【教職員アンケート結果】教員不足解消のために「もっと聞きたい、教員不足現場の“声”」① 子どもたちや教職員への影響は?
以前、 School Voice Project で行った「#教員不足をなくそう 緊急アンケート」は、報道各社に取り上げられ(報道記事はこちら)、文部科学大臣も提言内容にコメントをする(記者会見録はこちら)など、大きな反響がありました。
教員不足を解消するため、School Voice Project では『もっと聞きたい、教員不足現場の“声”』という連続アンケートを実施しました。この記事では、全3回のアンケートのうち、第1回と第2回のアンケート結果についてまとめて紹介します。
第1回 しわ寄せは子どもたちに…
第1回のテーマは「しわ寄せは子どもたちに…」。教員不足での不利益の最後の行き先は学校の児童生徒たち。現場でのエピソード等を聞きました。
アンケートの概要
■対象 :全国の小〜高校年齢の児童生徒が通う一条校に勤務する教職員
■実施期間:2022年6月17日(金)〜2022年7月19日(火)
■実施方法:インターネット調査(実施時の設問はこちら)
■回答数 :38件
アンケート結果
設問1 子どもたちからの「困った」の声
Q1. 教員不足の学校で働いている・働いていた経験がある方に質問します。児童生徒から聞こえる「困った」の声を教えてください。
教職員に対する不信感や、学校生活への不安
代わりの先生がいない間に教頭や教務が入れ替わり立ち替わりで授業をして、臨時講師が見つかったときには、1年間で3人の担任となり、「どうせ俺ら、どうでもいいんやろ?」って一度言われました。「先生俺らどうなるん?」とも言われました。【小学校・教員】
学級担任が病気で退職し、その後の担任が決まりません。かろうじて、校内の教員でやりくりしています。子どもからは、同じ学年の中で、自分のクラスだけ担任の先生がいなくて寂しいという声がありました。【小学校・養護教諭】
昨年、中学の理科の教員が病休で、病休期間が決定するまでは、理科の教員が不在で授業がなく、「授業はどうなっているの?」「いつから授業ができるの?」「学年の先生が1人不足で大変そう」「何とかならないの」など聞かれたけど、答えられなかった。【中学校・教員】
授業担当者が頻繁に変わる
臨時講師の先生が担当している教科の授業では、年度の途中で担当者が代わることが多く、生徒が先生のやり方に慣れてきた頃に交代となり、生徒が困っていた。【中学校・教員】
個別の対応をしてもらえない
勤務時間が短い方や日数が少ない方が多いため、生徒が質問しに行ったり、提出物を出そうとしたりしたときに先生がいなくて困っている場面はよく見る。【中学校・教員】
何かトラブルが起きたときに、「先生たちが廊下とかで見てないんだもん」と生徒から言われたことがある。また、勉強がわからないから聞きたいのに、その教科の先生が全員行事引率に持っていかれてしまい「聞けなかった」と不満があった。【中学校・教員】
授業が進まない
何かトラブルがあったとき、「授業が自習になるのがいやだ。朝、ちゃんと準備してきてるのに」と、言っていたのを聞きました。【小学校・教員】
設問2 そのほか、子どもたちの不利益は?
Q2. その他、教員不足によって生じた「児童生徒の不利益」の状況について教えてください。(任意)
学級運営や授業の質が保てない
欠員分を負担している教員には空き時間もなくなり、クラスの授業準備等ができないため、そのクラスの児童生徒にも不利益が生じてしまう。【小学校・教員】
授業で自習が多くなる。他の先生たちへの負担につながり、授業準備ができず、教え込みの授業になってしまう。【中学校・教員】
教員不足のため、大学生4年生に特別免許を与えて非常勤をやってもらっている。しかし指導力不足で生徒が授業中に遊んでしまい、真面目に取り組みたい生徒が集中できていないことが多くなっている。【高等学校・教員】
個別の対応ができない
きめ細かな指導もできなかったり、個々に応じた指導が出来ないことが多いです。1人の教員の負担が大きくなり、多忙感が職場に広がっています。【小学校・教員】
教師が児童と向き合う時間がなくなっている。そのため大人を巻き込んだ大きな問題になるまで、いじめや不満が対応されなくなっている。大きな問題となると、結果として教師の業務を圧迫するという悪循環が発生している。【小学校・教員】
十分に子どもを見てあげられなくなるので、自分からSOSを出せない子は見逃される可能性が出てきます。【小学校・教員】
支援学級の先生を教科担当に充てたため、支援学級生のサポートが不十分になった。【中学校・教員】
教頭が授業に出ているため、教頭が対応しなければいけない相談ができないケースがあっても、外部との連携に遅れが出てしまっている。生徒にも折り返し電話などになってしまい、即時対応ができていない。結果、休みが続く生徒に迅速な対応ができていない。【高等学校・教員】
児童生徒の不安感、不信感が増す
目の前のことに追われている大人を見て、子どもは「これからの未来が楽しみだ!」とは到底感じられないでしょう。子どもにとって大切なのは、生き生きと働く身近な大人だと考えています。教員の多忙さは子どもにとって悪害でしかないです。【小学校・教員】
十分な支援が受けられず、保護者が不信感を募らせた。保護者が不安定になると、子どもも不安定になり、学校生活に乱れが生じて、授業参加が難しくなった。【小学校・教員】
学級崩壊しての、担任の病休は子どもたちに影を落とします。1年間に何人の大人が授業を終わらせるために入ってきたか。その事実は決して消すことはできません。そんな経験をした子どもたちは、大人を信じることができないと思います。【小学校・教員】
学級担任が不在であることで、子どもたちの不安を受け止める人がいない状態になっています。小学校低学年なのに、毎時間ごとに教壇に立つ教員が変わるので、不安で当然だと思います。【小学校・養護教諭】
まとめ
設問1では児童生徒からの「困った」の声を、設問2では児童生徒の不利益の状況を聞きました。
教職員が聞いた児童生徒からの声としては、授業担当者が不在で授業が進まないことへの不安や、担任が頻繁に変わることで不信感を抱いていることが伺える内容が目立ちました。不利益の状況としては、「教員の多忙化によって学級運営や授業の質が保てないこと」が多くあがっていました。一人ひとりに目を配りたいと思いつつ、それが出来ないもどかしさもあるようです。支援が必要だと思われる児童生徒がいてもサポートができず、不安感や不信感を抱かせてしまっているのではないか、という声もありました。
また、School Voice Projectでは2021年9月にも臨時講師不足についてのアンケートを実施していますが、その中でも「少人数加配がいなくなり、児童の学力保障が十分にできていない」「子どもの異変に気づくのが遅くなる」など、児童生徒に不利益が出ているという意見が多く集まっており、今回のアンケートとの関連が見られました。
《教員へのアンケート調査はこちら》
次のページでは、教員不足によって生じている教職員への影響や、教職員が期待する国や自治体からのサポートについてご紹介します。
同じキャンペーンの記事
教職員アンケート結果まとめ
#教員不足をなくそう
最新記事やイベント情報が届くメールニュースに登録してみませんか?
-
メガホン編集部