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【教職員アンケート結果】「適正規模」による学校の統廃合、本当に「適正」?

  • メガホン編集部

文科省の発行する『公立小学校・中学校の適正規模・適正配置等に関する手引』(平成27年)によると、12〜18学級が「適正規模」とされています。(参考)これは、小学校だと各学年2〜3クラス、中学校だと各学年4〜6クラスに当たります。

各地の自治体では、この「適正規模」に従って学校の新設・統廃合が進んでいるのですが、「教職員から見た適正規模」は本当にこの基準でよいのでしょうか。児童生徒数による学校の新設・統廃合の是非もふくめ、全国の教職員に聞きました。

なお、今回のアンケートでは学校規模をクラス数ごとに以下のように分類します。

  • 大規模校: 各学年4クラス以上の小学校、各学年7クラス以上の中学校
  • 中規模校: 各学年2-3クラスの小学校、各学年4-6クラスの中学校
  • 小規模校: 1クラスの学年がある小学校、3クラス以下の学年がある中学校
  • 極小規模校:複式学級のある小学校、全学年1クラスの中学校

アンケートの概要

■対象  :全国の小〜高校年齢の児童生徒が通う一条校に勤務する教職員
■実施期間:2025年7月25日(金)〜2025年9月15日(月)
■実施方法:インターネット調査(実施時の設問はこちら
■回答数 :46件

アンケート結果

設問1 今まで勤務したことのある学校規模は?

Q1. 今まで勤務したことのある学校規模を教えてください。(複数選択可)

回答者の勤務経験を見ると、中規模校(各学年2-3クラスの小学校、各学年4-6クラスの中学校)での勤務経験が最も多く34人(74%)、次いで小規模校(1クラスの学年がある小学校、3クラス以下の学年がある中学校)が32人(70%)、大規模校(各学年4クラス以上の小学校、各学年7クラス以上の中学校)が22人(48%)となりました。極小規模校(複式学級のある小学校、全学年1クラスの中学校)の勤務経験者は9人(20%)でした。

校種別に見ると、小学校では中規模校での勤務経験が23人と最も多く、次いで小規模校18人、大規模校11人となりました。中学校では小規模校での勤務経験が13人と最も多く、中規模校10人、大規模校7人と続きました。

設問2~9 学校の規模別のメリット・デメリットは?

Q2./Q3. (大規模校の勤務経験者)大規模校のメリット/デメリットはなんですか?
Q4./Q5. (中規模校の勤務経験者)中規模校のメリット/デメリットはなんですか?
Q6./Q7. (小規模校の勤務経験者)小規模校のメリット/デメリットはなんですか?
Q8./Q9. (極小規模校の勤務経験者)極小規模校のメリット/デメリットはなんですか?

大規模校のメリット

教員の負担軽減につながる

一人あたり請け負う分掌が少ないこと、生徒指導などで学年部で相談がしやすいことと動きが早くできること、在籍児童が多いことを子どもも保護者も意識しているために集団行動がとりやすいこと。【小学校・教員】

職員が多い=多様な考えがある。多様な実践がある。業務の分担がしやすいので、1人分の業務量が少ない。学年部が構成されるので、協力体制が構築される。【義務教育学校・教員】

同じ教科の先生が必ず複数いるため、授業の相談がしやすい。出張に行きやすい。図書購入費の金額が大きく、図書をそろえやすい。色々な事情を抱えている教員がいても、薄まる。合唱祭、体育祭等、頭数というパワーがある。日直が回ってくる回数が少ない。【中学校・教員】

多様な人間関係が築ける

児童数が多いので人間関係が固定されにくい。様々な人と出会い、関わりを持てる。行事等の際、ダイナミックな活動ができる。【小学校・教員】

教科担任が複数おり、授業研究の際、色々な人の授業を勉強できる。校務分掌も適正化されていれば、複数担当制が機能し、一人当たりの負担は軽減する。様々な児童生徒と関わることができる。人間関係も流動化しやすい。若い先生も多く、活気がある。【中学校・教員】

大規模校のデメリット

個別支援や細やかな対応が難しい

子どもに放課後に取り出して個別指導をしたくてもできないこと。特別支援上の配慮や支援が必要な子どもであっても、他学年の優先度が高い子どもに時間などを割かれて順番待ち状態になって何もできないままになること。大人数での移動になるため校外学習の予定をかなり前もっておさえておく手間がかかること。【小学校・教員】

学級児童数も多いので、学級に関わる事務作業が非常に負担になることが多い。児童一人ひとりに目が行き届かないこともあるし、保護者との関係性も希薄になることがある。それがもとで、トラブルになることも。【義務教育学校・教員】

学年団の人数も多く、他学年との連携が難しい。校内で同一歩調がなかなかされず、個人裁量になりがち。生徒に目が行き届きにくい。【中学校・教員】

情報共有や意思決定が複雑化

情報共有が難しい。意思疎通が難しい。職員の関係性が希薄になりがち。学年部の人間関係が苦しくなると、学年部外に助けを求めづらい。しんどくなる。多様な考え、実践といったが、極端な人も配属されることが多い。指示系統が複雑になる。いろんな考えがありすぎて、アドバイスを、もらっても、どれを信じていいかわからない若手がいると思う。【義務教育学校・教員】

自分の学年全員の授業を持つことができない。(実技以外)学年会のメンバーが多く、動きが鈍くなる。宿泊行事の宿泊施設が限られる。行事等、全てのことにおいて動きが鈍くなる。(フットワークが重い)卒業アルバムに掲載される一人当たりの写真が少ない。卒業証書授与が早送りになる。【中学校・教員】

中規模校のメリット

学校運営において適正人数

児童数、職員数ともに適度と感じます。多様な他者と協働するには、多すぎても少なすぎても難しいと思います。【小学校・教員】

自分の学年全員を受け持つことができる。学年会議、職員会議の人数が適切。【中学校・教員】

4クラスが全クラス、授業も見れて、行事も盛り上がって個人的には1番、何事もしやすい!【中学校・教員】

協力体制が構築しやすい

相学級と協力して指導や学級経営ができる。学年組織として対応できるため心理的な負担が少ない。【小学校・教員】

協力体制が構築しやすい。業務の分担もしやすい。学年部だけでなく、隣の学年部との「学団」がつくられることもあるので、自分の学年部がまずい状況でも、外に助けを求めやすい。それなりの責任ある業務も任せてもらえ、そのとき、周囲からのアドバイスをもらいながら仕事できる。初任者は働きやすいと思う。【義務教育学校・教員】

学年で相談できる。ある程度の教職員の人数がいるので、分掌を分担できる。【小学校・教員】

全校児童生徒を把握しやすい

学年部だけでなく、わりと全校児童のことは皆で把握しようというスタンスがあること。【小学校・教員】

授業交換しても、顔と名前が一致する。先生方がそれぞれの子どもの個性などを把握してくれている。【小学校・教員】

クラス数が少ないから隣のクラスと適度に相談して進められる。 人数が少ないから全校での行事も行いやすい。 低中高それぞれのブロックでの交流が多い。 専科などは付けやすい。【小学校・教員】

中規模校のデメリット

学級数の多さによる負担感

1学年2〜3クラス規模になると、1学級あたりの人数が34〜35人規模になり、教室は足の踏み場も無い。職員間も年齢層が偏り、高齢化することもしばしば。風が通りにくい。余裕教室も少なく、人手も足りない。【中学校・教員】

児童数が多い分、起きるトラブルも増える【小学校・教員】

足並みを揃えることへの圧力

足並みを揃えることを求められる。【小学校・教員】

2クラスしかないと、比較されやすいかもしれません。【小学校・教員】

統一したことをする、と二の次には言われてしまう。統一すると言ったのに、蓋をあけると統一したとは言えない有り様なことも。であれば、最初から統一すると言わなければいいのに。
学級経営案が学年経営案になり、どこか他人事感があり、作成者じゃない人はお飾りになってしまう。
支援学級担任がたまに教室に入るなどサポート体制のちがいがあり、それがない学級担任は疎外感を感じる。
ホワイトボードなど教材が全然ない(すべての教室に揃えるとなると高額になるため)。【小学校/中学校・教員】

業務の属人化・システム不足

一人当たりの仕事量が多く裁量も大きいため、仕事が属人化しやすい。【小学校・教員】

大規模校と違い、馴れ合いのような仕事が多い。 引き継ぎ等のシステムがないので、校務分掌などで、やった仕事を担当すると大変な思いをするし、「この人がいないと困る」と言うような事態になる。 校務分掌で、長くいる人が、口伝えで仕事を教えるが、長くいる人の能力によって、大変さがかわる。【小学校・教員】

1人の先生に頼りがち。【中学校・教員】

小規模校のメリット

一人ひとりにきめ細かな指導ができる

小回りがきくので校外学習の申請がしやすく、時間割の融通もきくこと。保護者が学校に協力的な方が多い。子どもに目が行き届きやすい。【小学校・教員】

教員は一人一人の生徒に細やかな指導ができる。新たな指導法や挑戦的な取り組みがしやすい。生徒にとって学習や体験の機会が多く担保できる。【中学校・校長】

学年の全生徒について、密度の高い情報共有ができる。全校生徒の顔と名前が一致するので、全学年の生活指導に関われる。若いうちから、重い分掌を担うことができる。【中学校・教員】

柔軟な学校運営ができる

単学級なので学級担任の裁量で指導や経営が行える。【小学校・教員】

人数が少ないことで児童ひとりひとりに関わる時間が長く取れる。挑戦的な取り組みがしやすい(全校児童が参加する行事など)。【小学校・教員】

教員は一人一人の生徒に細やかな指導ができる。新たな指導法や挑戦的な取り組みがしやすい。生徒にとって学習や体験の機会が多く担保できる。【中学校・校長】

小規模校のデメリット

一人あたりの業務負担が大きい

担任業務や校務等を分担できない。【小学校・教員】

人事にゆとりがない。教員の組み方等工夫ができない。生徒のクラス分けに困難が生じる。【中学校・教員】

教職員の数が少なく、一人が担う校務分掌等が複数になり、その数も多い。病休、育休等が発生すると人繰りが大変。どこの学校もそうだと思うが、育休中の教員の代わりの人が見つからない時があり、欠員の状態で学校経営をすることがある。【小学校・教員】

人間関係が固定化しやすい

学校や教職員に何でもしてもらえるのが当たり前なスタンスの子どもが多い。親も一部は細かな連絡をしてもらえるのが当たり前になっている。子どもも保護者も距離が近い。クラス替えがないため人間関係の序列のようなものが入学前にできてしまっている。また、よく言えばアットホームな職員室は学校という公的な組織としてきちんと整えないといけないことがなあなあになりやすい。発言力のある方の言ったことが通りやすいことも規模が小さい学校の方がたくさん見かける。【小学校・教員】

極小規模校のメリット

アットホームな雰囲気・温かい人間関係

家族みたい。アットホーム。 行事もみんなで考えてつくるなど、「みんなで」という意識が強い。 保護者とも関係性が強くなり、協力をたくさん得られる。【義務教育学校・教員】

・児童、職員だけでなく地域の顔が見えること。
・雰囲気が穏やかで温かい。
・豊かな地域のサポートがある。【小学校・教員】

一人ひとりへの手厚い対応

全校児童で異年齢のアットホームな取組ができる。授業なかで一人一人が発言したり、実験したり、学習活動に取り組める時間が確保しやすい。【小学校・教員】

学級の事務仕事や丸付けなどがすぐにできる 個別指導や個別ケアができる 授業でも全員の考えを発表させてあげられる。【小学校・教員】

極小規模校のデメリット

教員の業務負担の大きさ

1人で複数の分掌を抱えることがある。人間関係が強くなるので、それが苦手な側はきついと思う。 【義務教育学校・教員】

校務や授業を兼務しなければならないこと。 【中学校・教員】

複数の校務分掌を兼務しなければならない。また、専門外の教科を担当しなければならないことがある。 【中学校・教員】

児童生徒の学びへの影響

児童数が少ないため、多様な考えに触れられない、またそのために対話が深まりにくい。人間関係の固定化により、良好でない場合過ごしにくくなってしまう。体育での集団で行う運動ができない。 【小学校・教員】

クラス替えができないため、人間関係が固定化されやすい。多様な考え方に触れる機会が少ない。部活動の種類が限られる。 【中学校・教員】

集団の中で切磋琢磨する経験が少ない。多様な価値観に触れる機会が限られる。 【小学校・教員】

設問10 教職員の目線から見た「適正規模」は?

Q10. 教職員の目線から見た「適正規模」はどの程度だと思いますか?

小学校

小学校の教職員(25人)について、「適正」「やや適正」と回答した人の割合が高い順に並べると、以下のようになります。

  • 1位 各学年2クラス(92%)「適正」52%、「やや適正」40%
  • 1位 各学年3クラス(92%)「適正」56%、「やや適正」36%
  • 3位 各学年4クラス(64%)「適正」20%、「やや適正」44%
  • 4位 各学年1クラス(52%)「適正」28%、「やや適正」24%
  • 5位 各学年1クラス未満(28%)「適正」12%、「やや適正」16%
  • 5位 各学年5クラス(28%)「適正」8%、「やや適正」20%

小学校の教職員が最も「適正」と考える規模は「各学年2クラス」「各学年3クラス」で、92%が適正と評価しました。

中学校

中学校の教職員教員(17人)でも同様に「適正」「やや適正」と回答した人の割合が高い順に並べたところ、以下のようになりました。

  • 1位 各学年3クラス(82%)「適正」35%、「やや適正」47%
  • 2位 各学年4クラス(76%)「適正」41%、「やや適正」35%
  • 3位 各学年2クラス(47%)「適正」12%、「やや適正」35%
  • 4位 各学年1クラス(41%)「適正」24%、「やや適正」18%
  • 5位 各学年5クラス(41%)「適正」6%、「やや適正」35%

中学校では 「各学年3クラス」を適正とする割合が約82%と最も高く、続いて「各学年4クラス」の約76%となりました。中学校教員は小学校教員よりもやや大きめの規模を適正と考える傾向があります。

文科省が定める「適正規模」は全学年で12〜18学級、つまり小学校では各学年2〜3クラス、中学校では各学年4〜6クラスに相当します。今回の結果では、小学校では「各学年2クラス」「各学年3クラス」が同率で1位となるなど文科省基準が教職員の実感とも一定程度整合していると言えましたが、中学校では「各学年4クラス」は2位と高評価だったものの、「各学年5クラス」は適正だと考える教職員が41%、「各学年6クラス」は同18%と、文科省の基準との大きな乖離が見られました。

設問11 あなたが「働きたい」と思う学校の規模は?

Q11. あなたが「働きたい」と思う学校の規模はどの程度ですか?

小学校

こちらも前設問と同様、「とても働きたい」「働きたい」と回答した人の割合が高い順に並べると、以下のようになります。

  • 1位 各学年2クラス(92%)「とても働きたい」40%、「働きたい」52%
  • 2位 各学年3クラス(88%)「とても働きたい」36%、「働きたい」52%
  • 3位 各学年1クラス(76%)「とても働きたい」40%、「働きたい」36%
  • 4位 各学年1クラス未満(48%)「とても働きたい」12%、「働きたい」36%
  • 4位 各学年4クラス(48%)「とても働きたい」12%、「働きたい」36%

設問10の「適正規模」と比較すると、1位と2位はどちらも共通しており一定の関連が見られました。しかしながら、64%が「適正」と回答していた「各学年4クラス」は「働きたい」という基準では48%に下落したのに加え、「各学年1クラス」「各学年1クラス未満」は「適正」を選んだ割合に対し「働きたい」を選んだ割合が大きく向上していました(それぞれ52%→76%、28%→48%)。小学校の教職員にとっては、比較的小規模な学校が「働きやすい」と感じられることが伺えます。

中学校

こちらの結果を「とても働きたい」「働きたい」と回答した人の割合が高い順に並べると以下のようになります。

  • 1位 各学年3クラス(76%)「とても働きたい」18%、「働きたい」59%
  • 1位 各学年4クラス(76%)「とても働きたい」29%、「働きたい」47%
  • 3位 各学年5クラス(53%)「とても働きたい」12%、「働きたい」41%
  • 4位 各学年2クラス(35%)「とても働きたい」6%、「働きたい」29%
  • 5位 各学年1クラス(29%)「とても働きたい」12%、「働きたい」18%

前設問の「適正規模」との比較では、中学校も小学校と同様、1位と2位が同じ結果となりました。しかしこちらも小学校と同様、「各学年5クラス」が「適正」53%から「働きたい」41%と下落、「各学年2クラス」「各学年1クラス」は「適正」がそれぞれ35%・29%だったのに対し、「働きたい」はそれぞれ47%・41%と上昇していました。小学校の教職員同様、中学校でも比較的小規模な学校が「働きやすい」と評価されているようです。

設問12 統廃合についてのあなたの意見は?

Q12. 文科省の定める「適正規模(全学年で12~18学級)」を基準として小・中学校の新設や統廃合が進んでいる現状について、あなたの意見を聞かせてください。

統廃合に賛成・やむを得ない

妥当だと思います。ただし、各学校+1~2名、フリーに動ける教員を配置する必要がある。 【小学校・教員】

中学校であれば、適正規模を守れるような統廃合は必要だと思う。過疎地域における「学校」の存在意義は大きく、統廃合によるコミュニティの消滅はなるべく避けたいことだが、人口減少社会においては受け入れざるを得ない。過密地域では新設が相次ぎ、立ち上げに関わる業務負担は大きいが、狭い施設にすし詰め状態であるよりはよい。 【中学校・教員】

よいと思う。施設管理や人件費の無駄を省いて、それぞれの学校の管理運営費や、人手不足を改善させて欲しい。 【小学校・教員】

通学距離・児童生徒への影響を懸念

登下校にスクールバスなどを使うため、柔軟な生活時程が組みにくくなる。また、住み慣れた地域の外に統合した学校がある場合、集団に適応しにくく不登校が増えるという実態もある。 【小学校・教員】

規模を表す数字を基準にして考えると、働きやすかったり児童生徒の人間関係上の育ちだったりの面でいいかもしれないが、過疎地では統廃合により、自宅から学校までの距離がたいへん遠くなり、通学に難が発生するケースが多くみられる。自治体として、学ぶ権利保障のため、スクールバス等の手立てをうっているものの、朝夕バスに1時間も揺られて通学する児童生徒も珍しくない。 【義務教育学校・教員】

島しょ・へき地でそれをやられてしまうと通学が困難になり、不登校が増える。地域の文化や習慣の継承が困難になる。多様性の保全と逆行する。 【中学校・校長】

地域への影響・学校の役割を重視

統廃合が進むと、地域に学校がなくなる。学校のグラウンドは、子ども達が放課後遊ぶ場であるとともに、校舎も地域の避難所であり社会体育の場であり集会所でもある。様々な世代をつなぐハブだと思う。統廃合を進めた方がお金がうくのは重々わかっているが、簡単に統廃合するのは反対。 【小学校・教員】

人口減少の進む地域に勤めるものです。豊かな地域性があるなか、統廃合を目にしてきましたが、学校がなくなることによる「地域の衰退」も心配です。また、統合によって、遠い地域へバス通学を余儀なくされるなど、登校の不便さもあります。学校の統廃合については、「地域の声を聞く」としながらも、行政が指針を出して動かしている部分もあり、どちらが主導か不明瞭でもあります。単学級、複式があっても、その土地が豊かに子育てや地域活動が営めるのならば、一律の統廃合基準ではないものでも良いのではないかと思います。 【小学校・教員】

統廃合については慎重に検討してほしい。学校がなくなることで、地域が崩れる可能性。 【中学校・教員】

現状の統廃合基準・進め方に反対

適正規模を決めた文書の中に「切磋琢磨」という文言があるが、この競争主義の考え方こそ、今日の不登校激増の原因だと考える。「共同の学び」こそ重要なのであって「競争の学び」を維持するための統廃合には反対。小規模校は不登校特例校などでも取り入れられており、その良さを再確認する必要がある。なお、適正規模は少子化の時代に合わせて改正する必要がある。 【中学校・教員】

12学級なら許せますが、それ以上は施設の関係から適正とは言い難いです。また自治体として他の課とも連携しないと閉校した学校の近くに住宅地を造成して近隣の学校がパンクするなど愚かな政策となり、近隣住民の信頼を著しく失うこともあり、慎重に行なってほしいです。わたしは安易な閉校に反対です。そのことに関するクレームを学校が受けているのもおかしいと思います。 【小学校・教員】

統廃合ありきに感じる。1学年1クラスでも工夫次第。むしろ学区が広がって子どもに負担をきたしたり、地域の学校がなくなることの方が問題だと感じる。 【小学校・教員】

少人数学級・学級定数の改善を優先すべき

学級編成の上限人数を20人程度にしてから統廃合してほしい。 【中学校・教員】

そもそも学校自体の適正規模を目指すよりも、1クラス25人や、特別支援学級なら1クラス6名といった、学級定数の適正化を進めるべきです。その上で、学校の適正規模を目指すべきと考えます。 【小学校・教員】

まとめ

今回のアンケートでは、大規模校、中規模校、小規模校、極小規模校それぞれの学校規模について、実際に勤務経験のある教職員の方々から生の声を集めました。それぞれの学校規模について寄せられた意見は以下の通りです。

学校規模によるメリット・デメリット
学校規模メリットデメリット
大規模校教員一人あたりの業務負担の軽減
学年部での協力体制
児童生徒一人ひとりへの個別対応や組織運営の困難さ
中規模校適度な協力体制
全校児童生徒の把握しやすさ
(相対的に少数)
小規模校一人ひとりへのきめ細かな指導教員1人あたりの業務負担の大きさ
極小規模校アットホームな雰囲気
一人ひとりへの手厚い対応
教員1人あたりの業務負担の大きさ
児童生徒の学びへの影響(多様性の不足、人間関係の固定化)
「適正規模」の妥当性

文科省が定める「適正規模」は全学年で12〜18学級であり、小学校では各学年2〜3クラス、中学校では各学年4〜6クラスに相当します。今回のアンケートで教職員が「適正」と評価した規模は、小学校は同率1位に「各学年2クラス」「各学年3クラス」が並びましたが、中学校では各学年4クラス以下の規模の学校を「適正」と考える教職員が多いことが伺えました。

また、そういった比較的小規模な学校に対する志向は「働きたい」と思う学校ではより顕著で、小学校では「各学年1クラス」「各学年1クラス未満」の学校が、中学校では「各学年2クラス」「各学年1クラス」の学校がより「働きたい」と見做される傾向にありました。

統廃合への意見

統廃合に賛成・やむを得ないとする意見が一定数見られた一方で、通学距離の増加や不登校の増加など児童生徒への影響を懸念する意見、学校が地域のハブとして果たす役割を重視し地域衰退を危惧する意見が多数見られました。

また、画一的な基準での統廃合への反対意見も複数寄せられました。「一律の統廃合基準ではないものでも良い」「地域の声を聞くとしながらも行政が主導」といった指摘からは、トップダウンで進む統廃合への違和感も伺えます。

さらに、統廃合の前提として少人数学級や学級定数の改善を優先すべきという意見も見られました。

全体として、統廃合の必要性は理解しつつも、通学距離、児童生徒の適応、地域コミュニティの維持、画一的ではない柔軟な基準など、多面的な視点からの慎重な検討を求める声が上がっています。


今回のアンケートでは、学校規模のメリット・デメリット、教職員が考える「適正規模」、そして統廃合への意見について率直な声が寄せられました。

文科省の定める「適正規模」は、特に小学校では現場の教職員から見ても一定の妥当性があることが明らかになりました。しかし同時に中学校では文科省の「適正規模」よりも小規模な学校を「適正」かつ「働きやすい」と考えている教職員が多く、その裏には小規模校のメリットである「一人ひとりへのきめ細かな指導」が現場で重視されている現状があると考えられます。

そのこともあってか、文科省の「適正規模」による学校の統廃合については「今のやり方では反対」との声も多く、通学距離、児童生徒の適応、地域コミュニティとしての学校の役割、そして何より一人ひとりの子どもの育ちといった、多面的な視点からの検討が不可欠であることも示されました。

学校の統廃合は一度実施されれば、統廃合は元に戻すことは極めて困難です。「適正規模」の画一的な実現だけを目的とするのではなく、地域の実情に応じた柔軟な判断、何より子どもたちにとって本当に豊かな学びの場を守るための慎重な検討・判断が求められています。


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