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【学校の居心地プロジェクト】Yogiboを置いて、教室はどう変わった?北星学園女子中学高等学校の先生と生徒の声を聞きました

  • メガホン編集部

昨年、NPO法人School Voice Projectでスタートした「学校の居心地プロジェクト」。

きっかけとなったのは、WEBアンケートサイト「フキダシ」に集まった、学校の(物的・空間的環境な意味での)居心地についての教職員の皆さんからの声でした。

「とても居心地がよいと思う」「まあ居心地がよいと思う」という肯定的な選択肢を選んだ人は約半数、職員室など、教職員が仕事をするための空間については、肯定的な回答は約3割。少なくない子どもたちや先生たちが、心地よいとは言えない環境で学んだり働いたりしている実態が見えてきました。
(アンケート結果詳細はこちら

「学校の居心地プロジェクト」での取り組みの一つとなる「#学校にYogiboを置いたら」実証実験では、全国から公募した5つの学校のさまざまな場所にYogiboを設置し、子どもたちや先生たちの心や学び、関係性にどのような影響を与えるのかを探っていきました。

この記事では、協力校の1つである北星学園女子中学高等学校の教員である黒岩萌実さんと高野路子さんに、Yogiboの設置による変化について聞きました。同校の教員や生徒向けに実施されたアンケートの結果も合わせてご紹介します。

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学校の中にもっとリラックスできる空間を

—— 「#学校にYogiboを置いたら」の実証実験には、なぜ応募しようと思われたのでしょうか?

黒岩:私自身、アメリカに住んだりいろんな国に滞在したりしてきたのですが、その中でも日本は一番“ちゃんとしていないといけない国”だなと感じました。例えば、アジアの国であれば疲れたら当たり前のように路上で休んでいるのに、日本で同じことをしたらおかしな目で見られる。身なりや行動を含め、ちゃんとしなければいけない社会が生徒たちを苦しめている側面もあると思っています。

固いものばかりの学校にYogiboのような柔らかいものがあることで、生徒たちの心もほぐれていくのではないかなと。学校がもっとリラックスできる場所であることが直接的に不登校の生徒を減らすことにつながるかはわからないけれど、地続きなんじゃないかなとも思っています。学校の中に「居心地」という視点を入れることは、教員にとっても生徒にとっても、いいことだと思っています。

—— Yogiboを校内に設置する前には、居心地の良さを意識した空間はあったのでしょうか?

黒岩:校内にEnglish lounge(イングリッシュ ラウンジ)という広いスペースがあり、以前はそこにソファやビーズクッションが置いてありました。けれど、感染症の流行をきっかけに撤去することになってしまって。当時、「授業中に寝っ転がって本を読むのはよくない」という教員からの声もありました。

中高1年生の教室に設置。仲が深まるきっかけに

——実際にYogiboを置くことが決まったとき、教員からはどのような反応がありましたか?

黒岩:教員に向けてアンケートを取ってみると、想像以上に共感する声が多かったですね。回答者は教員数の半数ほどだったのですが、それでも反対意見がほとんどなかったことには驚きました。

高野:「本当はもっと居心地の良い場所があるといい」という声は、予想していたよりもありましたね。Yogiboが届いてからは、まずは教員たちで座ってみることからスタートしました。その時間は和みましたね(笑)

教員の声

「学校の居心地と生徒たちの学びの成果は関連すると思う」と回答した方の主な意見

居心地のいい場所でリラックスした状態で勉強した方が、勉強がはかどるはずだから。

気持ちが落ち着いていないとやるべきことに向かうのは難しいと思うから。

1日の大半を過ごす学校で自分の居場所があることは、精神的な安定を生むことになると考えています。学びや友人、教員と過ごす時間が安心安全な場所であって初めて学習に集中できると思います。

学校の居心地は、言葉を換えれば学校の心理的安全性ということになると思います。心理的安全性が確保された場所では、生徒は誤りへの過度な恐れをなくし、誤りからも学びが生まれる土壌が生まれると思うからです。また、同様の心理的効果は教員の仕事の仕方にも良い波及効果を生むと思います。

——教室内にYogiboを設置してから、生徒たちはどのような様子でしたか?

黒岩:Yogiboを設置したのは5月からだったので、生徒同士の関係構築につながったらいいなと思い、中学1年生と高校1年生の教室に置くことにしました。実際に置いてみると、中学1年生のあるクラスではYogiboの上に生徒たちが重なり合って、自分たちのことを「ミルフィーユ」と言っていました(笑)それくらい仲良くなっていましたね。休み時間にリラックスできる環境があるからか、「Yogiboがあれば9時間授業でも大丈夫!」という声もありました。

高野:私が担任している高校1年生のクラスでは、「ここで漫画読むの最高!」と言いながら、放課後にYogiboに寝っ転がって漫画を読んでいる生徒がいました。Yogiboに独自の呼び名をつけている生徒もいましたね(笑)

あとは、実は以前、総合的な探究の時間の中で「学校が楽しくなるにはどうしたらいいのか?」をみんなで考えたことがありました。その中で「Yogiboを置く」という意見が出ていたんです。それもあって、Yogiboが来ることをずっと楽しみにしていた生徒が多かったですね。

話し合いを重ね、学校での居心地を考えていきたい

—— Yogiboを置くことの難しさを感じる場面はありましたか?

黒岩:衛生面を気にする生徒が多かったのは意外でしたね。私は気にならないのですが、中にはYogiboを床に置くことへの抵抗感がある生徒もいるようです。

高野:Yogiboの下にレジャーシートを敷いてみましたが、あまり意味がなかったですね。ずれてしまいますし、ほこりもついてしまっていました。置く場所には工夫が必要かもしれません。あとは、割と同じ生徒がYogiboに座る傾向がありましたね。「他にも座りたい人がいると思うよ」とは言ったのですが、あまり変わらず…。そこはやはりクラスの雰囲気や人間関係が影響するかなと思います。

黒岩:今回はYogiboの設置が各クラス3日間だけだったので、特に譲り合うのが難しかったかもしれませんね。中学1年生では「常連さんだけが座ってるんじゃない?」と伝えたら、「今日からご新規キャンペーンやります!ご新規さん座ってください!」と周りの子に声をかけている生徒がいました(笑)

—— 最後に、学校の居心地についての考えを聞かせてください。

高野:教室には座っていい場所が基本的に自分の席しかありませんよね。「ちょっと貸して」と言って友達の席を借りることはあるけど、自由に座れる場所はほとんどありません。それぞれの机や椅子以外にも、フリースペースのような空間で好きなように過ごせる場所があるといいなと思っています。

黒岩:Yogiboを授業中に使うことに関しては、教員によってさまざまな考え方があると思っています。積極的に授業の中で使う先生もいれば、休み時間の使用に留めておいた方がいいと考える先生もいます。なので、教員や生徒でYogiboの使い方や居心地について話し合っていくことは、授業や学校についての価値観をアップデートするいいチャンスではないかなと思っています。

——黒岩さん、高野さん、ありがとうございました。


Yogiboを使用した生徒の声

北星学園女子中学高等学校では、中学1年生と高校1年生の各教室に3日間ずつYogiboを設置しました。Yogiboを使用した生徒向けのアンケート結果をご紹介します。

Q1:教室にYogiboが置かれていた3日間のうちに、何回程度Yogiboを使用しましたか?

多くの生徒は、3日間のうちに少なくとも1回はYogiboを使用したようです。最も回答数が多かったのは、1〜3回の使用で41%。一方で、11回以上使用した生徒は全体の26%にのぼり、回答者によって使用頻度にばらつきがあることがわかります。

Q2:Yogiboの効果について、各項目についてどの程度同意しますか?

すべての項目において、7割以上の人が肯定的な回答をしました。「とてもそう思う」「そう思う」と回答した人が多かったのは、「ワクワクする・楽しい(92%)」「リラックスできる・落ち着く(91%)」でした。

以下は、使用回数が0〜6回の人と7回以上の人に分けたグラフです。使用頻度が少ない人よりも多い人の方がすべての項目において「とてもそう思う」と答えた人の割合が高く、使用頻度と各項目の評価に相関があることがわかります。

Q3:Yogiboを教室に置くことについて、あなたの意見を教えてください。

10分休憩中にYogiboに早くダイブしたいので、授業準備を早く済ませることができました。これからもおいてほしいです!【中学1年生】

Yogiboがあったら、リラックスできるし休み時間にみんなで座りながら話したりしたら、あまりしゃべらなかった人とも喋れてみんな仲良くなれるから、ずっと教室に置いてほしいと思った。【中学1年生】

疲れがたまっているときにリラックスでき、次の授業に集中できることがいいと思いました。【中学1年生】

授業終わりにリラックスできたり、休憩できるのでYogiboが教室にあってよかったと思いました。でも、独占している人がいたので今後置くなら、2つくらいあると教室の全員が使えるのかな?と思いました。【中学1年生】

疲れた授業の後の休養スペースとなり、次の授業にも集中することが出来ました!!【高校1年生】

どうしても占領する人が出てくるので譲り合いの心は大切だが、気持ちよさそうにみんなで寝っ転がっているのを見るのは好き。もちろん座るのも、家に帰りたくなくなるほど好き。【高校1年生】

夏場はちょっと汗が気になるのでどうにかしてほしいですが、学校に行くモチベーションになってたり、友達と話す交流になってたのでとてもいいと思いました。【高校1年生】

置いてあると確かに授業とは違う自由さがあってrelaxはすごくできた。けれど欠点としては色んな人が使っているので不清潔さが出てきてしまうと思う。もしこれからも置くなら洗ったり、シュッシュなど匂いものをかけた方がいいと思う。【高校1年生】

まとめ

多くの生徒にとって、Yogiboが置いてあることでリラックスできたり、友達との距離を縮めることに繋がったりしていることがアンケートを通してわかりました。一方で、実証実験では3日間のみの設置だったため、使える頻度に限りがあり「一部の人のみが使っている」という声もありました。その点においては、「譲り合いが大事」「ルールを決める必要がある」「Yogiboが2つあるといい」など、お互いが気持ちよくYogiboを使っていくためのアイデアも集まりました。

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#学校の居心地pj

本メディア「メガホン」を運営するNPO法人School Voice Project は2023年、子どもも大人も居心地のよい学校づくりを進めるため、株式会社Yogiboの協賛を受け、現場と連携した試行実験や情報発信を行う「学校の居心地プロジェクト」を展開します。(詳細はこちら)

欧米などで学校を見に行くと、教室にリラックスできるためのファブリックがあるのはよく見る光景です。

「学校は子どもたちにとって快適で居心地のよい空間であるべき」
「そんな環境の中でこそ、よりよく学ぶことができる」
そんなふうに考えられているようです。

日本の学校が、子どもたちにとってより幸せで多様性を受けとめられる場所になるためには、人間関係や学習方法ももちろんですが、物的・空間的な環境をどう組み替えていくか、という視点も大切。

このプロジェクトの実施によって、学校における「物的・空間的環境」「居心地」について考える機会を、検証校をはじめとする全国の学校現場に届けることを目指します。

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メガホン編集部

NPO法人School Voice Project のメンバーが、プロやアマチュアのライターの方の力を借りながら、学校をもっとよくするためのさまざまな情報をお届けしていきます。 目指しているのは、「教職員が共感でき、元気になれるメディア」「学校の外の人が学校を応援したくなるメディア」です。

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