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【解説記事】論文・データでわかった宿題の必要性とメリット・デメリット。「宿題のない学校」の実践例も紹介します

  • メガホン編集部

「宿題のない学校」「宿題のない国」の教育観は?

宿題を出さないとしたら…? 宿題のない学校や国の取り組み

ここまで、”宿題を出すならどんなものがよいのか”、についてまとめてきました。続いては、”宿題を出さないならどんな取り組みがいいのか”についてです。実際に宿題のない学校や国の事例5つから、“なぜ宿題がないのか”、“その代わりにどのような取り組みをしているのか”を見てみましょう。

①「自由な子どもを育てる」きのくに子どもの村学園

最初に紹介する“宿題のない学校”は、きのくに子どもの村学園です。この学園は全国の5地域で計10校の小・中学校と1校の高等専修学校を運営しています。

学園では、「自由な子どもを育てる」という教育目標のもと、①自己決定、②個性化、③体験学習の3つの原則を掲げています。この原則は教師中心的・画一的・書物中心的な考え方の逆を目指すもの。それを具体化するように、学園の小・中学校にはテストや宿題がなく、〈プロジェクト〉と呼ばれる体験学習の場で学びを深めています。「その方針で教科学力はつくの?」という声も上がりそうですが、卒業生進学先では教科の成績も高い傾向にあるとのことです。

参考「宿題もテストもない!子供たちが自由な小学校とは?」(みんなの教育技術,2019年12月19日公開,2022年9月14日参照)より
参考「きのくに子どもの村学園」(きのくに子どもの村学園,2022年9月14日参照)より

②「ドリルを廃止」した茨城県水戸市立石川小学校

2校目は、宿題の中でもドリル宿題を撤廃した茨城県水戸市立石川小学校です。同校の豊田校長は①ドリルは効果が上がらない、②先生たちの負担が大きい、という現状を考え、家庭学習と教師の働き方の両方の改革としてドリルの廃止に踏み切りました。

ドリルの代わりの取り組みとして、同校では前項でも紹介した“家庭学習ノート”を取り入れています。そこには“やらされるのではなく自ら学ぶ習慣を身につけてほしい”という学校の想いがあり、保護者にアンケートを取るなどして、地域とも連携し改革を進めていきました。結果、子どもたちが生き生き家庭学習ノートに取り組むだけでなく、教員の時間外労働時間も月に10時間以上減少したそうです。

参考「ドリル宿題はもうやめます!“当たり前”を見直した水戸市立石川小学校の挑戦」(アカデミア,2022年2月1日公開,2022年9月14日参照)より

③「自律した子どもを育成する」横浜創英中学・高等学校

次は、“宿題を全廃”している横浜創英中学・高等学校です。この学校の校長先生は、東京都の麹町中学校で数々の改革をしたことでも有名な工藤さん。

工藤校長は宿題などに多くの時間が奪われているのに学力が上がらない日本の教育スタイルに疑問を持ち、宿題のほか定期テストや担任制なども廃止しました。そのことを通じて、ただ与えられるだけの学習でない、今後社会で生きる力をつけるための”学び方の習得”を目指しています。その目標に従い、例えば数学では3年間一度も一斉授業を行わずに分からないことを調べ聞くという形式で授業を行っているそう。その結果、学習の遅い子でも通常授業を行う時間の半分で学習が終了するなど、自分で学ぶことの効率のよさが実証されているようです。

参考「宿題も定期テストも廃止!「当たり前」をやめた校長が考える「教育」のこれから」(WASEDA NEO,2020年10月2日公開,2022年9月14日参照)より

④「筆記の宿題が禁止」のフランス

国全体で宿題が禁止となっている例もあります。フランスでは1956年に小学校での筆記の宿題が禁止されました。そもそもの禁止理由は、

  • 子どもの過労リスク回避
  • 学校外で勉強をする際の環境が悪い
  • 教師たちは添削よりも優先すべきものがある、

の3点でしたが、現在でもこの制度が続いている理由はフランス国内の教育格差が激しいことにあると言われています。フランスでは、家庭間の文化的・経済的なギャップや地域格差などから、恵まれた環境の子どもとそうでない子どもの不平等が深刻です。そのため、学習環境が整っている「学校での学習時間」、特に個別指導の時間を長くするべきであるという考えが強く、筆記宿題の禁止が続いています。

参考「フランスでは「宿題」を出すことが禁じられている、その深すぎるワケ」(現代ビジネス,2020年3月1日公開,2022年9月14日参照)

番外編:「自由の国」フィンランド

最後に、「自由で宿題やテストがない国」というイメージのフィンランドを紹介します。…ただ、このイメージは日本ではやや間違って伝わっているようで、実はフィンランドでも多くの学校に宿題やテストがあります。フィンランドでは各学校ごとの独自性が高いので、「宿題やテストがない」というイメージが強いのは、一部の事例を取り上げたメディアの影響があるようです。むしろフィンランドは諸外国に比べ学校での学習時間が短いため、少しの家庭学習は学習習慣と記憶の定着のために重要と考えられています。

参考「フィンランド教育のウソと本当?」(フィンランドの学校に行こう!,2019年7月2日公開,2022年9月14日参照)より

まとめ

多くの教職員や児童が疑問に思う宿題の必要性については、様々な研究によりその効果が証明されています。しかし宿題の効果を最大限にするためには、“宿題の目的”と”その目標達成のための出し方”を理解する必要があります。そして、“何のために”“どのように”をきちんと考え宿題を出した上で、適切なフィードバックをすることも重要です。宿題の出し方によっては様々なデメリット面をカバーし、メリットを多く残すことも可能です。

また宿題を出さなくても日々の学習方法を見直すことで効率的に学習できる事例もありました。宿題のあるなしに関わらず共通して大切にされていることは、“子どもが自分で考える”ことでした。

この記事をきっかけに、“宿題”について改めて考えてみてはいかがでしょうか。

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メガホン編集部

NPO法人School Voice Project のメンバーが、プロやアマチュアのライターの方の力を借りながら、学校をもっとよくするためのさまざまな情報をお届けしていきます。 目指しているのは、「教職員が共感でき、元気になれるメディア」「学校の外の人が学校を応援したくなるメディア」です。

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