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【教職員アンケート結果】 “採用後10年以内に特別支援教育を複数年経験”の方針。あなたは賛成?反対?

  • メガホン編集部

特別支援教育の教員養成について議論している文科省の検討会議は3月31日、全ての新規採用教員がおおむね 10 年目までの期間内に、特別支援学級や特別支援学校の教師を複数年経験することとなる状態を目指す、との報告書を公表しました。

文科省は報告書に基づき、全国の教育委員会に人事制度の改善などを促していくことになります。この方向性について、教職員の皆さんがどう考えるかをお聞きしました。

アンケートの概要

School Voice Project では、WEBアンケートサイト「フキダシ」に登録する教職員の方を対象に、“採用後10年以内に特別支援教育を複数年経験”の方針についてアンケートを取りました。

■対象:全国の小〜高校年齢の児童生徒が通う一条校に勤務する教職員
■実施期間:2022年4月9日(土)〜2022年4月24日(日)
■実施方法:インターネット調査
■回答数:44件

アンケート結果

設問1 今回の方針、賛成? 反対?

Q. “採用後10年以内に特別支援教育を複数年経験”方針について、あなたはどう考えますか?

小学校の教職員は「賛成」と答えた方の割合が高く、意見が賛否に大きく分かれました。中学校では「どちらかというと賛成」もしくは「どちらかというと反対」と答えた方が多く、明確に賛成や反対の意見を持っている人は少数であることがわかりました。高等学校や特別支援学校では、「どちらかというと反対」「反対」と回答した方が6割を超えました。

設問1-2 賛成・反対の理由は?

Q. 上記を選んだ理由をお書きください。

方針に肯定的な内容の主な意見

< 特別支援の専門性は、さまざまな場面で役立つ >

特別支援教育の知識や実務の経験が、今後の学級経営やキャリア形成において、非常に役に立つと思うから。【小学校・教員】

特別支援教育の学びは、特別支援という枠組みにこだわることなく、全ての職員が学ぶべきだと思います。教員養成課程でその部分が変わってきましたが、現在勤務する教員にその学びがないことで、苦しい思いをする子どもたちが多数いるように感じます。教師の側にも苦しさ辛さがあることも多いと感じています。【小学校・教員】

特別支援教育を通して、教育の原点に触れることで感じ、気付き、学べることがあります。私は初任2年目に特別支援を希望して、担任をしました。そこで、児童の実態を把握し、それに伴った教材研究をする大切さを体感しました。10年以内に限らず全ての教員が経験するべきだと思います。交流学級担任に特別支援教育の経験があるとないでは、交流学級の子どもたちとの関わりがかわります。【小学校・教員】

特別支援教育を学んで、実際に支援学級の担任をした経験がある立場から見て賛成です。年々子どもたちの困りが多様化している中で、特別支援教育の視点を持たずに学級経営することは難しくなっています。また支援学級との連携も、支援学級担任の経験があるのと無いのとでは、配慮の度合いが全然違ってきます。特別支援教育には、教育の本質を考えるチャンスがたくさんあると思うので、ぜひ若い先生たちには経験してほしいです。【小学校・教員】

通常学級においても、特別支援が必要な生徒が多数いる。教員の視野を拡げるため、差別的な教員を減らすためにも有効だと思う。【中学校・教員】

< 人員配置に対するイメージ回復に繋がる >

小学校なので、通常級の担任が一番偉いと考える人が多いように思う。そうではなく、どの教職員も平等で、それぞれの苦労や大変さがあることを知ってほしいためにも賛成する。【小学校・教員】

教員全員が経験するもの、と規定することで、通常学級担当だった教員が特別支援学級担当に回されることへのネガティブなイメージが変わるのではと期待している。【小学校・教員】

特別支援学級の教員は軽視されがちな上、通常学級の担任に不向きな教員が配置されている傾向が少なからずあり、児童にとっても教員にとっても望ましくない人事が行われている実情を回避できると考えたからである。【小学校・教員】

「学級担任が花形」みたいな風潮を感じるときがあります。学級担任は花形、支援担や養護教諭は裏方と言ったようなイメージを持たれている方も多いのではないでしょうか。学校体制的に可能であれば、そもそも「まず学級担任からスタート」ではなく、「子ども一人ひとりペースやできるに寄り添う」「保護者にていねいに寄り添う」「学校全体を見渡せるポジション」ができるポジションからスタートしてもいいんじゃないかと思う。【小学校・養護教諭/養護助教諭】

方針に否定的な内容の主な意見

< 児童生徒や保護者に負荷がかかる >

特別支援教育の専門性を軽視していると思います。特別支援教育の理解のない教員が支援学校や支援学級にあふれることが、支援対象の子どもたちにどれだけマイナスか考えるべきだと思います。【中学校・教員】

特別支援学級、特別支援学校の両方で勤務経験があります。特別支援の知識やノウハウが通常の学級に活かせることは分かりますが、子どもたちのことは全く考えていないと思います。教員のために利用されているように感じます。特別支援には、向き不向きがあるので、全員というのは大反対です。【小学校・教員】

特別支援教育は専門性も高く、対応も一人一人違うと思います。特別支援学級も増加し、人手が必要な時に、ただ複数年経験、となると子どもに対して不適切な対応が起こるのではないかと危惧します。【中学校・教員】

ある程度、通常学級で経験を積んでからでないとより丁寧な支援が必要な支援学級を受け持つのは危険だと思う。生徒の対応はもちろんだが保護者との対応もきめ細かさが要求される。【中学校・教員】

特別支援の児童や保護者にとっても、コロコロと担任が変わることが果たしていいことなのか分かりません。支援学級や支援学校は、「教員に経験を積ませる場所」では決してありません。担任の意識も「本意ではないのに…」「あと○年の我慢」みたいになっては最悪です。【小学校・教員】

<受け入れ先の特別支援学校への負担が大きい>

この制度のせいで特別支援学校の教員の入れ替わりが激しくなったり、若年層ばかりになり、経験豊富な教員が少なくなってしまったりする可能性には気をつけないといけないと思う。【中学校・教員】

単純に「経験してこい」で終わりでは、現場が手一杯になるので、サポートしたり相談できるコーディネーターも現場に確保してほしい。【高等学校・教員】

「採用後10年以内に複数年経験」を定めてしまうことで、ただでさえ人手の足りていない教育現場がさらに足りない事態になるのではないかと、強い懸念を抱きます。また逆に、教員を受け入れる特別支援教育機関側は、特別支援教育未経験の教員の受け入れ数が増え、それが永続していくわけですが、業務に支障を来さないでしょうか。【高等学校・教員】

<配置される教員本人のモチベーションに影響する>

若い先生の中には、身辺自立のできていない子どもの排泄処理や、細かい配慮を求める保護者対応などで心が折れてしまう人もいるかもしれないです。【小学校・教員】

特別支援の需要が高まっているのが分かっているなら、小学校だけではなく、小学校兼特別支援という形で複合していかないとやりたくない先生が出てくる。また、やりたくないという先生に特別支援教育を経験させるのは酷だと思う。【高等学校・教員】

また教員志望者が減るのではないかと思います。というのも、私が教員になったきっかけは教科指導をしたい、学問をつづけたかったからです。今だからこそ特別支援教育を複数年経験することは教師としての視野が広がりインクルーシブ教育の実践にもつながると思いますが、それを義務にするのはどうかなぁと思います。【高等学校・教員】

希望しない職種につくのは、当人にも勤務校にもプラスには働かない。仕事には本人のモチベーションが大切であり、希望しない勤務先での仕事は、一層教員確保が難しくなる。【特別支援学校・教員】

< 特別支援の視点は、その他の方法で学ぶべき >

教師になる人が育つ環境をインクルーシブにするほうが、ずっと自然で効果的だと思います。【特別支援学校・教員】

まとめ

賛成する理由としては、教員が特別支援教育について学ぶことで、多くの児童生徒との関わりに役立つという意見が多くあがっていました。それによって苦しい思いをする児童生徒が減ることや、教員自身の苦しさを減らすことにも繋がる、という考えもあるようです。

反対する理由としては、児童生徒や保護者への影響が最も多くあがっていました。専門性を身につけていない教員が関わることや、短い期間で担当教員が変わることへの懸念などがあるようです。次いで多かったのが、教員や学校への負担。現状でも人員が不足している中、研修を取り入れることでさらに現場に負荷がかかることを心配する声がありました。

今回のアンケートでは、特に小学校教員において賛成と反対の意見が大きく分かれていました。その中心となる理由は、「さまざまな児童のために、特別支援の専門性も身につけるべき(賛成意見)」「専門性がない教員が研修として担当者になると、児童への負荷がかかる(反対意見)」の2点。賛成、反対ともに「児童にとって質の高い教育を提供したい」という思いが強く感じられる意見が多かったのが特徴的でした。

特別支援教育へのニーズは年々高まっており、専門性を身につけた教員が不足している現状もあります。児童生徒が安心して教育が受けられる学校であるために、どのような手立てが必要なのでしょうか。



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NPO法人School Voice Project のメンバーが、プロやアマチュアのライターの方の力を借りながら、学校をもっとよくするためのさまざまな情報をお届けしていきます。 目指しているのは、「教職員が共感でき、元気になれるメディア」「学校の外の人が学校を応援したくなるメディア」です。

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