【教職員アンケート結果】教員不足解消に向けた実態調査 〜2023年度冬ver.〜
昨今、「教員不足」「講師不足」が深刻になり、子どもたちにも影響が出る大きな問題となっています。今回の調査では、教員不足の実態を把握するため、現職教職員の皆さんから情報・意見を集めました。なお、教員不足が現在起きていない学校も調査対象としています。
協力:末冨芳さん(日本大学教授)、妹尾昌俊さん(学校業務改善アドバイザー)
アンケートの概要
■対象 :全国の小〜高校年齢の児童生徒が通う一条校に勤務する教職員
■実施期間:2023年12月25日(月)〜2024年2月26日(月)
■実施方法:インターネット調査(実施時の設問はこちら)
■回答数 :1325件
アンケート結果
設問1 2023年度、教員不足は起きていた?
Q1-1. あなたの勤務校では、2023年度の4月1日、9月1日、12月1日の時点において、「教員不足」は起きていますか。
Q1-2. 「教員不足が起きている」と回答した方にお聞きします。教員不足によって起こったことや、大変だったこと、エピソードを教えてください。(教職員・職場組織への影響、児童生徒への影響など)
業務負担の増加
途中で退職したり、休職したりする先生の後補充が来ないため、現在いる先生で授業を持つため、時間割の組み直し作業も複数回にわたって行う必要がある。【中学校】
空き時間がないこと。小学校高学年ですが専科の授業もほぼなくなり、毎日フル稼働でした。若い育休代替講師の学級が荒れ、わずかな空き時間もそこへのフォローです。助けてあげたい気持ちはあるのでそれは かまいませんが、2ヶ月近く空き時間がないなんてことは教員になって初めてでした。【小学校】
契約上担任になれない非常勤講師が4月頭から特別支援級の担任になっていた。最初から人手不足でフォ ローも足りず今年度異動してきたての中堅の方が10月にメンタル病欠、昨年度から医者にフルタイム業務をとめられていた病欠の方が無理くり教務として復帰。現状、皆倒れそう。【小学校】
不足している教科の先生の授業時数が多くなり、負担が増える。特別支援学級の教員が不足しているため、 本来別々に授業すべきクラスが一緒に授業している。【中学校】
授業のコマ数が倍になった。【中学校】
4月の時点で高齢の講師が多い教科です。近隣の他校でも同教科の教員が次々と休職・退職をされ、代替 講師は見つからず。現場の中で授業を割り振りますが、少人数の学校で教員数も少ないため、3学年の試験と評価物があり、残業時間は月100〜170時間程度になってます。教える学年が増えると対応する生徒も 一気に増えるので、生徒対応だけで定時内の時間は終わり、担任業務などもおざなりになってしまっていま す。【中学校】
教員不足を補うために、時間講師が採用されることが多く、6時間勤務のため放課後業務には携わっていた だけなかったり、時短勤務をする教員の放課後業務に人がいなかったり、病休はもう日常茶飯事で今居る教員で回さなければならない状態です。4月の時点で、こちらが必要と提示している教員数に足りない割り当てでスタートし、講師も無く、生活介助員をあてに、もう、校務分掌や行事関係は破綻しています。障害の軽重などによるシーリングなんて意味がありません。それに加えて、保護者からの要望は、日に日に、高く、 細かく、丁寧な対応を求められ、もう、保護者も教育ではなく、学校に求めているものは保育や介助という福祉機能です。教育はもうありません。できません。【特別支援学校】
担任や教科担当者の不足
教室ではなく、武道場に2クラスの生徒を集めて、同時に教科の授業を行う予定。講師の先生1名が主担当 し、他教科の先生1名がサポートにつく。環境づくり、時間割など大変。【東京・中学校】
病休に入るまでの年休期間は変わりが見つからず、その教科の授業ができなかった。他教科の教員が無 免許で授業を実施せざるを得ない期間があった。定期テストもその教科は実施できず延期となった。現在も 積み残しが発生することが確実な状況。【千葉・中学校】
担当学年ではない学年の授業を、2クラス同時でやらざるをえない状況があった。その単元 の理解度はやはり低かった。 【福岡・中学校】
コロナ等で休んだ教員がいた際、補充に入れる教員がおらず終日自習となる。【岐阜・中学校】
前年度、特別支援学級で、常に大変な状況なのに、初任者が出勤しなくなり、主任が出勤しなくなり、その多忙さからバタバタと病休者が増え、5人担任のところが、最後は担任一人になった。【東京・小学校】
特別支援が必要な児童生徒への対応不足
支援学級の児童が交流学級で過ごす際の支援が十分に行われなくなり、放置される時間が増えました。【大阪・小学校】
特別支援学級の授業がなくなり、その生徒が交流学級で授業を受け ることになった。支援学級生徒が、軽視されてると感じた。【岡山・中学校】
教室で入りづらいADHDや愛着障害の児童に対応できず、放任してしまう時間が発生している。この事で児 童と信頼関係を構築できず、悪循環が生まれ、生徒指導の時間が大幅に増えている。【高知・小学校】
海外ルーツのこどもで成績が下位のグループへの取り出し授業が行われない期間があった。日本語入門レ ベルのこどもへの対応が適切に行われず、レベルがそのままにとどまっている。【兵庫・中学校】
教職員の関係性の悪化
職員の数が足りなくなったとしても、学校内全体の公務の量が減るわけではない。そのため、一人当たりの 授業数や校務分掌の量が増える。 特に無理を押しての日々となり当然教員の関係性についても悪影響が起きている。割り切って帰る人は5時 に帰るし、今までと同じようにやらなければならないと感じる人は残り続けてやる。結果として、無理を押して やってる人が倒れた。また、やっている人たちは、さっさと帰る人たちを敵対視して、職員室が大きく2分化し ている。【神奈川・小学校】
一つ目、担任が年度途中で不在になったことにより学級が荒れてしまい、他のクラスの教員が空きコマを 使って見守りを行った。それによって連鎖的に他のクラスも荒れていった。二つ目、学校全体の治安が低下 している状態で、管理職がどのような手立てをとろうとするのか見ていた。教員不足によって残った教員の 業務は増えたが、依然として仕事を削減する提案については反対し続けられた。管理職への不信感によっ て、管理職と教諭との溝ができてしまったため、組織としての力は大幅に低下してしまった。【広島・小学校】
教員の健康面への影響
産休代替の代理がいない、パワハラで病休により退職に追い込まれた。【東京・小学校】
自分自身が医師から休職を勧められているが、それ以前に欠員の代替業務を担っている為、休みづらい。 周囲もいっぱいいっぱいの現状を知っている為、その負担がいくかと思うととてもその選択をできない。また、 初任者に担任を持たせることがここ数年多いがそのフォローも含めた研修に対する余裕がない。【東京・高等学校】
2023年4月時点で1人の教員不足が起きていたのは、全体の約37%。その後、9月時点では約55%、12月時点では約61%と、徐々に教員不足が起きている学校が増えていることがわかりました。不足している人数を見ていくと、年間を通して1名不足している学校は約30%前後と大きな変動はありませんでしたが、2人以上不足している学校は4月時点では約10%だったのに対して、12月時点では約30%に増えていました。
教員不足によって起こっていることとして多くあがっていたのは、教職員の業務負担の増加。年度途中に休職者や退職者がいた場合でもそれまでの教職員数で業務に当たるため、「空き時間がなくなった」「授業時数が増えた」「残業時間が増えた」などの現状があり、大きな負担になっていることが伺えます。それによって、教職員の健康や関係性の悪化にもつながっている現状があるようです。
また、教員が不足している教科や特別支援学級を担当する教員が不足していることによって、児童生徒への学習保障や心身のケアにも実害が出ているという声も寄せられました。
設問2 教員不足解消に有効だと思う施策は?
Q2. 教員不足解消のための教員確保策として、それぞれの取組やアイデアはどのくらい有効だと思いますか。
教員不足解消のための施策として、「とても有効だと思う」「有効だと思う」と回答した人が比較的多かったのは、「育短制度利用者の定数外措置(時短勤務者の人数に応じて教員が増やせる制度)(93%)」「初任者には学級担任として配置しない(副担任からスタート)など、初任者の負担軽減(88%)」「教員の日本学生支援機構による奨学金の返済免除(71%)」でした。
一方で、「大学3年生から1次試験を受けられる採用試験の実施(12%)」「免許保有者(いわゆるペーパーティーチャー)を発掘し、研修を行う取組(15%)」「学生や社会人向けに教員の仕事の価値や魅力を発信する取組(21%)」は、有効だと思う人が比較的少ない結果となりました。
設問3 重要・実現してほしい業務負担軽減策は?
Q3. 学校、教員の負担軽減策として、特に「重要だ」「実現してほしい」と思う取り組みやアイデアを3つまで選択してください。
教職員の負担軽減策として「重要だ」「実現してほしい」という回答が比較的多かったのは、「教員定数の改善による持ち授業時間数(持ちコマ数)の軽減(67%)」「学級規模の改善(30人以下学級など)(62%)」でした。校種別に見ると、高校に所属する教職員からは「観点別評価の廃止(18%)」を求める声が他の校種よりも多く集まりました。
また、「勤務時間外における保護者対応、児童生徒対応の原則禁止(いじめ対応など緊急性が非常に高いものを除く)(37%)」「給食、掃除、休み時間の見守り、ICT機器のトラブル対応など、教員免許を要しない業務について、教員以外のスタッフに任せられるようにすること(36%)」「保護者等からの過度な要求に対する第三者による介入支援(弁護士、心理士等)(33%)」など、教員が保護者や児童生徒に対応できる時間を制限したり、教員以外のスタッフや専門家が担う業務を増やしていく施策については、3割から4割程度の人が「重要だ」「実現してほしい」と回答しました。
設問4 定年延長を利用する予定は?
Q4. 2023年から定年延長がスタートしています。あなたは61歳以降も継続して働くご予定ですか?現時点での意向を教えてください。
定年を延長し61歳以降も働く予定の人は28%だったのに対して、働かない予定の人は30%であり、ほぼ同数となりました。「未定(38%)」と回答した人が最も多く、定年延長を利用するかどうかは、迷っている人が多い傾向が見られました。
設問5 転職・離職を考えることはある?
Q5. あなたは離職・転職を考えることがありますか?
「当面離職・転職は考えていないが、今後も続けられるかは自信がない(3年内に離職・転職する可能性がある)」と回答した人は、回答者全体の62%でした。「現在、離職・転職を考えている(1年内に離職・転職する可能性がある)」と回答した人においては、14%にのぼりました。「いまのところ、離職・転職するつもりはない」と回答した人は38%と半数に満たず、過半数の人が転職・離職を考えていることがわかりました。
まとめ
今回は約2ヶ月間かけてアンケートを実施し、1325件もの回答が集まりました。
昨年度12月の時点では回答者全体の約6割の学校で教員不足が起こっていることが明らかになり、その結果、教職員への負担が増えているだけではなく、児童生徒の学習保障や心身のケアにまで影響が及んでいることがわかりました。
実際に教員不足が起こっている学校の教職員や問題意識の強い人が回答しやすい傾向はあり、調査の結果が課題に出ている可能性はありますが、児童生徒に対して質の高い授業ができない状況やきめ細かいサポートができない状況であることは、重く受け止める必要があります。
2024年4月9日(火)には、本アンケートに協力いただいた末冨芳さん(日本大学教授)と妹尾昌俊さん(学校業務改善アドバイザー)とともに、文部科学省で記者会見を実施しました。その様子や会見の内容については、多くのメディアでも取り上げていただきました。
掲載メディア一覧
- TBS(WEBニュースと系列テレビ局でも放映)
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/1104285 - NHK(WEBニュースと全国テレビニュースにて放映)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240409/k10014416911000.html - 日経新聞
https://nikkei.com/article/DGXZQOUF09A560Z00C24A4000000 - 教育新聞
https://www.kyobun.co.jp/article/2024040902 - 読売新聞
https://yomiuri.co.jp/kyoiku/kyoiku/news/20240409-OYT1T50131 - 毎日新聞(Yahoo!ニュースにも転載)
https://news.yahoo.co.jp/articles/f80257fb0451b2d766d2b1d748e94e27b805ea5a - 共同通信(Yahoo!ニュース・地方紙・WEBメディア等にも転載)
https://news.yahoo.co.jp/articles/05a35fb04c5fed89be6df9efe7b61491a3458a13
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