校長も教職員も生徒もファシリテーターに。“全員主体”でしあわせな学校をつくる
学校事務職員・上部充敬さんのお話
続いて、横浜市立日枝小学校で事務職員をしながら総括ファシリテーターを務める上部充敬さんにお話いただきました。日枝小学校は、住田さんが2021年度まで校長を務めていた学校でもあります。「互いの“大切”を大切にできる」そんな対話を目指したいと話す上部さんは、これまでの実践過程を5段階に分けてお話くださいました。
1. とにかく空間づくり期
上部:以前から、学校現場ではどうしても「何をどうやるか」という手段の話が中心になってしまうなと感じていました。手段の話をする前に、それぞれの根底にある思いを共有し合えるような対話ができるといいなと思い、職員室の空間づくりをしていた時期がありました。
当時の僕は、「職員室の環境を整えれば、教職員同士の対話は自然に生まれる」と思っていたんです。ですが、実際は違いました。職員室に置いてある書類や段ボールなどを片付けて教職員同士が話しやすい空間をつくってみたのですが、それだけでは対話は生まれないと気づいたんです。そんなときに出会ったのが、ファシリテーションでした。
2. とにかくファシリテート期
学校のさまざまな場面で教職員の対話を促せるように、僕自身がファシリテーションについて学び、実践しました。例えば、学校教育目標について語る場ではお互いの価値観を知り合えるように場づくりをしたり、予算委員会ではよりよい予算の使い道を考えるために活発な議論ができるようにしたりしました。また、新たに「視察ファシリテータープロジェクト」を立ち上げ、学校を視察しに来た人と本校の教職員との間で対話が盛り上がるような工夫もしました。
そんな取り組みをしている中で、当時の校長である住田さんから提案があり、校務分掌の1つとして「ファシリテーター部」を設置することになりました。ファシリテーター部の主な仕事は、校内に設置されている「生活総合」「ICT活用授業づくり」「SDGs多文化共生特別支援」の3つの研究会の各主任がうまく連携できるように対話を促していくことです。部員は僕1人。少し寂しかったのですが(笑)、とにかくがむしゃらにやりました。
3. 認定講師への挑戦期
校内のいろんな場をファシリテートさせてもらっていたものの、成果が積み上がっていない感覚がありました。そんな行き詰まりから、ファシリテーションについて体系的に学ぶ必要があると感じ、ホワイトボード・ミーティング®️の認定講師の資格を取ることにしました。その過程で、「自分だけがファシリテーターをやっていてもだめなんだ」とやっと気づいたんです。教職員同士が、お互いにファシリテートし合えることが大切だったんです。
4. 見せる伝える期
それからは、ファシリテーションの技術を学校の中に広げていきました。例えば、学校内でお互いのことを知るための研修「自他理解ワーク」では、全体のファシリテーションを担当させてもらい、その中でみんなにファシリテーターの役割を体験してもらいました。学んだファシリテーションの手法を授業で実践してくれた先生もいて、「普段はあまり話さない子が話してくれたんだよ」と教えてくれることも。そんな話を聞くと僕もやる気が出てきてしまって(笑)忙しい教職員でも30秒くらいで読めるような「ファシリテーター通信」を発行したりと、少しずつファシリテーションについて知ってもらえるような工夫をしました。
5. じわじわ期
今年度に入ってからは、ファシリテーター部の部員が1人から6人に増えました。なんと6倍です(笑)今は、僕ばかりがファシリテートするのではなく、部員の皆さんにも任せるようにしています。みんながファシリテーションの経験を積むことで、お互いに課題が見えてきたり、振り返りやアイデアの共有ができるようになりました。
また、本校には副校長、用務員、教員、事務職員で成り立っている校務分掌、「営繕(えいぜん)係」があり、そこでもホワイトボード・ミーティング®︎を使って会議を進めています。会議の最後にはアイデアを出し合い、実際に行動に移していきます。次の会議ではその行動を振り返って、また次に繋げていく。学校でファシリテーションを実践し始めたばかりの頃に感じていた「成果が積み重なっていない感覚」が、今ではなくなりました。
楽しみ、任せ、積み重ねる
今後は、学校全体にファシリテーションを大きく広められたらいいなと思っています。大切にしたいことは、まず自分自身が楽しむこと。そして、ファシリテーター部の仲間を中心にファシリテートを任せて、その体験を楽しんでもらうこと。実践の中での小さな改善をコツコツ積み重ねていって、対話のよさをみんなで体感しながら、学校をよりよくしていきたいと思っています。
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メガホン編集部