学校をもっとよくするWebメディア

メガホン – School Voice Project

学校をもっとよくするWebメディア

【教職員アンケート結果】子どもを呼ぶとき、「さん」を付けてる?

  • メガホン編集部

2024年春、東京都は都内公立小中学校で使われている男女別出席簿を、すべて「男女混合出席簿」に移行する方針を固めました。背景には、無意識の性差別の助長を防ぐといった狙いがあります。(参考:東京新聞

そんな中で、子ども同士、また教員から子どもへの呼び方についても、男女を問わず「さん」付けをすることが慣習的に広まってきています。こちらもジェンダー平等意識の高まりやLGBTQへの配慮といった目的がありますが、必ずしもルールとして明文化されてはいない様子です。

子どもの呼び方について、全国の学校現場にはどのようなルールや現状、意見があるのでしょうか。全国の小学校の教職員に聞きました。

※このアンケートは、WEBアンケートサイト「フキダシ」内にある『みんなに聞きたいこと』に寄せられた投稿から作成されました。

アンケートの概要

■対象  :全国の小〜高校年齢の児童生徒が通う一条校に勤務する教職員
■実施期間:2024年6月14日(金)〜2024年7月15日(月)
■実施方法:インターネット調査(実施時の設問はこちら
■回答数 :82件

アンケート結果

設問1 子ども同士の呼び方にルールはある?

Q1. あなたの学校では、子ども同士が子どもを呼ぶとき、男女問わず「さん」を付けることが、学校のルールで決められていますか?

子ども同士の呼び方について、「『さん』を付けるルールがある」と回答した人は、全体の16%にとどまりました。「ルールがある」という回答は小学校のみで見られ、小学校に限ると26%が「ルールがある」と答えていました。

「ルールがある」という回答には「公式の場所では『さん』を付ける」というルールや、校長によるルール作りなどの声が挙げられました。一方で、全体の80%以上を占める「ルールはない」学校においても、「さん」付けの指導や暗黙のルールがある、という声は一定数寄せられました。

また、「さん」付けではなく、「相手が嫌だと感じる呼び方はしない」というルールの存在について言及した人もいました。

「ルールがある」と答えた方の主な意見

授業などの公式の場所では「さん」づけで呼ぶ 休み時間などは基本的に自由だが、何らかの敬称をつける方が望ましいという姿勢【小学校・教員】

ジェンダーの問題や1人の人として尊重するという意味合いでそういうルールを校長が作り、年度初め、学校経営案の説明時に周知されていた【小学校・教員】

「ルールはない」と答えた方の主な意見

指示したことは今まで一度もありません。小学校で「さん」付けだった生徒たちも、中学入学後は相手との関係に合わせて使い分けています。【中学校・教員】

明確なルールはありませんが、慣習として授業中は男女問わず「さん」づけをするよう指導しています。それ以外では、クラスや学年の雰囲気によってあだ名や呼び捨てなど様々です。【小学校・教員】

ルールとしてはないが、学習中はさん付けで…が暗黙のルール。【小学校・教員】

「それ以外のルールがある」と答えた方の主な意見

ルールはないが、呼び捨てにしないよう指導しています。【小学校・教員】

設問2 教員が子どもを呼ぶときのルールはある?

Q2. あなたの学校では、教員が子どもを呼ぶとき、男女問わず「さん」を付けることが、学校のルールで決められていますか?

教員が子どもを呼ぶときのルールに関しては、「『さん』を付けるルールがある」という回答が全体の28%となり、子ども同士の場合に比べると若干多い結果となりました。また、校種別にみると小学校は40%、中学校が11%が「ルールがある」という回答でしたが、高校・中等教育学校ではすべての回答者が「ルールはない」と答えました。

しかし、「ルールはない」と答えた中でも、子ども同士の場合と同様、共通認識や文化として「さん」付けを行っている、という声が多く見られました。また、「ルール」が何を指すかという認識や、現場での「さん」付けの浸透度合いによって、答え方には揺れがあることが見受けられました。

「ルールがある」と答えた方の主な意見

ジェンダーの問題や1人の人として尊重するという意味合いでそういうルールを校長が作り、年度初め、学校経営案の説明時に周知されていた。【小学校・教員】

暗黙のルールになっています。【小学校・教員】

特にルールというほどではないが、みんな普通にそうしている。【小学校・教員】

「ルールはない」と答えた方の主な意見

それが望ましいことは共通認識としてありますが、ルールとして設定されているわけではありません。【小学校・教員】

「ルール」として明文化されていませんが、「さん」をつけて呼びましょう(「くん」で呼ばない)という文化が浸透しています。【中学校・教員】

そのようなルールはないが、子どもたちを尊重する意味で多くの職員が「さん」付けで呼んでいる。【中学校・教員】

設問3 「さん」付けのルール、どう思う?

Q3. 上記の内容に関連して、あなたが思っていることや考えていることを教えてください。

「さん」付けをすることの良さ

我が子が先生から呼び捨てにされていたら、敬意がないというか、大切にされていない感じがして嫌です。対等な関係を目指すため、距離感を保つため、アンガーマネジメントのために“さん”付けはいいなと思います。【小学校・教員】

さん付け、慣れると違和感はありません。呼び捨てにされるより、かなり「大事にされてる感」があるように思います。教師と児童ができる限り対等な関係に近づく一歩でもあると思っています。【小学校・教員】

一人一人人間で、尊重される。「さん」をつけられると、自分も嬉しいし。何よりも、相手を尊重しているので。【特別支援学校・教員】

場面による使い分け

「公的」な場(授業や職員室・会議)では名字に「さん」を付けて呼ぶことを意識しています。「私的」な場(休み時間や部活動など)では、本人との関係性によっては、下の名前やニックネームで呼ぶこともあります。【中学校・教員】

教員はさん付けが基本だが、しない場面もある。ただ「ルール」と言われたことはなく、それが当然。子ども同士は長い付き合いなどもあり、さん付けを促すと驚かれることも。最低限、授業中はつける。【小学校・教員】

学習中は「さん」付けで呼ぶことで、学習と休み時間との区別がついてよいです。子ども同士の「さん」付けルールはありませんが、教師が使っていると、自然と子どもたちも使っているように感じています。【小学校・教員】

現場の状況や、それに対する意見

公平性、ジェンダーやLGBT、児童へのリスペクトの感覚を忘れないという気持ちで「さん」一択です。先生の中には高学年児童を「くん、ちゃん、呼び捨て、あだ名」と相手によって変える人がいて、気になります。【小学校・教員】

子ども同士は意識している子が多いが、むしろ教員が崩してしまっている人が多い。困難校なので、名前呼び捨てで子供をまとめていく人も多く、やはり高圧的な方に多いと思います。【小学校・教員】

さんをつける方が良いのは理解できるが、生徒との距離感が出てしまう気がします。また、さんをつける教員も少ないので、迷っています。【高等学校・教員】

呼び方の統一に対する違和感

呼ばれたくない名前で呼ばれることは避けたいですが、呼び方を指定することは思考停止だと思います。【小学校・教員】

全員を「くん」で呼びましょうよりも「さん」の方が良い。が、「暴力的に全員同じように扱う」ことへの抵抗感がかなり大きい。見た目で性を押し付けるのはいけないが、それを上回る違和感をずっとぬぐえないでいる。【中学校・教員】

どのように呼ぶかを決める必要があるのか?あるならなぜ必要なのか?話し合う必要があると思います。呼ばれたい名前で呼ぶことが本来の互いを認め合うことではないでしょうか?【小学校・教員】

ルールにするのであれば、呼びたい名前で呼んであげる、ならいいのになと思います。年度のはじめに何と呼ばれたいかを子どもに聞くし、何て呼んでほしいかを伝えています。【小学校・教員】

その他の意見

大人社会もそうなので、さん付けに慣れることは良いと思う。【小学校・教員】

人の敬称は、お互いの関係性や立場のちがいによってつけられるものである。教師と子どもは教える人と教えられる人との関係であり、一方的に教師だけが子どもにたいして『さん』をつけるのをルール化するのはおかしい。【小学校・教員】

子どもには呼び捨てにしないよう指導していますが、本心では幼馴染の子どもたちが親しみを込めて呼び捨てにし合うのを微笑ましく思っています。さん付けは中高生になってからではいいのでは?【小学校・教員】

まとめ

「さん」付けをルールとしている学校は、子ども同士・教員から子ども、共に多いとは言えない一方で、現場での慣習的な「さん」付けが年々広まっているということが、アンケートの結果から伺えました。一方で、呼び方を統一すること、教員から呼び方に関して指導することに対する違和感の声も、多く寄せられました。

また、『自分の「呼ばれたい名前」を机のシールや自己紹介カードに書き、あだ名で呼び合う』という取り組みを行っている、といった声も挙げられるなど、回答された方がそれぞれに「子どもの呼び方」に対して向き合っている様子が伺えました。

名前は、その人そのものを表す、とても象徴的で大切な要素です。最近では「子どもだけでなく教職員もそれぞれの呼ばれたい名前で呼びあう」という学校や、社内で互いにニックネームで呼び合う「ニックネーム制」を採用している企業も出てきています。(参考:大分合同新聞ヤッホーブルーイング

「『さん』に限らず、教員と子どもたちとの適切な関係が築けることが大切だと思います」という声の通り、ルールや統一の有無に関わらず、多様な子どもたちのニーズや感情に向き合う姿勢が大切なのかもしれません。

【このようなアンケートを作成したいと思った方へ】
「フキダシ」は、現役の教職員の方が無料で登録できるWEBアンケートサイトです。このアンケートは、WEBアンケートサイト「フキダシ」内にあるみんなに聞きたいことに寄せられた投稿から作成されました。投稿内容をもとに定期的にアンケートを作成しますので、フキダシでアンケート化してほしい話題がありましたら、ぜひユーザー登録をして投稿してください!


▼ 自由記述の回答一覧は、以下よりダウンロードしてご覧ください。 ▼

アンケート資料ダウンロード 申し込みフォーム

* 記入必須項目

■お名前*
■メールアドレス*
■立場*
■データの使用用途*
■ご所属
■教職員アンケートサイトフキダシへの登録を希望する
※対象は教職員の方のみです。
■メガホンの運営団体School Voice Project への寄付に興味がある

※メディア関係者の皆様へ
すでに公開されている教職員アンケート結果やWEBメディアの記事の内容等は報道の際に使用いただいて構いません。その際は【出典:NPO法人School Voice Project 】クレジットを入れていただき、事後でも結構ですのでご一報ください。

同じキャンペーンの記事

教職員アンケート結果まとめ

WEBアンケートサイト「フキダシ」で実施し、公表した教職員向けのアンケート結果を掲載しています。また、アンケート結果を元にトークをしている「メガホンRadio」や「メガホンChannel(Youtube)」もまとめていきます。

最新記事やイベント情報が届くメールニュースに登録してみませんか?

Emailアドレス*

メガホン編集部

NPO法人School Voice Project のメンバーが、プロやアマチュアのライターの方の力を借りながら、学校をもっとよくするためのさまざまな情報をお届けしていきます。 目指しているのは、「教職員が共感でき、元気になれるメディア」「学校の外の人が学校を応援したくなるメディア」です。

関連記事・コンテンツ

記事

記事はすべて無料です

続きをお読みいただくには簡単なアンケートにご協力ください。

※サイト運営の参考にさせていただきます。
※一度ご回答いただくと再表示されません。

ご職業やお立場をお選びください。

あなたの年代をお選びください。