【教職員アンケート結果】スクールソーシャルワーカーと教員向け緊急アンケート
近年、児童・生徒が抱える課題の複雑さ・多様性への認知が高まり、法や仕組みの整備が進んでいます。一方で、学校では多忙な教員に仕事の量的にも質的にも多くのことを求めすぎている状態です。
そのような状況を踏まえ、NPO法人School Voice Projectでは、「すべての子どもが安全・安心に生活を送り、学校に通える環境を整える」ためにはスクールソーシャルワーカー(以下、SSW)の配置拡大が効果的であると考えています。学校に配置されるSSWの増加を目指して、SSWの配置・活用状況に関して全国のSSWと教員の声を集めました。
アンケートの概要
■対象 :全国の小〜高校年齢の児童生徒が通う一条校に勤務する教職員(SSWを含む)
■実施期間:2023年5月3日(水)〜2023年6月5日(月)
■実施方法:インターネット調査
■回答数 :452件(SSW:207件、SSW以外の教職員:245件)
■協力 :大阪公立大学・山野則子教授 / 一般社団法人日本ソーシャルワーク教育学校連盟
アンケート結果
設問1 教員とSSWが一緒に働く効果は?
Q1. 教員とSSWが一緒に働くことにより、どのような効果が期待できると思いますか。
「視点の多様化による支援の選択肢拡大」「教員の精神的負担の軽減」「外部機関との連携による支援向上」「早期介入による深刻化防止」は9割以上の人が「とてもそう思う」「そう思う」と回答しました。「教員の時間的負担の軽減」については、「あまりそう思わない」「全くそう思わない」と回答した人がSSWで21%、SSW以外の教職員で15%おり、他の項目よりも効果を実感している人が少ないことがわかりました。全体的に、SSWとSSW以外の教職員での大きな回答の違いは見られませんでした。
設問2 教員とSSWが一緒に働く難しさは?
Q2. 教員とスクールソーシャルワーカーが一緒に働く上での難しさについてお聞きします。以下の文章にどの程度同意しますか?
SSWと教員が一緒に働くことの難しさとして、「SSWの勤務日数が少なく協働しにくい」「SSWを活用する状況が不明瞭」「SSWに相談するタイミング・方法が不明瞭」が多く選択されていました。「教員がSSWに相談する必要性を感じていない」については、SSWの68%が「とてもそう思う」「そう思う」と回答していたのに対して、SSW以外の教職員では29%に留まりました。この点は、SSWとSSW以外の教職員で認識の違いがあるようです。
設問3 SSWの学校への適切な配置頻度は?
Q3. ソーシャルワーカーの各校への配置として、適切な頻度はどの程度だと思いますか。
SSWの学校への適切な配置頻度としては、「5日」が46%と最も多い結果となりました。その他は、「1日」「2日」は12%、「3日」は17%、「4日」は7%と、回答のばらつきが見られました。
設問2では、教員とSSWが一緒に働くことへの難しさについて、「SSWの勤務日数が少なく協働しにくい」に「とてもそう思う」「そう思う」と回答したのは、SSWで90%、SSW以外の教職員で82%でした。文科省が発表した令和5年度SSW活用事業では中学校区につき週1回3時間のSSWを配置することを想定して予算配分(※1)をしていますが、学校現場ではSSWの勤務日数が少ないと感じている教職員が多いようです。また、少なくとも11都道府県で週当たりのSSWの勤務時間が1時間未満(※2)であることもわかっています。
※1:「スクールソーシャルワーカー活用事業 令和5年度予算額」より
※2: 「令和3年度 スクールソーシャルワーカー実践活動事例集」をもとにNPO法人School Voice Projectが独自集計。以下のデータを拡大してご覧になりたい方は、画像をクリックしてください。
設問4 SSWの活用について、あなたの意見は?
Q4. スクールソーシャルワーカー活用について、ご意見があればお書きください。
SSWの勤務時間を増やしてほしい
配置1年目、こちらも新任1年目、どのように活用したら良いかお互いに手探りです。 学校で起きる問題も教員間で解決され、SSWにあまり共有されていない面も。共有されたとしても、「今日明日」の緊急案件は週1勤務では関与できない。【SSW・高校・神奈川県】
家庭状況が年々複雑になり、学校だけの支援が難しい状況にもなっている。また、いじめ対策もSSWが必須となっている中、人的な配置は重要度が高い。教職員にとっても頼りたい専門家だが、来校日数が少ないことで情報共有やケース会議が組みにくい状態が続いている。【主幹教諭・中学校・大阪府】
SSWは管理職とのやり取りのみで、かつ月に数回程度しか来校しないため、SSWに相談したいことは全て校長に伝えている状況。(顔も見たことがない)なので、そもそも教員の「SSWとは何か、どんな役割なのか」などの認知度が低いのは、共に働いていないからだと考えている。【教員・小学校・福岡県】
勤務日が少ないため、状況が重篤な場合にのみSSWを活用している現状かと思う。しかし、ほかにもSSWの力を借りたい場面は多い。こちらから相談をして初めて動く…のではなく、常に学校の中にいて、各教室や休み時間の様子も見て、SSWからの視点で話をしていただけるようになると、助かる子が増えると思う。【教員・中学校・福島県】
SSWの勤務・契約形態を見直す必要がある
・教育委員会が単年度雇用をしている非正規雇用なので、雇用関係のある教育委員会の意向に沿わなければ雇用継続維持できず、自然に教育委員会・教員サイドに傾いた対応をせざるを得ない。
・現在の週2.3日&9時〜17時の働き方で生計維持はできず、主たる生計者となりにくい。連続性ある支援、専門性発揮のできる質の高いSSWrが集まりにくい。【SSW・小学校・千葉県】
派遣型のSSWの配置では、教員が気づき、派遣要請を行ったケースにしか対応できない。教員だけでなく、カウンセラーやSSWの多角的な視点でこどものニーズを積極的に発見することが、問題の深刻化、複雑化を防ぐことができる。【SSW・小中学校・福井県】
市によってはSSWはアセスメントをするだけで家庭訪問などの直接的な関わりはできないらしいが、できるようにしてほしい。【副校長・中学校・大阪府】
SSWを育成する仕組みが必要
自治体にSV(スーパーバイザー)が配置されていないため、支援体制において重要な要素が欠けている状況。主任SSWが存在しているものの、学校とSSWの関係や効果的な活用に関心がないとのことであり、相談しても適切な助言やアドバイスが得られることはない。【SSW・中学校・兵庫県】
SSWの活用に関して、そのSSWの質の担保も行わなければ、結局のところ、学校側の負担にも影響すると言える。その人材をどのように確保し、どのような人材へと育成するのか、それを誰がどう担ってくれるのか、その部分をきちんとしなければ、結局学校側にまるなげになったり、学校の活用しやすいようなSSWの動きとなり、本来の意図となるものになっていかないように感じています。【SSW・小中学校・香川】
SSWの介入の仕方へのしっかりしたマニュアルがないため、SSWの力量に頼らざるを得ない。【教員・小学校・東京都】
SSWの活用方法がわからない
教員(管理職含む)とSSWが、お互いの役割やシステム文化を知り合う機会を持つことが難しく、手探り状態になっている。教員の時間的余裕のなさと、SSWの雇用形態が拍車をかけているように思う。【SSW・中学校・三重県】
派遣している教育委員会から、どう活用するのか具体的な指示や教育が足らないために派遣先で孤立したことがあり、 なんのために配置されているのか疑問を抱いたときがあった。 管理職やコーディネーターの理解が足りないと仕事にならず、協働にはつながらない。週1回の勤務では信頼関係を築くこともむずかしい。【SSW・小学校・京都府】
SSWの配置拡充も重要ですが、教員のSSWへの理解がとても不足しています。 SSWが福祉的な立場で関わること、子供を中心に据えること、学校をプラットホームとして協同していくことへの意識がとても低いことを業務内で感じています。 SSWは教員の負担を軽くするためにも動きますが、現在はSSWが介入した時点で教員側が丸投げになっている現状です。 【SSW・小中学校・埼玉県】
教育事務所に所属しているため、会ったこともありません。SSWに相談したいこともありましたが、どのタイミングで来校してくださるのか、対象児童に会ったこともない方にどのように相談したら良いのか、よくわからずそのままになってしまいました。【教員・小学校・群馬県】
教員にSSWを活用する意識が少ない
児童に関わる事の全ては担任が担うべきという文化があり、SSWを活用する事には担任の力不足と見られる向きがある。【教員・小学校・神奈川県】
ほとんどの児童生徒に関する問題対応(メンタルヘルス、非行など)は、担任を中心に解決をするという「担任制度」が根強い気がする。 「SSWに仕事を振る必要は特にない」と感じている教員は少なくない。約束事として「家庭の経済的な問題が深刻な場合はSSWに相談をすること」といったルールさえある。【SSW・高校・青森県】
教員の負担軽減にはつながりづらい
相談できるところがある分精神的な負担は減るが、突発的な案件があった場合は、教員が対応せざるを得ない。また時間的制約があるため、毎回、教員とケース会議をひらけるわけではない。常勤ではない現状では、本人との面談につながる場合もあるが、SCの活用と同様に、教員へのコンサルティングが中心となり、時間的な負担については、あまり変化がない。【教諭・高校・大阪府】
SSWと連携する時間がない
SSWの存在は知っていても、相談できる時間や場所がない。勤務時間が短く、基本教育委員会にいるので対話もできない。特別な場合で、間にコーディネーターや市教委が入った場合でも、1人が抱えている相談件数が多いためか具体的な子どもの支援にはつながりにくい。【教員・小学校・大分県】
設問5 勤務校でのSSWとの関わりは?
Q5. 【教員向け設問】あなたの現任校でのスクールソーシャルワーカーとの関わりについて、当てはまるものを教えてください。(複数選択可)
勤務校でのSSWとの関わりについては、多い順に「ケース会議(47%)」「児童・生徒に関する軽い相談(37%)」「外部機関についての質問・相談(27%)」という結果となりました。「来ていない(27%)」「関わったことはない(15%)」という回答も目立ちました。
設問6 SSWとして働く上での課題は?
Q6. 【SSW向け設問】スクールソーシャルワーカーとして働き続けるうえで課題だと感じることを教えてください。(複数選択可)
SSWとして働く上での課題としては、多い順に「有期契約という身分の不安定さ(76%)」「勤務校でのSSW活用体制の不整備(66%)」「非常勤契約による仕事の掛け持ち(59%)」という結果となりました。支援の体制が整っていないことに加え、雇用の不安定さを課題に感じている人が多いようです。
まとめ
本アンケートには、教員だけではなく、SSWとして学校で働く方からも多く回答をいただきました。
教員からはSSWとの連携の必要性を感じる声が多く集まりましたが、一方で、「SSWとどう連携すれば良いかわからない」「連携しても業務の負担が減るわけではない」という声もありました。SSWからは、SSWの活用方法の不明瞭さや教員とのコミュニケーション機会の少なさによって、上手く支援に入れないもどかしさを感じているという声が多く集まりました。
さまざまな意見が集まった中で特に目立ったのは、「SSWが学校にいる時間が短い」という内容。SSWの学校への適切な配置頻度として、「5日」と回答した人が約半数にのぼりましたが、実際はそれよりも少なく、なかなか連携が進まない現状があるようです。SSWの雇用の不安定さも課題にあがっていました。SSWが活躍できる時間の短さによって、「必要なときに支援を頼めない」「SSWの活用方法がわからない」など、さまざまな課題を引き起こしているのではないでしょうか。
また、教員間で「子どもに関わることはすべて担任が担うべき」「SSWを活用するとは担任の力不足」という考え方もあるようで、その価値観がSSWとの連携をしづらくしている側面もあるようです。
NPO法人School Voice Projectでは、「すべての子どもが安全・安心に生活を送り、学校に通える環境を整える」ためにはSSWの配置拡大が効果的であると考えています。福祉の専門家として学校に配置されるSSWの増加を目指し、今後も政策提言活動を続けていきます。
▼ 自由記述の回答一覧は、以下よりダウンロードしてご覧ください。 ▼
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