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【解説記事】[2024年最新情報]教科担任制が3・4年生まで拡大? 教科担任制のメリット・デメリットと、背景について解説します

  • 久保拓

はじめに

文部科学省の中央教育審議会は2024年5月、教員が特定の教科ごとに授業を受け持つ「教科担任制」について、今の対象である全国の公立小学校5・6年生から、さらに3・4年生にまで拡大すべきとする審議を特別部会で取りまとめました。

日本の教育現場では長らく、クラスの担任が全ての教科を教える「学級担任制」が続いてきました。これを大きく変える教科担任制は、2022年度に本格的に導入され、まずは小学5・6年生を対象としています。そもそも、教科担任制は何のために導入されたのでしょうか。また、文科省はなぜ今、拡大の可能性を示唆しているのでしょうか。教科担任制の導入と拡大の背景、またそのメリット、デメリットをまとめます。

参考「『令和の日本型学校教育』を担う 質の高い教師の確保のための環境整備に関する 総合的な方策について (審議のまとめ)」文科省,2024年5月公開,2024年7月5日参照)より

教科担任制とは

現在、全国の公立小学校で導入が進んでいる教科担任制は、5・6年生を対象とし、外国語、理科、算数、体育の4科目について、学級担任ではなく教科担任がクラスを跨いで教える制度です。導入以前は、例えば学級担任制に慣れた小学生が中学に進学した際、うまく教科担任制に馴染めず学習不振に陥るなどの「中1ギャップ」問題が指摘されてきました。教科担任制を導入すれば、この問題を解決し、また教員側にとっても、授業数を減らして授業準備を効率化できるなど、過酷な労働環境を改善する効果が期待できるとされました。

School Voice Projectでは、導入に先立つ2021年、全国の教員へのWEBアンケート調査や、既に先行導入が進んでいた兵庫県の教員への独自インタビューなどから、当時教育現場で広がった波紋についても調べています(こちら)。

参考「「令和の日本型学校教育」の構築を目指して ~全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学びの実現~」(文科省,2021年4月22日公開,2022年9月13日参照)より
参考「義務教育9年間を見通した教科担任制の在り方について」(文科省,2021年3月公開,2022年9月13日参照)より

導入・拡大の背景

小学校高学年への導入

伝統的に、日本の公立小学校では、学級担任が受け持ちのクラスで多くの科目を教える学級担任制が主流でした。一つ前の項目でも触れましたが、そもそも教科担任制が導入された背景には、子どもが小学校から中学校へ進学する際に、学習環境の変化に戸惑う「中1ギャップ」の解消や、1人の教員が多くの指導教科を抱えて疲弊する労働環境を改善するねらいなどがありました。

いわゆる「中1ギャップ」は、学級担任制で慣れた小学生が中学1年生になった時、教科担任制への切り替えや学習内容の高度化など、大きな変化にうまく対応できず不登校などが発生しやすいとされる問題です。2021年7月に文科省の検討委員会が出した報告は、小学5・6年生に教科担任制を導入し、中学校から小学校へ教員を派遣することによって、①小・中学校間の連携を進めて円滑な進学を図ることができると指摘しています。また、②専門性を持つ教科担任教員が教材をじっくりと研究し、熟練した指導をすることで授業の質が向上するほか、③児童それぞれに対して学級担任や複数の教科担任が接することで、児童を多面的に理解し、児童の心の安定につなげられるとしました。

他方、教員にとっては、④担当する授業数の軽減や、授業準備の効率化によって負担軽減が可能だというメリットを挙げています。

上記の報告書などを経て、教科担任制は2022年度に全国の公立小学校5・6年生を対象として本格導入されました。それから2年を経て、文科省の中央教育審議会は2024年5月、小学3・4年生についても「子供たちへの学びの質の向上の観点と教師の持ち授業時数の軽減の観点から、教科担任制を推進し、(担任以外の教員が特定教科の授業をする)専科指導のための教職員定数の改善を図る必要がある」とする審議を特別部会で取りまとめました。

小学校中学年への拡大

なぜ拡大対象が3・4年生なのかというと、その理由は二つあげられています。

まず、3・4年生は低学年から高学年に向かう重要な過渡期だからです。中教審は、取りまとめの中で①3・4年生は生活科の学習が終わり、新たに社会科、理科、外国語活動や総合的な学習の時間が始まるなど、より各教科の特質に応じた学びにつなげていく時期であること、②高学年やその先の中学校との円滑な接続の観点から、より専門性のある教師が専科指導を行うことで教育の質の向上を図る必要があること、③専科指導は子供たちそれぞれの関心や個性に応じた得意分野を伸ばせるのでその充実が必要であること、などとしています。

二つ目は、現在、小学校教員が中学校や高校に比べてより多くの授業時間を受け持っている厳しい現状があるからです。令和4年度学校教員統計によると、教員の週当たりの平均持ち授業時数は、小学校で 24.1 単位時間、中学校で 17.9 単位時間、高等学校で 15.4 単位時間となっています。加えて、国の定める年間の標準授業時数は、小学1年が850単 位時間、2年が910単位時間に対して、3年が980単位時間、 4年が1,015 単位時間となっており、中学年は、小学校高学年や中学校の 1,015 単位時間とほぼ変わりません。つまり、学級担任制のもとで3・4年生を受け持つ教員の負担が大きい中、ここに教科担任制を導入すれば、教員の働き方にゆとりが生まれて教材研究の時間を確保でき、同時に担当教科数を絞り込むことで教材研究に深みが出る、という一石二鳥が狙えるわけです。

参考「義務教育9年間を見通した教科担任制の在り方について」(文科省,2021年3月公開,2022年9月13日参照)より
参考「『令和の日本型学校教育』を担う 質の高い教師の確保のための環境整備に関する 総合的な方策について (審議のまとめ)」(文科省,2024年5月公開,2024年7月5日参照)より

拡大のメリット・デメリット

では、教科担任制が現行の小学5・6年生から3・4年生にも拡大されると、具体的にどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。

メリット

そもそも、教科担任制のメリットとは何でしょうか。教科担任制を小学5・6年に本格導入するのに先立ち、文科省の検討委員会は2021年7月、報告書の中で教科担任制には次のようなメリットがあると指摘しています。

  1. 小・中学校間の連携を進めて円滑な進学を図ることができる。
  2. 専門性を持つ教科担任教員が教材をじっくりと研究し、熟練した指導をすることで授業の質が向上する。
  3. 児童それぞれに対して学級担任や複数の教科担任が接することで、児童を多面的に理解し、児童の心の安定につなげられる。
  4. 教員が担当する授業数の軽減や、授業準備の効率化によって教員の負担軽減が可能。

そして2024年5月、文部科学省の中央教育審議会の特別部会は、審議のまとめにおいて対象を3・4年生に拡大することの追加メリットを次のように指摘しました。

  1. 教員が担当する授業時間を減らし、持続可能な教職員指導体制を構築できる。
  2. 子供たちの学びの質の向上につながる。

参考「義務教育9年間を見通した教科担任制の在り方について」(文科省,2021年3月公開,2022年9月13日参照)より
参考「『令和の日本型学校教育』を担う 質の高い教師の確保のための環境整備に関する 総合的な方策について (審議のまとめ)」(文科省,2024年5月公開,2024年7月5日参照)より

デメリット

導入によるメリットが多く挙げられている教科担任制ですが、一方で次のようなデメリットも指摘されています。以下の事項は、文部科学省が教科担任制に関して取りまとめた事例集や、教科担任制の導入で先行する兵庫県丹波篠山市の資料などで指摘されているものです。

  1. 従来は学級担任が原則として全ての教科を教えることにより、教科横断的なカリキュラム・マネジメントが効果的に行われてきたという利点が損なわれる。
  2. 時間割編成が複雑化し、柔軟な時間調整ができなくなる。
  3. 担任教員が児童と過ごす時間が減り、包括的な見守りができなくなる。
  4. 学級担任が、担当しなくなる教科について当事者意識を失ったり、若手教員が一部の教科について力量を培う機会を持てなくなったりする。

参考「小学校高学年における 教科担任制に関する事例集」(文科省,2023年3月公開,2024年7月5日参照)より
参考「教664 新しい取組 小学校教科担任制 (教育長ブログR6.5.17)」(兵庫県丹波篠山市,2024年5月17日公開,2024年7月5日参照)より

小学校の授業はどう変わる?

それでは、教科担任制の導入・拡大によって、小学校の授業はどう変わるのでしょうか。

導入・拡大の背景」でも触れましたが、2022年度から本格導入された教科担任制は、現在、「中1ギャップ」解消の観点などから小学5・6年生を対象としています。導入に先立って文部科学省の中央教育審議会が2021年1月に行った答申では、まず5・6年生を対象とした理由について、「児童生徒の発達の段階を踏まえれば、児童の心身が発達し一般的に抽象的な思考力が高まり,これに対応して各教科等の学習が高度化する小学校高学年に着目し、系統的な指導によって中学校への円滑な接続を図る」と説明しています。

また、教科担任制の対象科目は外国語、理科、算数、体育の4教科に絞られています。答申はその理由について、

  1. 新たに小学校において導入された教科で、指導体制の早急な充実が必要(外国語)
  2. ICT の活用やプログラミング的思考など新しい知見も活用しながら、中学校での科学的リテラシーの育成を見据える必要(理科)
  3. プログラミング的思考の重視など道を立てて考える力の育成の重要性(算数)
  4. 学年が上がるにつれて技能差や体力差が広がりやすく、個々の能力に適した指導・支援を安全・安心を確保しながら行う必要(体育)

などの背景を指摘しています。いずれの教科も、中学校での学習を視野に入れた系統的な指導ができる専門性が必要な点が共通しています。

さて、教科担任制の小学3・4年生への拡大ですが、現在はまだ、2024年5月に文部科学省の中央教育審議会の特別部会で審議が取りまとめられたばかりなので、小学3・4年生にいつ、どのような形で導入されるのかは分かりません。

しかし、取りまとめの際の議事録によると、出席した委員から「速やかな実現をお願いしたい」との声が上がったほか、取りまとめの中では、若手の負担を減らすため、新卒教員は学級担任ではなく教科担任とするなど、持ち授業時数を軽減するための追加の取り組みにまで踏み込んで言及しており、拡大に前向きな姿勢が伺えます。

しかし同時に、委員からは「(教員が)教育に専念できる環境を整備するための予算を確保すること」など、実効性を伴うための予算確保ができるか懸念の声も上がっています。

参考「令和の日本型学校教育」の構築を目指して(答申)(文科省,2022年1月26日付,2024年7月5日参照)より
参考「『令和の日本型学校教育』を担う 質の高い教師の確保のための環境整備に関する 総合的な方策について (審議のまとめ)」(文科省,2024年5月公開,2024年7月5日参照)より
参考「質の高い教師の確保特別部会 第13回議事録」(文科省,2024年5月13日付,2024年7月5日参照)より

教科担任制導入の先行事例

5・6年生への導入(兵庫県の実施体制)

次に、自治体の先行事例から、具体的な変化をみてみましょう。

以前から、音楽や理科など一部の教科で教科担任制を取り入れる動きは全国に広がっていました。例えば兵庫県では2012年から、学級担任間の授業交換による教科担任制と、担任と加配教員による少人数教育を組み合わせた「兵庫型教科担任制」が実施されています。

兵庫県では、小学校5・6年生のいずれかが20人以上の学級を有する学校において、原則として国語、算数、社会、理科から2教科以上を選択し学級担任間の授業交換を行っています。さらに、この4教科で専科指導を行っている場合、他の教科を加えた交換授業も幅広く行っており、例えば2019年の実施状況は、社会95・3%、理科76・0%、家庭25・0%、体育22・3%、国語18・4%などでした。

兵庫県で起きた変化

以前から教科担任制を実施している兵庫県で、児童に起きた変化を見てみましょう。2012年の調査では、「教えてもらう先生が代わって、授業を楽しいと思うことが多くなった」と答えた児童が81・8%に達しています。また、「担任の先生以外の先生に気軽に話ができるようになったと思う」と答えた児童も77・4%に上りました。そして教員が気づいた影響としては、「児童の変化に気づきやすくなり、問題の未然防止・早期対応ができた」「多くの教員が関わることで、児童の良さを認め合う場面が多くなった」などの声が上がっています。

一方で、具体的な課題も浮上しました。兵庫県の調べでは、例えば1学年3クラス、5クラスなど奇数クラスの場合に授業交換が複雑となること、また5・6年生が共に1クラスの場合、5年担任と6年担任との授業交換となるため教員の負担軽減につながりにくいこと、数年に渡り担当しない教科が生じるため特に若手教員の指導の機会が減ること、などが挙げられています。

参考「兵庫型教科担任制について」(兵庫県教育委員会,2020年10月7日付,2022年9月13日参照)

3・4年生への拡大(北海道の事例)

全国に先駆け、既に3・4年生にまで教科担任制を取り入れている小学校では、どのような変化が見られたでしょうか。

例えば、北海道の更別(さらべつ)村立更別小学校と、7キロ離れた中札内(なかさつない)村立中札内小学校では、複数の科目について3〜6年生に教科担任制を導入しています。特に、2021年度からは加配された外国語専科教員が両村を跨ぎ、両校で教科を担当しています。

その結果、肯定的な意見が多く上がっています。文科省のまとめによると、例えば、管理職の教員からは「教材研究の深化等により、児童の学習意欲や学習内容の理解度・定着度が向上した」、「児童に多くの教師が関わることにより、積極的・多面的な生徒指導の充実を図ることができた」と肯定的に捉える意見が寄せられ、学級担任からは「授業準備の時間が減り、負担軽減につながった。時間外在校等時間は1か月で45時間未満になった」、そして専科教員からも、「複数の学級で同じ教科・同じ内容を指導しているため、次の学年や、中学校へのつながりを意識した指導をすることができる」との声が上がっています。

一方で、具体的な課題も見えてきました。両校では、特に自治体を跨いで複数校で教える専科教員がいる場合、専科教員が体調を崩した際に柔軟な時間割調整が難しいことや、複数の学校・学級において連続で指導するため、授業間の空き時間が少なく、教材研究の時間や休憩時間、個別の質問に対応する時間が取りづらいこと、教員の加配が各年度毎に決定されることから、次年度の学校経営の見通しが立てにくいこと、などが検討課題として挙げられています。

参考「小学校高学年における 教科担任制に関する事例集」(文科省,2023年5月公開,2024年7月5日参照)より

現場の声

事前アンケート調査

School Voice Projectでは、教科担任制が一斉導入される直前(2021年10月〜11月)にアンケート調査を実施し、全国の教職員40人から回答を得ました。

2022年度から導入される小学校高学年における教科担任制についてあなたの意見を教えてください
回答者全体の割合
回答者のうち、小学校教職員(28名)のみの割合

《教員へのアンケート調査とインタビュー結果はこちら》

アンケート結果を見ると、「来年度から導入される、小学校高学年における教科担任制についてあなたの意見を教えてください」という設問に対し、「よいと思う」「どちらかというとよいと思う」が計26人(65%)を占めました。一方で、「心配・懸念が強い」「どちらかというと心配・懸念が強い」も計14人(35%)に達し、諸手を挙げて賛成というわけにはいかない複雑な事情も浮かび上がりました。

具体的には、「質の高い授業を提供できる」と趣旨に賛同する声が多い一方で、「余計に負担が重くなる」「人員の確保が急務では」「時間割を組むのが大変」といった懸念が多く寄せられています。詳細はアンケート結果をご覧ください。

先行する兵庫県からの声

School Voice Projectによる事前アンケートは多くの賛否の声が集まりましたが、実際に制度が動き出した自治体では、具体的にどのような手応えがあったのでしょうか。独自に、教科担任制で先行する兵庫県の小学校教員2人の協力を得て電話インタビューしたところ、教育現場における実感として次のようなコメントが寄せられました。

(子どもが)別の先生が来ることで次の授業に切替ができるようになったり、複数の教員が関わることで関係性が固定せず、逃げ道ができるなど落ち着きにつながった

高学年になってからの実施により、中学に向けて心の準備ができ”お兄さん、お姉さん”になっていく過程を子どもたちが実感しながら過ごせる

教員側も授業の準備に集中できる。教材研究の質が上がり、子どもたちの反応もよく、楽しく授業ができる。例えば、複数のクラスで授業を行うことで、同じタイミングですぐに修正もでき、子どもたちの反応によりクラスごとに授業を変えていくことで、精度の高い授業を子どもたちに提供できるようになる

問題が起こったときの生徒指導や、時間割を組む際に複雑になる点がデメリットだが、やってみたらデメリット以上にメリットは多いと感じた

このように、事前アンケートに比べてポジティブな反応が寄せられました。教科担任制の導入に向けて、文部科学省の中央教育審議会が2021年1月に行った答申で述べた趣旨(①授業の質の向上②中1ギャップの解消③複数の教員による多面的な児童理解を通じた児童の心の安定④教員の負担軽減)通りの効果が全て表れているとは言えませんが、現場で一定の手応えはあるようです。

導入前の課題

教育現場で賛否の声が上がる中、2022年4月に小学校で本格導入された教科担任制。現在は4教科に絞られ、今後さらに拡充されるのか、具体的な政策はまだ発表されていません。しかし既に、限られた予算内で人員を確保しなければならないという課題が将来への不安材料として浮上しています。

教科担任制を推進する文部科学省は、2022年度予算の概算要求において、教科担任制の充実のために教職員定数の2,000人増員(今後4年間で計8,800人増員)を求めました。しかし、財政難を懸念する財務省から削減を求められ、実際に認められたのは950人の増員にとどまりました。文科省は今後、4年間で計3,800人の増員を見込んでおり、地域の小学校同士や小中学校の連携、小学校内における授業交換などを積極的に進めることで、教科担任制を充実させようとしています。

School Voice Projectが独自に行った電話取材では、匿名の教員が「私の学校で実施している現状の授業交換のやり方だと人が増えないままなので、同じ時数の教科しか実施できない」と吐露しました。教科担任制が普及しても「予算内でやりくり」する姿勢が本当に質の高い授業提供につながるのか、教員の負担軽減につながるか、不透明な点が残っています。

まとめ

2022年度から、全国の公立小学5・6年生を対象に、外国語、理科、算数、体育の4科目について教科担任制の普及が進んでいます。これは従来の学級担任制に変わり、学級担任ではなく教科担任が特定の教科ごとにクラスを跨いで授業をする制度です。

従来は、学級担任制に慣れた小学生が中学に進学した際、うまく教科担任制に馴染めず学習不振に陥るなどの「中1ギャップ」問題がありました。5・6年生への教科担任制の導入は、①この「中1ギャップ」問題を解決し、②専門性を持つ教科担任教員が教材をじっくりと研究し、熟練した指導をすることで授業の質が向上するほか、③児童それぞれに対して学級担任や複数の教科担任が接することで、児童を多面的に理解し、児童の心の安定につなげられること、また④教員に対し、担当する授業数の軽減や、授業準備の効率化によって負担軽減が可能なこと、などを狙いとして導入されました。

そして今、教科担任制は小学3・4年生にも拡大する気配を見せています。文部科学省の中央教育審議会は2024年5月、教科担任制の対象を全国の公立小学校5・6年生から、さらに3・4年生にまで拡大すべきとする審議を特別部会で取りまとめました。

拡大を目指す理由は二つあり、一つ目は「子供たちへの学びの質の向上の観点」、そして二つ目は「教師の持ち授業時数の軽減の観点」によるものです。つまり、低学年から高学年を向かう過渡期において、より専門性のある教員が専科指導を行うことで、質の高い授業を提供して子どもたちの得意分野を伸ばしつつ、一方では教員の担当教科を絞ることで、教材研究の時間を確保し、労働時間の長い教育現場での働き方改革を実現させようというのです。

既に先行導入している北海道の自治体では、「児童に多くの教師が関わることにより、積極的・多面的な生徒指導の充実を図ることができた」「授業準備の時間が減り、負担軽減につながった」などと評価する声がある一方で、「柔軟な時間割調整が難しい」などと問題を指摘する意見も見られます。

そして、教科担任制の持つ長所を十分に引き出すには、教員数の増加などに必要な十分な予算配分が欠かせません。今後、教科担任制が実際に小学3・4年生に拡大されるかどうかはまだ分かりませんが、文部科学省の中央教育審議会の特別部会でも、委員から「(教員が)教育に専念できる環境を整備するための予算を確保すること」などと要望する声が上がっています。

子どもの公教育の更なる充実と、教員の働き方改革という二つの大きな課題に向けて、文科省が今後どのような方針を示していくか、School Voice Projectでは記事を随時更新し、皆さんにお伝えしていきます。

参考「『令和の日本型学校教育』を担う 質の高い教師の確保のための環境整備に関する 総合的な方策について (審議のまとめ)」(文科省,2024年5月公開,2024年7月5日参照)より
参考「小学校高学年における 教科担任制に関する事例集」(文科省,2023年5月公開,2024年7月5日参照)より
参考「質の高い教師の確保特別部会 第13回議事録」(文科省,2024年5月13日付,2024年7月5日参照)より

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久保拓

1984年生まれ。2010年に全国紙の新聞社に入社し、地方支局・社会部・文化部などに所属。記者として各事件・事故や民事・刑事訴訟、国政選挙、教科書検定などの取材を経て2022年に退社し、現在はフランスに在住。

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