【教職員アンケート結果】勤務開始時刻前なのに…という仕事、ありませんか?(2024年ver.)
規則上の勤務開始時刻、守られていますか?
「勤務開始時刻前に朝の打ち合わせがある」
「委員会や部活の指導がある」
中には「勤務開始時刻は朝8:00。…だけど、児童生徒の登校完了時刻は7:50」といった学校もあるとか。そこで今回は“半強制的な早朝残業”の実態について、全国の小中学校・高等学校の教職員から声を集めました。
※ このアンケートは2022年に引き続き2回目の実施となります。前回のアンケート結果は下記の記事をご参照ください。
アンケートの概要
■対象 :全国の小〜高校年齢の児童生徒が通う一条校に勤務する教職員
■実施期間:2024年10月4日(金)〜2024年10月28日(月)
■実施方法:インターネット調査(実施時の設問はこちら )
■回答数 :70件
アンケート結果
設問1 勤務開始時刻前、どんな業務がある?
Q1. 勤務校において、勤務開始時刻(学校や自治体で定められた時刻)前に組織として行っている日常的な業務はありますか。(複数選択可)
※「組織として行っている業務」には、いわゆる”暗黙の了解”を含みます。
全体の84%の人が「勤務開始前の日常的な業務がある」と回答しました。全ての校種で「登校指導」と答えた人が最も多く、全体では63%に上りました。
また、小学校の53%、中学校では44%の人が「校内の児童生徒指導・支援」と回答しました。中学校では部活動・委員会などの「児童生徒の課外活動指導・支援」に時間を割いていると答えた教職員が44%となり、他の校種より割合が高くなりました。「その他」にはプールの当番や電話対応、グラウンドのライン引きなどを行っているという記述回答が見られました。
前回調査との比較では、新型コロナウイルスの第5類への移行を反映してか「児童生徒の健康観察」が36%から13%へと大幅に下落しており、「なし」と答えた割合も5%から16%に上昇しています。
「その他」の主な内容
朝の日直業務、プールの塩素チェックや機械による塩素注入【小学校・教員】
児童が登校している。欠席連絡対応。スクールバス対応。【小学校・教員】
運動場のライン引き、プールの水質管理など【小学校・教員】
生徒指導の一環で登校見守り立番【中学校・教員】
朝読書【中学校・教員】
時間割調整【中学校/高等学校・教員】
図書館開館作業【中等教育学校・教員】
欠席連絡などの電話対応【高等学校・教員】
「その他」の内容では、小学校でプール関連の業務が多く挙げられたほか、欠席連絡等の電話対応についての業務が校種問わず挙げられていました。
設問2 勤務開始時刻と登校開始・完了時刻の関係は?
Q2. 勤務校では、通常、教職員の勤務開始時刻と、児童生徒の登校開始時刻、登校完了時刻はどのような順に設定されていますか。
*1 登校開始時刻…児童生徒が登校してよいとされる時刻(門が開く時刻など)
*2 登校完了時刻…児童生徒がその時間までに登校しなければならない時刻
「登校開始時刻が勤務開始時刻前に設定されている」と答えた教職員は合計で85%に上りました。登校開始から登校完了までの間に勤務開始時間が設定されている人が全体の51%となり、校種別では中学校が67%と最も多くなりました。勤務時間開始以降に児童生徒が登校し始めると答えた人は1割程度でした。
回答者の地域別にみると、「登校完了時刻が勤務開始時刻前に設定されている」と答えた回答者は西日本(近畿・中国・四国・九州・沖縄)に多く、それ以外の地域の2倍の割合となりました。
これらの結果は前回のアンケート結果とほぼ変わらず、登校開始・登校完了・勤務開始の時刻には2年間での変化があまりなかったことが示唆されました。
設問3 どんな問題が起こってる?
Q3. 設問2で答えた業務に関して、起こっている問題を選択してください。
全体の79%が「事実上の勤務開始時刻が早くなっている」と答え、校種別で見ると小学校の86%、中学校の83%に上りました。また「特定の教職員に負担が集中している」と回答したのは全体では44%で、中学校では61%となり他の校種と比べて20%以上高くなりました。
また、回答には年代の差も見られ、20~40代の87%が「事実上の勤務開始時刻が早くなっている」と答えた一方、50~60代では64%と20%以上の開きがありました。
設問3-2 起こっている問題の詳細は?
Q3-2. 起こっている問題の詳細を教えてください。
事実上の勤務開始時刻が早くなっている
本来なら勤務開始→登校開始→登校完了の流れが正しいはずだが、そうすると必要な授業・活動時間や休憩時間(実質上ゼロだとしても)が確保できない。
部活動の朝練習可能期間は7:00には顧問は出勤する。
毎日6:30には3~5人の職員が出勤している。
体育教師は勤務開始時間前にグラウンドに白線を引かなければならない。
問題解決のためには、業務量削減、授業時間削減をするしかない。
無理です。【中学校・教員】
本校は8:30が勤務開始時間なのだが、1時間目の開始時刻が8:30。予鈴は8:25に鳴っている。必然的に勤務開始時刻よりも生徒は早くに登校するし、1時間目の授業がある場合、勤務開始時刻よりも早く到着する必要がある。
私たち教職員もこれが本来おかしいことに気付いて来なかったし、声を上げてこなかったことに非常に最近違和感を感じるようになった。【高等学校・教員】
あいさつ運動を子どもだけでさせることができないため、付き添いが必要になっている。
教室を空けないために朝の会を始める前に職員室で欠席児童の確認を行う必要が生まれている。
勤務開始前であるが、子どもがいるために生徒指導や怪我の処置を対応することがある。【小学校/義務教育学校・教員】
遅刻を一定回数すると早朝登校5日間の生徒指導があり、毎朝30分前に生徒を登校させるので、私たち生徒指導部も勤務時間より30分以上前からの仕事になるのが大きな負担である。またそういう指導を受ける生徒が5日クリアするのは大変難しく、結局2週間ほど勤務時間前の業務が続く。管理職は勤務時間の変更には応じてくれるが、30分早く帰れる日などほぼ皆無なので、タダ働き状態が通常化している。せっかく30分早く出勤して生徒の指導で、授業準備などができる訳でもないので辛い。【高等学校・教員】
特定の教職員に負担が集中している
勤務開始時刻前に児童が登校してくるため、色々な対応が必要となるが、それでも勤務時刻にならないと来られない人もいるため、結局来れる人に負担と責任が偏る。【小学校・教員】
児童の登校開始時刻と教員の勤務開始時刻が30分ずれており、そのギャップを減らそうとしたこともあった。しかし子育て中や出勤に時間のかかる職員がいるため勤務開始時刻を早くすることが難しく、登校時刻を遅らせるのは保護者の反対にあいそうで話を進められない、という状態になっている。結果的には、早く来ている職員が児童の対応をしていることが多い。他の職員に無理強いできないので、管理職の先生が早く来ざるを得なくなっている様子もある。【小学校・教員】
自分の勤める学校は、勤務時間開始が始業時間と同じ。欠席連絡なども含めた電話も勤務時間の30分前には繋がるようになっていたり、登校してきた児童の対応や登校班含むトラブルの対応も勤務時間前から入ったりすることが当たり前になっている。プール当番も勤務時間前。実質、勤務している状態(対応が必要とされること)が当たり前になっていることに疑問がある。子育て世代の同僚はお子さんの送迎の関係で早めに出勤することに無理があるし、一部の人に負担がかかりやすい環境でもあると思う。【小学校・教員】
登校指導は主に生活指導部が行っているので、生活指導部に多大な負担が偏っている。
生活指導以外の教員も関わっているが任意なので、登校指導をしない人は全くしていない。【高等学校・教員】
児童生徒の都合との兼ね合いが難しい
子どもの登校時間を遅くしたい(勤務開始時間のあとに)という意見を出しても、保護者が仕事に出ないといけないのでこれ以上遅くできないという話になってしまいます。(下校時間も) 家庭が大変なのはわかります。でもその責任を負うのは福祉行政ではないでしょうか。教育行政はあくまで教育に責任を負うために、教師が授業に専念できる勤務環境を保障してほしいです。【小学校・教員】
以前勤めた学校では、開門の前に教室にいた児童が他の子の物を盗るという事案が起こった。できるだけ開門を外で待たせる方向転換になった。【小学校・教員】
開門を勤務開始時刻と同時にしているので、門前で待機する児童が多くなり、近隣に迷惑がかかっています。【小学校・教員】
その他
本校は勤務シフトという制度があるので、始業は規則上8:30ですが、これを15分単位で繰り上げることができるため、8:30のHRのための準備等の早出も勤務内に収めることができています。【高等学校・教員】
本校朝の時間 7:50 登校開始 → 8:10 勤務開始 → 8:15 登校完了
日直は勤務時間前から業務が始まる。教頭は、日直の補助他、登校時の緊急対応、教職員の出欠席に対する業務調整のために、毎朝、7:10頃から勤務している。
登校開始を8:30にするには、行政の広報活動が欠かせないが、市費対応職員に対する対応と比較して、県費負担教職員への対応は、甘くなってしまう。勤務開始時刻を、8:10 から 7:40 に変えていきたいと考えている。【小学校・校長】
司書教諭をしています。図書館は、8:05から貸出を始めていますが、勤務時間前であるにもかかわらず、覗いたり、場合によっては指導することもあります。また、朝はスムーズに貸出返却ができるよう、児童の登校前にパソコンをたちあげるなどの細かい作業も行っていますが、わかってくれる人は、学校司書の方ぐらいです。【小学校・教員】
早く来なければいけないときに、その分早く帰らせてほしいと伝えたら、4%上乗せの分だと思うように!と、教頭に言われました。帰っていい!と言われる校長もいました。何も言わない人がほとんどです。教師の善意に甘えています。【小学校・教員】
時間割調整は急な欠勤が出た場合、時間割変更や自習監督が必要になる。出勤している教員がその任務に当たることになるが、時間割係が調整して担当者を決める。なるべく自習ではなく授業をした方が良いという共通理解があり、急に授業ができる人を探すのが難しい。また授業をすると少し手当がつくが、監督だとつかないということもあり、自習監督を頼みにくい場合もある。【中学校/高等学校・教員】
登校時刻と勤務開始時刻を合わせることは、今の学校現場においては困難です。若い教師の中には法律を傘にして勤務時間前に仕事をすることに反論する人も出ている。しかしそれでは学校は回らない。【小学校・教員】
まとめ
「勤務開始時刻前の日常的な業務がある」と答えた人は全体の84%に上りました。その内容については「登校指導」と答えた人が63%と最も多く、次いで「校内の児童生徒指導・支援」「部活動・委員会など、児童生徒の課外活動指導・支援」の順でした。
また、教職員の勤務開始時刻と児童生徒の登校時刻の設定についての質問では「登校開始時刻が勤務開始時刻前に設定されている」と答えた教職員が合計で85%となりました。
勤務開始時間と児童・生徒の登校時間が合わないことで起こる問題について、79%が「事実上の勤務開始時刻が早くなっている」と答えました。「本校は8:30が勤務開始時間なのだが、1時間目の開始時刻が8:30。予鈴は8:25に鳴っている。必然的に勤務開始時刻よりも生徒は早くに登校するし、1時間目の授業がある場合、勤務開始時刻よりも早く到着する必要がある。」といった回答もありました。
「特定の教職員に負担が集中している」と回答したのは44%でした。「開門を勤務開始時刻と同時にしているので、門前で待機する児童が多くなり、近隣に迷惑がかかっています」との回答もあり、児童生徒の都合と教職員の正規の勤務時間との兼ね合いが難しいことを示すアンケート内容となりました。
▼ 自由記述の回答一覧は、以下よりダウンロードしてご覧ください。 ▼
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メガホン編集部