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【教職員アンケート結果】多様な性のあり方を踏まえた学校づくりについて

  • メガホン編集部

多様な性のあり方が少しずつ社会的に認知される中で、学校のあり方に対しても問い直しが起こっています。この数年は特に、LGBTQ+当事者をはじめとする児童生徒が、学校の制服や校則、学校生活上の対応等について、変更や改善を求める声を上げるケースも増えてきています。多様な性のあり方を踏まえた学校運営について、全国の学校に勤める教職員に聞きました。

※LGBTQ+:「性的少数者」の総称の一つ。「性的少数者(セクシュアルマイノリティ)」を代表するレズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、クエスチョニングの5つの頭文字を取った言葉に、「+(プラスアルファ)」を付けた通称。クエスチョニングとは、自身の性自認や性的指向が定まっていない、もしくは意図的に定めていないセクシュアリティを指す。

※自由記述欄に寄せられた回答を掲載した部分では、一部つらさを感じる方がいるかもしれない内容が含まれていますが、あえてそのまま掲載しています(全回答を見ることができるダウンロード資料も同様です)。

アンケートの概要

■対象  :全国の小〜高校年齢の児童生徒が通う一条校に勤務する教職員
■実施期間:2023年1月19日(木)〜2023年2月20日(月)
■実施方法:インターネット調査(実施時の設問はこちら
■回答数 :104件

アンケート結果

設問1 多様な性のあり方を踏まえた取り組みは進めるべき?

Q1. 多様な性のあり方を踏まえた学校づくりの取り組み(現行のルールや仕組み等の改革や改善)を進めるべきだと思いますか?

全体の約9割の人が、多様な性のあり方を踏まえた学校づくりの仕組みを「積極的に進めるべき」と回答しました。特に、若い世代ほど「積極的に進めるべき」と回答した人の割合が高い傾向が見られました。

設問2 多様な性のあり方を踏まえた学校運営、どんな取り組みが必要?

Q2. 多様な性のあり方を踏まえた学校運営として、あなたは勤務校において、どのような取り組みが必要だと思いますか?(複数選択可)

全体的には、「教職員向けの研修や啓発(76%)」「制服のジェンダーレス化・選択制(75%)」「着替えや宿泊行事の際などの配慮/工夫(75%)」が特に必要だと思っている人が多いことがわかりました。

校種別で見ると「保護者、地域への啓発」は小学校77%、中学校57%、高等学校36%と、児童生徒の年代が上がるにつれて必要だと思う人の割合が減少。「いじめの予防や、早期対応ができる体制づくり」についても同様に、小学校61%、中学校54%、高等学校45%と、児童生徒の年代が上がるにつれて必要だと思う人の割合が減少する傾向がありました。

「頭髪や服装に関する校則やルールの見直し」については、小学校で必要と感じている人の割合は45%だったのに対して、中学校は81%、高等学校は73%でした。

設問3 LGBTQ+当事者の児童生徒が抱えやすい困難、知っている?

Q3. 多様な性のあり方について、LGBTQ+当事者の児童生徒が学校生活上抱えやすい困難について、あなた自身はどの程度知っていますか?

「よく知っている」「ある程度知っている」と回答した人は、全体の約8割程度でした。所属する校種や回答者の性別による大きな違いは見られませんでした。

設問4 LGBTQ+当事者の児童生徒が抱えやすい困難、同僚は知っている?

Q4. 多様な性のあり方について、LGBTQ+当事者の児童生徒が学校生活上抱えやすい困難について、職場の同僚はどの程度知っていると思いますか?

自身の同僚に対しては、LGBTQ+当事者の児童生徒の困難について、「よく知っている人が多いと思う」「ある程度知っている人が多いと思う」と回答した人は、約35%にとどまりました。

設問5 多様な性のあり方を前提とした学校づくり、進んでいる?

Q5. あなたの勤務校において、多様な性のあり方を前提とした学校づくりの取り組みは進んでいると思いますか?

勤務校における多様な性のあり方を前提とした学校づくりの取り組みについては、「全くそう思わない」「あまりそう思わない」と回答した人が約75%にのぼりました。

設問6 多様な性のあり方を踏まえた学校運営、どんな難しさがある?

Q6. 多様な性のあり方を踏まえた学校運営について、どのような難しさを感じていますか?(複数選択可)

多様な性のあり方を踏まえた学校運営の実現について難しさを感じている点は、「教職員が多忙で、取り組みを進めるための話し合い等の時間がとれない」が約70%で、その他の選択肢に比べて圧倒的に多い結果となりました。校種別に見ると、特に小学校と中学校でその傾向が強いことがわかりました。

設問7 子どもたちに対して、どのような配慮が必要?

Q7. 学校教育の中で、子どもたちのジェンダーやセクシュアリティに対してどのような配慮が必要だと考えますか? また、多様な性のあり方を踏まえた学校運営について、あなたの意見や考えを自由にお書きください。(任意)

学校運営や教職員の知識理解について

人権教育として押し付けられるよりも、まずはどんな困り事があるのか教員がイメージを持つことかなと思います。ワークショップ的な研修を重ねて、自分たちの学校運営を見つめる機会が必要だと思います。【小学校・教員】

まず教師側が圧倒的に知識不足すぎる。発言、行動の端々に現れている。なので、保護者たちも巻き込んで、徹底的に研修をした方がいい。その上で、校内の問題点をみんなで総点検して洗い出し、優先順位を決めて直す。【中学校/高等学校・教員】

教員の理解がまずは大切だと思う。ハード面をどれだけ整えてもソフト面が変わっていなければ傷つく。きちんと理解した上での支援を考えたいが、教員によって意識も学ぶ意欲もばらつきがある。【特別支援学校・職員】

僕は当事者でゲイの教員です。制服や名簿のこと、委員会の事もそうですが、何より先生方の受け入れ態勢が出来ていません。どうしても「気持ち悪い」「中学生くらいの年齢にはよくある事」「LGBT系だよねw」などといった茶化したりヘイトしたりといった雰囲気があります。教員が普通のこととして接したり発信したりすることが大切だと感じますが、人それぞれの認識をかえるのはやはり難しいです。【中学校・教員】

児童・生徒への関わりや学ぶ機会の提供について

ふだんの授業などにおいて、ジェンダーロール(性別による役割を期待されること)の固定化に繋がらないような言動を心がける。【小学校・教員】

性的同意、デートレイプなど、自分の身を守るための知識をきちんと教えるべき。【中学校・教員】

生徒たちの屈託のない会話の中で、「こいつホモやで」とか「女みたいや」などの言葉を頻繁に聞かれること、それに対して、頭ごなしに「間違っている」と否定するのではなく、さりげなく諭すようにすること。【高等学校・教員】

学活や、道徳、人権尊重教育などで、包括的にジェンダーを学ぶ機会はほぼないです。ジェンダーだけではないですが、成長に合わせた人権意識の啓発は大人、教師側から研修を行い、定期的に授業等で指導する体制を担う必要があるのでは。(生徒指導部や支援教育指導部などが中心的に担える体制つくりも含める)【中学校・教員】

校則やルールの見直しについて

今課題と考えているのは、委員会の男女1人ずつのルール。やるなら、全学年で一斉にやりたいが、自クラスだけというわけにもいかず。【中学校・教員】

男だから、女だから…という垣根(性差)は、身体測定や内科検診など、限られた場面でのみ必要です。どういう場面でどのような課題があるのかといった実態を把握し、対応策を練るべきかと思います。【小学校・教員】

勤務校では、今年度から、女子はスカートだけでなくスラックスも選択出来るようになりました。しかし、全校集会、学年集会などでの整列は必ず男女各一列であったり、委員会活動では、「クラスから男女各1名ずつ選出する」であったり、必ずしも性別で区切る必要の無いものも未だに男女で区分け来ることが多くあると感じます。【中学校・教員】

まず、不要に男女に分けることを積極的にやめるべきである。そして、ジェンダー問題としてだけでなく、そもそも子ども1人1人が違うという認識のもとでの学校運営が必要である。普段身につける制服は、さまざまな生徒に対応できる形が良い。しかし、伝統だから、という理由でなかなか変わらない学校もある。管理職が多様な性に対する理解を示さないと、なかなか対応は進まない。【高等学校・教員】

本当に制服を廃止するべきだと思います。毎日の服選びが困難だとか、家庭の経済的にたくさんの衣類がないご家庭のことも考えると、せめて標準服のような位置付けのものがあればいいかなと思います。制服廃止が進まない大きな理由は、制服じゃないと学生らしくないという大人の都合のような気がします。【中学校・教員】

物理的な環境設定について

着替えやトイレなどについて、「だれでもトイレ」などの設備面を強化すること。【中学校・教員】

設備面では、校舎内の設備がとても古い構造なので、更衣室がなく、トイレも多目的トイレは、体育館に1ヶ所だけという形であり、対応できるとは言えない施設であります。行政側が設備改修に早急に対応する事も大事だと考える。【中学校・教員】

トイレの問題も大きい。しかし、多様性の対応するトイレが必要だと感じても、それが実際に学校につくれるのかと言えば、今のままでは永遠につくれない。予算や物理的な問題もあるが、生物学的男女が共同で使うことに対する不安感が社会でもあるように、きっと学校でもその不安は生じるというような問題もある。【小学校・教員】

当事者への合理的配慮について

修学旅行などの宿泊行事でFTMの生徒が、男子生徒と同じ部屋で宿泊することを希望した際、同室の生徒および保護者に了承を得ないといけませんでした。これはカミングアウトを強いられているのでは?と思います。【高等学校・教員】

私も以前、「体の性は男だが、恋愛対象はどちらも」というバイセクシャルの生徒を担任したことがある。周囲の生徒も理解があり、そのことは受け入れられていた。教員が啓発することで、思った以上に子どもは受け入れられる。我々の姿勢が問われていると感じる。【中学校・教員】

当事者の生徒が、他の理由もあるとは思うのだが男女を意識させられる体育の授業に参加できていない。体力や技能的な面で男女別に行う必要もあるとは思うが、その子への対応がなされていないのが気になる。【中学校・教員】

小学校段階では、なかなか児童から相談が上がってこない実態があります。保護者や児童への啓発や相談体制を整えることから始めたいと思いますが、まだまだ職場内に必要感が生まれていない現状です。【小学校・教員】

啓発について

啓発活動が必ずしも良いとは感じない。自然な形での配慮は必要だと思うが、啓発活動が極端な意識を生むことが考えられ、それが関わりにくさにならないとも言えないと感じる。【中学校・SC】

学校図書館や教室など校内で多様な性のあり方に触れられる機会(本やポスターなど)を増やすこと。【中学校・教員】

まとめ

多様な性のあり方を踏まえた学校づくりの仕組みは、積極的に進めるべきだと考えている人は約9割にのぼりました。一方で、アンケートの回答全体からは、実際に取り組みを進めていくことへの困難さがあることが伺えました。

取り組みを進める際の弊害としては、「教職員の知識や理解の不足」が多く上がっていました。ただ、「教職員が多忙で、取り組みを進めるための話し合い等の時間がとれない」と感じている人は約7割にのぼり、「時間のなさ」も教職員の知識や理解の不足に繋がる要因の一つではないかと推測できます。

LGBTQ+当事者への児童生徒が抱えやすい困難について、回答者自身が「知っている」と回答した人の割合は約8割であったのに対して、「職場の同僚は知らない人が多いのではないか」と感じている人は7割弱いることがわかりました。

多様な性のあり方を踏まえた学校運営については、教職員の理解の重要性や校則やルールの見直し、LGBTQ+当事者の児童生徒への合理的配慮の難しさを訴える声も寄せられました。このアンケートに回答してくださった教職員の方の間でも、異なる意見、対立する意見が見られ、学校内での共通理解・共通認識がまだまだ形成途上であることが読み取れます。

すべての児童生徒の存在・声が無視されず、安心安全に過ごすことができる学校づくりを進めるために、School Voice Projectでは引き続き現場の声を集めて実態を掴み、改善のための方法を教職員の皆さんとともに模索していきたいです。


▼ 自由記述の回答一覧は、以下よりダウンロードしてご覧ください。 ▼

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NPO法人School Voice Project のメンバーが、プロやアマチュアのライターの方の力を借りながら、学校をもっとよくするためのさまざまな情報をお届けしていきます。 目指しているのは、「教職員が共感でき、元気になれるメディア」「学校の外の人が学校を応援したくなるメディア」です。

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