教科書は、その目標や内容を学ぶための教材に当たります。学習指導要領等を踏まえて出版社が編集し、検定などを経て学校で使用されます。つまり、本文が示す基準を、実際の学習で扱う文章や図、問題などに具体化したものです。
また、本文と解説には、法的な位置づけの違いもあります。文科省は、学習指導要領の本文を、法的な基準性をもつ「大綱的な基準」としています(※「大綱的」:大きな枠組みを示していること)。一方、解説は指導助言のための説明資料であり、本文と同じ法的拘束力をもつものではありません。
ただし、本文に法的な基準性があることは、授業ごとの進め方まで国が一律に決めることを意味しません。各学校は、共通の基準を踏まえながら、子どもや地域の実態に応じて教育課程を編成します。国が定める枠組みと、学校や教師が判断して具体化する部分の両方がある、ということです。
今回の改訂で議論されている「教育課程の柔軟化」や「学校の裁量」も、この関係に関わります。共通の基準を設けたうえで、学校や教師がどの範囲まで、どのような条件で変更・調整できるようにするかが、検討されています。
学習指導要領の法的な位置づけや、本文と解説の違いについては、こちらの記事でも解説しています。
誰が、どう決める?
中教審の役割
学習指導要領は文部科学省が定める基準ですが、改訂に当たっては、中央教育審議会(中教審)での審議が行われます。中教審は、文部科学大臣からの諮問を受け、教育に関する重要事項を調査・審議する機関です。
「諮問」とは、大臣が審議会に検討を依頼することです。学習指導要領の改訂では、学校教育の現状や課題を踏まえ、次の教育課程をどのようなものにするかについて検討を求めます。これを受け、中教審で改訂の基本方針や具体的な内容が議論されます。
そして、審議の結果をまとめ、大臣に示すのが「答申」です。答申には、どのような教育を目指すのか、そのために何を見直すのかといった、改訂の方針が盛り込まれます。その後、文科省が学習指導要領の本文の案を作成し、意見募集などを経て「告示」することで、正式な基準として定まります。
このように、中教審で方針をまとめることと、学習指導要領の本文が正式に決まることは、別の段階です。審議の途中で示される提案や方向性が、その時点で学校に適用されるわけではありません。
参考「『学習指導要領』とは?」(文科省,2026年10月22日参照)より
部会とWGの役割
ただし、幼稚園から高校までの教育内容を、一つの会議ですべて検討するわけではありません。中教審の中には、扱う分野に応じた分科会や部会が設けられています。学習指導要領の改訂では、初等中等教育分科会の下にある「教育課程部会」が中心となり、さらに特別部会やワーキンググループ(WG)で議論を進めます。
今回の改訂に関わる主な会議と、その役割は次のとおりです。
| 会議 | 主に扱うこと |
|---|---|
| 教育課程企画特別部会 | 改訂全体の基本方針や、分野を横断する論点 |
| 総則・評価特別部会 | 教育課程全体のルール、学習評価のあり方 |
| 各ワーキンググループ(WG) | 教科、学校段階、特別の教育課程などの具体的な内容 |
例えば、「多様な子どもに対応できる教育課程にする」という全体方針だけでは、各教科の内容や授業の仕組みは決まりません。その方針を踏まえ、教科ごとに何を見直すのか、授業時数をどこまで調整できるようにするのか、学習評価とどう結びつけるのかなどを、具体的に検討する必要があります。こうした役割を分担しているのが、特別部会やWGです。
一方、それぞれの議論は互いに関係しています。ある教科で育てたい力を検討する際には、その力をどのように評価するかという議論も関わります。このため、教科別の内容と、総則・評価などの共通の仕組みについて、整合性を図りながら検討が進められます。
会議の資料や議事録は、文科省の教育課程部会のページから確認できます。ただし、資料によって示している内容は異なります。議事録には委員個人の意見や提案が記録される一方、「論点整理」や「審議まとめ」には、会議として取りまとめた内容が示されます。委員から提案があったことと、その内容が改訂方針に採用されたことは、同じではありません。
参考「教育課程部会」(文科省,2026年10月22日参照)より
告示から実施まで
こうした審議を経て学習指導要領が告示されても、すぐに全国の学校の授業が切り替わるわけではありません。学校で実施するまでには、教科書や教育課程などの準備期間があります。
教科書については、出版社が新しい学習指導要領に沿って編集し、文科省の検定を受けます。その後、検定を経た教科書などの中から、教育委員会などが使用するものを選ぶ「採択」が行われます。学校でも、改訂内容の理解を深める研修や、教育課程・年間指導計画の見直しなどが進められます。
また、実施までの過程では、新しい内容の一部を先に取り入れる「先行実施」が行われる場合もあります。新しい学習指導要領への切り替え方も学校段階によって異なり、全学年で一斉に実施する場合と、入学生から学年ごとに順次実施する場合があります。
そのため、改訂のスケジュールには、答申や告示の時期に加え、移行期間や学校段階ごとの実施時期が示されます。「学習指導要領が改訂された年」と「学校で新しい教育課程が始まる年」に違いがあるのは、このような準備と移行の過程があるためです。

参考「学習指導要領等の改訂に関するスケジュール(イメージ)」(文科省,2025年12月16日公開,2026年10月22日参照)より
今回の改訂の進行状況は?
改訂の主な節目
では、今回の改訂はどこまで進んでいるのでしょうか。2024年12月の諮問後、まず全体の方針が議論され、その後、教科・領域ごとの検討へと進みました。これまでの主な動きは、次のとおりです。
| 時期 | 審議・公表内容 | 現場との関わり・資料 |
|---|---|---|
| 2022〜2024年 | 諮問前の有識者検討 | 現行の教育課程・評価に関する課題の整理 有識者検討会 |
| 2024年12月25日 | 文部科学大臣が中教審に諮問 | 改訂に向けた検討課題の提示 諮問 |
| 2025年1〜9月 | 基本方針を議論 9月25日に論点整理を公表 | 教科等の検討の土台となる考え方の整理 論点整理 |
| 2025年秋〜2026年夏 | 部会・WGで具体化 | 各教科、総則・評価、個別の教育課程などの検討 教育課程部会 |
| 2026年8〜10月 | 審議まとめの素案・案を検討 10月5日に公表 | 全体方針と各分野の改善の方向性の集約 審議まとめ |
| 2026年10〜11月 | 意見募集 関係団体へのヒアリング | 教職員・保護者などからの意見募集 教育関係団体などからの意見聴取 会議の開催状況 |
| 今後 | 意見を踏まえた検討 答申 告示案への意見募集 告示 | 改訂方針の取りまとめ 学習指導要領の本文の確定 |
この過程で公表された「論点整理」は、その後の検討の土台となる考え方や課題を示す文書です。「審議まとめ」では、各分野の検討を含めた方向性が、より具体的に示されます。いずれも、告示された学習指導要領そのものではありません。
例えば、全体方針として教育課程を柔軟にすることが示されても、それだけで、対象となる学校や子ども、変更できる範囲、実施に必要な条件まで決まるわけではありません。全体の考え方を各教科や制度の具体的な仕組みに落とし込むのが、その後の部会・WGでの検討です。
そのため、「審議まとめ」の公表後も、答申に向けた検討は続きます。10月8日、15日、21日にも教育課程企画特別部会が開かれ、教育関係団体などの資料が公表されました。意見募集と並行して、関係者から意見を聞く過程が続いています。ここでいうヒアリングは、関係団体などが意見や要望を説明し、審議の場でそれを聞く機会です。広く意見を募るパブリックコメントとは方法が異なりますが、どちらも審議の外から意見を受け取る過程に当たります。
参考「教育課程部会 教育課程企画特別部会」(文科省,2026年10月22日参照)より
こうした検討と並んで、学校での実施時期についても見通しが示されています。文科省の2025年12月16日付の工程表は、次の見通しを示しました。
(※確定した施行日ではなく、先行実施の対象・時期なども今後の決定事項です)
| 学校段階 | 工程表が示す実施の見通し |
|---|---|
| 幼稚園 | 2028年度から全面実施 |
| 小学校 | 2030年度から全面実施 |
| 中学校 | 2031年度から全面実施 |
| 高校 | 2032年度の入学生から順次実施 |
| 特別支援学校 | 対応する学校段階と同様の工程を想定 |
参考「学習指導要領等の改訂に関するスケジュール(イメージ)」(文科省,2025年12月16日公開,2026年10月22日参照)より
改訂の焦点と現場の声
3つの方向性
今回の改訂では、どのような教育を目指しているのでしょうか。審議まとめでは、「主体的・対話的で深い学びの実装」「多様性の包摂」「実現可能性の確保」という3つの方向性が示されています。
まず、「主体的・対話的で深い学び」は、現行の学習指導要領でも掲げられている考え方です。子どもが見通しをもって学習に取り組み、他者との対話を通じて考えを広げ、知識を関連づけながら理解を深めていくことなどを目指しています。今回の改訂では、この考え方を引き継ぎながら、日々の授業で具体的に実現していくことが重視されました。「実装」という言葉は、理念として示すだけでなく、実際の授業づくりや学習活動につなげるという意味で使われています。
その際に、子どもたちの特性や背景が多様であることを前提とするのが、二つ目の「多様性の包摂」です。同じ学年や学級であっても、学習の進み方や得意・不得意、日本語の習得状況、必要とする支援などは異なります。こうした違いに対応し、それぞれの子どもが学びに参加できるよう、教育課程や指導のあり方を見直す方向性です。特定の子どもへの支援に加え、通常の授業や教育課程そのものを、より多様な子どもに対応できるものにすることも含まれます。
具体的には、学習の進み方や得意・不得意に応じて学ぶ内容や進度を調整したり、日本語の習得状況に応じた指導や、障害の特性に応じた支援を組み合わせたりすることが想定されています。こうした対応の一つとして、特定分野に「特異な才能」のある子どもに対して、才能を伸ばすとともに、学習上・生活上の困難を軽減するための支援が行えるようにする特例制度も検討されています。
一方、目指す学びや対応の仕組みを示しても、それを学校で実施できるかどうかは別の課題です。そこで、三つ目に掲げられたのが「実現可能性の確保」です。授業の準備や子どもへの対応に必要な時間、教職員の指導体制、学習内容の量なども検討し、学校で実際に取り組める条件を整えることを意味します。
このように、3つの方向性は、それぞれ独立した目標ではありません。深い学びを、多様な子どもたちに保障し、それを学校で実施できるようにするという、互いに関わる考え方です。以下で紹介する教育課程の柔軟化や授業時数、学習評価の見直しは、これらを具体的な制度や仕組みに反映するための提案に当たります。
参考「『次期学習指導要領等に向けた審議まとめ』抜粋資料」(文科省,2026年10月22日参照)より
多様な子の学び
まず、子どもの実態に応じて、学ぶ内容や時間の配分を変えやすくする「教育課程の柔軟化」が検討されています。
これには、大きく二つの仕組みがあります。一つは、学校全体で教科などの時間配分を見直せるようにすること。もう一つは、個々の子どもの状況に応じて、通常とは異なる教育課程を編成できるようにすることです。前述の「特異な才能」のある子どもに関する特例制度も後者に当たります。
一方で、一人ひとりに合う学び方を用意することと、多様な子どもが共に学ぶ機会をどう両立させるかも論点です。たとえばインクルーシブ教育の研究者で中教審委員の野口晃菜さんは、多様な背景をもつ他者と共に生きることを学ぶ機会の重要性を指摘しています。子どもに応じた支援の仕組みだけでなく、日常的に誰と学び、関わるのかにも目を向けた意見です。
参考「初等中等教育分科会(第151回)議事録」(文科省,2026年10月22日参照)より
この改訂方針については、通常の教育を大きく見直すものとして評価する意見もあります。インクルーシブ教育を研究する青山新吾さんは、「多様性の包摂」が教育全体の方向性に位置づけられた点を評価したうえで、従来の教育に特別な支援を加えるだけでなく、通常の教育そのものを変えていく、という捉え方を示しています。
参考「連載・青山新吾〜『多様性の包摂』〜中央教育審議会の動き〜」(小学館『みんなの教育技術』,2025年12月26日公開,2026年10月22日参照)より
授業時数の柔軟化
教育課程の柔軟化のうち、学校全体の時間配分に関わるのが「調整授業時数制度」です。一定の条件の下で、教科などの授業時数を調整し、その分を別の学習や教師の研究・研修などに充てる仕組みが検討されています。
例えば、ある教科の授業時数を減らし、その分を別の教科に上乗せする場合、総授業時数が同じでも、学校の実態に合わせて配分を変えられます。また、調整した時間の一部を、教師が組織的に研究・研修を行う時間に充てることも、提案に含まれています。
このように、制度案の中心は、学校が時間の使い方を選べる範囲を広げることです。全国一律に総授業時数を減らすという提案ではありません。
参考「『次期学習指導要領等に向けた審議まとめ』抜粋資料」(文科省,2026年10月22日参照)より
ただ、時間の配分を変えられるようになったとしても、それを活用する学校の体制はどうなるのでしょうか。審議では、教職員の働き方や協力体制についても意見が出ています。たとえば前出の澤田さんは、中教審の議論の中で「教員が働きやすいこと」と「子どもが安心して通えること」の重要性を指摘しつつ、教師一人にあらゆる力を求めるのではなく、それぞれの得意・不得意を補い合う体制についても述べています。
参考「初等中等教育分科会(第151回)議事録」(文科省,2026年10月22日参照)より
教職員調査に寄せられた声
では、時間の使い方を学校が決められるようになることについて、教職員はどのような意見をもっているのでしょうか。
School Voice Project(SVP)が2025年7〜8月に行った「裁量的な時間」に関するインターネット調査には、56件の回答が寄せられ、自由回答には、授業研究や同僚との対話、子どもの支援に時間を使いたいという意見が挙げられました。
一方で、学習内容が多いままでは時間を生み出しにくい、学校内で制度について話す機会がない、といった声もありました。時間の使い道への期待とともに、制度を活用するための条件への懸念が示されています。
学習評価の見直し
授業時数とともに、学習評価のあり方も見直しが進められています。背景にあるのは、成績を付けるための記録や材料集めに時間がかかり、評価を子どもの学習や教師の授業改善に十分生かせていない、という課題です。
そもそも、学習評価は、成績を付けることだけを指すものではありません。子どもが何を理解し、どこでつまずいているかを捉え、次の学習や指導につなげることも含みます。一方、学期末などには、学習状況を観点ごとに整理する「観点別評価」や、それらを総括して教科の成績を示す「評定」を行います。今回の議論では、こうした評価の役割と、記録にかかる負担の両方が検討されています。
具体的な見直しの一つが、現行の「主体的に学習に取り組む態度」に関わる評価です。審議まとめでは、「学びに向かう力・人間性」を、主に次の二つの方法で捉える方向が示されました。
一つは、その子自身のよさや成長を捉える「個人内評価」です。他の子どもとの比較ではなく、一人ひとりの変化や進歩に着目し、総合所見欄などに反映するものです。
もう一つは、「思考・判断・表現」の観点別評価に「○」を付ける方法です。各教科で示される「学びに向かう姿」が、一定の評価期間を通じて継続的に見られた場合に付記する、とされています。この「○」は、それだけで評定を上げる仕組みではありませんが、学びに向かう姿を「思考・判断・表現」と一体的に捉えた結果が、評定に関わる場合はあり、今回の見直しは「学習への取り組み方が成績に一切関係しなくなる」というものでもないとされています。
参考「『次期学習指導要領等に向けた審議まとめ』抜粋資料」(文科省,2026年10月22日参照)より
実現のための環境整備・体制への意見
ここまでの教育課程や評価の見直しに加え、改訂内容を実施するための指導体制も論点となっています。例えば、情報教育の充実をめぐっては、全国町村教育長会が内容を支持する一方、中学校の技術科教員の不足や、小学校のICT指導を担う人材の育成についての課題も挙げられています。
参考「次期学習指導要領、情報教育の指導人材が課題 中教審で7団体から意見聴取」(月刊私塾界,2026年10月8日公開,2026年10月22日参照)より
意見募集の仕組み
パブリックコメントとは
ここまで紹介したように、改訂に向けた議論では、審議会の委員や教育関係団体から、さまざまな意見が出されています。それでは、審議会に参加していない教職員や保護者などの意見は、どのように受け付けられるのでしょうか。
その仕組みの一つが、「パブリックコメント」です。行政が制度や方針の案を公表し、広く意見や情報を募るもので、学習指導要領の改訂でも行われます。行政は、寄せられた意見を検討し、案を修正するかどうかや、最終的な内容を判断します。
ただし、パブリックコメントは賛否を数える投票ではありません。e-Govの制度説明では、意見の数の多寡ではなく、その内容を考慮する手続とされています。同じ意見が何件届いたかだけでなく、どのような理由や情報が示されているかが、検討の対象となります。
参考「パブリック・コメント制度について」(e-Gov,2026年10月22日参照)より
意見募集の対象は?
学習指導要領の改訂では、検討の段階によって、意見募集の対象となる文書が異なります。今回、2026年10月に始まった募集の対象は、「次期学習指導要領等に向けた審議まとめ」です。
これは、改訂の基本的な考え方や、各教科などをどのように見直すかという方向性をまとめた文書です。例えば、教育課程を柔軟にする仕組みや学習評価の見直しについて、提案された内容への意見を求めています。学校の基準として正式に定める、学習指導要領の本文そのものへの意見募集ではありません。
その後、改訂の方針が答申としてまとまり、学習指導要領の本文の案が作成されると、「告示案」に対する意見募集が行われる予定です。こちらは、基準として定める具体的な内容や文言が対象となります。
つまり、現在の「審議まとめ」への意見募集と、今後の「告示案」への意見募集は、同じ改訂の過程にあるものの、対象とする文書と段階が異なります。
なお、パブリックコメントには、行政手続法に基づく意見公募手続と、行政機関が任意に実施する意見募集があります。今回の「審議まとめ」への募集は、e-Govでは「任意の意見募集」と位置づけられています。
参考「『次期学習指導要領等に向けた審議まとめ』に関するパブリック・コメント(意見公募手続)を実施します」(文科省,2026年10月6日公開,2026年10月22日参照)より
意見で変わった例
では、寄せられた意見を受けて、改訂案が変わった例はあるのでしょうか。過去の改訂では、社会科で扱う人物名の表記が修正されています。
2017年の中学校社会科の改訂案には、「厩戸王(聖徳太子)」という表記がありました。これに対して、小学校と中学校で表記が異なると、子どもが同じ人物だと理解しにくい、といった意見が寄せられました。
文科省は、学習の連続性や教えやすさなどを踏まえ、表記を「聖徳太子」に統一すると回答しました。そのうえで、呼称に関する経緯は、指導上の留意点などを示す「内容の取扱い」に記載することとしています。
この例では、人物を学習内容から外すかどうかではなく、小・中学校でどのような名称を用い、呼称の経緯をどう扱うかが修正の対象となりました。提出された意見と、それに対する文科省の考え方は、意見募集の結果として公表されています。
参考「学校教育法施行規則の一部を改正する省令案並びに幼稚園教育要領案、小学校学習指導要領案及び中学校学習指導要領案に対する意見公募手続き(パブリックコメント)に寄せられた御意見等について」(文科省,2026年10月22日参照)より
募集状況と提出先
今回の「審議まとめ」に対する意見募集は、2026年11月5日までです。募集要領では、提出方法などを次のように定めています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 次期学習指導要領等に向けた審議まとめ |
| 募集期間 | 2026年10月6日14時〜11月5日23時59分 |
| 提出先 | e-Govの募集案内に掲載された指定のWebフォーム |
| 主な注意点 | 意見には理由を付ける 1,000字を超える場合は要旨を記載する 1回の回答につき10件まで(フォームへの再回答による追加提出も可能) |
フォームでは、意見の分類と意見の記入が必須となっている一方、氏名や連絡先などの記入は任意です。また、今回の募集では、電話や郵送などによる受付は行っていません。
提出後の扱いについては、意見への個別回答は行わないとされています。寄せられた意見は、氏名などの個人情報を除き、内容が公表される場合があります。
参考「『次期学習指導要領等に向けた審議まとめ』に関するパブリック・コメント(意見公募手続)の実施について」(文科省,2026年10月6日公開,2026年10月22日参照)より
まとめ
学習指導要領の改訂は、文部科学大臣の諮問を受けた中教審での審議から始まり、答申、告示を経て、学校での実施へと進みます。その間には、教科ごとの検討や関係団体へのヒアリング、パブリックコメントなど、内容を具体化し、さまざまな立場から意見を受け取る過程があります。
今回の改訂では、「主体的・対話的で深い学びの実装」「多様性の包摂」「実現可能性の確保」を軸に、教育課程の柔軟化や学習評価の見直しなどが議論されてきました。これらは、教える内容だけでなく、学校での時間の使い方や、一人ひとりの子どもの学びへの対応にも関わるものです。
一方、専門家や教職員からは、学校の裁量が広がることへの期待とともに、人員や時間の不足、学習内容の量、学校・自治体間の格差などへの懸念も示されています。改訂の方向性をどう評価するかに加え、それを学校で実施するために何が必要かも、議論の対象となっています。
2026年10月22日現在は、「審議まとめ」が公表され、意見募集や関係団体へのヒアリングが行われている段階です。今後、寄せられた意見も踏まえて検討が進み、答申や告示を通じて具体的な内容が定まっていきます。本記事も、その経過に合わせて情報を追記・更新していきます。
学習指導要領改訂論議を現場にひらくPJ
メガホンを運営するSchool Voice Project(SVP)では、「学習指導要領改訂論議を現場にひらくPJ」に取り組んでいます。改訂に関する情報を届けるとともに、教職員が日々の実践をもとに意見を交わし、その声を改訂の議論につなげていくことを目指すプロジェクトです。
その一つが、改訂の議論を取り上げるオンライン配信です。中教審の教育課程企画特別部会で委員を務める野口晃菜さんや澤田真由美さんにも、ゲストとしてご協力いただいています。学校現場の教員が聞き手となり、審議に関わる方の話を通じて議論への理解を深めるとともに、立場の異なる人の見方にも触れられる内容を目指しています。配信のアーカイブは、メガホンで公開しています。
さらに、教職員同士が改訂について意見交換する対話の場づくりも、活動の柱です。審議の内容を共有するだけでなく、学校で感じている課題や改訂への期待・懸念を持ち寄り、それぞれの経験や考えを交わす機会を設けています。プロジェクトでは、パブリックコメントを通じた意見発信の支援や、現場の声を改訂に反映する仕組みについての政策提言も掲げています。関連する記事や動画、取り組みの概要は、以下の特集ページにまとめています。
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