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【教職員アンケート結果】教員として働く上での懸念点は?

  • メガホン編集部

さまざまなメディアでも取り上げられている通り、現在、日本の学校では「教員不足」が大きな課題の一つとなっています。

NPO法人School Voice Project では「#教員不足をなくそう!緊急アクション」というキャンペーンを立ち上げ、学校現場の厳しい実態の見える化・記者会見を通した問題提起を行ってきました。さらに問題を深く理解するため、教員を志望していたがやめた方々・現在、教壇に立っている方々の生の声を聞きました。
(協力:Teacher Aide / 株式会社トモノカイ)

アンケートの概要

■対象  :若手教員、教員志望の大学生、大学の一時期まで教員を志望していたがやめた若手社会人・大学生 ※ここでいう「若手」とは、大学卒業後5年以内の人を指す。
■実施期間:2024年2月8日(木)〜2024年3月11日(月)
■実施方法:学校現場の声を見える化するWEBアンケートサイト「フキダシ」及び大学生×教育バイトメディア「t-news」にてWEBアンケートを実施
■回答数 :598件

アンケート結果

教員志望をやめた理由は?/教員を目指す上での懸念点は?

【若手教員・教員志望の学生の方向けの設問】
教員を目指すにあたっての懸念点について、以下のことはどの程度当てはまりますか。
【元教員志望の若手社会人・元教員志望の学生の方向けの設問】
教員を志すのをやめた理由について、以下のことはどの程度当てはまりますか。

若手教員・教員志望の学生(教員・教員志望グループ)と、元教員志望の若手社会人・元教員志望の学生(元教員志望グループ)間で、教員になる上での懸念点にどのような共通点・違いがあるのかを比較しました。

その結果、両グループで70%以上が、給料の低さ・業務量の多さ・自分が力を入れたい業務への時間の足りなさ・初任時の責任の大きさ・多様化する子どもや保護者のニーズへの不安に対して「とてもそう思う」「そう思う」と回答しました。また、元教員志望グループでは、教員・教員志望グループに比べ、給料・閉塞的な組織文化・教育実践の硬直性・サポートのなさへの懸念が大きい傾向が見られました。

回答者からの声

給料への懸念

クラスのことを任せられてしまう仕事の責任の大きさももちろんですが、そもそも教員免許を取る時間と努力、そして教員採用試験に合格する努力も教師になるには必要です。その時間と手間と努力、そして実際勤務する責任、これらに見合ったお給料が新卒からもらえているとは思えません。 教師になってから給与に不満を覚えて転職した知り合いがいるのですが、その方はベンチャー企業でいきいきと働いていました。その姿を見て、教師になる勉強をしたって絶対教師になる必要はないと感じさせられました。【教員志望・学部2年】

部活動顧問がほぼ無給なのは、教員養成課程を履修して初めて知りました。労働に対する対価が支払われないのは納得できませんでした。【元教員志望・博士3年】

職場に1人クセの強い先生(40代のベテラン)がおり、教員・子ども・保護者全てからクレームが出るくらいの人でした。(中略)どんなにクレームが出たとしても、教員は続けられるものなんだと知った時は、「私がやらなくてもいい仕事かもしれない」と察しました。どんなに仕事ができなくても、クビにはできない。年功序列で順番に上に上がって行かなくてはならない。しかし、なるべきではない人が校長になったら、その学校はどうなるのか。若手がいくらSOSを出したとしても、年功序列の制度は変わりません。またどんなに仕事ができなくても、税金で給料が安定的に上がっていく、ボーナスももらえる。仕事ができない人の代わりに、できる人が倍働く。なのに給料は同じ。そんな世界で働きたいと思える人がどのくらいいるのでしょうか。【元教員志望※教員経験2年あり・若手社会人】

働き方への懸念

教員という仕事は、子どもたちにこれから必要な知識教養を身に付けてもらうために教えると同時に、人として成長してもらうためにクラス担任を担うなど社会的意義のある仕事であると考え、志望しておりました。しかし、実際に教育現場で働く先輩からのリアルな現場の話や公務員としての給料面や休日日数、部活の顧問など必要な業務量がとても多い一方で、いきなり現場に投げ出され、教鞭、事務、保護者対応、部活などを兼務するのは自分には荷が重すぎると感じました。また、子供の未来を担う教師の未来は暗い労働環境というのが個人的には良くないとも思えたため、教員志望を辞めることにしました。【元教員志望・学部4年】

子どもの居場所作りや、個別支援が必要な子に対してじっくりと向き合う働き方をしたいと考えていたが、実習を通して教員の忙しさを目の当たりにした際に、先生になったら勉強を教えることしか(教えることすら?)できないように感じてしまった。【元教員志望・若手社会人】

結婚をして子どもを産みたいと昔から考えているため、教員になったら自分の子と関わる時間が生徒と関わる時間より少なくなってしまう可能性があることを考えると「他の子どもを教育している場合ではないのに」と心の余裕が無くなりそうだと考えました。【元教員志望・修士1年】

初任時の責任の重さ・多様化するニーズに対する不安

現在塾講師として働いているのですが、保護者様からの厳しいお言葉や要求がかなりある現状と知り、より多くの生徒、保護者と関わる必要のある学校の先生は私には向いていない、耐えられないと思いました。【元教員志望・学部3年】

近年の保護者の過干渉や、生徒の多様化のニュースなどを見ていて、自分にはそれに対応しきれる精神力が足らず、自分を壊してしまうのではないかという懸念が強かった。【元教員志望・若手社会人】

小学校の場合は確実に初任で担任を持たされるし、今は中学でも初任で担任を持たされる人も中にはいる。大学で授業のことだけ多くは学んできて、学級経営など学んできていなかったり、また教育実習でも20人規模の生徒の前でしか授業していない人もいるのに、教員になって1年目で30人規模の学級の担任をして、生徒指導、学級事務をしたり、保護者との関係づくりをしなければならなかったりすると、授業どころではなくなってしまう。誰しも、大学で学んできたことを活かして、よりよい授業を作っていきたいと思っているが、それが実際に現場では達成されず、心身の不調にも繋がると思うから。【教員志望・学部4年】

閉塞的な組織文化への懸念

小学校の時の憧れだった先生が、当時は生徒のことを第一に考えてくださっていましたが、今は学校のルールに縛られて考え方が変わってしまったと伺って、やはり自分らしくを貫くのは難しい環境なのかなと残念な気持ちになったのも理由の一つです。【元教員志望・学部4年】

国全体が教育をサービス業とみている節があったり,教育の改善が一向に期待できない点が大きいですが,教育実習に行った際に現場の意識も文句ばかりで行動が伴っていなかったのを見て,教員になるのをやめました。【元教員志望・修士1年】

授業に集中して取り組みたいが、分掌や事務作業に追われる日々。その業務も前例主義で去年やっていたから、、いきなりやめられない。と、もちろんメリットもあるのだろうが効果に見合った時間になってない業務が多い。なくすと責任を負うのが嫌で、なくせない主任。管理職。若手がスクラップを提案すると、「経験が大事」「何事も学ぶことがある」と若いからと言った理由で意味を感じない仕事をしていると感じることが多い。【若手教員】

コロナ禍での文化祭開催の議論や、理系の共通テストの社会科受験科目の選択肢の幅など、伝統保守的な立場の先生方が多く、挑戦的な姿勢や新たな可能性を探ろうとする姿勢を感じられない事が多かった。【元教員志望・学部2年】

サポートの無さへの懸念

教職インターンシップにてお世話になった際、心身共に参っている新人の先生を多く見かけた。子どもたちがクラスという空間での習慣や、学校環境の変化、学年の変化、学級の変化に対応できないと教員としてもキツいと言っていた。また、中には、昔のやり方をそのままに、それはよくないと思うと、自由なやり方を制限するベテランも見かけた。サポートに入っていても連携が取れない、とる時間すらない、もはや、連携をとるためにコンタクトをとる時間でさえ勿体ないと感じる先生が多いように感じる。
結局、その学校の職員の組み合わせによって変わるところもあったり、管理職や教頭、校長が、言い方を悪くすると、どれだけ使えるか、他の職員に、自分に寄り添って考えているかによって変わったりもする。私の伺った学校では、残念ながら教頭が1人で慌ててしまって、インターン生の私はもちろん、その他の職員への対応も疎かで、連携が取れない環境であればどうしようかと考えることもある。【教員志望・学部2年】

教員志望をやめたタイミング

【元教員志望の若手社会人・元教員志望の学生の方向けの設問】
いつ頃まで教員を志望されていましたか?

元教員志望グループに教員志望をやめたタイミングを尋ねたところ、62%が学部1年生時点でやめていたことがわかりました。学部2年生まで含めると80%以上にのぼり、大学生の比較的早い段階で教員志望をやめている学生が多いことがわかります。なお、この傾向は小学校・特別支援学校と、中学校・高等学校で比較しても大きく変わりませんでした。しかし、今回の調査では、早く教員志望をやめたグループと、遅くやめたグループで懸念点に違いは見つかりませんでした。

まとめ

若手教員・教員志望の学生(教員・教員志望グループ)と元教員志望の若手社会人・元教員志望の学生(元教員志望グループ)間、両グループで、70%以上が、給料の低さ・業務量の多さ・自分が力を入れたい業務への時間の足りなさ・初任時の責任の大きさ・多様化する子どもや保護者のニーズへの不安に対して懸念があることがわかりました。特に、元教員志望グループでは、教員・教員志望グループに比べ、給料・閉塞的な組織文化・教育実践の硬直性・サポートのなさへの懸念が大きい傾向が見られました。

アンケートの結果から、給料や働き方の改善、精神的プレッシャーに対する支援、閉塞的な文化の改革などさまざまな観点での改善の必要性が再認識されました。これらの課題を解決していくことは、少なくとも「教員志望をやめる学生」の減少につながるのではないでしょうか。

※上記はあくまでアンケートの結果から導かれた仮説となります。例えば、「閉塞的な組織文化」に触れることによって教員志望でなくなるのではなく、何かしらの理由で教員志望でなくなった学生の方が「閉塞的な組織文化」へのアンテナが高くなるため懸念度が高くなったことも考えられます。今回のアンケートでは、あくまで「閉塞的な組織文化」への懸念度と教員志望度との相関関係が観察されたというだけで、因果関係を説明できるわけではない点にご注意ください。

※また、短い期間でパイロット的に行ったアンケートであるため、アンケート回答者は便宜的なサンプルであり、若手教員・教員志望の学生・教員元志望の若手社会人や学生を代表するものではありません。


▼ 本アンケート結果を踏まえた提言書は、以下よりダウンロードしてご覧ください。 ▼

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