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同僚を「誰一人置いていかない」ことにこだわったICT活用推進。ミドルリーダーとして取り組んできた小学校教員の工夫や配慮とは?

  • メガホン編集部

「GIGAスクール構想」によって1人1台端末の配備やネットワーク環境の整備が日本中の学校で進んでいます。当NPOが教職員を対象に実施したアンケートでは、「子どもへの指導の難しさ」、「教職員間での考え方のギャップ」、「教員の業務負担の偏り」などの現状が見えてきました。今回は、担当者として、学校全体のICT活用を推進してきた大阪府の公立小学校教員である野村有沙さんに、その取り組みや工夫を伺いました。

まずはICTの「よさ」「便利さ」を実感してもらいたかった

ーーこれまでどんなことに取り組んで来られたのですか?

まずアカウントを1人1つずつ設定するというのが大仕事でした。ICTを業務改善に生かしたいという思いで、最初に取り組んだのが出欠確認のデジタル化です。次に、家庭に配布するプリントもデジタル化。3つ目に、参観をオンラインで見られるようにしました。4つ目は今年から行っているのですが、個人懇談会を希望制でオンラインでできるようにしました。

ーースムーズに進めるために同僚の方への発信やサポートの仕方で配慮されたことはありますか

先生方の中には、イメージが湧かずにちょっと引き気味の方もいたりしましたが、それでも「これどうやってやるの?」と言いながらも、前向きに捉えてくれる人が多かったと思います。

同僚の先生方を「誰一人置いていかない」というのが大事だと思ってやってきました。パソコンが苦手な方も結構いらっしゃるので、「私できひん、どうしよう」と思わせないことを1番意識しました。たとえば、困っている人がいたら、積極的に声をかけるようにはしてます。また、見通しを持てるように、新しいことを始めるときは、いつまでに何をどんなステップで進めるのか、計画を細かく、早め早めに出すようにしています。出欠連絡については試行期間を設けて、その間に各ご家庭必ず1回は試してもらうようにしました。一度も使っていないご家庭にはくり返し手紙を送ったり。それでも難しい場合は、私が引き取って、電話などでサポートして解決するようにしていました。

ーー大変なことは野村さんが引き受けることで、まずは同僚の先生方がICTの便利さを享受できるようにされたのですね。

はい。そこが大事かなと思っています。おそらく、先生方は「ICTって便利だ!」と一旦思えたら、そのあとは、導入時点でのしんどいことや面倒なことも引き受けてくださると思います。でも、はじめに「しんどい!」と感じてしまうと拒否反応が大きくなってしまいます。なので、最初は私が大変なところを積極的に引き受けるようにしました。

「自分にもできる」と思えるところまで伴走する

ーーこれまでデジタルツールを使ってきた先生と、そうでない先生の間にはかなりギャップがあるのではと思うのですが、そのあたりはどう埋めてきましたか?

確かに若い人と年配の先生のギャップは大きいですね。できる人は「便利なのになんで使わないの?!」となったりするじゃないですか。はじめは、研修を全員一緒にやるようにしてたんですけど、一緒にやると、できる人は、パパッとやれるけれど、できない人は元の画面に戻ることすらできない。同時に教えるのがすごく難しいと思って。だから、「習熟度別」で研修をするようにしました。まず、どの程度できるかどうかアンケートをとって、ほとんどできない方は「超初心者コース」からはじめて、できる人は1番上のコースだけ来てもらうかたちにしたら、時間も無駄にならず、よくなったと思います。

ーーなるほど。反応はいかがでしたか?

1番年配の再任用の先生がいるんですが、授業で使えるものがいいなと思って生徒がタブレットで回答できるクイズを、研修で一緒につくったんです。次の日さっそく使ってくださって「できた!」って喜んでもらえました。そんなふうに、「あと一歩頑張ったら実際に活用できるぞ」というところまで、研修や個別の関わりを通して伴走することができると、「自分でもできる」と感じていただけるのだなという手応えがありました。

遠回りに思えても、みんなの「納得感」を大切に進める

ーーICT活用を推進する中で、苦労したことはありますか?

たとえば出欠確認のデジタル化には反対の声も結構ありました。今まで欠席確認は、保護者からの電話を受けた教職員が、その内容を紙に書いて担任に伝えて、さらに担任がそれを一覧表に記入していました。先生たちの中にはそのルーティンがあるので、「年度途中で言われても困る」「やり方を変える方が大変」という意見もありました。だから先生方のそのような気持ちもあって、いきなり変えることはできませんでした。結局、保護者からの欠席連絡はWEBフォームから届くけれど、届いたものを紙の一覧表に転記することに・・・。最初に提案したときから半年経ったタイミングで、もう一回「やっぱり一覧化まで全部デジタルにしませんか」って言ったら、わりとすんなり通ったんです。「紙の方が」と言ってた先生も「こっちの方がすぐできるからいいわ」と言ってくれました。

ーー最初から全部デジタルにしなかったのはどうしてですか?

その時点で無理やり進めたら先生方はすごく嫌な気持ちになって、ICTへの拒否感が強まったかもしれません。そうなるとICT推進全体が難しくなります。出欠連絡の件も、ちょっとずつ「やりながら理解」していったからこそ、「この方が楽」と納得できて、徐々に前向きな気持ちになれたのかなと思っています。

ICTを推進してきたことによる学校の変化とは?

ーーデジタル化・オンライン化を進めてきたことで、先生方の業務の負担度に変化はありましたか?

かなりあったと思います。1番はやっぱり出欠確認です。今までは朝の欠席連絡への電話対応がすごく大変でした。コロナや風邪が増えたときなんて、朝から電話が鳴り止まなくて、めちゃめちゃしんどかったんです。デジタル化したことで朝の職員室がすごく静かになりましたね。欠席状況がパソコン上で一覧表示されるようにしたので、だいぶ楽になったと思います。

あとは、配布物が紙からデジタル化されたので、印刷作業が必要なくなりました。子どもたちの学習では、AIドリルのQubenaを使っているので、学習プリントの印刷をしている人も少なくなりました。

ーーICT活用の推進状況は学校によってかなり差が生まれているように思います。野村さんの学校では、なぜたった2年間でここまでのICT活用を進めてこられたのでしょう?

担当者である私が担任を持たずに、ICT推進に注力できたというのが、すごく大きいと思います。授業時数が少ないので時間的な余裕がかなりありました。たとえばアカウント設定のときも、出欠連絡のICT化のときも、全クラスをまわって手厚くサポートすることができたのは、私の受け持ちの時数が少なかったからだと思います。ICT活用を前向きに進めようと、校長先生がそういう判断をしてくださったのですが、その点はとてもありがたかったですね。管理職としては調整がめっちゃ大変だと思うんですが、担任外の立場で担当者を置くことが、前向きにICTを活用しようという風土をつくるうえではかなりポイントかもしれません。

ーーデジタル化・オンライン化が進んだことは、子どもたちにとっては、どんな意味があると思いますか?

たとえば、授業支援クラウドの「ロイロノート」を使えば、自分の成果物をすぐに友達と共有できるので、いろんな子の取り組みのよいところを吸収しやすくなったのかなと思います。「できた子から提出してね」と伝えて、クラウド上の提出箱を子どもたちが見られるようにしておくと、苦手な子やどう取り組めばいいか分からない子も、他の子が提出したものを見ながら「ああ、そうか」「こういうふうにやればいいのか」とヒントを得て取り組めるんです。今までは隣の子を真似るしかなかったじゃないですか。だから隣の子とそっくりのものができちゃったりしていました。今のやり方だといくつかモデルを見られるので、”いいとこどり”ができる。いい真似方ができるようになってきてるのをすごく感じますね。どんどん友達の意見を吸収していいプレゼンをつくったり、動画をつくったりしてくれています。

学校組織全体に貢献できる仕事のやりがい

ーー最後に野村さん自身がICT推進をやってきて、学んだことや変化したことを伺いたいです。

今までは「クラスや学年を動かす」、「クラスの中で自分のやりたい実践をやる」という視点にとどまってたのですが、今回、学校全体をICTを使って動かしていく、校内みんなの賛同を得ながら進めていくという立場になり、これは、めっちゃ難しいけど、すごく楽しいなと感じました。はじめは後ろ向きだった方が進んでやってくれたり、子どもが嬉しそうに「タブレットでこんなんやったで!」と教えてくれたり、学校が前向きに進んでいると肌で感じられるのは、すごく嬉しいです。

ーーこの先、さらにチャレンジしたいことはありますか?

業務改善の取り組みと比べると成果が分かりづらい部分だと思いますが子どもたちの学習の質をよくしていくところに取り組んでいきたいと思っています。実際、学習としての深みはまだまだ出てきていないなと思っているので、学びを深めるためのツールとしても、ICTをもっと活用していきたいです。

ーー野村さん、ありがとうございました!

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メガホン編集部

NPO法人School Voice Project のメンバーが、プロやアマチュアのライターの方の力を借りながら、学校をもっとよくするためのさまざまな情報をお届けしていきます。 目指しているのは、「教職員が共感でき、元気になれるメディア」「学校の外の人が学校を応援したくなるメディア」です。

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