【教職員アンケート結果】異動の公表時期について
公立学校では、教職員の異動の公表時期は各自治体で決まっており、学校によっては年度内に児童生徒及び保護者等に公表できないこともあります。
年度内の公表ができない背景としては、「年度末まで変更、異動内容の差し替えがあり、早めに公表すると間違った情報を提供することになってしまう恐れがある」「転校などで児童・生徒数の増減があると、学級の数が増減することがある。そのため、教員が余ってしまったり、逆に足りなくなったり、いろいろな事情があり、直前まで差し替えがあり得る」などの理由があるようです。(参考:Yahoo!ニュース「お別れ言いたいのに…先生の異動発表、東京都は4月1日、なぜ?」)
学校現場にいる教職員は、現状の異動公表時期についてどのように捉えているのでしょうか。
School Voice Project では、WEBアンケートサイト「フキダシ」に登録する教職員の方を対象に、異動の公表時期についてアンケートを取りました。
アンケートの概要
■対象 :全国の小〜高校年齢の児童生徒が通う一条校に勤務する教職員
■実施期間:2022年1月29日(土)〜2022年2月20日(日)
■実施方法:インターネット調査
■回答数 :94件
WEBアンケートサイト「フキダシ」は、現在ユーザー登録を受け付けています。教員の方だけではなく、事務職員や用務員、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー、ICT支援員の方など、学校現場で働く様々な立場・職種の方が対象です。ぜひご登録ください。
アンケート結果
設問1 離任式はいつ?
Q1. あなたの自治体では離任式はいつ頃行われますか?
離任式の実施時期については、年度内に行う学校と年明けに行う学校の数はほぼ同数でした。地域別に見ると、北海道、東北は年度内に、近畿は年度明けに実施されることが多いことがわかりました。関東においては、東京都は年度明け、神奈川県は年度内に行う学校が多いようです。
設問2 年度内に異動の公表はOK?
Q2. あなたの自治体では年度内に児童生徒や保護者に異動を伝えることを可とされていますか?
設問3 異動の公表、年度内にした方がいい?
Q3. 児童生徒及び保護者等への自身の異動の公表時期について、あなたの意見に最も近いものをお選びください。
設問3-2 その理由は?
Q3-2. 選択肢を選んだ理由をお書きください。(任意)
「年度内に公表したほうが良い」を選択した方の主な意見
< 児童生徒や保護者、関係者へ挨拶したい >
子どもたちとも、地域の方ともきちんとお別れができることが大切だと思います。部活動で大変お世話になった地域の方へあいさつに行ったり、卒業した子どもたちが学校に会いに来てくれたり、保護者の方ともお話できました。そうした中に、教師としてのアイデンティティとやりがい、充実感を得ることができ、そのことが自分の中に織り込まれてきたと感じています。【小学校・教員・新潟県・年度内公表可】
年度明けに公表すると、お世話になった方々へのお別れの挨拶ができずに去ることになる。離任式には6年生はいないので、挨拶ができないことになる。異動が多いと感じるので、教員の裁量で在校期間を決められるとよいと思います。【小学校・教員・東京都・年度内公表不可】
異動になるのであればきちんとお別れしたい。始業式の日に着任校に、前任校の保護者と子どもが来てくれたことがあって、嬉しかったが、前もって伝えられたらそんな必要なかったのにと思った。【小学校・教員・奈良県・年度内不可】
関わっていた子どもや保護者に別れも告げず、年度があけて、いなくなっている職場は他にあるのだろうか。病院でもどこでも、年度内に相手に伝え、異動されていくのに、学校の教員の特殊性ではないだろうか。異動先など、言いすぎると問題な部分も出てくるので、きっと難しいのだろう。別れを告げられるのは、保護者も子どももいるかいないかの不安より、いいのではないだろうか。【小学校・教員・大阪府・年度内公表不可】
異動者本人は3月の上旬には告げられるが、保護者・児童はもちろんの事、同僚にも公式には知らされない。結果として、噂話で職員室内を回ることになる。異動する本人は分かっているのに、子ども達に「4月に次の学年で会おうね。」と言って学級を閉じるのは後ろめたい思いがする。また、お世話になった保護者とも十分に挨拶をすることもできずに学校を去るのは大きな思いを残すこととなる。【小学校・教員・神奈川県・年度内公表不可】
修了式が終われば、職員も子どもたちも保護者も、わかっていた方が良いと思う。離任式や送別会が大人数でできなくなった今、個別にあいさつをする時間があれば良いと思う。【中学校・教員・茨城県・年度内公表不可】
生徒・保護者ときちんとお別れの挨拶ができるため。基本的に4月の新聞報道があるまでは、最小限の身内を除いて口外することは許されていない。よって、年度が明けてから、「引き続き先生に見てもらえると思っていたのに!」という事態が起こる。3月中旬には異動の有無を知っていながら、それを隠して生徒・保護者と接するのがつらい。【高等学校・教員・京都府・年度内公表不可】
年度内に公表する自治体に勤務しているので、年度明けに公表する自治体があることに驚きでした。年度内に生徒とお別れをし、4月から新たな環境で教師も生徒も気持ちを新たにするのが良いのではないでしょうか。【特別支援学校・教員・京都府・年度内公表可】
< 業務の引き継ぎや連携、十分な準備が必要 >
職員室にとっても、現行の学習指導要領で字数が増えた結果、春休みが短くなっているために4月1日から始めたのでは間に合わない分掌が出てきている。さらには公式には異動の内示はだされていないので、引継ぎも充分にすることもできずに4月からの多忙感が非常に大きくなる。【小学校・教員・神奈川県・年度内公表不可】
子どもや保護者に事前に伝えることができることによって、必要な引き継ぎができたり、来年度に向けて準備をしてもらったりしやすくなるため。特に特別支援を必要とする子どもの場合は担当者が変わることによる負担が大きいため、準備期間があるほうがよいと感じる。【中学校・教員・大阪府・年度内公表不可】
部活動や学校として関係機関が関わっているような重要な家庭に関しては、その後の関係性や担当者の引き継ぎがあるので、年度内に連絡をできるようにした方が学校としてもその後がつなぎやすいから。【中学校・教員・大阪府・年度内公表不可】
早めに伝えることは何ら悪い事では無いと思う。むしろ早く伝えておくことで、次年度に向けた取り組みや伝達がスムーズに行える。異動時期を早く伝えると、「子どもが言う事を聞かなくなる」とか「教員にやる気がなくなる」といった意見を聞いたことがあるが、子どもや教員をあまりに馬鹿にしすぎていおり、なおかつ子どもや教員を全く信頼していない姿勢が見えるので、とても残念でならない。【高等学校・実習助手/実習教員・大分県・年度内公表不可】
< 児童生徒の心理面が心配 >
新年度の始業式で突然知らされる子ども達が気の毒です。【小学校・教員・東京都・年度内公表不可】
お別れとしての節目は年度内におこなうべきだと思う。いきなり4月からいなくなると子ども達も動揺するのでは。年度明けに公表される学校があるのですか?そこにまず驚きです。【中学校・教員・長野県・年度内公表可】
突然だと心理的ショックが大きい。また、次年度への移行もスムーズにいくため、終業式までに伝えるのが良いと思うから。【高等学校・教員・東京都・年度内公表可】
新年度になって今までいた先生が突然いなくなったり、見たことのない先生が急に学校にいるようになったりという状況は生徒たちの混乱を招いてしまうと思うので。今までお世話になった先生方や生徒たちにきちんと挨拶してから離任したいので。【特別支援学校・教員・京都府・年度内公表可】
< 教育的にも年度内に公表する意義がある >
講師・教諭、勤務形態問わず、仕事だけでなく、個人の生活があります。ギリギリまで隠して、落ち着きなく仕事をするより、生徒自身にも、きちんと異動の時期を見通して、準じて話をしながら学校生活を送る方が、社会に即して学びを得られるものだと思います。生徒自身、社会へ働きに出た時に、年度末は「組織も人も動く」変わり目の時期であるという認識を持って、過ごすことも大事だと思います。人事を隠して務めるよりは、人事を示し、理解を図りながら、共に学校という組織を考えていく契機にも繋がると思います。また、コロナ禍で様々な働き方が生み出され、個人の生活を尊重した人事が行われるように、社会全体で向き合っていくべき課題だと思います。【中学校・教員・福島県・年度内公表可】
< 遠方への異動の場合は、離任式に出席できない >
勤務している県では、初回異動は初任地の郡市外に出ることとなっています。同日離着任式だとかなりの移動距離になる場合があり、実際に私は着任式に間に合いませんでした。また、万が一の交通事故も考えられます。【小学校・教員・奈良県・年度内公表不可】
自治体内で異動する教職員ばかりではないので、遠方に引っ越しされた方にとっては、新年度に離任式があると出席するのが負担になると思います。【特別支援学校・教員・京都府・年度内公表可】
< 年度明けに異動を公表するメリットがない >
年度明けにスケジュールを確保して離任式等を行う必要が無いと思う。年度内に処理するべき。【小学校・事務系職員・埼玉県】
滋賀県は内示が3/25前後です。異動する本人もその時点までわかりません。引き継ぎの時間がないままに次年度がスタートします。新聞発表の4/1で調べた生徒だけが春休み中に知ります。メリットが分かりません。【高等学校・教員・滋賀県・年度内公表不可】
「どちらとも言えない」を選択した方の主な意見
早く公表すれば離任に際して生徒や保護者からの挨拶や贈り物が派手になりそうで心配。何かもらってもお返しできないのに困る。一方で、残されることとなる生徒からすれば、最後の挨拶がしたかった等の思いもあると思うので繊細な問題と感じる。教職員としては7~10日前の異動内示は本当に片付けと引き継ぎが大変なので、せめて3週間、出来れば1ヶ月前に内示してほしいと感じている。【滋賀県・高等学校/高等専門学校・年度内公表不可】
場合によると思います。年度内に公表された場合、児童生徒が動揺してしまうという可能性もあります。また、年度明けすぐに海外に向かうなど、もう二度と児童生徒にあいさつができない場合は、年度内に公表して別れのあいさつをした方がいいのかもしれません。【大阪府・小学校・教員・年度内公表不可】
今回のアンケートで初めて疑問を持ったほど、異動の公表について全く疑わずに教員生活を送っていました。年明けに公表というのが暗黙のルールでしたが、事前に保護者や子どもに伝えてしまうと勝手な憶測が飛び交ったり、過剰なお別れムードが起きてしまうようにも感じます。しかし、新年度になって急に先生がいなくなっていることに対する保護者、子ども達の精神的不安を考えると年度内に伝えた方がいいようにも感じました。【小学校・教員・東京都】
まとめ
全体の半数の学校で年度内の異動公表が不可とされていましたが、8割以上の方が「年度内に公表した方がいい」と回答しました。その理由としては、「児童生徒や保護者、関係者の方へ直接挨拶をしたい」という声が多く上がっていました。次いで多かったのが、「きちんと業務の引き継ぎや連携をしたい」という声。教職員だけでの引き継ぎだけではなく、児童生徒や保護者との連携が必要なこともあるため、新年度になってからの公表では支障が出るケースもあるようです。
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メガホン編集部