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【解説記事】カリキュラム・マネジメントとは?実施のポイントと課題への対応を解説

  • メガホン編集部

学校には、教育目標をはじめとする様々な目標や方針があります。こうした多様な目標が、教職員の意識や教育活動のスタイルに影響を与えています。教職員がそれらの影響を受けながら、思い思いの学級経営や教科指導を行っている現状には、メリットもありますが、デメリットもあります。

こうした中で導入されたのが、カリキュラム・マネジメントです。そのねらいは、一人一人の教職員をつなぎ、学校、さらには地域も巻き込んだ “協働” を実現し、学年・学級経営や教科経営のあり方を変えることです。

この記事では、カリキュラム・マネジメントの概要と進める手順を、いわゆる「3つの柱」を軸に解説します。また、先行事例を通じ、カリキュラム・マネジメントの運用でよくある課題と、その対処法についても紹介します。

カリキュラム・マネジメントとは?

カリキュラム・マネジメントとは、子どもたちや地域の実態を踏まえ、各学校が学校教育目標を実現するために、教育課程を編成・実施・評価・改善していくことです。

カリキュラム・マネジメントは現行版、つまり平成29・30年改訂学習指導要領から、小学校、中学校、高等学校それぞれに明記されました。

各学校においては,児童や学校,地域の実態を適切に把握し,教育の目的や目標の実現に必要な教育の内容等を教科等横断的な視点で組み立てていくこと,教育課程の実施状況を評価してその改善を図っていくこと,教育課程の実施に必要な人的又は物的な体制を確保するとともにその改善を図っていくことなどを通して,教育課程に基づき組織的かつ計画的に各学校の教育活動の質の向上を図っていくこと(以下「カリキュラム・マネジメント」という。)に努めるものとする。

引用「小学校学習指導要領(平成29年告示)」「中学校学習指導要領(平成29年告示)」(文部科学省,2022年12月14日参照)

各学校においては,校長の方針の下に,校務分掌に基づき教職員が適切に役割を分担しつつ,相互に連携しながら,各学校の特色を生かしたカリキュラム・マネジメントを行うよう努めるものとする。

引用「高等学校学習指導要領(平成30年告示)」(文部科学省,2022年12月14日参照)

平成29・30年改訂学習指導要領について詳しくはこちら。

カリキュラム・マネジメントの三つの柱

中央教育審議会は、カリキュラム・マネジメントを以下の三つの側面から解説しています。

  • 教科横断
  • PDCAサイクル
  • 地域と連携

1. 教科を横断して教育課程を編成

一つ目は、教科横断的に教育課程を編成することです。

教科ごとの教育内容を相互に関連づけ、学校教育目標の達成に必要な内容を組織的に配置していきます。

2. PDCAサイクルで教育の質向上を

二つ目は、教育内容の質を向上させるために、PDCAサイクルを回すことです。

子どもたちや地域の現状に関する調査・デ ータ等を基に、教育課程の編成・実施・評価・改善を行います。

3. 地域と連携した授業の編成

三つ目は、教育活動に必要な資源を効果的に活用することです。必要な資源とは、地域などの外部の資源も含む人的・物的資源を指します。
参考「4.学習指導要領等の理念を実現するために必要な方策」(文部科学省,2022年12月14日参照)より

カリキュラム・マネジメントの手順

以上のように、カリキュラム・マネジメントは、学校がPDCAを回して教育課程を運営することを意味します。

その具体的な手順は以下の通りです。

1. 学校のグランドデザイン
 学校教育を通じて児童・生徒に育成すべき資質・能力を考えます。

2. 各学年で育成すべき資質・能力のグランドデザイン
 学年ごとにどのような資質・能力を育成すれば良いかを計画します。

3. 各教科等の年間指導計画
 グランドデザインを踏まえ、各教科では年間でどのような教育活動を行うべきかを計画します。

4. 各教科等の単元指導案(単元の指導計画)
 年間指導計画で考えた内容を、単元に落とし込みます。

5. 各教科等の単元指導案を基にした「学びのプラン」
 単元指導案を基に、授業の計画を立てます。

6. 上記 1 から 5 の自己点検・自己評価、改善の方向性
 計画を実行し、うまくいった点や改善点を洗い出し、次の計画に繋げます。

参考「カリキュラム・マネジメント~新学習指導要領とこれからの授業づくり~」(髙木展郎,独立行政法人教職員支援機構,2022年12月14日参照)より

カリキュラム・マネジメントの導入方法

ここからは、カリキュラム・マネジメントを行う際の課題について解説します。

カリキュラム・マネジメントの実施では、「何から始めれば良いかわからない」「学校全体で取り組むのが難しい」という課題に直面しやすいです。

以下では、それぞれの解決策を先行事例とともにご紹介します。

何から始めればよい?まずは「実態把握」から

カリキュラム・マネジメントを行う際にぶつかるのは、「何から手を付ければ良いかわからない」という課題です。そこで、枚方市立招提(しょうだい)小学校の事例をご紹介します。

枚方市立招提小学校は、児童の実態を把握し、学校教育目標や目指す子ども像を基に、児童に「つけたい力」を絞り込むことからスタートしました。

「つけたい力」が決まったら、その力をつけるために各教科でどんな学習を行うか、教科同士をどう繋げるかを考え、年間指導計画に落とし込んでいます。

参考「国語科を軸とした教科等横断的な視点でのカリキュラム・マネジメントを通して、子どもたちの言語能力の育成を図る」(枚方市立招提小学校,2022年12月14日参照)より

このように、枚方市立招提小学校は児童の実態を把握するところから始めていますが、その具体的な方法には以下のようなものがあります。

実態把握・課題共有の方法

  • 児童の様子を見取る
  • テスト等の採点、分析
  • 児童生徒アンケートから課題を発見
  • KJ法で課題や進むべき方向性を出し合う
  • 学校関係者評価、学校関係団体からの意見や要望の聴取など

参考「カリキュラム・マネジメントの手引き」(大阪府教育庁市町村教育室 小中学校課,2022年12月12日参照)より

KJ法とは、断片的な情報・アイデアを効率的に整理する目的で用いられる手法。カードやふせんにアイデアを書き込み、それらをまとまりごとにカテゴライズしたりして整理する方法をとる。

グランドデザインを作成する準備のために、児童の実態を把握することが大切です。その際、データに基づいて客観的に把握することが望まれます。

また、カリキュラム・マネジメントを学校全体で推進していくためにも、できる限り全教職員が参加して行うことが重要となります。

学校全体でカリキュラム・マネジメントの取組みを進めるためにはどうすればよい?

カリキュラム・マネジメントは、学校全体で取り組むことが重要です。そのための方策として、次の3つの事例をご紹介します。

・まずは一つの学年で集中的に行い、それを全校へ波及させる(枚方市立第一中学校)
・全教職員でゴールと実行のプロセスを共有(和泉市立信太小学校)
・視覚的カリキュラム表の作成(上越市教育委員会)

一つの学年で集中的に行い、それを全校へ波及

全校でカリキュラム・マネジメントをスタートするのは簡単なことではありません。そこで、枚方市立第一中学校は、まず一学年でカリキュラム・マネジメントに取り組みました。これにより、教職員のリソースを集中させることができます。そして、一学年の取り組みで得られた子どもの変化を全校へ発信することで、カリキュラム・マネジメントの必要性が学校全体に波及しました。

参考「カリキュラム・マネジメントの手引き」(大阪府教育庁市町村教育室 小中学校課,2022年12月12日参照)より

全教職員でゴールと実行のプロセスを共有

和泉市立信太(しのだ)小学校では、カリキュラム・マネジメントのゴールと手だてを研修で全教職員に共有しています。そして、研修通信を発行して取り組みの成果や課題を継続的に発信することで、取り組みやその方向性を学校全体に広げています。

以上2校について、参考「カリキュラム・マネジメントの手引き」(大阪府教育庁市町村教育室 小中学校課,2022年12月12日参照)より

視覚的カリキュラム表

また、カリキュラム・マネジメントの優良事例として挙げられる上越市教育委員会は、「視覚的カリキュラム表」の作成を推奨しています。この表を作成することで、重点目標等が意識化されやすくなり、教職員の協働を促す効果があります。

引用:「視覚的カリキュラム表」(上越市雄志中学校,2022年12月7日)より

地域との連携をどのように行えばよい?

カリキュラム・マネジメントでは地域資源の活用も求められています。

地域との連携のためには、まず地域を知ることが重要です。地域にはどんな資源(人、産業、自然など)があるのかや、地域にある大学などの教育機関・企業などにも目を向けましょう。その上で、地域とともにどんな学校づくりをしたいのかを明確にし、地域の理解を得る必要があります。

また、単に教育目標を共有するのではなく、地域や保護者の想いも踏まえて目指す子ども像を作る姿勢が望まれます。

「学校と地域の連携について」アンケート実施結果

School Voice Projectは2021年、全国の小〜高校年齢の児童生徒が通う一条校に勤務する教職員に対し、「学校と地域の連携について」というテーマでアンケートを実施しました。そこから、地域との連携をどのように行えばいいのかのヒントを探ってみます。

既に実施されている地域連携の取り組みの割合が多いものとして、以下の3つがあります。

  • 地域の方をゲストスピーカーとして招く
  • 地域人材による学校サポート
  • 総合学習等で地域の課題解決に取り組む

【教職員アンケート結果】学校と地域の連携について

地域連携がこれからという学校にとっては、これらの活動が地域連携の入口として取り組みやすいと考えられます。

北海道や東北圏では「農家や施設等で体験学習を行う」活動も上位にあり、地域の特色を生かした連携方法が採用されているようです。

一方、地域連携は、概ねどの地域でも重要だと感じている一方、仕事の負担が増えたり、取り組みが形骸化するなどの懸念やジレンマを感じる意見もあがっていました。

こちらのアンケート解説記事では、さらに多様な地域連携の具体例や、教職員の方の意見について紹介、分析していますので、ぜひ参考にしてください。

また、こちらでも、小学校の教科担任制について、カリキュラム・マネジメント上の効果を述べた意見を紹介しています。

まとめ

カリキュラム・マネジメントは、子どもたちや地域の実態を踏まえ、学校教育目標を実現するために、PDCAを回して教育課程を運営することです。

まずは客観的なデータを基に子どもたちの実態を把握し、学校のグランドデザインを作成しましょう。そして、グランドデザインの内容をより細かい計画に落とし込んでいきます。

また、学校全体でカリキュラム・マネジメントに取り組むための工夫も重要です。全教職員が参加する、学年を絞って徐々に波及させる、一目でわかるカリキュラム表を作成するなど、多様な工夫のやり方があります。

子どもや地域の実態をしっかりと捉え、全職員が協働することが必要です。

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メガホンの記事は、教職員の方からの声をもとに制作しています。
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メガホン編集部

NPO法人School Voice Project のメンバーが、プロやアマチュアのライターの方の力を借りながら、学校をもっとよくするためのさまざまな情報をお届けしていきます。 目指しているのは、「教職員が共感でき、元気になれるメディア」「学校の外の人が学校を応援したくなるメディア」です。

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