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【教職員アンケート結果】学校の冷暖房調査 〜教室や職員室は“適温”ですか?〜(2025年ver.)

  • メガホン編集部

メガホンでは2022年に、全国の学校の教室・職員室の温度状況について、教職員の方にアンケート調査をしました。

学校環境衛生基準」で「18℃以上、28℃以下であることが望ましい」と定められている教室や職員室の温度ですが、アンケートの結果からは、実際に運用にはバラつきがあることがわかりました。

約2年半が経過し、教室・職員室の温度状況はどう変わったのか、改めて全国の教職員の方に聞きました。

アンケートの概要

■対象  :全国の小〜高校年齢の児童生徒が通う一条校に勤務する教職員
■実施期間:2025年2月10日(月)〜2025年3月24日(月)
■実施方法:インターネット調査(実施時の設問はこちら
■回答数 :72件

アンケート結果

設問1 学校の温度基準、知ってる?

Q1. 文部科学省の定める「学校環境衛生基準」において、教室の温度は「18℃以上、28℃以下であることが望ましい」とされていることを知っていますか?

教室の温度設定が「18℃以上、28℃以下であることが望ましい」という基準は、全体の25%の教職員が「明確に知っていた」と回答し、前回調査から2%増加する形となりました。また、「だいたい知っていた」と回答した方も、前回調査の41%から49%に増加しました。

校種別に見ると、「明確に知っていた」「だいたい知っていた」を選んだ割合は中学校、小学校、高等学校の順に多く、それぞれ83%、72%、67%となりました。

設問2 「18℃~28℃」の基準、守れてる?(夏季)

Q2. 夏季において、あなたの勤務校では学校環境衛生基準で望ましいとされている温度を守れていますか?

夏季については、全体の8割以上が教室・職員室において望ましいとされる温度を「しっかり守れている」「だいたい守れている」と回答。特別教室の5割、体育館の2割強がそれに続きました。

肯定的意見の割合を校種別に見ると、小学校では教室78%・職員室89%と職員室の方が多い一方で、中学校は教室89%・職員室78%と逆転したほか、高等学校は教室67%・職員室61%と控えめな結果に。校種によって、若干の違いがあることがわかりました。

設問3 「18℃~28℃」の基準、守れてる?(冬季)

Q3. 冬季において、あなたの勤務校では学校環境衛生基準で望ましいとされている温度を守れていますか?

冬季については、教室・職員室において全体の8割以上が「しっかり守れている」「だいたい守れている」と回答。特別教室、体育館と続き、おおまかな傾向は夏季と同様であることがわかりました。

校種別に見ると、肯定的意見は小学校では教室81%・職員室94%、中学校では教室100%・職員室83%、高等学校は教室83%・職員室72%。全体的に、夏季より「しっかり守れている」「だいたい守れている」が多い結果となりました。

設問4 教室で基準が守れていない理由は?(夏季)

Q4. 設問2で教室について「あまり守れていない」「全く守れていない」と答えた方への質問です。その理由として当てはまるものを選択してください。(複数選択可)
※設問の対象者(設問2で職員室について「あまり守れていない」「全く守れていない」と答えた方)は15名でした。

その他の主な意見

不具合→修理が多すぎる。また教員が設定温度を低くしすぎる【小学校・教員】

電力不足【小学校・教員】

夏季に教室において望ましいとされる温度を「あまり守れていない」「全く守れていない」理由としては、「冷房機器の能力不足」が最多の8人となりました。続いて「冷房機器が未設置、または不足している」を選んだ方が多く、機器の整備が追いついていない現状が伺えました。

設問5 教室で基準が守れていない理由は?(冬季)

Q5. 設問3で“教室”について「あまり守れていない」「全く守れていない」と答えた方への質問です。その理由として当てはまるものを選択してください。(複数選択可)
※設問の対象者(設問2で職員室について「あまり守れていない」「全く守れていない」と答えた方)は10名でした。

冬季に教室において望ましいとされる温度を「あまり守れていない」「全く守れていない」理由としては、「暖房機器の能力不足」が最多の8人となりました。続いて「予算不足」、「暖房機器が未設置、または不足している」を選んだ方が多く、夏季と同様に、機器や予算の問題が大きいことが伺えました。

設問6 学校の温度環境、どう思う?

Q6. 教室・職員室温度について、あなたの問題意識や考えを自由にお書きください。(任意)

予算の制約が大きい

近年の猛暑のせいで、夏季の冷房は欠かせないものでした。教育委員会が定めたエアコンの設定温度では、授業環境が適切には守れないので、多少は設定温度を下げたりして、何とか学習のできる環境を整えました。
しかし、冬季に入ると、電気代の予算がなくなり、エアコンが使えず、一部ストーブを使うなどして何とか対応しています。そこに校舎内に故障や不具合が起こると厳しくなると言われています。
異常気象に関しては予測は難しいと思いますが、電気代などの教育環境を整えるための予算は柔軟にしてほしいと思います。(もちろん、節電等の取り組みなど自分たちでやれることはした上で)【小学校・教員】

特別教室に冷房機器がなく、音楽、書道、美術の授業で苦慮している。図書室の取り合いになり、たとえば国語の授業で使えなかったりしている。また、会議室に冷房がついていないため、職員会議が職員室や図書室で行われる。そのため、図書室で部活動ができないときもある。教室はPTA費で支払われるため冷房がオンになるが、職員室は県費のため冷房が入れてもらえないときがある。予算が色々なところで割かれない中、私立高校に授業料無償化するなら、公立高校の施設を良くしてほしい。【高等学校・教員】

私立勤務ですが、ようやく数年前に補助金が出て、エアコンの整備が進みました。私学はいつも後回しになりますし、半分は学園負担になります。しかし、そのせいか近年電気代がすさまじいことになっていて経営を圧迫しています。どうにも減らせない部分なので、困っています。【小学校・教員】

空調は教室ではON,OFFができず、スイッチも設定温度も事務室が管理しているので、予算優先になってしまうが、猛暑で冷房代を使い過ぎれば、冬の暖房代が無くなってしまうので、やむを得ないのかもしれない。
初任の頃の学校では、夏に「電気代が払えないので冷房を切ります」と校内放送が流れて、最も暑くなる12時頃に冷房を切られてしまった。熱中症の危険が高まり、管理職に抗議をする教員もいたが、「水を飲ませるように」と指示が出ただけだった。【特別支援学校・教員】

千代田区はお金があるため、環境はとてもいい。しかし、都内でも地域によって差がある。そのような違いがあることが、平等性がない。【小学校・教員】

特別教室や準備室、体育館にも冷暖房の設置が必要

体育館が体育を行うには厳しい気候が続くようになっている。学校行事の合間を縫って器械運動などを行うが無理がある。体育館はどんな気候においても運動ができるよう整備してほしい。【小学校・教員】

教委の方針で、教科準備室には冷房設備がつかない。夏は過酷です。隣接する実験室を冷やして冷気を送っています。却って電気代がかかっていそう。【高等学校・教員】

まず、体育館を冷暖房完備にして欲しい。終業式等は温度によってはオンラインで開催するが、卒業式はそういうわけに行かず、寒さが耐え難い。
それなのに、式典だからという理由で生徒に防寒着を着せない。かつ、トイレに行くことも禁じる。教員も礼服や袴で非常に寒い。我慢大会にしかなっていない。そんなに厳粛にルールを守らせるなら、体育館を快適な環境にしてからにして欲しい。【高等学校・教員】

子どもが活用する部屋は冷暖房があるが、用務員室・配膳室等大人だけが利用する部屋は冷房がない(冬はストーブ使用)。労働者のための冷暖房設置予算は組まないのだと思いました。ひどいです。
体育館の冷房がないと、夏秋の体育が何もできません。グラウンドは暑さで使用できません。【小学校・事務職員】

学校設備の問題が大きい

職員室も教室も、常に換気することを意識しているため、隙間風が冷たいし、熱風が吹いてくる。トイレはほぼ外気温。体育館はようやく冷暖房が設置されたが、設備自体が古いため、どれくらい効果があるかは未知数。最上階の教室はとにかく暑くて寒い。建物の気密性によると思います。【中学校・教員】

暖房設備の不備や予算不足による対応が原因とみられることが多いと感じているが、そもそもの問題として旧来の学校施設において断熱の概念が全くと言っていいほど存在していないのが原因と感じている。
薄い窓ガラス1枚で外気と遮断されている現状であったり、気密性の問題や断熱材が施工されていない鉄筋コンクリート造りの建物など、いくら暖房機器の能力が向上しても結果的に効果が薄く予算を過剰に支出してしまう施設がほとんどと考える。
学校施設の更新、すくなくとも窓ガラスの入れ替えだけでも早急に進めることが一番の対応策ではないかと思います。【事務職員・小学校】

クラス数が多いため、使う電力も大きいが、それに見合った電力を供給できる設備ではないため、度々ブレーカーが落ち30度越えが当たり前になっている。子どもたちの集中できる環境とは言い難く、大人でも暑さで疲弊してしまう。また28℃設定は狭い教室に35人いる環境では体感温度としては高すぎて適温ではない。人数に応じた柔軟な対応をとりたい。【小学校・教員】

教員の意識や運用の仕方に問題がある

私としては、冷暖房機器があることを良いことに、窓やドアを開けっぱなしにしている教職員の感覚の方が気になっています。コロナ禍の名残で、それまで大事にされていた環境教育が校内で断たれている現実があります。地球温暖化を考えた時、学校の空調(トイレの温便座も)はどうい状態であることが良いのか、もう一度みなさんと考えたいものです。【小学校・教員】

教職員が冷暖房の仕組みを知らないため、教室の温度が均質にならず、寒い思いをしている児童と、暑い思いをしている児童との格差が生まれている。なぜ、冷房を18度に設定すれば、18度の冷気が出ると勘違いしているのか、もはやわからない。【小学校・事務職員】

学校衛生環境基準が周知されていない。そのためそれぞれの教職員の感覚で動いている。今でも、『エアコンを使うと子どもは体調を崩す。』と言う声が聞こえてくる。【小学校・教員】

校舎が新しく、現在地域内の新築校舎のZEB化も進んでいるようなエリアなので、比較的新しい私の勤務校はエアコンがちゃんと効きます。しかし、教員のエアコンの使い方がとても気になります。例えば、夏はエアコンは下げられるだけ下げて、冷蔵庫のような寒さ、冬はエアコンを上げられるだけ上げて、もわっとする暑さ。そのため、全館換気システムがあるとは言え、教室環境が快適ではないときもありますし、環境意識が欠如していて気になります。【小学校・教員】

その他

夏の温度調整は難しいのもあるので、指導要領の内容を減らして、夏休みを増やす方向にしてほしい。【小学校・教員】

温度そのものについてというよりも、暑い、寒いといった感覚も人それぞれのはずなので、防寒着を教室で使用してはいけないという校則を何とかしたいです。【中学校・教員】

地域によっては校内一括で職員室で設定されていたが、現在の勤務地では教室ごとに冷暖房の調整ができるので、日光のあたりやすい教室や風が通りやすい教室であってもこっちで調整できるので助かっています。【小学校・教員】

学校環境衛生基準で示されている、室温では範囲が広すぎます。その基準と光熱費削減の観点で、エアコンの温度を設定しているが、それでは体調が不調をおこす環境である。したがって、20度以上、26度以下ぐらいに基準を狭めてほしい。【中学校・教員】

まとめ

学校環境衛生基準で定められる「18℃以上、28℃以下であることが望ましい」という教室の温度設定について、「明確に知っていた」「だいたい知っていた」と回答した方は全体の74%。前回調査の64%から増加し、基準についての認知が向上していることがわかりました。

温度基準を守れているかという質問に対しては、夏季・冬季ともに「しっかり守れている」「だいたい守れている」と回答した方が全体の8割を超えましたが、校種別のばらつきや、特別教室・体育館の肯定的回答の低さなども目立ち、学校全体としての温度基準の順守にはまだ至っていない現状が浮かび上がりました。

「あまり守れていない」「全く守れていない」を選択した理由としては、「冷房機器の能力不足」「冷房機器が未設置、または不足している」「予算不足」が多数を占め、気温の変化に機器や予算の整備が追いついていない現状が伺えました。

自由記述では、現場の先生方の予算や冷暖房未設置の施設への問題意識が多数寄せられました。中でも体育館や特別教室、準備室などにおける設備不足は、年々気温が厳しくなる中で、生命の危機にもつながる問題だとする声のほか、そもそもの学校の断熱性や気密性に大きな問題がある、という意見もありました。

※ 学校の断熱性向上については、こちらの記事もご参照ください

その他、基準を定めても各々の教員の使い方や意識に差があるなど、学校の温度環境については、多層的な問題が絡んでいる様子が伺えました。


▼ 自由記述の回答一覧は、以下よりダウンロードしてご覧ください。 ▼

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メガホン編集部

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