【教職員アンケート結果】1ヶ月の時間外勤務は平均どれくらい?
文科省は2019年、教職員の時間外勤務について上限を「月45時間、年360時間」とするガイドラインを設けました。しかし、業務削減についての具体策は後手に回り、現場の努力に委ねられているのが現状。管理職から早い時間の退勤を勧められ、仕事を持ち帰ったりタイムカード打刻後に残業をしたりするケースも多く見られます。給特法により、公立学校の教員には残業代が出ることもなく、過酷な労働条件は長年に渡って問題になっています。そこで今回は、全国の小中学校・高等学校の教職員から声を集めました。みなさんの時間外勤務はどのくらいですか?
※このアンケートは、WEBアンケートサイト「フキダシ」内にある『みんなに聞きたいこと』に寄せられた投稿から作成されました。
アンケートの概要
■対象 :全国の小〜高校年齢の児童生徒が通う一条校に勤務する教職員
■実施期間:2024年7月19日(金)〜2024年9月2日(月)
■実施方法:インターネット調査(実施時の設問はこちら)
■回答数 :84件
アンケート結果
設問1 時間外勤務は月どれくらい?
Q1. 1ヶ月の時間外勤務の平均時間はどれくらいですか?
※土日・祝日の出勤や早朝の時間外勤務も含みます。
全体の平均値は49.9時間でした。校種別の平均値は中学校が67.5時間と最も多く、次いで小学校の46.9時間、高等学校の42.8時間でした。
文科省が2019年のガイドラインで定めた教職員の時間外勤務の上限は月45時間ですが、月45時間以上の人の割合は中学校が75%、小学校が57%となり、もっとも低かった高等学校でも38%と、高い割合となりました。また、一般的に「過労死ライン」と呼ばれる月80時間以上の時間外勤務も、全体で19%、特に中学校では44%に上る回答者が該当していました。
時間外勤務の平均値に性別や雇用形態による差はほぼ見られませんでしたが、職種の比較では「一般的な教員」が51時間だったのに対して「主幹(首席)教諭」は55.7時間となり、約5時間の開きがありました。
設問2 時間外勤務についてどう思う?
Q2. 上記の内容に関連して、あなたが思っていることや考えていることを教えてください。
時間外勤務・仕事の持ち帰りが増える原因について
部活動・会議などに時間を取られる
もっと効率よくできればという思いと、勤務時間内に自分のための時間をそもそもほとんど取れないことが問題だという思いがあります。子どもが帰ったあと、会議がある日がほとんどです。子どもが早く帰ってくれれば。【小学校・教員(時間外勤務:80時間)】
ガイドライン通りに部活動を行うだけで45時間は超過する。休憩時間はゼロ。【中学校・教員(時間外勤務:80時間)】
勤務時間は17時までだが、クラブ活動の時間は17時30分まで。全員がクラブの顧問をしているため、ほぼ毎日少なくとも30分は勤務時間外で仕事をすること前提に教育活動が成り立っているのはおかしい。【義務教育学校・教員(時間外勤務:45時間)】
学校で仕事をする必要がある
業務内容から学校でしなければならないデータばかりのため、時間内に終わらせることができないアンケートや照会は時間外や土日にしなければ締切に間に合わない。【小学校・教頭(時間外勤務:100時間)】
勤務時間内に仕事が終わらない
職場で時間外勤務している時間は、一日平均3時間(始業前1時間、終業後2時間、土曜日2~3時間)ですが、家に帰ってからも翌日の授業準備をするので、月平均100時間ぐらい入っているかな、と思っています。【小学校・教員(時間外勤務:70時間)】
本校は19:40で強制退勤となります、それによって特に若手の先生方は授業づくりに時間がかかるために持ち帰っての仕事となります。しかし、それは勤務時間に反映されないことが大きな問題と感じています。【中学校・教員(時間外勤務:60時間)】
学校は18時30分に管理職によって施錠される。残業したいわけではないが、仕事が終わらず結局持ち帰りをする。さらに管理職は数値、結果を求める。【小学校・教員(時間外勤務:60時間)】
育児のために部分休業を取っているし、それを理由に仕事をたくさん抱えないようにしている。出産前に比べれば減っているが、授業準備やテスト作成はかなり自宅でやっている。【高等学校・教員(時間外勤務:13時間)】
児童・生徒の登校時刻が早い
本当は、定時出勤・定時退勤したい。管理職が職員の定時を守ろうという考えでない限り、勤務時間内にやり切れる業務量にはならず、難しいだろう。児童の登校時刻が勤務時間前なのが、教員の時間外勤務の要因の一つ。【小学校・教員(時間外勤務:25時間)】
時間外勤務・仕事の持ち帰りの影響について
生活に支障が出ている
とにかく睡眠時間がほしい。ただそれだけ。【小学校/中学校・教員(時間外勤務:90時間)】
しんどいです。【中学校・教員(時間外勤務:75時間)】
仕事が終わらない。生徒の理解が悪く、教材の作り直し、提出物の採点、生徒の起こした問題についての話し合い。疲れ切って帰宅し、風呂にも入れない。買い物もできない。生活に支障をきたしている。【中等教育学校・教員(時間外勤務:15時間)】
家の都合で遅くまで残れないため、休み時間や隙間時間も必死で仕事し、できなかった分は持ち帰って、なんとか早くに帰れるようにしているが、休憩もなく毎日何かに追われていて、帰っても家事があり、疲弊している。【小学校・教員(時間外勤務:30時間)】
管理職から指導を受ける
100超で校長面談。100ギリギリ超だと、後からチョイ削りの要求。【高等学校・教員(時間外勤務:115時間)】
授業時数は減らず、人は増えず、時間が多いからなんとかしろと言われる気がする。持ち帰って仕事をする人やタイムカード打刻後のウラ残業が増えています。【中学校・教員(時間外勤務:100時間)】
在校時間が多いと管理職に怒られるだけでなく県教委へ反省文?を出さなければいけないので、みんな実際よりかなり少なく記録し提出しています。【小学校・教員(時間外勤務:80時間)】
業務削減に向かう上での困難や意識改革について
ジレンマがある
「業務改善」を理由に、子どもに関わる重要なことも簡易化されたり十分な検討がされなかったり。でも業務改善は確かに切実で、意見しにくい。【小学校・教員(時間外勤務:75時間)】
勤務時間内で終えようと思うと、クオリティーの低さが目立ってしまい、結果的に誰も得しない。かといって,こだわろうとすると勤務時間外に取り組むことになってしまい結果的に勤務時間を管理できない自分が悪者扱い【小学校・教員(時間外勤務:40時間)】
改善が進んでいる
朝はギリギリに出勤して、大体19時ころには帰るようにしています。15年目になりますが、だんだん残業は減ってきました。【小学校・教員(時間外勤務:45時間)】
なるべく仕事の優先順位をつけて早く帰宅するよう努めています。仕事のやり方の要領を身につけてきたからできますが、若い方や仕事熱心な方はなかなか早く帰れる状況にないのが現状ではないかと思います。【小学校・教員(時間外勤務:30時間)】
全員が定時退勤できるような業務改善を行っています。先生の意識改革も必要だと思っています。【小学校・教員(時間外勤務:5時間)】
改善のための要望など
業務削減や改善・増員が必要
早く帰るための工夫も限界を感じる。実質的な業務を削ることをしないとこの数字が減ることはないと思う。【小学校・教員(時間外勤務:55時間)】
仕事量を勤務時間に収まるように減らしてほしい。授業や集団づくりなど、子どもと向き合う時間をとりたい。【小学校・教員(時間外勤務:52時間)】
行事を精選し、指導方法も共有しながらやれると、もう少し時間外勤務は減るのでは?と思うが、行事は多いまま、指導は、各々で…という雰囲気があるので、結果、時間外勤務が減らない【小学校・教員(時間外勤務:40時間)】
現場の「働き方改革」では限界がある。子どもや保護者へのパフォーマンスを下げて改革している。なのに、教育委員会は次々と新しい仕事を増やしてくる。全国学テから脱退するとか、委員会でできる削減もしてほしい。【小学校・教員(時間外勤務:35時間)】
残業代が必要
働いた分だけお金をくれ。何でもかんでも教員にやらせるな。【中学校・教員(時間外勤務:140時間)】
多少の残業は仕方ないので残業代を出してほしいです。ベテランの先生方から作業効率の悪い仕事を押し付けられることもあります。【小学校・教員(時間外勤務:30時間)】
必要な仕事をしたのに残業代も出ず、好きでやったことだと言われてしまうことに、ひどく理不尽を感じます。【小学校・教員(時間外勤務:50時間)】
その他
月45時間の超勤でもきついと感じるし、「立派な」超勤だが、職場、また教育現場には「まだもっと苦労している人がいる(だから、45程度で色々言うな)」という空気があり、恐ろしいと感じる。【特別支援学校・教員(時間外勤務:45時間)】
非常勤講師の仕事として授業時間のみ想定されていることと、その実際があまりにもかけ離れている。印刷、授業準備、教材注文、評価作成、会計簿作成など、授業時間内に収まり切れないことが多々ある。【中学校/義務教育学校・職員(時間外勤務:20時間)】
事務職員なので定時内に終わるよう全力で取り組んでいる。よけいな時間外手当をつけないため。教員は帰りが早い人も遅い人もいる。自由に残業できるし、管理する人がいない。そんな環境なので定時で帰る気苦労がある【小学校・事務職員(時間外勤務:10時間)】
まとめ
1カ月当たりの時間外勤務について、全体では「45時間以上」と回答した人が57%、「80時間以上」は19%に上りました。
「80時間以上」という回答の中には「授業時数は減らず、人は増えず、時間が多いからなんとかしろと言われる」など、時間外勤務が多すぎると管理職から指導を受けるという声もありました。また「ガイドライン通りに部活動を行うだけで45時間は超過する」「子どもが帰ったあと、会議がある日がほとんど」という記述もあり、部活動や会議に時間を取られていることが分かりました。
「40~79時間」と答えた人の回答には、強制退勤や施錠の時間が決まっているとの記述がありました。「家に帰ってからも翌日の授業準備をするので、月平均100時間ぐらい入っている」という声もあり、持ち帰って仕事をしている人が多く見られます。一方で「15年目になり、だんだん残業は減ってきました」など、経験の蓄積によって業務改善が進んでいる様子も見受けられました。
「5〜39時間」では「家の都合で遅くまで残れないため、休み時間や隙間時間も必死で仕事し、できなかった分は持ち帰って、なんとか早くに帰れるようにしているが、休憩もなく毎日何かに追われていて、帰っても家事があり、疲弊している」という回答も。非常勤講師として授業時間のみが勤務時間とされている人や、事務職員であるために周囲に気兼ねして時間内で働いていると回答した人もいました。
また、すべてに共通して「とにかく睡眠時間がほしい」など、生活に支障が生じている様子や「残業代が必要」と、給特法の維持に疑問を持つ声も聞かれました。
【このようなアンケートを作成したいと思った方へ】
「フキダシ」は、現役の教職員の方が無料で登録できるWEBアンケートサイトです。このアンケートは、WEBアンケートサイト「フキダシ」内にある『みんなに聞きたいこと』に寄せられた投稿から作成されました。投稿内容をもとに定期的にアンケートを作成しますので、フキダシでアンケート化してほしい話題がありましたら、ぜひユーザー登録をして投稿してください!
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