【教職員アンケート結果】給特法改革、どう思う?
教員給与特別措置法(給特法)の議論が活発化しています。
自民党の特命委員会は、先に出した提言の中で、「教師は高度な専門性と裁量性を有する専門職」だとし、給特法の教職調整額を現行の4%から、少なくとも10%以上とすることを打ち出しました。まもなく出される予定の政府の「骨太の方針」に反映させ、予算化を進めたい考えです。
一方で、現職教員の西村祐二さんらからなる有志グループや、立憲民主党などは、教職員の働き方を抜本的に変えるために廃止が必要だと主張しています。
給特法に関して、教職員の方の声を聞きました。
※給特法についての解説記事は下記をご参照ください。
アンケートの概要
■対象 :全国の小〜高校年齢の児童生徒が通う一条校に勤務する教職員
■実施期間:2023年6月5日(月)〜2023年7月10日(月)
■実施方法:インターネット調査(実施時の設問はこちら)
■回答数 :111件
アンケート結果
設問1 給特法について、あなたの考えは?
Q1. 給特法について、あなたの考えに最も近いものをお選びください。
「教職調整額を引き上げるのがよい」を選択した方の主な意見
現状は調整額以上に働いていると思うので、10%に引き上げということ自体は歓迎したいと思います。ただ、どの選択肢にすれば良いか大変迷いました。調整額を引き上げたら、その分働けという気運になり、働き方改革の流れが後退するのではないかと強く懸念しているからです。【高等学校・教員】
私の場合、(自分の)子どものこともあるので、残業はほとんどなく休日出勤もしていませんが、家で相当仕事をしています。土日、学校で働くより長時間働くこともあるくらい。毎週ではないものの、土日は3時間くらいは平均で働いてます。残業代を払うということになると、持ち帰りの仕事が本当に無給になり、学校に残れる人だけしか恩恵を受けないことになるので、子育て中で残業できない人は、給料は減る(4%がなくなるとすると)けど仕事は減らないという悪循環が生じると思います。残業代が出るとなると、やはり残業代が欲しくて、今まで以上に残業する人も出ると思います。【小学校・教員】
残業代よりも給特法を上げた方がボーナスによい影響がありそうだからです。能力の高い人は短い時間で成果を出すことができます。残業代は能力がない人に払うことにもなりかねない。でも、10%にするのがもったいない残念な人もいます。メリハリのある給与支払いができるのが理想ですが、そのために管理職が多忙になるのは反対です。【小学校・教頭】
教職調整額の基準が昔の月の超勤が8時間だったころと変わらない点に問題があると感じる。現状の教員の業務量に対する対価として、適切な額が支払われるべきであると考える。ただし、このことと業務量や超勤時間の削減とは別問題なので、そこは別の議論が必要であると考える。【小学校・教員】
学年主任や特別支援コーディネーター、若手の指導者など、役割ごとに調整されるとよいと思う。また、現場は慢性的な人手不足のため、欠員が出ている場合にはその分の負荷がかかっている職員に十分な手当が必要だと感じる。【小学校・教員】
実際には調整額を引き上げても問題は解決しないと思うが、賃金が引き上げられることで教員のイメージは多少上がるのではないかと思う。【中学校/高等学校・教頭】
残業は、やる気のある人ばかりか、効率の悪い人も多くなる。専門性を考えて、教職調整額の引き上げが良いと思う。教職調整額をなくして、残業代を支払うための残業時間をどのように管理するのか想像できない。現状から時間外勤務を20時間にするには、無理がある。時間外勤務上限月45時間、年間360時間を目指していくことを基準に考えると、15%で様子を見たい。100倍近い市役所職員の倍率と2倍を切る教職員の倍率の推移を見ながら、改正を重ねてほしい。子どもたちに直接接していく教員には、より優れた人材を充てていける状況をつくってほしい。【小学校・校長】
「完全に廃止するのがよい」を選択した方の主な意見
調整額を引き上げるのは、「給料上げるから、今後も変わらず働いてくださいね!」としか思えません。完全廃止して時間外勤務分の対価を貰った方がいい。【高等学校・教員】
4%という数値は、昔の状況のもの。完全に廃止し、給料を上げ、労働基準法を適用してほしい。引き上げる=残業ありきになってしまい、健康と安全が守られない。【小学校・教員】
とりあえず「働かせ放題」は廃止し、実態に見合った残業代を支払ってほしいから。給特法ができた頃と今では、学校に求められる理想や教員がする仕事内容が大きく異なっているため、まずは現状を把握してほしい。その上で、適切な人員と賃金を確保してほしい。【高等学校・教員】
結局公立学校教員は定額働かせ放題になることは変わらない。現時点よりも学校が抱える業務が増えることはあっても減ることはなく、時給換算すれば最低賃金を下回る教員もいる現状が変わらないのは明白。また、国立・私立学校教員には時間に応じた残業代があるのに、管轄官庁(都道府県部局)が異なるだけで給与体系が異なるのはいくら現状は特給法があるとはいえ、不平等だと思う。【高等学校/高等専門学校・教員】
教職調整額を引き上げただけでは、長時間労働に歯止めがかからず、教員は疲弊します。労働を労働と認めない給特法は廃止し、教員にも労働基準法を適用してください。このままでは、教員になりたい人がいなくなり、現場で持ちこたえている教員の労働環境は、さらに悪化すると思います。労働環境が改善されれば、一度離職した潜在教員も、また働きたいと思えるようになると思います。1人が抱える業務量を減らすために、人に予算をかけ、全員が残業をしないで業務か遂行できる環境に整えてください。【小学校・職員】
完全に廃止して、民間と同じだけの残業代を時間給で出すべきだ。給特法は時代遅れの法律で、労働基準法に違反している。例えば自分の自治体では休日の部活動手当は6時間で日給4400円と最低賃金以下の時給である。私立校はしっかり残業代が出ているのに、ものすごくおかしく人権侵害であるとすら感じる。【特別支援学校・教員】
給特法の存続自体が定額働かせ放題の容認になる。教職調整額の引き上げは「引き上げたのだから文句を言わずに働け」という風潮を生み、定額働かせ放題の実態は改善しないままになる。抜本的に改善するためには完全廃止しかありえない。部活動の指導などは早急に地域に移行し、指導したい教員は兼業として指導員をすればよい。スポーツ活動や文化活動を社会で維持していくためには地域で運営していく方がより健全で学校に頼るのは間違っている。【高等学校・校長】
10%以上の残業をしている教員が多く、調整額を引き上げても実態にあっていない。調整額が一定のままでは、残業時間を減らそうという意識が生まれてこない。【義務教育学校・教員】
「残業時間の上限を定め、それ以上は残業代を出すのがよい」を選択した方の主な意見
教師の側にも、無駄に仕事をせず、効率よく仕事をして下校する意識改革は必要だと思うから。【中学校・教員】
基本的には、残業代を出すべきです。残業代を出すことになれば、教員の仕事を整理して、勤務時間内に制限するということもようやく真剣に議論されるはずです。勤務時間の管理も含めて、ちゃんと国政で議論されるべきだと思います。【中等教育学校・教員】
現状の教員配置や業務量では残業または持ち帰りがやむおえない場合が多い。現状の教員配置や業務量が変わらないとすると、せめても上限を定めた上で、残業代を支払って欲しい。個人的には家庭の状況で持ち帰り仕事にならざるを得ず、残業にはカウントされない。そのため、合わせて教員配置の見直し(増員)と業務量の削減を行うべきだと考える。【高等学校・教員】
残業の内容を把握するためにも残業申請をし、認められた残業についてはきちんと報酬を支払うことで、どのような業務が残業となってしまっているかを把握し、全体的に勤務環境を整えていくことができるのではないかと思うから。【中学校・職員】
まず残業時間の上限を課すことで、業務の精選を図るという意識を管理職、教職員にも醸成させないと、現状の業務過多は変わらない。業務の申請をして、対価は支払うようにするべきだと思う。【中学校・教員】
残業時間の上限を定めることで、勤務時間外の会議や部活動指導、土日のPTA行事への参加等の時間外労働を見直す動きや、学校行事の縮小等を進める動きが政治家主導で起きることを期待しているため。しかし業務量を減らす改革もセットで進めてくれないと、持ち帰り仕事が増えるだけなので意味がないと思う。ただでさえコロナ禍に縮小した学校行事を完全に元に戻そうとする動きがあるので…。【小学校・教員】
「現状のままでよい」を選択した方の主な意見
義務教育の小さな学校だと、非常勤講師は授業以外の時間勤務は皆無で、教材準備、教材研究はもちろん、評価にかかる時間もボランティアです。その予算をこちらに回して欲しいです。【中学校/高等学校・非常勤講師】
基本給を充実させ、業務時間内に終わるような人員配置をする方が大切と考えるため。【小学校・事務職員】
「その他」を選択した方の主な意見
教職調整額を引き上げても、正当な残業代には届かない教員の方が多い。廃止すると、より一層のやりがい搾取状態となる。残業時間の上限は決められない。部活動ガイドラインと同様、「原則」という言葉が付き、なし崩しになる。とは言え現状のままではいけない。
「児童生徒が教職員管理下の学校敷地内にいていいのは職員の勤務時間内(例外は災害時、指導時のみ)」という決まりさえつくれば、教職調整額が妥当なものに近づく可能性が高い。この決まりを、全国の公立小中学校に徹底させてほしい。願うのはそれだけです。【中学校・教員】
残業は基本的に禁止であることが重要だと思います。また、ヒラの教員の数に対して管理職が少なすぎるため、業務内容を適正に管理することも難しいと思います。高校でいえば停学などで保護者に来てもらう際に18時にしか来れないとなったときなどに、残業代を支給すれば良いと思います。【高等学校・教員】
勤務時間が増えているのは教師がやる内容が増えている、個々の児童への対応が昔と比べより複雑化していることや保護者対応、地域対応が増えているなどが考えられる。ならばそれに見合う対価を出すべき。また、育児や介護で家庭に持ち帰って仕事をしているの方々が多いのだからそれに見合う代価も出すべき。【小学校・副校長】
教員の業務を一律的にとらえると、時間内で雇われている中での業務への対価となるため、根本的に変わらない。授業、教材研究、学級経営、生徒指導、進路指導、校務分掌、試験、評価、指導計画作成、保護者対応、部活動等、それぞれの業務に対して対価を支払うシステムとするべきである。なお、立場によって各業務への責任度は違っているため、学年主任、校務分掌担当、教務主任、など立場による加算が必要である。【特別支援学校・教員】
「わからない」を選択した方の主な意見
教職調整額が今のままでいいか、と聞かれれば「おかしい」と思う。ただ、それが4%から10%に引き上げられたから、現状の業務量をこなし続けるのもおかしいと思う。まずは、教職員の業務量や負担を減らすことを検討するべきであると考える。調整額は、それに応じた金額を検討するべきではないだろうか。【中学校・教員】
残業時間の上限を決めたり、残業代を出したりする動きが強まると、残業代ゆえに「これは教員の仕事ではない」「なぜこんなことに時間を使っているのか」と、それぞれの教員が必要と考えている仕事が強制的に「必要のないもの」と切り捨てられてしまわないか心配です。やはり人を増やし、もっと自由に働ける環境にしてほしいと思っています。とはいえ、給特法があるためにコストなく仕事が増やされ続けている、という指摘はごもっともだとも思います。難しい問題です。【中学校・教員】
今のままでは教員の働きに見合っていないとは思うが、額を上げれば良しとも思わない。そこにお金を使うよりも、現場にもっと人を入れて、一人一人の負担を減らすことが優先されて欲しいと感じる。【小学校・養護教諭】
まとめ
給特法について、「完全に廃止するのがよい」と回答した人は全体の40%と最も多く、次いで「残業時間の上限を定め、それ以上は残業代を出すのがよい(23%)」「教職調整額を引き上げるのがよい(20%)」の順番で多い結果となりました。
年代別に見ると、20代では「完全に廃止するのがよい」と回答した人は約半数にのぼり、50代までは、年代が上がるに連れてその割合が下がっていく傾向が見られました(30代で46%、40代で38%、50代で22%)。また、「完全に廃止するのがよい」と回答したのは男性が52%、女性が28%。「残業時間の上限を定め、それ以上は残業代を出すのがよい」と回答したのは男性が12%、女性が35%と、性別によって回答に差がありました。「残業時間の上限を定め、それ以上は残業代を出すのがよい」もしくは「教職調整額を引き上げるのがよい」と回答した人は全体の約4割にのぼり、さまざまな意見があることもアンケート結果から読み取ることができました。
教職調整額の引き上げを支持する理由は、「現状は教職調整額以上に働いているから」「教員を志望する人が増える可能性があるから」など。教職調整額の引き上げを支持しない理由は、「残業ありきの働き方になりかねないから」「それだけでは長時間労働に歯止めはかからないから」などの意見が上がっていました。
残業代の支給を支持する理由は、「業務の精選を図る意識が管理職や教職員に醸成されるから」「時間外労働を見直す動きや、学校行事の縮小等を進める動きが起こることを期待しているから」など。残業代の支給を支持しない理由は、「持ち帰りの仕事が無給になり、学校に残れる人だけしか恩恵を受けられないから」「残業代が欲しくて今まで以上に残業する人が出る可能性があるから」などの意見が上がっていました。
また、教職調整額の引き上げや残業代の支給以外の案として、「労働基準法の適用」や「役職や業務による給与の調整」などを望む声も。さらに、給与形態の見直しだけではなく、業務量の削減や働き方の改革なども合わせて見直し、一人ひとりの負担を減らすことの重要性を訴える声も多く集まりました。
▼ 自由記述の回答一覧は、以下よりダウンロードしてご覧ください。 ▼
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メガホン編集部