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【教職員アンケート結果】どう思う? 教科担任制の小学校中学年への拡大

  • メガホン編集部

文部科学省の中央教育審議会は2024年5月、教員が特定の教科ごとに授業を受け持つ「教科担任制」について、今の対象である全国の公立小学校5・6年生から、さらに3・4年生にまで拡大すべきとする審議を特別部会で取りまとめました。(詳しくはこちら

長らく学級担任制を中心としてきた小学校ですが、2022年度の本格導入以降、既に高学年では教科担任制が広く実施されています。中学年にも教科担任制が広がる動きについて、現場の教職員はどのように考えているのでしょうか。全国の小学校教員に聞きました。

アンケートの概要

■対象  :全国の小学校に勤務する教職員
■実施期間:2024年7月12日(金)〜2024年8月12日(祝)
■実施方法:インターネット調査(実施時の設問はこちら
■回答数 :61件

アンケート結果

設問1 小学校中学年の教科担任制、どう思う?

Q1. 小学校中学年における教科担任制についてあなたの意見を教えてください。

小学校中学年への教科担任制導入に関しては、「よいと思う」「どちらかというとよいと思う」が合わせて57%、「どちらかというと心配・懸念が強い」「心配・懸念が強い」が合わせて43%と、前向きな意見がやや上回りました。

Q1-2. 上記の選択肢を選んだ理由をお書きください。

肯定的意見の主な理由

教員の負担を軽減できる

授業準備の負担が軽減する。担当する教科が少なくなる分、1つの授業準備に時間をかけられ、授業の質が上がる。【小学校・教員】

教材研究の負担が減り、質の高い授業を行える。教員にも得意不得意があるので、不得意な分野を得意な方に任せられるのはありがたい。【小学校・教員】

専門性を活かした指導ができる

自分自身、理科専科をやっています。担任よりはるかに質の高い授業ができていると思います。【小学校・教員】

理科、図工、体育等専門性を求められる教科がある【小学校・校長】

子どもの多面的な理解につながる

子どもたちや保護者への対応を考えると,教科担任制は必要だと思う。子どもにも教師にも、人間関係の合う合わないがあるし,複数の目で子どもたちを見ることは組織的な対応に繋がるし、働き方改革の意味でもよいと思います。【小学校・教員】

担任の先生の負担軽減になり、空き時間が確保できて、その時間に仕事ができる。仕事ができる時間がうまれることで、ゆとりをもった働き方ができ、定時に帰れる人が増える。多くの大人の目で子どもたちを見ることができる。【小学校・教員】

前向きな意見では専門性が求められる教科を得意な教員に任せられることによる授業の質の向上、複数の大人が見守ることで子どもの多面的な理解につながる点などが挙げられました。

否定的意見の主な理由

包括的な支援への影響を懸念

小学校中学年の教科担任制は学級経営や子どもと教師との関係性づくりの面でとても懸念が強く、反対である。国語や算数など教科担任で分けられてしまうと、まだ発達段階で成長途上の中学年では弊害が生まれそうです。【小学校・教員】

休み時間のトラブルの解決、配布物の集約、持ち物の整頓など、教科指導よりもまだまだ、「学校生活」についての指導の割合が大きい学年なので。【小学校・教員】

教科横断的な指導の困難さ

学習において具体的操作期から抽象思考への過渡期でもある中学年は、教科横断的にカリキュラムを組むことが有効である。教科ごとに担当が変わってしまうと、思考の流れの変化に戸惑う子どもたちへのケアが届きにくい。【小学校・教員】

教科横断的な取り組みがしにくくなる。柔軟な時間割調整ができなくなる。【小学校・教員】

人員不足への懸念

そもそも、今の人員数のままでは難しい。【小学校・教員】

小規模の学校で、教務以外級外がいません。特別支援学級の交流もあり、担任同士での交換はしていますが、時間割を組むのが本当に大変です。【小学校・教員】

教員の専門性への疑問

小学校免許の養成課程において、専門性を持っていないのに専科的に授業を進めていく事には無理がある。得意な教科に当たればいいが、経験が少なく苦手な教科を割り当てられれば不幸な結果につながる。【小学校・教員】

懸念点として、中学年は生活でも学習でもまだ包括的な支援が必要な年齢であること、人員不足への懸念、得意不得意に留まる教員の専門性への疑問などが挙げられていました。

設問2・3 小学校中学年の教科担任制の導入状況は? 

Q2. あなたの学校では中学年で教科担任制を導入していますか?

既に所属校で中学年での教科担任制を導入していると答えた回答者が56%となっており、試行や部分的な導入が進んでいる様子が伺えます。

Q3. 設問2で「はい」と答えた方への質問です。どのような方法で中学年への教科担任制を導入していますか。教科ごとに選択をしてください。

教科担任制による実施が多い科目は音楽・理科・外国語活動・図工で、これらは中学年の教科担任制を導入している小学校の半数以上で実施されていました。逆に担任による実施が多い科目は道徳・総合で、実施は導入校の20%未満でした。実施形態については、音楽・理科が専科の教員による実施が多い一方、社会は多くが授業交換による実施が行われているなど、教科ごとに特徴が見られました。

設問4 導入してのメリットは? 

Q4. 設問2で「はい」と答えた方への質問です。実際に運用してみてのメリットを教えてください。

メリットとして、全体の59%が「教員の負担軽減」を挙げていました。一方、「小・中学校間の連携向上」は高学年の教科担任制導入の際に謳われたメリットでしたが、中学年の教科担任制を導入してい回答者でメリットに挙げていた人は1人もいませんでした。

設問5 導入してのデメリットは? 

Q5. 設問2で「はい」と答えた方への質問です。実際に運用してみてのデメリットを教えてください。

メリットよりも、デメリットの方が意見が割れました。「教科横断的な学習が難しい」「柔軟な時間割調整ができない」「担当しない教科の指導力が下がる」を挙げる人が多かった一方、「担任による包括的な見守りができない」を挙げる人はわずか9%に留まりました。

設問6 高学年の教科担任制は実施してみてどう?

Q6. すでに開始されている、小学校高学年における教科担任制について、あなたの意見を教えてください。

既に導入されている高学年における教科担任制については、「よいと思う」「どちらかというとよいと思う」が合わせて74%と、中学年の57%を大きく上回っていました。また、教科担任制が一斉導入される直前(2021年10月〜11月)のアンケート調査での60.7%から13%増えています。2022年度の本格導入から約2年半が経過し、現場から一定の指示を得ているようです。

肯定的意見の主な理由

教員の負担を軽減できる

担任の負担が減ったことは素晴らしい。【小学校・教員】

高学年の教材研究の負担が減るから。【小学校・教員】

子どもの多面的な理解につながる

高学年では、人間関係が難しく、解決に時間のかかるようなトラブルも起こりやすいため、多くの教員が関わり変化に気づいたり声をかけることができることに大きなメリットを感じる【小学校・教員】

高学年を色んな大人の目で見ることで、子どもも担任だけではない人と関わることができるのは人間関係形成の上で役立つ。【小学校・教員】

中学校への準備

中学校に向けて担任でない人の授業を受ける機会が増えるのは良いと思う。【小学校・教員】

多用な教員との関わりができ児童の見方考え方が広がり、中学校での教科担任制への移行がスムーズになる。【小学校・教員】

柔軟な対応の必要性

学校規模や子どもの状況など、学校ごとに異なる状況の中で、必ずしもそれが機能しない場合も想定されるため「〜すべき」という形で一律に導入を求めるのではなく、可能な選択肢として提示されるべき。【小学校・校長】

もちろんその際には、学級数プラスαの人員配置や、教員一人ひとりのキャリア形成における教科指導の経験担保など、包括的な視点・施策が欠かせないと思う。【小学校・校長】

中学年と同様に教員の負担軽減や授業の質向上がメリットとして挙げられています。子どもの多面的な理解につながる点は中学年と同様ですが、中学年では「(大人の目で)子どもを見る」と答えた方が多かったのに対し、高学年では「多様な人との関わり」が重視されている点が特徴的でした。

否定的意見の主な理由

時間割と調整の難しさ

保健行事やイレギュラーな行事が入ると時間割調整が困難な様子がみられる。【小学校・教員】

水泳指導や行事の際に時間割の変更が難しく、クラス間で時数に差が生まれたり、当日などの急な変更に対応を求められたりするのは困る。【小学校・教員】

教科横断的な指導が困難

教科横断的な授業の展開が難しくなるだろうなと感じています。【小学校・教員】

従来は学級担任が行なっていた教科横断的なカリキュラム・マネジメントの実施が難しくなる。【小学校・教員】

担任が見た方がいい部分もあると思うから、2クラスを3人で担任するくらいが適当。【小学校・教員】

人員不足の問題

人が配置されず、結局は、教科担任制でなく、交換授業にしかならない。それは、かなり負担が大きい。【小学校・教員】

人の配置にもっと文科省が本気になって取り組んでほしい。【小学校・教員】

専門性の問題

1〜3クラスだと教科担任とはほど遠い教科交換であり、負担軽減にはならない。【小学校・教員】

小学校免許の養成課程において、専門性を持っていないのに専科的に授業を進めていく事には無理がある。【小学校・教員】

既に導入が進んでいる分、時間割調整の難しさや人員不足など、運用のハードルが具体的なシーンで挙げられていました。 

設問7 低学年の教科担任制を実施されるとしたら?

Q7. 仮に小学校低学年にも教科担任制を拡大するとしたら、あなたの意見を教えてください。

低学年への教科担任制拡大については、「よいと思う」「どちらかというとよいと思う」が合わせて42%と、中学年・高学年よりも慎重な意見が多く見られました。

肯定的意見の主な理由

教員の負担軽減

低学年の担任が1日中、子どもたちと付きっきりなので、専科があると心のゆとりがうまれる。専科教員が増えることで、担任の負担軽減につながる。【小学校・教員】 

担任の業務が多すぎる。担任はホームルームティーチャーとして、国語、道徳、総合くらい教えて、あとは細々と児童の世話する、他の授業の補助みたいな、アメリカだとそんな感じですが、そのくらいでいいと思います。【小学校・教員】 

多様な教員との関わり

子どもの多様性に、1人の教員だけではカバーしきることは難しいと思う。いろいろなタイプの教員がかかわることで、自分のよさをだしていける環境をさぐっていくこともあっていいと思う。【小学校・教員】

朝から帰るまでずっと一緒にいるのは精神衛生上あまりよくないと思うから。【小学校/中学校・教員】 

低学年においても、あるいは低学年でより強く、子どもの特性と教員あるいは学級の不適合が生じている現実があるため、教科担任制をはじめとする環境の弾力化は有効だと思う。【小学校・校長】

困難学級も、担任だけでなく、複数の目で見て指導支援できる。【小学校・教員】

担任と子どもの関わりが強い低学年であるからか、1人の担任と子どもたちがずっと一緒にいることによる教員・子ども双方への負担を減らす期待が伺えました。

否定的意見の主な理由

発達段階への配慮 

低学年は担任の先生とのつながりが、まずは大切だし、そこまで専門性の必要とされる教科はないと考えている。【小学校・教員】 

低学年は幼児教育の延長線上にあるべきで、「教科」という枠組みで、子どもたちの学習を切り分けるべきではありません。【小学校・教員】 

学習の特性

とくに1学期は、教科や45分という枠で分ける方が難しい。(オムニバス型であったり国語といいつつ生活や算数の内容もたくさんありますし。)【小学校・教員】

低学年で教科を分担させる手間がかかる。【小学校・教員】 

安定した関係性の重要性

低学年の子どもには教科担任制は反対する。いま1年生の担任をしているが、入門期だからこそ多岐にわたって同じ大人が指導することで子どもの混乱が生じにくい。【小学校・教員】

低学年は担任との繋がりが大事です。【小学校・教員】

教諭のやり方も違うので、低学年が落ち着かなくなる可能性が高い。【小学校・教員】 

低学年も全てを担任が指導するべきとは思わない。算数少人数や、音楽、図工、体育など専門性の高い教科はメリットも多いだろう。しかし、T2として担任も見守りには入る方がよいと思う。【小学校・教員】

中・高学年よりも、担任とのつながりが大切になる発達段階や、まだ教科の専門性が中・高学年より高くない学習の特性から、担任との安定した関係性の方を重視する声が多く挙げられました。

まとめ

現在は小学校高学年のみが対象の教科担任制を中学年にまで拡大することに関しては、「よいと思う」「どちらかというとよいと思う」が合わせて57%、「どちらかというと心配・懸念が強い」「心配・懸念が強い」が合わせて43%と、前向きな意見がやや上回りました。

実際に所属校で中学年での教科担任制を導入している学校は、回答者の56%となっていました。高学年での教科担任制の運用経験から、現場の判断で対象学年を広げている様子が見てとれます。実施している教科は音楽・理科・外国語活動・図工が多く、逆に総合・道徳は担任による実施が多いという結果でした。

また、導入してみてのメリットとして「教員の負担軽減」を挙げた回答が全体の59%と、全体の過半数以上を占めました。一方で、「時間割を組むのが大変」「担任の先生が子どもと過ごす時間が減る」といったデメリットも指摘されています。

高学年または低学年への教科担任制については、学年によって意見が分かれます。
高学年ではすでに多くの学校で教科担任制が行われており、「よいと思う」「どちらかというとよいと思う」が合わせて74%と、多くの先生が良さを実感しているようです。
一方、低学年への導入については「よいと思う」「どちらかというとよいと思う」が合わせて42%と、他の学年よりも比較的導入に慎重な様子が見られました。「まだ担任の先生との関係が大切」という声も目立ちました。


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