校長も教職員も生徒もファシリテーターに。“全員主体”でしあわせな学校をつくる
学校ぐるみで取り組んだ穴吹中学校のお話
「生徒も教職員も、主体的・対話的に学び合えることを目指して、ホワイトボード・ミーティング®️を取り入れています」そう話すのは、現在校長として4年目を迎える徳島県美馬市立穴吹中学校の濱田雅子さん。養護教諭の林加奈恵さんとともに、学校での取り組みが紹介されました。
ファシリテーションで組織の基礎体力づくり
濱田:4月の学校開きでは、ミニホワイトボードにそれぞれの教職員が自分のことを書き、時間をかけて自己紹介をします。全体での自己紹介が終わった後は、担当する学年ごとに分かれて、どんな学年をつくっていきたいかを話し合います。このときも、みんなでホワイトボードを囲み、可視化しながら話し合いを進めていきます。新年度に時間をかけてこれらのことをやると、それぞれが考えていることが分かり、職員室の雰囲気がよくなるんです。
また、毎月1回、定例進捗会議をやっています。目的は、組織の基礎体力づくりとファシリテーションの練習。全員がファシリテータ役を体験し、オープンクエスチョンと相槌だけで相手の話を聞きます。決して否定したり忠告したりはしません。「今月どうだった?」「これからどうしたい?」などの問いに対して、相手が話したいことを丁寧に聞いて、ホワイトボードに書いていくことを目指します。定例進捗会議のあとの職員室は、なんとなく穏やかな雰囲気に。教職員間のあたたかいコミュニケーションが生まれるので、自分だけで抱え込んだり疲弊することが起こりづらくなったと思います。
授業研究も、ホワイトボード・ミーティング®️で進めています。短時間で効率的かつ効果的に情報共有ができるので、たった20分間で全員が主体的に参加することができました。それぞれから出た意見は、すべてホワイトボードに書いて可視化されているので、軸がぶれず、次に授業でやりたいことも明確になります。年齢に関係なく公平に話し合えるのもよさだと思います。
続いて、養護教諭の林加奈恵さんから、保健室での実践が紹介されました。
保健室でもホワイトボードをフル活用
林:保健室には、日々心身の不調を訴えて来室する生徒がいます。そんなときに、私はホワイトボード・ミーティング®️の手法を使っています。生徒が来室したらファシリテーターの服を着てホワイトボードを持ち、生徒が話す内容をオープンクエスチョンで聞きながら書き留めていきます。時間がかかることもありますが、自分が困っていることが可視化されることで気持ちの整理ができ、生徒自身で悩みの解決に向かうことができます。また、生徒は否定されずに話を聞いてもらえるので、安心感が得られるようです。記録が残るので、繰り返し来室する生徒とは、一緒に過去の振り返りができるのも良いところだと思います。
教職員に共有する場合は、可視化されているので何度も口頭で伝える必要はないですし、情報の抜け漏れもありません。ホワイトボードの記録は、写真を撮ってデータでも保存しています。保護者の方の許可を得て、必要に応じてスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー、病院などの関係機関との情報共有にも利用しています。この方法で聞かれて「よかった」と思った生徒は、自分がファシリテーター役となって友達の悩みを聞くこともあるようです。
徳島で養護教諭がホワイトボード・ミーティング®️を活用している事例はまだあまり聞かないので、異動してしまうと継続が難しいところは課題だなと思っています。次のチャレンジとしては、もっと気軽に保健室に来られるような環境づくりをしつつ、他校の養護教諭にもホワイトボード・ミーティング®️を広げていくための取り組みをしたいと思っています。
最後に、濱田さんから授業での取り組みを紹介していただきました。
生徒たちもファシリテーションを実践!
授業の中で社会課題について話し合ったり、講演会や学期ごとに振り返りをしたりするときに、ホワイトボード・ミーティング®️を使います。ホワイトボード・ミーティング®️の価値は、深く考える、否定されない、承認される、安心感が得られる、発表しやすい、公平に意見が言える、の5つだと感じています。生徒たちは自分たちが当事者となって話し合えていますし、思考を巡らせてエピソードを語る力もついてきました。また、どうしても固定しがちだった人間関係も、対話を通してさまざまな子と交流するようになったと感じます。
生徒会活動では、文化祭の企画についての話し合いが上手く進まず、生徒たちが行き詰まってしまうことがありました。そこで、ちょんせいこさんに来校していただいて、ホワイトボード・ミーティング®️のファシリテートをしてもらいました。たった3時間ほどの話し合いで、たくさんのアイデアが出たことには驚きました。
この体験で、生徒会長が「生徒心得の見直しも、ホワイトボード・ミーティング®️を使えば上手くいく!」とひらめいたようです。後日、事前に各自で生徒心得について自分の意見をまとめてきてもらい、当日にそれを持ち寄って4人グループになってフリートーク。その後、ホワイトボード・ミーティング®️をやりました。すると、たった2時間で最後のプレゼンまで進むことができました。
この経験を振り返って、生徒会長は「私たちの言葉で社会を変えられることを、みんなに知ってもらいたい」と話してくれました。この言葉こそが、私たちが目指してきたエンパワメントな姿なんだと思っています。ファシリテーションがあると、安心安全な環境で、全員が目的に向かって主体的に学べるようになります。私たち大人がこのスキルを身につけることで、子どもたちの将来にもつなげていきたいと思っています。
本セミナーでは、授業を担当する教員ではなく、校長や事務職員、養護教諭の立場から、学校にファシリテーションを取り入れることの価値や事例の紹介がありました。
学校でファシリテーションが活きる場面は、授業だけにとどまらず、教職員間での会議や学校行事での話し合いなど多岐にわたります。教職員一人ひとりの能力が活きるような会議や話し合いがなされていくことが、ゆくゆくは児童生徒の主体的な学びにつながることを感じられる時間となりました。
同じキャンペーンの記事
学校にファシリテーションを!
最新記事やイベント情報が届くメールニュースに登録してみませんか?
-
メガホン編集部