【教職員アンケート結果】現行学習指導要領、あなたの学校の実態は?
学校経営や各教科の授業を行うにあたって、文科省が作成した教育課程の大綱的な基準である「学習指導要領」。現行の学習指導要領は、小学校・中学校の完全実施を経て、今年度から高等学校でも段階的な実施が始まっています。
Webアンケートサイト「フキダシ」では、学習指導要領の内容改訂に伴う学校現場の声を集めるため、現行学習指導要領における「改訂のポイント」についての調査を行いました。
今回フキダシでは、その調査で特徴的な結果が出た内容について、更に深掘りをしていくアンケートを実施しました。この記事では、「主体的・対話的で深い学び(アクティブラーニング)」「伝統や文化に関する教育の充実」「道徳教育の充実」「外国語教育の充実」の4項目についてのアンケート結果をまとめています。
※「道徳教育の充実」「外国語教育の充実」についてのアンケート結果は 次のページ をご覧ください。
アンケートの概要
■対象 :全国の小〜高校年齢の児童生徒が通う一条校に勤務する教職員
■実施期間:2022年12月9日(金)〜2022年1月23日(月)
■実施方法:インターネット調査
■回答数
① 主体的・対話的で深い学び(アクティブラーニング):31件 (設問)
② 伝統や文化に関する教育の充実:21件 (設問)
③ 道徳教育の充実:26件 (設問)
④ 外国語教育の充実:26件 (設問)
アンケート結果
①主体的・対話的で深い学び(アクティブラーニング)
設問1 調査結果について、どう思う?
Q1. 現行学習指導要領における「主体的・対話的で深いび(アクティブラーニング)」について、フキダシで実施したアンケートでは全体的に「良い影響が出ている」という回答が多かったものの、特に小学校では「良い影響が出ていると思わない」という回答も目立つ結果となりました。この結果について、あなたはどう思いますか。(任意)
教員によって、捉え方が違うのではないか
「そう思わない」と回答している方は、全てが主体的で対話的でないといけないと考えているのではないかと感じる。教えることと学ぶことは両方とも必要だし、子どもの発達段階や教科の単元によっても、教えることと学ぶことの割合を考えていく必要はあると思う。小学校段階の授業では以前から良い授業は主体的な授業であり、対話的であった。【小学校・校長】
学習指導要領を読んでいないことも考えられます。「主体的で対話的で深い学び」の本質的な意味の理解が違う形で伝わっているように思います。これまでの指導方法に固執している人には、きちんと理解できても受け入れがたいのだと思います。【小学校・教員】
発達段階によっては、実践が難しいのではないか
発達段階に応じて、「主体的・対話的で深い学び(アクティブラーニング)」が効果的になるのかが模索されている段階だからなのではないだろうか。子どもたちの意見が活発に交わり発展していくには知識と表現が一定求められると考えられているからではないだろうか。【中学校・教員】
基礎学力がない小学生の子どもたちに主体的・対話的で深い学びができるかというと、無理です。闇雲におしゃべりをさせて考えさせたような気分になっても、結局のところ一部の学力が高い子どもたちが満足しているにすぎません。学力が高い子どもたちにとっては探究的な学習は効果があるかもしれませんが、何をやらされているわかからない子どもも少なくありません。【小学校・教員】
教員の忙しさから、実践が進まないのではないか
私は高校なのでわかりませんが、小学校には道徳教育やGIGAなどのたくさんのタスクが降ってきているので、それによる副作用が出ているのかなと思いました。【高等学校・教員】
教員自身がアクティブラーニングを受けてきていない。アクティブラーニングの指導法を学んできていない。とにかく多忙で新しいことを取り入れ実践していく余裕がない。多くの教師の仕事の大半を占めるのは「学習指導」より「事務仕事」「保護者対応」「教育相談」「生活指導」である。そういった状況を鑑みると、小中学校の「そう思う」が5割に達しないことは妥当だと思います。【中学校・教員】
前提として、「主体的・対話的で深い学び(アクティブラーニング)」とはどのような授業なのかを教員自身が理解しきれていないのではないか、という意見が一定数集まりました。「主体的・対話的で深い学び」の成果は見えづらかったり、影響が出るのに時間がかかるため、「良い影響が出ている」と言える状態になっていないケースもあるようです。
設問2 あなたの学校の実態は?
Q2. 現行学習指導要領における「主体的・対話的で深い学び(アクティブラーニング)」について、あなたの学校の実態を教えてください。
「主体的・対話的で深い学び」への十分な理解が進んでいない
方法論に進みすぎて、「主体的・対話的で深い学び」がどんな学びなのか、どんな子どもの姿なのかが、共通理解されていない。ただグループ活動を多く取り入れればよいという風潮。【小学校・教員】
ICTを使ってAL(アクティブラーニング)的な授業をしようとする人が多い。けれど、ICTでアプリやツールを使えば自動的に協同的な学習になると信じている人がいたり、逆に一人ひとりがPCに向かって入力しているので「一蘭(天然とんこつラーメン専門店)」の店内みたいな『個別最適化』のような授業になってしまっていることに課題を感じている。【中学校・教員】
これまでのやり方を変えることへの難しさを感じる
これまでの教師主体の授業からの脱却は簡単ではないと思う。しかし、そこに部分的にも子どもたちの主体性や子どもたちが学ぶ、という視点が入ってくることで少しずつ変わっていくようにも思うし、それを期待したい。【小学校・教員】
子どもたちが意欲的に課題に取り組むような工夫など、授業や単元の導入部分に工夫をするようにしています。アクティブラーニングとか言われても授業づくりの原点は大切にしようと取り組んでいます。実際はじっと座ってられない子、教室を飛び出す子、コミュニケーションが苦手な子、他者に攻撃的な言動をする、自分勝手な子など一人の授業者が見るクラスには色んな子どもがいるのでアクティブラーニングの授業づくりが難しいところがあります。【小学校・教員】
ICTの活用と併せて、部分的に取り組もうとしていることはうかがえつつ、実践としては発展途上な印象があります。限られた時間の中で、学習指導要領にあるような伝えるべきとされることを扱うとなったときに、なかなか一気に変えることは難しいだろうと想像します。また、学校ごとで何を求められているか・生徒がどうしたいかによっても変わるように思うので、必ずしも本校でアクティブラーニングを求められていなければ先生が準備にかけるモチベーションも上がりにくいのかもしれません。【高等学校・事務職員】
「主体的・対話的で深い学び」が広がってきていると感じる
観点別評価が導入されて、パフォーマンス課題が増えた。反復学習で暗記するだけよりは、実践的な取り組みが増え、生徒が能動的に動くようになった。【高等学校・教員】
さまざまな教科で取り入れられていると感じます。創意工夫をしながら、現場はよく頑張っていると思います。【高等学校・教員】
高校に所属する方からは、良い変化を実感しているという内容の回答が比較的多く寄せられました。小学校や中学校では「主体的・対話的で深い学び」を実践していくことへの難しさを感じる声が多く集まりました。教員の理解が及んでいたとしても、これまでのやり方を変えることや児童生徒の実態に合わせた授業展開をしていくことには難しさを感じることがあるようです。
②伝統や文化に関する教育の充実
設問1 調査結果について、どう思う?
Q1. 現行学習指導要領における「伝統や文化に関する教育の充実」について、フキダシで実施したアンケートでは全体的に「良い影響が出ていると思わない」という回答が「良い影響が出ていると思う」という回答を大きく上回る結果となりました。この結果について、あなたはどう思いますか。(任意)
教員の忙しさから、実践が進まないのではないか
ただでさえ忙しく余裕がないのに、あれこれやらなければならないことが増え、事前準備が増えることにより、業務を圧迫しているために良い影響が出ているとは思えない、と思っている人が多いのではないでしょうか。【中学校・教員】
伝統や文化に触れて、色んな体験をさせたいのですが、他にもやるべきことが多すぎて、一応、年に一回は芸術鑑賞の行事はありますが、「ただ見せただけ」で終わっているところもあり、充実しているかと言われると難しい。【小学校・教員】
教員自身の興味関心が向いていないのではないか
結果のとおり、学校への影響は小さいと思う。そもそも、職員室で「伝統や文化に関する教育の充実」という言葉が出てくることがあまりない。【小学校・教員】
その大切さはわかるけれど、実際この分野について校内研究の対象にもならないし、話題にもなりにくいので、良い影響も何もありませんという感じだと思う。【小学校・教員】
伝統や文化に触れることの必要性は感じるものの、取り組みができていない現状があり、結果として「良い影響が出ているとは思わない」という回答が多くなっているのではないかと推測する声が多く集まりました。
設問2 あなたの学校の実態は?
Q2. 現行学習指導要領における「伝統や文化に関する教育の充実」について、あなたの学校の実態を教えてください。
教員の忙しさから、実践が進まない
重要視されていません。はっきり言って、学校で教えるべきとされていることが増えすぎています。【小学校・教員】
年に1回の「文化芸術鑑賞」を何とか行っています。本来なら外部の方を呼んで、子どもたちに色んな経験をさせたいが、アポを取ったり、窓口が分からない、日々に余裕がないのでできていません。【小学校・教員】
教員の関心があまり向いていないように感じる
そもそも、職員室で「伝統や文化に関する教育の充実」という言葉が出てくることがあまりない。【小学校・教員】
「伝統や文化に関する教育」は特別に位置づけるものというより、折に触れて行うもの、という認識の教師が多いと思います。小学校では生活科や社会科で扱えるかもしれませんが、中学校では単元の中で触れる場面があれば紹介する程度でしょう。そもそも教師自身が「伝統や文化」に関して関心が低かったり知識が乏しかったりする面もあります。【中学校・教員】
特定の価値観の押しつけを感じる
「伝統や文化に関する教育の充実」には、保守派団体の影響を強く感じるという点で、賛同できない。当然、子どもたちに伝えたい地元の伝統行事や文化があればそれは扱うが、今回の「伝統や文化に関する教育の充実」にはどうしても愛国主義や国粋主義が見え隠れして、前向きに捉えることができない。何をどう充実させるのかは現場の教師が選択することである。【小学校・教員】
「伝統や文化」と言えば聞こえが良いが、結局は国の価値観の押し付けでしかなく、「日本スゴイ」的な排他性が強いものとなっている。道徳なども愛国心など戦前の軍国教育への回帰が垣間見える内容で、一方的過ぎる。【中学校・教員】
学校全体で実践している
全学年で日本各地の民族舞踊をやっている。その程度。ことさら日本文化を強調することはないが、外国との交流では力を発揮している。【小学校・教員】
もともとお箏に取り組んでいたり、お正月遊びの日があったり、狂言教室があったりと、伝統や文化に接する機会があったため、特にそれによって変えたことはありません。【小学校・教員】
業務量の多さや教員自身の関心の薄さから、あまり実践が進んでいないという回答が目立ちました。中には、国からの特定の価値観の押しつけを感じることで、伝統や文化に関する教育の充実に抵抗感のある方もいるようです。
ほかの調査結果は?
次のページでは、
③道徳教育の充実
④外国語教育の充実
についてのアンケート結果をまとめています。
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