
【教職員アンケート結果】教科書の「。読み」どう思う?
授業で教科書を読む際に行われる「。読み(まるよみ)」。
句点ごとに区切って、1人1文ずつ音読させる指導方法として、多くの学校で見られる実践です。
一方で近年は、日本語を母語としない児童生徒や、発達障害や言語障害、音読に苦手感のある児童生徒などにとって、過度な緊張感や劣等感につながる可能性を指摘する声もあります。
子どもたちの学びや参加のあり方を考える上で、「。読み」はどのように捉えられているのでしょうか。全国の教職員に意見を伺いました。
【注】本記事における「。読み(まるよみ)」は、「句点ごとに区切って、1人1文ずつ音読させる指導方法」と定義したうえで、表記を「。読み」に統一します。アンケートの回答において他の表記を用いている場合も「。読み」の表記に修正していますので、ご了承ください。
アンケートの概要
■対象 :全国の小〜高校年齢の児童生徒が通う一条校に勤務する教職員
■実施期間:2025年9月12日(金)〜2025年10月13日(月)
■実施方法:インターネット調査(実施時の設問はこちら)
■回答数 :29件
アンケート結果
設問1 「。読み」は必要?
Q1. 授業で教科書を読む際によく行われている「。読み」ですが、上手く読めない児童生徒(発達障害・言語障害、母国語が日本語以外の児童生徒など)に過度の劣等感を与えてしまう指導のように感じています。どう思いますか?

全体では、「必要な指導だと思う」が59%、「不要な指導だと思う」が41%という結果となりました。
校種別に見ると、小学校では「必要な指導だと思う」が58%、中学校では67%となり、いずれも「必要」という回答が過半数を占めました。
設問2 「。読み」についてどう思う?
Q2. 上記の内容に関連して、あなたが思っていることや考えていることを教えてください。
設問1の内容を受けた自由記述では、単純に「必要/不要」と言い切るのではなく、
- 方法や配慮次第では有効
- 一律に行うことに課題がある
- 他の読み方との使い分けが重要
といった意見も多く見られました。
一定の意義がある
あまり読む事がうまくない生徒でも、一文は読んでもらえることができるから【中学校・教員】
指導、というか音読の1つの手段として考えてます。全員に読む機会を与えたい時にやります。友達の読んでるところを追わないと自分の番になった時に読めないので、集中させたい時にも使います。【小学校・教員】
配慮が必要な児童生徒はいるが、ふりがなをふったり、読めるところを指定したり、必ずしも読まなくてもよいようにすれば、一斉授業形式の場合は、役割を果たす達成感や、授業への参加意識を高めることができる。【中学校・教員】
句読点、行、段落など文章構成に関する知識は必要だと思う。ただ、文章を上手に読むことのできない生徒への手立てや「。読み」にこだわらない指導は必要。【中学校・教員】
より適切な方法がある
昔はやっていたが、それよりも一斉読みのほうが効果があるとわかったためやらなくなった。読むのが苦手でも、一斉読みなら音を聞いて目で追える。文章が途切れず理解しやすい。【中学校・教員】
「。読み」は、文章全体を味わったり意味を捉えたりすることがしにくい。時間を与えて、揃えずに全員が各々音読することで、恥をかかせることも待たせることもなく、個別支援も可能に。【小学校・教員】
いち文を意識させることや、読みの機会を与えていることはわかるが、個別最適ではない。【小学校・校長】
確かに上手く読めない児童生徒に過度の劣等感を与える場だと思うので、そのやり方を変えていくとよいと思います。個に合った読み方を選択する中で「。読み」をするとか。同じ読み方を選択した子で集まって読むとか。【小学校・教員】
目的が不明。なぜ「。」で切るのか、なぜみんなの前で読まなければならないのか、管理教育的な目的しか想像できない。【義務教育学校・教員】
目的や状況に応じた判断が必要
必要か不要かの二項対立では言い切れない。音読は有効と考え、「。読み」は一文という小さい単位で読むのに適切。これより短くする読みは意味理解には難しいように思う。長さではなく方法や補助の工夫を検討したい。【小学校・教員】
1人ずつ読まなくても、群読でも、たけのこ読みでもかまわない。読む力が付いているかを確認するアクションは必要。不十分なら何らかの手立てを講じないといけないので。【小学校・教員】
必要であるかどうかは、子どもたちの状況にもよります。【小学校・教員】
周囲の関わり方や配慮が大事
どちらでもいいと思います。が、スラスラと読めない子がいたとしても傷つかない雰囲気の学級であれば、グループで丸読みをしたり、サークルになって丸読みをするのは楽しいです。アセスメントが必要だとは思います。【小学校・教員】
劣等感が問題なら、運痴は体育、音痴は音楽、不器用な生徒は実験を嫌う。学校成立せず。劣等感の原因は過度なプライド。賞賛する素直さを学ぶべき。劣った子を馬鹿にするのではなく、応援する優しさを学ぶべき。【中等教育学校・教員】
「できないこと」が許容されて、できるように助け合えるようにしようというマインドでのぞみたい。【中学校・教員】
まとめ
今回のアンケートでは、「。読み」を必要な指導と捉える教職員が全体の59%と、やや多い結果となりました。
一方で自由記述からは、単純に必要・不要と分けられるものではなく、児童生徒の特性や読みの目的、授業場面や周囲の支援の有無によって、大きく受け止め方が変わる実態が見えてきました。
特に、「読む力や参加意識の向上には有効」と考える声が一定数存在する一方で、人前で読むことによって不安や劣等感が生まれうることへの懸念も寄せられました。また、一律の方法ではなく、より個別最適で学習の目的に応じた方法学習や、お互いを支え合い、劣等感を抱きにくい学級づくりの重要性を指摘する声も上がりました。
専門家の視点は?
現場の教職員の声では「。読み」に対して「必要な指導だと思う」がやや多い結果となった今回の調査。
では、専門家の観点からは、どのようなことが言えるのでしょうか。
「。読み」の“負担”
特別支援教育が専門の笹原未来福井大学准教授は、読みの難しさや言語表出に難しさのある子どもにとって、「。読み」が負担になることは少なくないと話します。
「自由に話す場面であれば、苦手な音を避けたり、言いやすい言葉に言い換えたりできる子どももいるのですが、「。読み」のように決まった文章を読む場面ではそれができません。また、うまく読めなかったときに、からかわれたり、注目を浴びたりするのではないかという不安から緊張が高まり、体がこわばってしまうことで、本来の力を発揮できずにかえって読みがたどたどしくなってしまうこともあります」
さらに、笹原准教授は「自分の番が回ってくる」という状況自体が緊張につながりやすい、とも指摘します。一般に「。読み」は「クラスメイトの読みを聞いて学ぶ」学習活動ですが、読みが苦手な子どもにとっては、緊張や不安で他の人の読みを聞く余裕がないケースも多いとのこと。
指導のねらいから考える
ただし、だからと言って「。読み」について良い・悪いと一律に判断することもできません。笹原准教授も「場面緘黙の子どもなど、決まった文章を読む方が楽な子どももいるのでケースバイケースではあります」と補足したうえで、指導内容を丁寧に考える必要性を訴えます。
もっとも重要なこととして「「。読み」をすることによって、子ども達にどんな力をつけたいと考えているのか、ねらいを明確にすること、そしてそのねらいを達成するのにより適した活動の形が他にないか考えること」と話す笹原准教授。
「いろいろな読み方に触れることがねらいであれば、先生が読み方を示したり、読みたい子どもが読む形でもよいかもしれません。「。読み」を行う場合も、どの部分なら読めそうか、どのような環境なら読みやすいか、どんな工夫があれば参加しやすいかを、子ども自身が選んだり考えたりできるようにすることが大切です」
実践上の配慮
そのうえで、学習のねらいと照らして従来の「。読み」が最適だと判断された場合には、どのような配慮が必要なのでしょうか。
笹原准教授が「苦手であっても取り組もうとしている姿を認め合える関係を、教室全体で育てていく必要があります」と指摘するように、「。読み」の指導を効果的に行うには、「安心できる環境」が大前提。そのためには、読みや発話に不安を覚える子どもたちだけではなく、教室全体に配慮や指導が必要です。
- その指導方法を負担に感じている子どもはいないか
- 学習のねらいと指導方法が一致しているか
- 他の指導方法で置き換えることはできないか
- 従来の指導方法を実施する場合には教室全体にどのような配慮や指導が必要か
笹原准教授の指摘したこれらの視点は、「。読み」に限らず、従来学校で行われてきた指導方法一般についても、見直す際のヒントになるかもしれません。
▼ 自由記述の回答一覧は、以下よりダウンロードしてご覧ください。 ▼
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