【教職員アンケート結果】授業の持ちコマ数について
日本の教員の働き方の改善に向けた論点の1つとなる「授業の持ちコマ数」。
授業の持ちコマ数とは、子どもたちが1週間に受ける授業の中で、1人の教員が担当する授業数のことです。例えば、1日6時間(コマ)×週5日であれば全部で30コマの授業があります。そのうち、20コマを担当することになっている場合は、10コマ分の空き時間ができるためその時間に会議を入れたり、授業準備をしたりすることができます。
空きコマが少なければ少ないほど、授業以外の業務時間が削られるため、勤務時間内に仕事を終えることが困難になります。
そのため、働き方の改善のための指標1つとして有効な数字と言えます。
しかし、単なるその「数」だけをみて教員それぞれの負担が図れるものではなさそうです。校種の違いや、学校ごとの違い、役職や立場の違いによって授業以外の仕事の負担も一様ではないことが想像できます。
今回のアンケートからは、持ちコマ数による負担感だけでなく、校種や学校の状況、教員個人の役職や立場で感じている負担感の傾向も見えてきました。
アンケートの概要
School Voice Project では、WEBアンケートサイト「フキダシ」に登録する教職員の方を対象に、授業の持ちコマ数についてアンケートを取りました。
■対象:全国の小〜高校年齢の児童生徒が通う全日制学校に勤務する教員
■実施期間:2021年11月13日(土)〜12月5日(日)
■実施方法:インターネット調査
■回答数:110件
アンケート結果
設問1 受け持っているコマ数は?
Q. あなたが今、週のうちに受け持っている授業のコマ数をご記入ください。
設問2 コマ数について、どう思う?
Q. あなたは今、受け持っているコマ数についてどう感じていますか?
設問2-2 その理由は?
Q. 上記の選択肢を選んだ理由をお聞かせください。
※全回答の中から抜粋して掲載しています。
小学校
「多くて負担に感じている」「どちらかというと多くて負担を感じている」を選択した方の主な意見
現在、5、6年の理科専科。メンバーは少し変わるがコーディネーター会議に3時間、定例の会議に2時間が加わる。その合間に教務担当として、日程調整をおこなうことが必要である。また理科実験の準備や片付け、授業準備に子どものワークシートなどを確認、テストの採点、教材発注もあるため多忙を極める。コーディネーターとしての役割がなかなか果たせず、厳しい。【専科教員・18コマ】
コマ数という表現が正しいかどうか…支援担だが、通常学級への入り込み、単元によっての取り出しが多数あって、実質空き時間なく子どもと関わっている。【一般的な教員・22コマ】
小学校通級指導教室です。国の基準では、13人ですが、福岡市は最大で15人になってます。実際昨年度一昨年度は、15人でした。15×2時間で、週30コマ授業をしているのと同じです。多い日は朝8時50分から16時50分まで、90分×4コマでした。終了後に記録を整理しようとしても、朝の事を思い出す事ができない程クタクタでした。【一般的な教員・24コマ】
<全体として授業数が多いという問題>
まず全体のコマ数の多さについては、どの教科のどの授業も大切なのに、十分な教材研究をする時間がないからその場しのぎのような授業をしてしまい、結果子どもの力を伸ばせないということがよくあります。その結果休み時間や放課後に個別指導したりする悪循環。教師一人あたりの授業コマ数を減らし、教材研究の時間を設定して質の向上を目指すべきだと思います。
<職場内でのコマ数バランスの問題>
例えば私の職場では学年が下がると空き時間を減らされる傾向にあります。3年生で言えば、教科数は上の学年とほぼ同じなのに、高学年には教科担任制を導入した上にさらに空き時間を多く設定したため、そのしわ寄せが他学年にきています。私は基本どの学年でも担任をするタイプなので、この配分はすごくおかしいと感じています。学年に関わらず教科の数だけ教材研究の時間は必要です。またどの学年でも子どもたちの問題は多岐にわたるし、その対応にも時間はかかります。職場内で「あっちはいいよね」のような不満が噴き出すこともしばしば。コマ数への不満は一年続き、働く上でのストレスにもなりやすいので、ことさら慎重に考えるべきです【一般的な教員・24コマ】
児童の下校が15時を過ぎ、そこから会議、急な保護者対応、電話対応、分掌、「教材研究」があまりできていないように思います。【一般的な教員・25コマ】
外国籍児童が増えて、必要な指導を行うためにはそれだけの時数が必要であるため。【主任/主事・25コマ】
勤務時間前に児童が登校し、児童が下校すると間も無く勤務時間が終わる。空きコマ無しでは勤務時間内に丸付けさえできない。毎日2時間は空きがほしい。【主任/主事・26コマ】
現在15クラス28時間担当している。空き時間は週2時間。事前準備も、授業後の確認テスト等も、17時以降でないと出来ず、部活動も担当していて、夜遅くまで+帰宅後+休日に対応しないと回らないため。【専科教員・28コマ】
・空きコマという時間が設定されておらず、休憩時間無しでずっと働いている。
・同じ職場なのに空きコマがある先生や、下の学年で時数が少ない先生は羨ましいなと思う。
・単学級のため、他のクラスの先生と助け合って授業準備をするなんてことができず、ほぼ全てを自分でやらなければいけない。
・全ての教科の指導をしなければならず、教材研究等の準備をする時間が勤務時間中に取れない。
・同じ授業をすることはないので、せっかく準備しても使い回すことができない。
・1ヶ月の在校時間を45時間までにしろと言われるため、平日の放課後はほぼ何もできない。
・平日に教材研究ができないため、休日も出勤することが状態化している。
・心配性で細かいため、きっちり準備をしておかないと不安になってしまうが、きっちり準備をがんばると疲れがたまってしまう。
・専科の先生(音楽)がいるが、担任も授業にT2で入っており、評価も担任がすることになっている。
・宿題や課題のチェックをするには、子どもの休み時間の間も使わなければいけないため、一緒に遊んだり、勉強をみてあげたりすることができず、「自分なにやってんだろう。」と思うことがある。【一般的な教員・30コマ】
「妥当、適切だと感じている」を選択した方の主な意見
学園の規定として18コマと決まっています。これ以上増えたら授業づくりができません。【私立/一般的な教員・18コマ】
低学年でコマ数が少なく、且つ算数の授業は専科の方がいるから。(20時間+算数のT2として5時間)算数少人数担当、1日あたり4時間(3、4、5、6年生)を担当している【一般的な教員・20コマ】
理科専科という事もあり、やるべき事に集中できるので時間数の割にやりやすく感じています。理科という教科自体が、専門知識、用具の扱いや管理、安全管理など多くの事が求められているために、他の先生からは嫌われているためこの専科という扱いがあるのだと思います。自分が理科が得意だという事に起因して負担感を感じていないとだとも思います。【専科教員・20コマ】
中学校
「多くて負担に感じている」「どちらかというと多くて負担を感じている」を選択した方の主な意見
新任で担任をもっているから。【一般的な教員・19コマ】
子育て真っ只中なので、空き時間が少ない中で、授業準備やGIGA関係の仕事をこなすのは厳しいです。【一般的な教員・20コマ】
コマ数が全てではない。コマ数以外にも時間を取られることが多すぎる。週29コマ中21時間が授業。これだけ見ると8コマ空きで1日2コマほどあるように見えるが、担任をしているので毎日、宿題や生活記録を見るのに1コマ分使うので残りは3コマ。廊下登板が入ると毎日空きがない状態だ。放課後は部活動や会議。その後、授業準備や学級通信作り、ノートチェックなど、早く帰れるわけがない。【一般的な教員・21コマ】
生徒とじっくり対話する時間が取れない。【一般的な教員・23コマ】
1日の空き時間はだいたい1コマ分。ゆっくりお茶を飲む暇もありません。絶えず授業に追われています。授業準備や事務仕事は、部活終了後です。辛い。【主幹(首席)教諭・24コマ】
「妥当、適切だと感じている」を選択した方の主な意見
週8コマ。管理職のためコマ数を減らしてもらっている。管理職になる前よりも授業以外の業務はかなり増えたが、現状では負担が多すぎるとは感じていない。【私立/教頭・副教頭・8コマ】
時数的には適切だが、小規模校のため4種類の教材研究をする必要があり、勤務時間内には終わらない。【一般的な教員・13.5コマ】
現在のコマ数は、科目12コマ、特別活動など4コマ、会議2コマの計18コマです。1日に2〜3コマ程度、空きコマがあり、計画的に仕事を進めたり、他の職員のフォローにまわることができているので、適切なように感じてます。学習ノートのチェックや科目のレポートなどのチェックも行いながら、会議資料の準備、生徒との個人面談なども実施できています。
今までの教員生活で一番コマ数が少ないです。今までは最大で25コマまで持ちましたが、空きのない日があり、クラスの提出物などのチェックもできず、なんだか荒んだクラスになっていたことを今でも覚えています。【一般的な教員・16コマ】
以前よりも持ちコマ数も減り、負担は少なくなってきていると思うが、授業以外の仕事を勤務時間内に終えることができないのは問題だと感じている。副担任なので毎週授業するわけではないが、学活や道徳・総合などを含めると19コマである。この中には自分が専門でない教科の授業と特別支援学級の授業が含まれている。【一般的な教員・19コマ】
1学年1クラスなので、持ち時間は多くはない。ただ、毎日3学年分の準備は時間が足りない。【一般的な教員・29コマ】
高等学校
「多くて負担に感じている」「どちらかというと多くて負担を感じている」を選択した方の主な意見
授業だけでなく、会議、入り込み、分掌業務、当番などで、空きコマがないから。【一般的な教員・12コマ】
高校教師です。週13時間の担任なので、1時間LHRの14時間です。これだけならそうでもないですが、プラス小論文指導で、本来は2人担当。でも実際は個人的に見てほしいと言ってくる生徒がいて、ひどい時は20人見てました。空き時間は小論文と作文を見るのに削られます。また、職業高校なので、学科の都合や学科の行事などがあり、定番の時間割どおりになることがほぼありません。空いた時間に授業を入れられることがほとんどで、後で調整されることもないので、結果的に週16時間が普通。選択科目になっていると、削られることの方が多いので、同じ普通教科でも、地歴公民科は1人あたり週7時間で担任なし。かな。不公平感が強いです。なんとかならないかと教務に言っても、時間割は大変だからと、取り合ってもらえません。ならば自分が教務に入ってなんとかしようとしましたが、頭の固い人ばかりで改革もうまくいかず、かえって教務の仕事をバンバン回されて、かえって大変になりました。不満だらけの職場です。【一般的な教員・14コマ】
情報の免許は自分一人で、他に数学も。週22コマです。【一般的な教員・22コマ】
全ての曜日で1〜3限まで授業が入っています。(もちろんそれ以降も授業があります)ホーム担任をしており、連絡のない欠席や遅刻、不登校生徒の対応などで、どうしても1限開始に間に合わない事があり、生徒や先生方に迷惑がかかっています。授業の準備をしようにも、放課後には部活動があり、ほとんどぶっつけ本番で授業に臨んでいます。本当になんとかしてほしいです。【一般的な教員・23コマ】
「妥当、適切だと感じている」を選択した方の主な意見
科目としては2種類しか担当していない。部活動や学年の業務も現状では負担があまり大きくないから。【一般的な教員・14コマ】
部活動等の業務がある中では、このコマ数は妥当だと思う。【一般的な教員・15コマ】
「少なくて楽だと感じている」「どちらかというと少なくて楽だと感じている」を選択した方の主な意見
担任を持っておらず、かつ科目が2種類だけで、さらに習熟度別の少人数なのでかなり負担は軽いです。今後担任を持ったとしても、この時間数と人数であればなんとかなりそうな気はします。ただ、昨年は同じコマ数でかつ担任なししたが、少人数ではなかったのと司書教諭をしていたので、去年であれば「どちらかというと多くて負担を感じている」寄りになっていたかもしれません。【一般的な教員・14コマ】
前の学校では毎年大学受験科目を担当して課外も含めて週に20コマしていたため。【私立/一般的な教員・18コマ】
その他の校種
「多くて負担に感じている」「どちらかというと多くて負担を感じている」を選択した方の主な意見
私立学校で、土曜日も授業があり、2週間に一度平日に休みが強制的にあります。平日に休みがある週は授業がたくさん入ることになり、空コマがなくしんどいです。また、0限授業があり、それは自分の持ちコマには入らないです。【私立中学校・高等学校/一般的な教員・18コマ】
希望していない内容のものを任される。授業数の差がはげしい。【中学校・中等教育学校/主幹(首席)教諭・指導教諭(養・栄含む)・22コマ】
「妥当、適切だと感じている」を選択した方の主な意見
慣れてきたから【私立中学校・高等学校/一般的な教員・20コマ】
「少なくて楽だと感じている」「どちらかというと少なくて楽だと感じている」を選択した方の主な意見
前任校より少ないので。15コマです(国語12、LHR1、道徳1、総合学習2)。会議をいれたら18コマです。【中等教育学校/一般的な教員・15コマ】
まとめ
多くの教員が授業の持ちコマだけでなく、授業以外(会議や廊下当番、丸つけや作文添削等)の仕事もあるため、実質的な「空きコマ」がなく負担を感じていることが伺えました。
そのような中で、課題として多くあがったのは、教材研究の時間がないことです。実質的な「空きコマ」が確保されないままでは、授業準備やそれに伴う教材研究を勤務時間に行うことは難しくなってきます。
校種の違いによる特徴としては、小学校は学級担任(専科の教員以外)が複数の教科の授業を受け持つことになるため授業のコマ数自体が多いこと、中学校・高等学校は放課後や休日に行われる部活動による負担が顕著です。
小学校の専科教員からも負担の声は少なくなく、2022年度から小学校高学年で本格導入される「教科担任制」の目的の1つが教員の負担軽減であることからも無視できません。
また、「外国籍児童が増えたことによる必要な指導の時間」といった地域や時代背景からくる課題もあり、今後増えてくることも予想されます。
子どもの置かれている環境、発達段階を加味した対応や、子ども一人ひとりの将来を見据えた進路指導などが行われていることも考えれば、授業のコマ数といった教科指導以外の時間が必要なことも明白です。
教務主任や管理職の工夫によって、持ちコマ数の偏りをなくしたり、授業以外の仕事の割り振りの工夫など学校裁量での改善も考えられますが、子どもの実態に合わせて柔軟な対応ができる理想の持ちコマ数はどれくらいで、そのために、必要な人員や数はどれくらいなのかといった建設的な議論が進むことを望みます。
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メガホン編集部