
【教職員アンケート結果】賛成? 反対? 朝7時からの開門
保護者の仕事の都合などにより、学校の開門前に子どもだけで自宅にいなければならない家庭があります。こうした家庭を支援するため、群馬県高崎市では、2026年4月から市内の全58小学校で早朝開門(高崎市では朝7時に開門)を始めました。市は、朝早く登校する児童が校舎内に入れるようにし、校務員が迎え入れるとしています。(参考:高崎市広報)
一方、始業前から児童を学校で受け入れることについては、人員の確保や教職員の勤務時間、安全管理、事故や児童間のトラブルが起きた際の責任など、さまざまな課題が考えられます。
子どもや保護者の朝の居場所へのニーズと、学校・教職員の役割をどのように考えればよいのでしょうか。早朝開門への賛否や、その理由、必要な体制や代替案について、全国の教職員に聞きました。
アンケートの概要
■対象 :全国の小〜高校年齢の児童生徒が通う一条校に勤務する教職員
■実施期間:2026年5月15日(金)~2026年6月22日(月)
■実施方法:インターネット調査(実施時の設問はこちら)
■回答数 :61件
アンケート結果
設問1 早朝開門に賛成?反対?
Q1. 高崎市のように早朝に開門し、校務員が見守りを行うという事業に対して賛成ですか、反対ですか。

全体では、「反対」が約69%と最も多く、「やや反対」の約21%を合わせると、約9割の回答者が早朝開門に対して否定的な立場を示したことになります。一方、「賛成」「やや賛成」を合わせた肯定的な回答は約10%でした。
校種別に見ると、小学校勤務者では約97%が否定的な回答だったことをはじめ、中学校・高校でもそれぞれ約8割・9割が否定的回答となり、いずれの校種でも多数を占めました。
設問2・3 早朝開門に賛成/反対の理由は?
Q2. (設問1で「賛成」「やや賛成」を選んだ方)設問1の回答について、理由を選択してください。(複数選択可)
Q3. (設問1で「反対」「やや反対」を選んだ方)設問1の回答について、理由を選択してください。(複数選択可)

肯定的意見の理由
設問1で肯定的意見を選択した回答者は全体として6人のみでしたが、その中でも多く選ばれた理由は「現状、保護者のニーズがある・多いから」(4名)、「子どもたちに安全・安心な場を提供できるから」(3名)でした。
「校務員以外の教職員は負担が増えない・少ないと予想されるから」(2名)と「現状、開門を待っている子どもたちがいる・多いから」(1名)を選択した回答者は少なく、「子どもたちの生活リズム調整に役立つから」と「校務員の稼働に余裕があるから」を選んだ回答者はいませんでした。
否定的意見の理由
逆に否定的意見で最も多かった理由は、「校務員以外の教職員も負担が増えると予想されるから」で、約9割でした。次に「校務員の稼働確保が難しいから」の約7割が続くことからも、否定的意見の多くは教職員や校務員の負担への懸念を挙げています。
また「子どもたちのトラブルが増えるから」(約47%)、「子どもたちの生活リズムが乱れるから」(約29)を選択した回答者も一定数見られましたが、「現状、開門を待っている子どもたちがいない・少ないから」は約5%、「現状、保護者のニーズがない・少ないから」は約4%と、ニーズ自体は実際に存在していることが示唆されました。
上記のことからも分かるように、否定的な回答者の多くは、保護者や子どものニーズがないことを理由にしているのではなく、教職員や校務員の負担、人員の確保、児童間のトラブルなど、実施体制への懸念を挙げています。
肯定的な回答者が、早朝の居場所を設けることによる効果を重視している一方、否定的な回答者は、その居場所を誰がどのような体制で運営するのかを重視しているという対比が見られました。
否定的意見の理由(その他の内容)
保護者が教育を学校任せにしすぎるため【小学校・事務職員】
勤務校の場合は、保護者が校庭まで送らない(児童が一人で来る)ケースが想定され、寧ろ安全面の不安がある。【小学校・教員】
変わるべきは、子どもたちではなくて、朝早くに出かけさせる必要がある保護者の仕事環境。【小学校・教員】
そもそもの社会のあり方を変えることに繋がらないから。共働きで子どもと余裕をもって関わる時間が減ったことが、子どものウェルビーイングを低くすることにつながっている。【高等学校・教員】
校務員が本来活きる職務をできなくなるから。【小学校・事務職員】
開閉員自体、現状で確保が難しいので。【高等学校・教員】
設問4 早朝開門の対応についてどう思う?
Q4. 今回の高崎市の「早朝開門」という対応について、対応の要・不要や、代替案などを自由に記載してください。
選択式の回答では否定的な意見が約9割を占めましたが、自由記述からは、働く保護者への支援や、朝に子どもだけで過ごすことを避けるための居場所が必要だという考え自体には理解を示す声も見られました。
その一方、教職員や校務員の負担を増やさない体制、専門的な見守り人員、事故やトラブルが起きた際の責任の明確化、学校以外の運営主体や代替策を求める声が多く寄せられています。
保護者ニーズへの対応を評価する声
市の施策であり教員や公務員の勤務時間に関する負担がかわらないならばありだと思う。【中学校・教員】
高崎市がどこまではっきりとさせているか分からないが、しっかり人を付けて、事故等が起きても、教職員の責任でないこと、教職員は定時に来れば良いことが明確ならば、子供達の朝の居場所として良いと思う。【小学校・教員】
保護者としては有難い。【中学校・職員】
息子はすでに小6なので、登校時間まで自宅で大人なしで過ごしても大丈夫だろうと思えますが、低学年だったら心配だったかもしれません。そのことを思うと絶対反対とは言い切れません。【高等学校・教員】
様々な家庭環境を考慮した結果だと思うし、人員を配置して対応策を出しているのであれば良いアイデアだと思いました。【高等学校・教員】
専門人員の配置・責任の明確化を求める声
専用の職員を配置し管理してもらえるならばよい。
大人の目が少ない学校敷地内では問題が起きやすく、対処が難しい。
敷地内学童のように、専門職員配置は最低限必要。
できないならば、子どもの安全確保のためにも行わない方がよい。【中学校・職員】
定時までは校舎内には入れないことも徹底する。万が一怪我等で校舎内にいれる場合も、その見守り員さんが対応する。教員側も子供が早く来ているからといって、朝練させたり、宿題やらせたりしない。など、教職員の時間前勤務につながらないように、しっかりとやる必要があると思うが。
そして、この事が定着して、逆に「教職員の仕事は時間内のみ。時間外は他のスタッフが対応する」という住み分けの良い前例になれば良いと思う。【小学校・教員】
校務員が門だけあけるではなく、保育員として朝と夜に専用の人員を配置し、事故なども含め責任を負ってもらう人材を配置するならいい制度になると思う。今の制度はこれまで同様、理想だけ掲げて教員の負担を無尽蔵に増やしてきた施策の悪しき典型になっているだけ。【高等学校・教員】
放課後の学童のように、早朝に来た子どもたちを見守る有償スタッフを、現状の学校教職員ではなく新たに雇い、学校は場所だけ貸しているというスタンスにしたらいいと思う。
物が紛失したり、壊れたりというトラブルもあると思うので、体育館で過ごすとか、早朝の時間内のトラブルには学校は関与しないとか、一定のルールも必要だと思う。【中学校・教員】
教職員の負担に絶対ならない仕組みがないと、やってはいけないです。
事故や怪我の責任の所在を学校以外に明確にしてほしい。
なんでも学校に押し付けないでほしい。【小学校・教頭】
教員以外のスタッフの勤務が整うなら賛成。現在は、保護者のために早めの登校時間となり教員は勤務時間より早く勤務につかないといけないのが現状のため、それが改善されるなら賛成。【小学校・教員】
教職員・校務員の負担増を懸念する声
れだけ現場が疲弊している中、いくら校務員に見守りといっても、無茶だと思います。校務員も、その分、責任が増えます。なりても少なくなるのではないでしょうか。【高等学校・教員】
子どもたちに安全・安心な場を提供できるという点は大事だが、
たとえ校務員さんが対応するとしても
トラブルが起きたら先生の仕事領域が広がるのは反対
行政が委託して安心してお願いできるシステムを構築してほしい。【高等学校・教員】
校務員が面倒を見たとしても、トラブルが起きればそれは結局は教師が対応することになる。また、大雨や雪などの登校ができる範囲での荒天が起きれば、当然教室内での待機となる。すると、管理の必要が発生してその負担を誰がするのか?という事が想定されていない。
学校が何のためにあるのか?教師は何をする人なのか?という話を放置しておいて、ただ保護者のニーズがあるからと役割を拡大していけば、そこで起きる問題は結局は教師が穴埋めする事になる。【小学校・教員】
学校が福祉的機能を持つべきとの理念には賛同できますが、サービス業ではないので、教職員のウェルビーイングを大切にすべきだと考えます。無理をして本来の教育活動の質が下がるのでは、本末転倒です。【中学校・教員】
働き方改革を推進してきた学校現場の方向性とは逆行するものです。教師も不在の中、登校した生徒の安全を誰が保証するのか?【中学校・教員】
子どもの安全・生活リズムを重視する声
7時に登校させられる子どもをかわいそうだと思うし、せめて学童員のような、子どもを監督する人間を配置するべきだと思います。【中学校・教員】
子どもの生活を第一に考えるべきです。
また、学校が何でもやってくれるとなると、それに甘えてしまう家庭は増える一方です。
その結果、朝早くから家を出ざるを得ない子供が増えるのは気の毒でなりません。
もう一度考え直して欲しいです。【中学校・教員】
そもそも、家族の時間、睡眠時間をそれで十分に果たせるのか。共働きの負担は社会全体が考える問題で、働き安い環境を整えるのは会社の役目である。教員が担ってどうにかなる問題でもないし、子供の幸福感が増す確証もない。【中学校・教員】
学校以外の運営主体・代替案を求める声
それぞれの保護者で福祉サービスなどを利用できるようにするなど、行政のしくみを変えるべきであって、学校に負わせることは間違っている。【小学校・教員】
それほどのニーズがあるのなら、別機関(学童の早朝版のような)を設けるべき【小学校・教員】
学童のような『朝一預かりサービス』でも作って、お金を払って子供を預けるのが良い。これは、行政主導でも良いし、民間でやっても良い。【中学校・教員】
学童のような学校に隣接する別の施設を作ってはどうでしょうか。【小学校・教員】
思想はとても良いと思います。社会全体で家庭を支えることは重要だと思います。なかなか今からその考えをみんなが持つことは難しいですが…
しかし、なんでも学校が担うのは違うと思います。福祉の面との棲み分けは必要だと思います。とはいえ、そちらはそちらで!!みたいな感じの断絶ではなく、互いが協力応援し合うような運用は必要だとかんじています。【小学校・教員】
本当の問題は社会の状況にあるという声
根本的には、こんなに働いているのにあまり潤っていない国の経済政策の失敗だと思うし、働き方改革をしないと人としてもたないと思う。【小学校・教員】
早朝に子どもが学校にいなければいけない状況を変える必要があると考える。どの企業もフレキシブルな働き方を認める。そのためには、国や自治体から企業への働きかけが必要だと考える。【高等学校・教員】
本当は、保護者の仕事に融通がきくことが望ましい。
送り出してから出勤できる社会であってほしい。【中学校・職員】
本当の親のニーズは早くに子どもを受け入れてもらうことではなく、朝早くから働かなくてもよいことではないか。経済的余裕のなさ、職場の人手不足、不景気、手厚いとは言えない福祉制度、などなど社会のしくみそのものを変えなくては根本的な解決にはならない。【小学校・教員】
企業が始業時刻を遅らせ、子ども達が家庭で朝ごはんを食べられるようにするなど、社会全体の考え方の課題だと捉える。誰のための対策なのか、ズレていると感じる。【小学校・教員】
まず、本来、保護者や保護者が務める企業等が努力する部分である。
そう言ったところを学校で吸収してきたから、今の学校の惨状がある。【小学校・事務職員】
その他
前任地の杉並区では早く校庭を開放し、地域の方に校庭での見守りをしていただいていました。地域のサポート力のある所ではこのような方法も取れますが、現任校では難しいだろうなというのが、率直なところです。【小学校・教員】
学校は託児所ではない。託児所の機能を果たすのであれば、きちんと対価を支払い、子どもの安全を守れる体制を取るべき。【中学校・養護教諭】
共働きの保護者の支援、ということが、なぜ校門を早く開ける、という対応になったのか、疑問が残る。子どものいる家庭の就労状況の課題について検討した上でなされたことなのか、単純に早く子どもを預けたいというニーズに応えただけなのか。就労状況への支援であれば、その対応先が学校だけとは限らないのではないだろうか。【小学校・教員】
共働きする必要が増えたり、その間の子どもたちの生活を支える必要があることは理解できるが、それをまた学校だけが引き受けるのは別の社会課題を大きくしていると思うので、安易に校務員だからいいとは思えない。
必要なら親が勤務時間や形態を調整すべきだし、本当にそれができないほどの困窮状態ならば地域での助け合いや自治体がお金を出して人を雇うべきである。
場所を提供するところまではインフラの有効活用だとは思うが、必要な仕事にお金を払わないことは雇用の喪失にも繋がると思う。
また、朝が早くなりすぎることも、社会や親の課題を子どもに皺寄せていることにもなるので、反対です。【小学校・教員】
まとめ
今回のアンケートでは、早朝開門について「反対」「やや反対」と答えた教職員が約9割を占めました。否定的意見の理由では、教職員の負担増を懸念する回答が9割近く、校務員の稼働確保の難しさを挙げた回答が約3分の2となりました。児童間のトラブルや、子どもの生活リズムへの影響を心配する声も見られました。
一方、肯定的な立場からの意見は、保護者のニーズへの対応や、子どもに安全・安心な居場所を提供できることが重視されました。自由記述では、制度自体には否定的な立場の回答者からも、働く保護者への支援や、朝に子どもだけで過ごす家庭への対応が必要だという理解が示されています。
今回の回答から見えてきたのは、早朝の居場所が必要かどうかだけではなく、“誰が、どのような人員・勤務条件・責任のもとで運営するのか”という課題です。校務員が見守ることになっていても、事故や体調不良、児童間のトラブル、荒天時の対応などが発生すれば、結果的に教員が対応することになるのではないかという懸念が、多く寄せられました。
文科省は「学校と教師の業務の3分類」の中で、登下校時の通学路における日常的な見守り活動などを「学校以外が担うべき業務」としたうえで、朝や下校後に学校施設で児童生徒を預かる必要がある場合には、「学校以外の管理体制を構築」することが明記されています。(参考:文科省「学校と教師の業務の3分類」)
学校で早朝開門の事業を行うのであれば、このような業務分類についての議論との整合性が問われます。校務員を配置するだけでなく、教員への業務の波及を防ぐルールや、緊急時の連絡・対応、始業時刻までの引き継ぎ、責任の所在を事前に明確にする必要があります。
高崎市以外の自治体では、学校施設を使いながらも、学校教職員とは異なる運営体制を設ける例があります。
神奈川県横浜市:
・シルバー人材センターが実施事業者となり、見守り員2人を配置
・利用は事前登録制/保険加入が必要
・保護者などが児童に付き添って登校し、緊急時には見守り員が保護者へ連絡
(参考:横浜市「小学生の朝の居場所づくりモデル事業」)
東京都江東区:
・シルバー人材センターと学校用務主事に業務を委託し、見守り員3人を配置
・利用は事前登録制/傷害保険と賠償責任保険の保険料は区が負担
・保育ではなく始業前の「居場所を提供する事業」であることや、保護者の責任のもとで利用することを明示
(参考:江東区「朝の児童の居場所づくり事業の実施について」)
埼玉県行田市:
・学校内の学童保育室に見守り員2人を配置
・利用は事前登録制/利用料(1回100円)および定員(50人)あり
・児童の過ごし方や禁止事項を定め、保育や教育、学習支援を提供する事業ではないことを明示
(参考:行田市「朝のこどもの居場所づくり事業(埼玉県モデル事業)」)
これらの事例からは、朝の居場所を設ける際に、専門・専用の人員、事前登録、保険、利用ルール、定員、緊急時対応、事業の範囲などを具体的に定めることの重要性が伺えます。自治体や学校ごとの施設、人材、地域との関係、保護者のニーズが異なるため、同じ仕組みをそのまま導入すればよいとは限りませんが、一定の参考にすることは可能でしょう。
子どもや保護者への支援と、学校で働く人の健康や持続可能な勤務環境は、どちらか一方を犠牲にして成り立たせるものではありません。早朝の居場所が必要であれば、既存の教職員や校務員の善意や追加負担に依存するのではなく、自治体の教育・福祉部門、地域、外部事業者などが役割を分担し、人員と予算を伴う仕組みとして整えることが求められます。
早朝開門への賛否を問うだけでなく、子ども、保護者、教職員のそれぞれが安心できる体制とは何か。学校が担う役割と、学校以外の主体が担う役割を具体的に話し合うことが、次の一歩になるのではないでしょうか。
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