【教職員アンケート結果】#教員不足をなくそう!実態調査 ~2024年度春ver~
昨今、学校現場では「教員不足」「講師不足」が深刻な問題となっています。今回の調査では、教員不足の実態を把握するため、現職教職員の皆さんから情報・意見を集めました。なお、教員不足が現在起きていない学校も調査対象としています。
アンケートの概要
■対象 :全国の小〜高校年齢の児童生徒が通う一条校に勤務する教職員
■実施期間:2024年5月10日(金)〜2024年6月3日(月)
■実施方法:インターネット調査(実施時の設問はこちら)
■回答数 :202件
アンケート結果
設問1 2024年度4月時点で、教員不足は起きている?
Q1. あなたの勤務校では、今年度スタート時点において、「教員不足」は起きていますか。欠員数をお選びください。
2024年4月時点では、約51%の学校で1人以上の教員不足が起こっていることがわかりました。NPO法人School Voice Projectが昨年度に行ったアンケートでは、2023年度4月時点で1人以上の教員不足が起こっている割合は約37%でした。この結果から、教員不足の実態は昨年度よりも深刻になっていることが伺えます。
設問2 教員不足によって、起こったことは?
Q2. 設問1で「教員不足が起きている」と回答した方にお聞きします。教員不足によって起こったことや、大変だったこと、エピソードを教えてください。(教職員・職場組織への影響、児童生徒への影響など)
教員への過重負担
専科だが、誰かが休む度に補欠に入るため、空き時間はしょっちゅう無くなる。残業(?)必至になる。疲れから体調を崩した。私が休むと今度は、専科による空き時間がなくなる担任の先生が体調を崩す。体調不良の連鎖が続く。みんなギリギリ頑張って、現場をもたせている。【小学校・教員】
正規の育休代替教員が見つからないため、時間給の講師になった。その講師には、クラブや委員会、行事なども分担できず、校務分掌ももてないため、正規の教員への負担が増える。【小学校・教員】
主幹教諭の業務と担任業務、加えて初任者の指導と物理的に時間が足りない。そのため、担任としての業務はほぼ全て持ち帰りで毎日3〜4時間は自宅で業務をする。【小学校・教員】
至るところにしわ寄せがいき、幼い子がいて時短勤務にしようにも結局超過労働せざるをえない状況。まず教員の家族が犠牲になり、そして教員の心身も蝕み、生徒・保護者対応へも余力がなくなっている。子どもが育つ環境として健全ではない。【高等学校・教員】
担任や教科担当者の不足
中学校で、学年に社会科教員がおらず、他学年から授業に入ってもらっている。他学年が、修学旅行等の行事になると、その期間社会の授業が組まれないことがある。また、社会科の教員は、週の授業時数が多くなり、教材研究や授業の準備に支障が出ている。【中学校・教員】
校長や教頭がクラスや部活動に入っている。授業を教えるのが非常勤の先生ばかりで生徒がテスト週間などに質問をしたくても、帰っていて会えない。怪我人の対応やトラブルの対応が人手不足。職員室に誰もいない状況が生まれてしまう。【中学校・教員】
支援が必要な児童生徒への対応不足
支援学級担任がいないことによって、支援学級在籍児童に対する支援がおろそかになっていた。【小学校・教員】
市の重点施策(訪問型通級教室)、本校の通級教室が機能していない。【小学校・教頭】
不登校児童の支援を担う生活指導加配が欠員の出ている理科の授業をしなければならず、その分不登校の児童に対する支援が行き届いていない。【小学校・教員】
最も深刻なのは、支援級及び、発達障がいのある子どもの安全を担保できないことです。
情緒が不安定な子どもが支援級の教室を飛び出しましたが、未配置によって、追いかける教職員がおらず、行方が分からなくなりました。一度、教室を施錠し、子どもたちを閉じ込めた状況をつくり、その子どもを探しに行きました。無事、校地内で見つかりましたが、事故等が起きていてもおかしくない状況でした。また施錠した教室の中の子どもたちも無事でした。その後、支援級については、教室から飛び出せないよう日常的に施錠をするようになっています。子どもの安全のために、人権が無視されるようなことをせざるを得なくなっています。【中学校・教員】
教員の健康面への影響
至るところに皺寄せがいき、幼い子がいて時短勤務にしようにも結局超過労働せざるをえない状況。まず教員の家族が犠牲になり、そして教員の心身も蝕み、生徒・保護者対応へも余力がなくなっている。子どもが育つ環境として健全ではない。【高等学校・教員】
抜けた人や足りない分をフォローするために、一人当たりの授業数や仕事量が増えて、体調を崩したり、心身を病んだりする人が増えました。【高等学校・教員】
教員不足が起こっていることによって、教員への過重な負担につながっているという声が多く寄せられました。正規教員の代わりに講師が配属されることによって授業以外の業務を担当できず、他の教員が部活指導や校務分掌などを担当している現状もあるようです。
また、担任の教科担当者の不在によって、校長や教頭が担任業務を務めたり、複数のクラスを統合して授業を行ったりするなどの対応をしている学校もあります。通常よりも少ない人数で業務を担当することによって、支援が必要な児童生徒への対応が行き届きづらくなっていることを懸念する声も目立ちました。
設問3 教員不足について、あなたの考えは?
Q3. 教員不足問題について、国・自治体等へ伝えたいこと、あなたの考えや改善策などを自由にお書きください。
教員の労働環境の改善
適切に労務管理を行い、児童数ではなく業務量に基づいた人員配置を行って行くことが必要では無いかと思います。【小学校・教員】
現状では「待遇改善」よりも「働きやすさを感じられる」方が、より人を集められると感じる。実習生や学生などに直接聞いても、「自分には無理そう」「続けていく自信がない」などの声がある。志のある人に諦めることなく、思い切って挑戦しようと考えてもらうことが必要。そのためには、「初任者は副担任とする(小学校)」「代替対応教員の配置」などの人的な支援策を導入してもらいたい。【小学校・教頭】
残業手当をつけるべきだと思います。手当が発生するようになれば、今やらなければならない仕事なのかどうかを吟味しながら、あと1時間でこれとこれを片付けよう、と能率的に仕事ができると思います。一般企業や私立ではみんなそのような考え方で仕事をしていました。【小学校・教員】
長年にわたり給特法を放置し、免許更新のような負担を増やすような施策を取ってきた国の責任は大きいと考えます。早急にとりくんで欲しいのが、30人以下学級の実現です。そのために教員の成り手を増やす施策を充実させ、給特法を無くし、教員の労働環境を整える施策を同時に進めて行ってほしいと考えます。【中学校・教員】
「教員はブラックな仕事」ということや、「教員不足で更に学校現場が疲弊している」という情報で、教員採用試験の倍率が下がり続けるという負のスパイラルに陥っています。これを断ち切るには、給料を増やし、教員定数を増やし、業務の仕分けをしたうち、学校がやらなくてもよいことに対する受け皿を用意することだ思います。いろいろな新しい取組が出てきて、コロナでICTが加わり、保護者の意識も様々で、それらを対応する学校現場も、ワークライフバランスが重要と言われる。その中で業務をこなすのは大変です。
学級の児童生徒数を減らし、教員の定数を増やさないと、授業や行事の質は低下します。教員を増やすには、給料をあげるしかないと思います。【中学校・校長】
業務量の削減や見直し
学校組織のあり方、しなくてもいい仕事をチームで対話して削減すること、チームで仕事をすること(低中高など)、学校現場でできることはたくさんあるので、組織マネジメントできる仕組みにしてほしい。組織マネジメントできる校長でないと変わらないので、チームで動ける仕組みにすれば辞める人が減り、なりたい人が増える魅力的な職場になる。【小学校・教頭】
一日あたりの仕事の量を勤務時間内で終わる量に調整する。具体的には、一校あたりの職員を増やし、一人あたりの業務量を減らす。または、業務自体を精選し、現在と同じ職員数で時間内に仕事が終了するようにする。【中学校・教員】
教育内容の削減や見直し
学習指導要領の内容を減らす。改訂で新しい内容を盛り込むなら、現行の内容を減らす。国主導で教師の仕事はここまでと明確に示し国民に提示する。【小学校・教頭】
学習指導要領の内容の削減も、勇気を持って取り組んでほしいです。現行の学習指導要領を策定するときに、教員の勤務時間内に収まる仕事量かどうか、という視点はあったのかどうか、疑問です。観点別評価もストレスが大きいです。教師がしんどいと感じることは、たいてい子どももやっててしんどい。良いと思うことを次々にやっていくと、一つ一つには意義があっても、積み重なるとしんどさになります。あえてやらないことのよさ、余裕があることのプラス面に注目してほしいです。【小学校・教員】
教員やその他専門職員の増加
余裕のある教職員定数を望みます。また、スクールサポートスタッフやICT支援員も配置してほしい。【小学校・教員】
小学校では、ギリギリの人数で運営しています。病気や自分の子どもの行事などで学校をあけるのも安心してできる状況ではおりません。数人ずつでよいので、余裕のある人員を採用してください。また、特別支援学級の定員8人は多すぎます。5人程度が限界だと思います。【小学校・教員】
授業だけでなく、朝の出欠確認、給食指導、放課後の生徒指導や部活動指導など、学校の中で教員が担っている仕事はフルタイム(もしくは残業としてそれ以上の時間)かつ多岐に渡ります。また、授業もそのコマ数だけでなく、その授業のための教材研究やプリントなどの準備、提出物や小テストの採点などをする時間も必要です。ひとりひとりが時間的にも心理的にも余裕を持って働けるように、教員不足のみへの対策ではなく、教員増をふまえた対策をお願いします。【中学校・教員】
部活動の地域移行
部活動の地域移行を早くに実現してほしい。平日は18:30を超えてから教材準備などをしている。土日も休めない。【中学校・教員】
部活動の負担が大きすぎる。若手が未経験の運動部に配属され、授業準備や指導案研究、生徒への対応の時間を十分に確保できず、結果として学級運営が円滑に進まない。【高等学校・教員】
部活動は地域移行して下さい。任意であり、強制ではないものです。それがほぼ強制の様な形になっているのが問題です。部活で苦しむ教員、その家族は大勢います。何かあれば責任を取らされる。業務外の事なのに、明らかにおかしいです。しかもそれが自己申告の評価に繋がるような事はあってはならないと思います。知り合いの先生は部活を断った事で、評価が下げられたと言っていました。有り得ません。【特別支援学校・教員】
教員が不足している現状に対しては、「業務量を削減してほしい」という声が目立ちました。具体的には、学習指導要領の内容削減、スクールサポートスタッフやICT支援員の配置、部活動の地域移行など、さまざまな意見が寄せられました。また、1人の教員が担当する学級の児童生徒数が多いことも負担の一つとなっており、教職員定数の増加や少人数制学級の実現を訴える声もありました。
その他、教員の多忙な働き方が教員志望者が減っている要因ではないかという声もありました。具体的な施策として、残業代の支給や働きやすい職場環境づくり、初任者の育成環境の確保などを求める意見がありました。
まとめ
昨年度に引き続き、教員不足の実態を把握するためのアンケートを実施しました。その結果、約半数の学校で1人以上の教員不足が起こっていることがわかり、年度当初時点での教員不足は昨年度よりも深刻さが増していることがわかりました。
それによって、教員の負担が増し、質の高い授業ができない状況や児童生徒一人ひとりに合わせた支援ができない状況につながっている可能性があります。教員不足は、教員の心身に影響があるだけではなく、児童生徒の学習環境にも大きく影響するものです。その実態を、重く受け止める必要があるのではないでしょうか。
NPO法人School Voice Projectでは、このアンケートをもとに、2024年6月12日に国会議員の方を招いたオンライン意見交換会を行いました。
オンライン意見交換会にあたり、呼びかけ人の末富芳・日本大学教授がまとめた資料を公開しておりますので、下記リンクよりご覧ください(画像をクリックするとpdfファイルがご覧いただけます)。
▼ 自由記述の回答一覧は、以下よりダウンロードしてご覧ください。 ▼
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メガホン編集部