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規則上の勤務開始時刻、守られていますか?
「勤務開始時刻前に朝の打ち合わせがある」
「委員会や部活の指導がある」
中には「勤務開始時刻は朝8:00。…だけど、児童生徒の登校完了時刻は7:50」といった学校もあるとか。そこで今回は“半強制的な早朝残業”の実態について、全国の小中学校・高等学校の教職員から声を集めました。
※ このアンケートは2022年に引き続き2回目の実施となります。前回のアンケート結果は下記の記事をご参照ください。
■対象 :全国の小〜高校年齢の児童生徒が通う一条校に勤務する教職員
■実施期間:2024年10月4日(金)〜2024年10月28日(月)
■実施方法:インターネット調査(実施時の設問はこちら )
■回答数 :70件
Q1. 勤務校において、勤務開始時刻(学校や自治体で定められた時刻)前に組織として行っている日常的な業務はありますか。(複数選択可)
※「組織として行っている業務」には、いわゆる”暗黙の了解”を含みます。
全体の84%の人が「勤務開始前の日常的な業務がある」と回答しました。全ての校種で「登校指導」と答えた人が最も多く、全体では63%に上りました。
また、小学校の53%、中学校では44%の人が「校内の児童生徒指導・支援」と回答しました。中学校では部活動・委員会などの「児童生徒の課外活動指導・支援」に時間を割いていると答えた教職員が44%となり、他の校種より割合が高くなりました。「その他」にはプールの当番や電話対応、グラウンドのライン引きなどを行っているという記述回答が見られました。
前回調査との比較では、新型コロナウイルスの第5類への移行を反映してか「児童生徒の健康観察」が36%から13%へと大幅に下落しており、「なし」と答えた割合も5%から16%に上昇しています。
朝の日直業務、プールの塩素チェックや機械による塩素注入【小学校・教員】
児童が登校している。欠席連絡対応。スクールバス対応。【小学校・教員】
運動場のライン引き、プールの水質管理など【小学校・教員】
生徒指導の一環で登校見守り立番【中学校・教員】
朝読書【中学校・教員】
時間割調整【中学校/高等学校・教員】
図書館開館作業【中等教育学校・教員】
欠席連絡などの電話対応【高等学校・教員】
「その他」の内容では、小学校でプール関連の業務が多く挙げられたほか、欠席連絡等の電話対応についての業務が校種問わず挙げられていました。
Q2. 勤務校では、通常、教職員の勤務開始時刻と、児童生徒の登校開始時刻、登校完了時刻はどのような順に設定されていますか。
*1 登校開始時刻…児童生徒が登校してよいとされる時刻(門が開く時刻など)
*2 登校完了時刻…児童生徒がその時間までに登校しなければならない時刻
「登校開始時刻が勤務開始時刻前に設定されている」と答えた教職員は合計で85%に上りました。登校開始から登校完了までの間に勤務開始時間が設定されている人が全体の51%となり、校種別では中学校が67%と最も多くなりました。勤務時間開始以降に児童生徒が登校し始めると答えた人は1割程度でした。
回答者の地域別にみると、「登校完了時刻が勤務開始時刻前に設定されている」と答えた回答者は西日本(近畿・中国・四国・九州・沖縄)に多く、それ以外の地域の2倍の割合となりました。
これらの結果は前回のアンケート結果とほぼ変わらず、登校開始・登校完了・勤務開始の時刻には2年間での変化があまりなかったことが示唆されました。
Q3. 設問2で答えた業務に関して、起こっている問題を選択してください。
全体の79%が「事実上の勤務開始時刻が早くなっている」と答え、校種別で見ると小学校の86%、中学校の83%に上りました。また「特定の教職員に負担が集中している」と回答したのは全体では44%で、中学校では61%となり他の校種と比べて20%以上高くなりました。
また、回答には年代の差も見られ、20~40代の87%が「事実上の勤務開始時刻が早くなっている」と答えた一方、50~60代では64%と20%以上の開きがありました。
Q3-2. 起こっている問題の詳細を教えてください。
本来なら勤務開始→登校開始→登校完了の流れが正しいはずだが、そうすると必要な授業・活動時間や休憩時間(実質上ゼロだとしても)が確保できない。
部活動の朝練習可能期間は7:00には顧問は出勤する。
毎日6:30には3~5人の職員が出勤している。
体育教師は勤務開始時間前にグラウンドに白線を引かなければならない。
問題解決のためには、業務量削減、授業時間削減をするしかない。
無理です。【中学校・教員】
本校は8:30が勤務開始時間なのだが、1時間目の開始時刻が8:30。予鈴は8:25に鳴っている。必然的に勤務開始時刻よりも生徒は早くに登校するし、1時間目の授業がある場合、勤務開始時刻よりも早く到着する必要がある。
私たち教職員もこれが本来おかしいことに気付いて来なかったし、声を上げてこなかったことに非常に最近違和感を感じるようになった。【高等学校・教員】
あいさつ運動を子どもだけでさせることができないため、付き添いが必要になっている。
教室を空けないために朝の会を始める前に職員室で欠席児童の確認を行う必要が生まれている。
勤務開始前であるが、子どもがいるために生徒指導や怪我の処置を対応することがある。【小学校/義務教育学校・教員】
遅刻を一定回数すると早朝登校5日間の生徒指導があり、毎朝30分前に生徒を登校させるので、私たち生徒指導部も勤務時間より30分以上前からの仕事になるのが大きな負担である。またそういう指導を受ける生徒が5日クリアするのは大変難しく、結局2週間ほど勤務時間前の業務が続く。管理職は勤務時間の変更には応じてくれるが、30分早く帰れる日などほぼ皆無なので、タダ働き状態が通常化している。せっかく30分早く出勤して生徒の指導で、授業準備などができる訳でもないので辛い。【高等学校・教員】
勤務開始時刻前に児童が登校してくるため、色々な対応が必要となるが、それでも勤務時刻にならないと来られない人もいるため、結局来れる人に負担と責任が偏る。【小学校・教員】
児童の登校開始時刻と教員の勤務開始時刻が30分ずれており、そのギャップを減らそうとしたこともあった。しかし子育て中や出勤に時間のかかる職員がいるため勤務開始時刻を早くすることが難しく、登校時刻を遅らせるのは保護者の反対にあいそうで話を進められない、という状態になっている。結果的には、早く来ている職員が児童の対応をしていることが多い。他の職員に無理強いできないので、管理職の先生が早く来ざるを得なくなっている様子もある。【小学校・教員】
自分の勤める学校は、勤務時間開始が始業時間と同じ。欠席連絡なども含めた電話も勤務時間の30分前には繋がるようになっていたり、登校してきた児童の対応や登校班含むトラブルの対応も勤務時間前から入ったりすることが当たり前になっている。プール当番も勤務時間前。実質、勤務している状態(対応が必要とされること)が当たり前になっていることに疑問がある。子育て世代の同僚はお子さんの送迎の関係で早めに出勤することに無理があるし、一部の人に負担がかかりやすい環境でもあると思う。【小学校・教員】
登校指導は主に生活指導部が行っているので、生活指導部に多大な負担が偏っている。
生活指導以外の教員も関わっているが任意なので、登校指導をしない人は全くしていない。【高等学校・教員】
子どもの登校時間を遅くしたい(勤務開始時間のあとに)という意見を出しても、保護者が仕事に出ないといけないのでこれ以上遅くできないという話になってしまいます。(下校時間も) 家庭が大変なのはわかります。でもその責任を負うのは福祉行政ではないでしょうか。教育行政はあくまで教育に責任を負うために、教師が授業に専念できる勤務環境を保障してほしいです。【小学校・教員】
以前勤めた学校では、開門の前に教室にいた児童が他の子の物を盗るという事案が起こった。できるだけ開門を外で待たせる方向転換になった。【小学校・教員】
開門を勤務開始時刻と同時にしているので、門前で待機する児童が多くなり、近隣に迷惑がかかっています。【小学校・教員】
本校は勤務シフトという制度があるので、始業は規則上8:30ですが、これを15分単位で繰り上げることができるため、8:30のHRのための準備等の早出も勤務内に収めることができています。【高等学校・教員】
本校朝の時間 7:50 登校開始 → 8:10 勤務開始 → 8:15 登校完了
日直は勤務時間前から業務が始まる。教頭は、日直の補助他、登校時の緊急対応、教職員の出欠席に対する業務調整のために、毎朝、7:10頃から勤務している。
登校開始を8:30にするには、行政の広報活動が欠かせないが、市費対応職員に対する対応と比較して、県費負担教職員への対応は、甘くなってしまう。勤務開始時刻を、8:10 から 7:40 に変えていきたいと考えている。【小学校・校長】
司書教諭をしています。図書館は、8:05から貸出を始めていますが、勤務時間前であるにもかかわらず、覗いたり、場合によっては指導することもあります。また、朝はスムーズに貸出返却ができるよう、児童の登校前にパソコンをたちあげるなどの細かい作業も行っていますが、わかってくれる人は、学校司書の方ぐらいです。【小学校・教員】
早く来なければいけないときに、その分早く帰らせてほしいと伝えたら、4%上乗せの分だと思うように!と、教頭に言われました。帰っていい!と言われる校長もいました。何も言わない人がほとんどです。教師の善意に甘えています。【小学校・教員】
時間割調整は急な欠勤が出た場合、時間割変更や自習監督が必要になる。出勤している教員がその任務に当たることになるが、時間割係が調整して担当者を決める。なるべく自習ではなく授業をした方が良いという共通理解があり、急に授業ができる人を探すのが難しい。また授業をすると少し手当がつくが、監督だとつかないということもあり、自習監督を頼みにくい場合もある。【中学校/高等学校・教員】
登校時刻と勤務開始時刻を合わせることは、今の学校現場においては困難です。若い教師の中には法律を傘にして勤務時間前に仕事をすることに反論する人も出ている。しかしそれでは学校は回らない。【小学校・教員】
「勤務開始時刻前の日常的な業務がある」と答えた人は全体の84%に上りました。その内容については「登校指導」と答えた人が63%と最も多く、次いで「校内の児童生徒指導・支援」「部活動・委員会など、児童生徒の課外活動指導・支援」の順でした。
また、教職員の勤務開始時刻と児童生徒の登校時刻の設定についての質問では「登校開始時刻が勤務開始時刻前に設定されている」と答えた教職員が合計で85%となりました。
勤務開始時間と児童・生徒の登校時間が合わないことで起こる問題について、79%が「事実上の勤務開始時刻が早くなっている」と答えました。「本校は8:30が勤務開始時間なのだが、1時間目の開始時刻が8:30。予鈴は8:25に鳴っている。必然的に勤務開始時刻よりも生徒は早くに登校するし、1時間目の授業がある場合、勤務開始時刻よりも早く到着する必要がある。」といった回答もありました。
「特定の教職員に負担が集中している」と回答したのは44%でした。「開門を勤務開始時刻と同時にしているので、門前で待機する児童が多くなり、近隣に迷惑がかかっています」との回答もあり、児童生徒の都合と教職員の正規の勤務時間との兼ね合いが難しいことを示すアンケート内容となりました。
▼ 自由記述の回答一覧は、以下よりダウンロードしてご覧ください。 ▼
学校の校則・ルールを、生徒・先生・保護者が対話をしながら見直していきたい!
そんな想いからスタートした認定NPO法人カタリバの「みんなのルールメイキング」と、NPO法人School Voice Project( SVP )がオンラインイベント「学校における”対話と民主主義”を本気で考えよう!」を共同開催しました。(当日のプログラム等の詳細は こちら )
このイベントには、全国から約40名の教職員や教育関係者が参加。現場で奮闘する教職員たちの生の声から、学校における対話の重要性や、子どもたち・教職員ともに作る民主的な学校づくりについて活発な意見交換がされました。
前編では、SVPの武田緑さんが海外の学校の事例を用いてテーマを掘り下げていきます。
武田 緑(たけだ みどり)
NPO法人School Voice Project理事兼事務局長。全国の学校や教育委員会で【DE&I(多様性・公正・包摂)】をテーマにした研修・講演・執筆、ワークショップやイベントの企画運営、学校現場や教職員への伴走サポートを提供している。
「多様なバックグラウンドや個性を持った全ての子どもや先生たちが、しんどい思いをせずに、心地よくたのしく過ごせる学校をつくっていきたい」という思いで活動中。
School Voice Projectとは?
設立3年目。「学校現場の声を見える化し、対話の文化をつくる」をミッションに、100名を越える現職・元教職員メンバーの参画によってスタート。一人ひとりの教職員が日々働きながら感じ考えていること=「学校現場の声」を見える化し、課題解決へとつなげるための組みとして、WEBアンケートサイト「フキダシ」・WEBメディア「メガホン」・教職員のオンラインコミュニティ「エンタク」の運営、さらに政策提言・ロビイング活動に取り組んでいます。 https://school-voice-pj.org
浜田 未貴(はまだ みき)
認定NPO法人カタリバ『みんなのルールメイキング』職員。相談窓口や自治体連携などを担当している。マイプロは「みんな辛くても我慢しているのに、あの人はずるい!ではなく、みんなが幸せになれるよう、環境を自分達で変えていこう!と思う仲間を増やすこと」。
『みんなのルールメイキングプロジェクト』とは?
2019年より活動している、生徒が中心となり先生や関係者と対話しながら校則・ルールを見直していく取り組みです。「校則」を題材に「目指したい学校づくり」のきっかけをつくっていくことを目的に、「対話を通して納得解をつくるプロセス」を学校へ届けるサポートを行っています。
現在、全国で約400校ほどパートナー登録があり、School Voice Projectがカタリバと共同でサポートを担当している関東エリアからも、100校ほどの学校が参加しています。 https://rulemaking.jp/about/
逸見 峻介(へんみ しゅんすけ)
本イベントの司会担当。埼玉県公立高校教員。2022年度には生徒指導部主任として、民主的で対話的な組織を目指して改革を行い、「生徒支援部」へと改称する。ワークショップデザイナー・NPO法人School Voice Project理事・みんなのルールメイキングプロジェクト教員アンバサダー。「人間っていいな!面白いな!」と思える人を増やすため、日々必死に生きている。対話の場 Open Education などを主催。
司会(逸見) 本日のイベントは「学校における”対話と民主主義”を本気で考えよう!」をテーマに、安心安全の場で話ができればと思っております。まずはSchool Voice Projectの武田さん、海外の学校の例もたくさん見てこられたとのことで、事例を交えてお話しいただけますか。
武田 今回のテーマは、School Voice Projectとしても私個人としても大事にしたいと思っていることで、とてもいいテーマをカタリバさんからいただきました。
私が惹かれる学校に共通しているのは、個人の能力発達や人との競争などの「あるべき」よりも、「イマ・ココと将来がしあわせであること」などを大切にするようなWell-beingと、「子どもの参画があたりまえ」であるようなDemocracy(民主主義)が真ん中にあるという点です。
10代の頃から、ユニークな取り組みをしている国内外の様々な教育現場を訪問してきたのですが、「学校における”対話と民主主義”」という点では、特に北欧の学校から多くのことを学びました。
例えば、デンマークの「森のようちえん」。園舎がなく、雨の日も雪の日も一日中森で過ごす幼児教育の場です。禁止や制約がほとんどなく、自分が何をしたいか、どうしたいかという内から湧き出る気持ちやニーズを、まっすぐ自己表現し続けることができる環境の中で、子どもたちはとても自信に満ちていて、「私は・僕はやれるんだ」という感覚を強く持っていました。
同じくデンマークの小学校では、多様性を尊重する姿勢が、教室のレイアウトにも表れています。全員が同じ方向を向いて座るのではなく、壁向きの席もあれば、グループ席もある。グループで過ごすのが好きな子、一人で集中したい子など、それぞれの学び方に合わせて席が配置されている。
スウェーデンの小学校では、子どもたちが学校生活について意見を言える仕組みが整備されていました。要望がたくさん挙がってくるんです。「遠足が木曜に設定されたけど、木曜は体育も図工もあって楽しい日だから木曜日以外に変えてほしい」とか、給食委員会では「ジャガイモが固いから柔らかく茹でてほしい」「魚料理が多すぎるから肉料理を増やしてほしい」とか。素朴な声ですよね。
浜田 ルールメイキングの活動でも、「次回研修日程がクリスマスで嫌だ……」という子どもの声から、実施日が変わった事例がありました。素朴な声って大事ですよね。
日本だと、そういった素朴な声を出すこと自体が「わがまま」と捉えられることもあるように思います。
武田 自己主張=わがまま、みたいな認識になってるんですが、そうではないと思うんです。主張してみてからじゃないと、周りに迷惑かけるかどうかも分からないはずで。自己主張のみで、他者の主張を聞かないのが「わがまま」なのだと思います。
先ほどのスウェーデンの例では、子どもたちの素朴な要望に対して、先生たちも真摯に応えるんですよ。遠足の日程は変わったし、ジャガイモは柔らかくなった。
だけど全ての要望を聞くわけではなくて、ダメな場合は「なぜそうしているのか」を丁寧に説明します。「魚料理を多くしているのは環境への配慮や、栄養バランスを考えてのことだよ」と説明されれば、子どもたちも理解して納得します。
武田 デンマークのある中学校では、生徒たちが「メンタルヘルスの問題を抱える生徒が増えているが、カウンセリングを受けられるのは経済的に恵まれた家庭の子どもたちだけ」という問題に気づき、生徒会が動いて、専門のケアスタッフを学校に常駐させるべきだと提案し、役所と交渉しているそうです。
Democracyは、一段目として「自分が何をしたいか」「何が嫌で何を望んでいるか」を理解することから始まります。
二段目に、隣の子も同じように大切なニーズを持っていること、でもそれが自分とは違うかもしれないことに気づきます。
すると三段目の「じゃあ、どうする?」という対話が生まれるんです。
四段目以降は、対話がさらに発展することで、クラスの問題、学校全体の問題、そして最終的には社会の問題へと広がっていきます。
デンマークの教育を見ていて感じたのは、「私はこうしたい」という段階から、他者と対話してコミュニティを自治していくこと、そして「選挙に行って自分の意見を社会に反映させる」という段階までがちゃんと地続きで、直結しているということ。だからこそ、投票率も高いのではないでしょうか。
浜田 ルールメイキングの活動の中で、子どもたちに「学校に伝えてみたいことある?」と聞いても、「え、分かんない。今のまんまで十分だと思う」と返ってくることがあります。例えば先生が「制服を自由にしたいと考えてみてもいいんだよ」と投げかけても、「そんな~」と言われることがあるそうです。民主主義の一段目でつまずいていますよね。
武田 民主主義とは、一人ひとりの声を尊重することだと思っています。そして気づかれにくい小さな声は、「聴いてもらえるな」という信頼があって初めて出てきます。
なので、まず「聴いてもらえる環境をどう作るか」が、非常に大事なのではないでしょうか。
みんな違うから、思いは重ならない。それでも声を聞き合いながら、出し合いながら、対話して、共通解を探し続けるプロセス。これこそが民主主義なんだと思います。
このプロセスを続けていくと、学校の包摂性が高まり、苦しい思いをする子が減っていくのではないでしょうか。そして、「自分には変える力があるんだ、自分のアクションには意味があるんだ」という自己効力感が高まっていく。その結果、授業に参加したくなる、クラスに参加したくなる、そして社会に参加したくなるのではないかなぁと思います。
浜田 日本の学校の中でもやもやしたことがあっても、子どもたちはまさかそこが変えられるとは全く思っていないことがほとんどではないでしょうか。「自分の身近な環境すら変えられないのに、社会が変えられるとは到底思えない」感覚が、根底にあるように思います。
武田 この問題は子どもたちだけでなく、大人にも当てはまりますよね。民主的な教育を実践していく当事者であるはずの先生たちは、果たして一人ひとり尊重されていて、自分のアクションから学校や社会を変えていける実感を持てているのでしょうか。教職員だって、尊重されたいし、包摂されたいし、声を聞かれたいし、対話の場が欲しい。
だからこそ、私たちSchool Voice Projectは教職員の声を大切にし、対話の場を作り、支え合えるコミュニティを作ることから始めています。教室に、職員室に、学校教育に、そして教育行政に、民主主義と対話を増やしていきたい。それが私たちのミッションです。
司会(逸見) ありがとうございます。北欧の例から、コミュニティを作った背景までお話いただきました。次回は、浜田さんよりルールメイキングプロジェクトの取り組みと、現場で実践する先生たちの体験談をお伺いします。
(北欧の学校の)おかずや行事の調整、家でのやりとりみたいですね〜
ルール作りというよりも、自分の必要を要求できること、というのが大事なんですよね。
インドのことわざで、「自分は誰かに迷惑をかけて生きてるんだから、自分も誰かの迷惑を許しなさい」というのがあるそうです。このことわざ好きです!
では、学校における“対話”や“民主主義”は、実際の現場でどのように実践されているのでしょうか。後編では、浜田さんが語るカタリバの『ルールメイキング』の取り組みと、ルールメイキング教員アンバサダーの3つの事例から、「反対派」との対話のあり方を探ります。(後日公開)
ルールメイキングを実践したい・実践している先生や学校職員のほか、教育委員会の立場から学校の実践を支援する行政関係者の方々も参加することができるコミュニティです。
https://rulemaking.jp/partner-lp/
関東エリアでルールメイキングに取り組む児童生徒・教職員が集い交流するイベントを2024年12月27日に実施します。ぜひご参加ください!
コロナ禍を通して、親睦会や忘年会の自粛、または機会の見直しを図る組織が全国的に増えました。
親睦会は、職員同士の相互理解を深めることのできる貴重な機会です。しかし、その多くが勤務時間外の飲み会として行われることや、学校によっては参加を断りづらい雰囲気があることも事実。ベテラン層と若手層との間で意見が食い違っている学校もあるようです。
そんな学校の親睦会の必要性について、全国の学校教職員に聞いてみました。
■対象 :全国の小〜高校年齢の児童生徒が通う一条校に勤務する教職員
■実施期間:2024年8月23日(金)~2024年10月7日(月)
■実施方法:インターネット調査(実施時の設問はこちら)
■回答数 :104件
Q1. 私の学校では、職員の親睦会が存在し、飲み会をしたいベテランとやりたくない若手で意見が割れています。職員の親睦会は必要だと思いますか?
年代別に見ると、40代の肯定的意見が一番多く、全体の65%が「必要だと思う・どちらかというと必要だと思う」と回答しました。次に肯定的な意見が多かったのは30代以下で、否定的意見が過半数を占めたのは50代のみでした。
また、校種による働き方の違いを反映してか、小学校では17%の回答者が「必要だと思う」と答えたのに対し、中学校では10%、高等学校では0%と結果にばらつきが見られました。
コミュニケーションを深めることに特化した時間が必要であるから。【小学校・教員】
若手の扱いに戸惑うからこそ、お互いを知る機会と時間がほしいから。【小学校・教員】
普段、高学年の先生としか絡みがなく、中学年低学年の先生と交流する機会になるから。特に高学年は若手が少ないので、若手と交流する機会が欲しい。【小学校・教員】
ゆっくり話す時間や場が勤務時間内にないから【中学校・教員】
多忙な勤務時間では報・連・相で会話は終了。同じ学年部でもお互いの家族構成すら知らない。もし授業の緊急入替があっても、理由がわかると「お大事に」という気持ちになる。そんな気持ちを共有できる組織だと、よい影響を広げていく。経験者として断言できる。【中学校・教員】
子供が小学生の頃までは、休憩は取らずに最低限の仕事をするにとどめて、定時に帰ることが求められました。そうすると、同僚とコミュニケーション・雑談をしている時間が全くありません。雑談をすると仕事が終わらず、土曜日に来て帳尻を合わせていました。飲み会があると、普段は話せない人と話せたり、深くゆっくり話せたりします。そうすると、普段の仕事上での信頼関係も得られやすく、仕事がしやすくなると私は考えています。【小学校・教員】
強制はしない方がいいと思うが、歓送迎会ぐらいはあった方が、お互いのことを知る機会として必要かなと思う。それをきっかけにコミュニケーションが円滑になることもあると思う。【小学校・教員】
ゆるく繋がることは必要だと思う。絶対出ないといけないみたいな同調圧力にならない程度に。【小学校・教員】
私自身は歓迎会や打ち上げなど、職場の飲み会が好きでしたが、やはりコロナを機に人とわざわざ会うということについて吟味するようになりました。飲み会は勤務時間外なので、有志でやればいいですし、歓迎会や懇親会は、職員の相互理解を深める研修扱いで勤務時間内に位置付ければいいと思います。【小学校・教員】
必要とまでは思わないが、気楽に親睦会が企画できるような職場であってほしいと思う。今はパワハラ、コンプラなどいろいろ気にし過ぎているような気がします。強制はよくないが、飲みニケーションの利点もあると思います。【高等学校・教員】
仲良い人とだけ仲良くして、そうじゃない人とは当たり障りなく…というのはどうかなと思う。ないならないで、職員の分断が進んでしまう気がするので、最低限親睦会の行事はあった方が良い。あと、直接子どもに関わらない社会的な一般常識(葬儀、お見舞い、お祝いごと、のし、香典や祝儀袋の書き方など…)は親睦会で学んだ。飲み会のためだけに存在するのではないことは念頭においておくべき。【小学校・教員】
学期の節目、年度の節目、大きな行事後にはあってもよいとは思う。しかし、管理職へのお酌が強要されるような雰囲気なら、パワハラにあたるため、行わない方がよい。兎にも角にも、管理職の雰囲気次第。【小学校・教員】
したい人だけですれば良い。それぞれの家庭の事情、個人的な事情がある中、強制的に行う必要はないと思う。【小学校・教員】
本当にやりたい、行きたい人は行けばいいけど、強制されるのはNG。強制してはなくても、行かないと何となく気まずいとかもあると思うけど、本来なら、お互いを理解して、そのことで仕事に支障がでないように振る舞うべき。【小学校・教員】
ベテランの先生のもつ技や考え方を聞く時間は必要だと感じるが、別にそれは飲み会の場でなくても良い。【中学校・教員】
仕事を通して親睦を深める意味はある。しかし、飲み会を通さないと親睦が深まらないような職場環境は良くないと思うから。【高等学校・教員】
ただでさえ就業時間内に業務が終わらない仕事なのに、就業時間外まで欠席しづらい親睦会を開催して職員を拘束するのはいかがなものかと思う【小学校・教員】
あっても無くても良い。あれば親睦が深まるとは思うが、日頃の業務が忙しすぎるので皆早く帰ることが一番職場にとって良いことだと考える。【中学校・教員】
本当に必要と論ずるなら勤務時間内に時間を取ってやるべき。時間外にやるって事は絶対必要とは言えないという何よりの証拠。【小学校・教員】
お金と時間のむだ。プライベートに侵食してほしくない。【特別支援学校・教員】
前任校は、年齢層が高く、20代の私と飲みたいだけだろうなと思う飲み会が多数あり、行きませんでした。行くとハラスメントにあいました。【高等学校・教員】
先輩のありがたいお話が本当にありがたければ有意義ですが、そうだったためしがありません。【小学校・教員】
多数あります。
・「飲める人」は楽しいが、「飲めない、飲まない人」には概して苦痛
・年長者による武勇伝、説教、イジリになりやすい
・愚痴や不在者への悪口大会になりやすい
・宴が始まれば結局、いつもの仲良しで固まってしまう
・そもそも勤務時間外に仕事関係で拘束される謂れはない【高等学校・教員】
Q2. 上記の内容に関連して、あなたが思っていることや考えていることを教えてください。
採用になって最初の半年ぐらいは、私も参加したくありませんでした。参加して、褒められたり、励まされたりしているうちに、明日につながる手ごたえを感じるようになり、積極的に参加するようになりました。【小学校・校長】
長年続けてきた古い考え方ややり方は変える必要がある。ただ、職員室内では気軽に話せないこと等交流を図ることは大切と考えている。【中学校・教員】
異年齢、異世代と交流することで知識も広がるし、模範も反面教師も見つかると思う。参加不参加は個人の自由だが、開催はしたほうがいい。雑談の中に教訓は生まれる。【中学校・教員】
育児や介護をしている職員、持病がある職員はどうしても夜の会には参加できない。そもそも日中の仕事で疲れ切っている。夜の飲み会には親しい間柄だけで行い、「職場の親睦」は勤務時間内に行えるかたちが望ましい。【中学校・教員】
勤務時間外に、まとめて集められるから「えーっ」となる。会議を見直して、本当に必要な話し合いが、勤務時間内でできるようにしたい。【小学校・教員】
私自身は歓迎会や打ち上げなど、職場の飲み会が好きでしたが、やはりコロナを機に人とわざわざ会うということについて吟味するようになりました。飲み会は勤務時間外なので、有志でやればいいですし、歓迎会や懇親会は、職員の相互理解を深める研修扱いで勤務時間内に位置付ければいいと思います。【小学校・教員】
放課後の時間で雑談の中で相談とか話が出来れば飲み会をしなくても親睦は深まっていくのではないかと思います。ただ、現状働き方改革の中で授業準備等で放課後に皆さん雑談をする余裕がないのも現実です。【小学校・教員】
飲み会だけでなく、体育館でミニスポーツをしたり、多目的室でおしゃべり会をしたり、親睦を深める機会が大事だと感じています【小学校・教員】
親睦会の一歩手前、職員室の一角に、もっと気軽におしゃべりできるリビング的な空間があったらいいな、といつも思ってる。固定された席では、なかなか関われない先生がいたり、仕事に集中したい人もいたりするので。【小学校・教員】
アルコール文化に変わる、交流の場が必要。子どもも含めて気楽に集まれるような場所を校内に作った方がいいと思う。改めて、時間と場所を設定することほど、煩雑なことはない。【中等教育学校・教員】
組織化するとタスクが増える。毎年、会計を持たされる事務職としてはなくしてほしい。せめて平等にしてほしい。【小学校・事務職員】
行きたい人だけ行けばいい。親睦会の積立費で年会費を取るのは反対【高等学校・教員】
正確には「親睦会」と「飲み会」は別物です。親睦会は飲み会もしますが,それ以外の仕事もあります。特に慶弔関係のお祝いやお悔やみは,個人として出すことになると職員数が多い職場だとお返しも大変になります。「あの人からもらって,あの人からもらってない」とならないように,代表してクラブから渡してもらえると,とても助かります。【小学校・教員】
あってもいいかなと思いますが、例えば飲み会等に参加しない場合は返金制度を設定するなどの必要があるかと思います.【小学校・教員】
私が所属する地域では、親睦会というと、歓送迎会、退職のお祝い会、運動会の打ち上げ、忘年会というのが一般的です。コロナの影響で最近は歓送迎会だけというように、最小限の回数になっています。【小学校・教員】
うちの学校は校長が投げかけて職員の意見を吸い上げてくれました。その結果、学校全体で飲み会をするみたいなことはやらないことに決まりました。お酒を飲まないと仲良くなれないと思う人はやればいいと思います。【小学校・教員】
親睦会で出し物はやめてほしい。考える余裕がないし、お笑い的なことを求められるのも苦痛。あと親睦会の準備をする担当になると大変。【小学校・教員】
他県の先生とも関わることができる余裕と時間があればいいなと思います。【小学校・教員】
年上が奢る、あの人は奢ってくれないとか、若いのにあいつは付き合いが悪い、とか業務に全く関係ないところで不当に評価されることもある。参加してリフレッシュになることはまずなく、帰って休むべき。【小学校・教員】
決して強制、頻繁にする必要はないと思います。最近自分の仕事だけこなして、コミュニケーションが薄い若手教員が増えていることが気がかりです。話す時間をとることで仲が深まり仕事が円滑に進むと思います。【中学校・教員】
学校に勤務する全職員で参加する「新入職員歓迎会」「忘年会」「転退職職員送別会」はぜひ続けてほしい。校種や学校規模によって、「学年親睦会」や「行事打ち上げ」があると、さらによい。【中学校・教員】
一日のうちの多くを学校で過ごしているのだから、それ以上、同僚との時間を増やす必要がない。家族との時間やプライベートの時間を優先すべき。【小学校・教員】
若い人(だけじゃないけど)は、どのようにして職場の人たちと関わり合いたいと思っているのか知りたい。勤務時間外の集いなんてそれぞれ個人の自由だとは思っているが、やはり一抹の寂しさは感じてしまうな。【小学校・教員】
アンケートの結果からは、親睦会そのものよりも、強制的な参加を促すような雰囲気や、勤務時間外での実施を問題視する声が多く上がりました。
昨今は業務の多忙化と同時に働き方改革が推し進められていることもあり、職場での対話を生むような余白が、極端に減っているであろう現状も伺えます。
一方で、何気ない交流や、お互いに胸襟を開く対話の大切さは、多くの人がその価値を認めていることもわかりました。「相互理解」「仲間づくり」「チームワーク」「コミュニケーションが円滑に」など、様々な言葉でその価値が伝えられています。
どんな状態の職場が「心地よい」と感じるかは、人によって違いますし、世代や立場の違いによる感覚のズレがあることもありますが、その違いを分断につなげるのではなく、何気ない交流や対話による相互理解を経て、お互いの尊重につなげていくことが大切なのかもしれません。
現状に余裕を生むのは難しい面もあることと思いますが、本記事内で紹介した回答者の声や交流の実例を、少しでも参考にしていただければ幸いです。
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