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不登校状態の児童生徒の評価・成績をどうつけるのか? …この問題に直面したことのある方も多いのではないでしょうか。教室にいない(ことが多い)児童生徒の学びを評価するということは難しく、現状は通知表の評価欄が「斜線」になることも多いようです。
文科省は、不登校児童生徒の適切な評価を促進し、誰1人取り残されない学びを一層推進するため「学校教育法施行規則」の改正を予定しています。「当該児童が欠席中に行った学習の成果を考慮することができる」との文言が追加される方向です。
当然ながら、評価・成績は進路選択にも大きく影響します。実際、不登校の中学生は、内申書・調査書に成績が載らないことが多いために、進路選択の幅が狭まっているという現状もあります。
一方で、欠席中の学習の成果を成績に反映することには実務的な難しさや公平性の問題も指摘されています。
そんな「不登校の児童生徒の成績・評価」について、全国の学校教職員から声を集めました。
■対象 :全国の小〜高校年齢の児童生徒が通う一条校に勤務する教職員
■実施期間:2024年8月2日(金)〜2024年8月26日(月)
■実施方法:インターネット調査(実施時の設問はこちら )
■回答数 :50件
Q1. 不登校児童生徒が欠席中に行った学習の成果を成績に反映させることについてどう思いますか?
「反映させるべき」「どちらかというと反映させるべき」と答えた人が全体の68%に上りました。肯定的な回答の中には「反映させるべきだが難しい」という意見も多く見られました。また消極的な回答の中にも、学校だけが評価するシステムを変革するなど、より積極的な対応をするべきとする意見が寄せられました。校種別では、中学校では72%が反映することに肯定的である一方で、高等学校では57%の人が反映することに消極的な回答を選択しました。
学習しているなら他の生徒と同じように評価してあげたいと考えます。【中学校・教員】
勉強をして努力したものは、キチンと評価してあげるべき。
ただし、その評価方法は、全体の共通事項として、平等性を確保するなどの配慮も必要だと思う。【小学校・教員】
通知帳などでは本人が頑張ったこと、やったことは評価してあげたい。もちろん、評価の難しい、不可能な項目は保護者の方にも説明、了承を得た上で斜線を引いて渡したこともあります。【小学校・教員】
学校で行った学習だけが認められるというのは、視野が狭いなと思います。不登校児童生徒の自己肯定感を上げるためにも、柔軟な成績評価が必要だと思います。そもそも小学校は成績評価はいらないと思いますが。【小学校・教員】
内容にもよると思いますが、学校以外の場所で何らかの課題にとりくんだとして、それを一律に評価しない、という姿勢は学校の姿勢としてはよくないと思います。学校以外の場の学びであったとしても、できるだけ積極的に認めていくことが子どもの自己肯定感にもつながるのではと思います。
ただし、成績が内申となり、入試の結果に反映される材料となることで問題は複雑になるとは思います。【中学校・教員】
同じことを行っているのであれば、成績に反映しやすい。そうでないのならば、難しい。【中学校・教員】
どう反映するかが大きな課題で、以前、校長から言われたことは、学校で行っている教育活動に同等で、評価できることが必要だと。教員の負担も増える中で、なかなか難しいと感じる。【中学校・教員】
公平にしようとして学校の課題を渡すと、生徒本人に精神的負担になる。学校の課題以外で評価しようとすると公平性に欠け、教員の心理的負担が大きい。【中学校・教員】
今の教育での評価は同じものを並べて評価するもの。学校の宿題であれば成績に反映できるが、関係ないことについては反映できない。学校での評価自体を変えない限り、公平な対応ができない。不登校の生徒の方が簡単に良い成績が取れてしまうような対応はできない。【中等教育学校・教員】
本人の実力かどうか分からない状況であることと、“主体的で対話的で深い学び”になりにくい状況であることなど、学習の評価に取り入れることは難しいと思う。【小学校・教員】
教科性にもよりますが、本人が行ったものかどうか判断できないものもあるため。
オンラインなどで実際に取り組んでいる様子が確認できるなら良いと思う。【高等学校・教員】
直接評価していないものを自分の名前で出すわけにはいかない。【小学校・教員】
不登校の子どもの様子をリアルに見ていない人が適切な評価ができると思えない。担任も困るし、保護者もモヤモヤするし、子どもは見向きもしないだろう。
受験の内申書に関してもリアルに見ている人が書いてもよいとする受験方法に変えていったらよいのではないかと思う。(FCI今治高校のように)【小学校・職員】
学校がつける成績の価値を下げる方がいいと考えている。しょせん学校の成績なんて極一部分だけを見とったものなんだから、これだけにとらわれないでいようね、っていう空気が望ましい。
また、成績に反映させるために、不登校の人に対して、この課題をやったら認めますよという形で課題を提示することにもなりかねない。それは双方にとってデメリットだと思う。【高等学校・教員】
学校外で学んだ内容については、学んだ場所で成績を残してもらえばいいと思う。
進学のための内申書なども学校だけではなく、それぞれから提出する仕組みにすればよいと思う。多用な学びの場があっていいし、学校がそれを集約しなくてもよいと思うから。【小学校・教員】
「内申点を与えてあげる」という発想から、「内申点がなくとも、自分にふさわしい進学先を選べる制度をつくる」という発想に変更したほうがよい。これは、長期入院などで内申点がつかなかった生徒、帰国・入国してきたばかりで日本の学校に照らし合わせられる成績がない生徒などにも有効である。
それと同時に、「必要とする生徒(精神的に疲れ切り、学習どころではない生徒も多々いるため、全員ではない)には適切な学習の機会を与える」環境を整えることを行ってほしい。必要なのは「成績に反映させる」ことではない。【中学校・教員】
不登校であったとしても、児童生徒が学び成長していくのは確かである。しかし、その過程や地域・社会団体の中で行われている学習や成長については、学校が管轄していくことには無理がある。【小学校・教員】
Q2. 不登校児童生徒が欠席中に行った学習の成果を成績に反映させることについて、教員にとっての大変さ(難易度・負担度など)はどの程度だと思いますか?
「とても大変だと思う」「まあ大変だと思う」と答えた人が全体の68%でした。校種別では小学校に勤務する43%の人が「とても大変だと思う」と答え、中学校の39%、高等学校の29%と比べて多く見られました。不登校の児童生徒を評価するための職員を増員する必要があるとの意見もありました。
登校している生徒との公平性を保つのが難しい【中学校・教員】
普段から、評価の際は「公平性」と「説明責任」を常に意識するよう指導されている。不登校の生徒の評価ではこの2つともかなり難しい。【中学校・教員】
不登校生徒の学習内容の評価のためには、個別対応が必要な場合が多い。まず、本人と連絡を取り、学習活動や課題のやり方、授業への参加の方法、時間、場所など、取り組める方法を細かく相談する時間が必要になる。そして、ようやく成績に反映できる状態になるので、一日の授業の持ち時間が多いと負担が大きくなる。【義務教育学校・教員】
不登校児に対してプリントなり補足説明など準備が増える【高等学校・教員】
「訪問による対面指導」という文言があるが、過労死レベルの超過勤務を毎月行っている教員にできるはずがない。中学校の各教科の担当が複数回訪問する・対面することを想像するだけで非現実的であることは明白である。
※特別な職員を配置し、その教員が特別に評価する、というのであれば納得はいく。「通級指導」の個人表と同じような扱いであれば、個別の継続的な見取りが可能である。生徒のことを第一に考えた「学習の機会の保障」と、「個人にふさわしい評価の在り方」を考えるべきである。【中学校・教員】
どの程度、生徒さんとコンタクト、コミュニケーションを取るかによると思いますが、1週間に1度くらいならできるかなと思います。毎日だと担当教員に負担がかかり過ぎると思うので、複数で分担するとかサポーターを雇用するなどの学校レベルでの施策が必要だと思います。【中学校・教員】
目の前で学習している姿を見ていないので、評価はやりにくい。本来の「評価」の目的から考えると必要感はないが、受験への影響を考えると大変でもやるのがいいのかとも思う。【小学校・教員】
まず担任が毎日の様子を記録、把握できるわけじゃないし、そもそも目標に対しての評価をするには無理がある。子どもや保護者も不信感を抱いている場合が多い中、気持ちよくその評価を受け取れるとは思えない。【小学校・職員】
評価というものの仕組みと手順が明確にされていれば、それほど大変ではない。人を支えるのは、数字だけではありません。【中学校・教頭】
教務、管理職チェック次第で負担感は変わると思う。ざっくり評定を出すことが許されるなら負担はなく、登校している子と同じ回数評価し、評定を出しなさいと言われると評定を出すための手間と時間はかかる。【小学校/中学校・教員】
エクセルで処理している以上、評価を入力するだけ。【中学校・教員】
Q3. 不登校児童生徒が欠席中に行った学習の成果を成績に反映させることについて、学校に来ている児童生徒の評価・成績と異なる基準になること(公平性の問題)についてどう思いますか?
公平性について「問題」だと考える人と「問題ではない」と考える人が同数となりました。校種別では高等学校の71%が「問題ではない」と回答しました。年代別では20代の回答者に「問題」だと考える人がいなかったのに対し、50代では56%が問題だと答えました。
異なる基準で反映することが本当に「公平」と言えるのか、よくわかりません。【小学校・教員】
個人の課題や実技テストは、問題なく評価できる。提出期限や評価基準はそろえている。ただ、グループワークやグループ発表などは、参加していないのに同じように評価するのは難しいと感じている。【義務教育学校・教員】
高校受験で評価を使用している以上、公平性を無視することは難しい。【中学校・教員】
相対評価をつけなくてはならないので、大変問題。相対というからにはやっていることが同じという前提があるから。不登校の生徒だけ特別につけることは不公平で心が痛む。【中等教育学校・教員】
お互いの成績を平気で見せあったりする生徒同士の関係から考えると、学校に来ていないのにどうしてこういった成績がついているのという疑問は必ず生じると思う。説明責任は生じるので、そのことについて責任がある立場の管理職がすべての教員に共通理解する場面を作ることが不可欠。【中学校・教員】
一律でない観点による評価自体、意味がなくなってくると思うため。評価自体が不要になってくるのでは?【小学校・事務職員】
そもそも個別に最適な学びを実現しようと思うと、従来の成績評価は合わなくなってくると思います。もはや3段階評価や5段階評価をやめてしまって、その子その子の強みや弱みを記述する形で良いのではと思います。(そうすると、先生が大変ですけどね)【小学校・教員】
不登校は、各自の成長・発達段階の違いで起こり得ると思うので、公平・不公平というモノサシで見るのではなく、まず現状を肯定的に捉えることが必要だと思います。ですので、「不公平」という見方を変えることが大事だと思います。【中学校・教員】
学びの文脈は、教室にいるときでさえ教師がコントロールしきれるものではありません。公平であるべきとの考え方そのものが間違っていると思います。【中学校・教員】
目標に対しての達成度で評価してあげれば、課題の内容や学び方のちがいにこだわらなくてもいいのではないかと考えます。【中学校・教員】
現在は絶対評価なので、他の生徒との比較をそれほど気にするべきではないと思いますので、公平性はあるていどにして、学校外での学びを積極的に評価すればよいと思います。ただ、入試という競争に使われてしまうので、難しいところが出てくるとは思います。【中学校・教員】
基準がダブルスタンダードになること自体が問題です。ただし、その子を認める手段は、共通の評価、成績だけではありません。【中学校・教頭】
不登校だとしても実力はあるのに「学校に来ていない」という理由だけで「学校に来ている子どもよりも高い評定をあげるわけにはいかない」となってしまう方が問題だ。【小学校/中学校・教員】
Q4. 文科省の動きとは別に、高校受験の際に一定割合の「内申点不問枠(=当日試験や面接などで受験に挑戦することができる枠)」を設けることで、不登校児童生徒の進路選択を保障しようと求める民間の動きもあります。「内申点不問枠」についてどう思いますか?
内申点不問枠について「賛成」「どちらかというと賛成」という意見が全体の84%を占めました。「どちらかというと反対」「反対」という回答は一般的な教員では21%、主幹教諭などその他の職種では0%でした。埼玉県ではすでに実施しているとの回答もありました。
高校受験をそもそも内申書不問にすれば良いと思います。内申書の成績は先生の主観も入ると思うので、よっぽと高校入試の筆記試験のほうが客観性を担保できると思います。【小学校・教員】
欠席日数や生徒会の役員などが高校入試に影響するのはおかしいと思っています。入試もそもそも定員より多い人数が受験して選抜するためにあるのですが、これからどんどん少子化が進んでいくので、これからは原則マッチングで学校を選ぶ時代になっていくと思っています。入学してきた生徒さんを丁寧に育てていくことが学校選びの大きな軸になると思っています。【中学校・教員】
賛成だが、一定の割合というように表現してよいのか。そもそも、成績を入試に使わないようにする方が良い。【中学校・教員】
成績に関わる公平性の問題は難しいので、この際成績は必要なのかと感じている。また、成績のための学習は本質的ではないと思う。ただ成績がない状態で、授業を成り立たせるためには、教員の授業改善を行っていかなければと感じている。【中学校・教員】
学校が、教師が変わらないことで登校できずにいる子どもが一定数いるので、不問枠がある方がいいと思う。「これって不登校に入ってる?」という時期に、不登校不問枠がないと保護者と子どもで「学校に行かないと高校に行けなくなるよ!」という誤った対応につながりやすい、親の焦りにつながりやすいと考えるので、不問枠はあった方が良いと思う。【小学校/中学校・教員】
不登校で高校へ行く意欲がある子にとっては、勉強を頑張ろうという気持ちにもなるし、救いにもなると思います。ただ、それができるのであれば、不登校ではなかった子で希望する子にもそのような枠で受験できるようにする必要もあるのかなと思います。そうなると,歯止めが効かない気もします…【小学校・教員】
学校内での課題や活動をとりくめる生徒にとっても、そうでない生徒にも納得感ができる制度だと思います。ただ「どの程度の」不登校の生徒まで適用するのか、たとえば欠席日数などで判断するのかといった課題が出てくるのでは。その線引きによっては、競争の激しい学校などでは「あと何日欠席すると枠での受験ができる」など、競争に作用してしまうおそれもあるかもしれないと思いました。制度設計のバランスが鍵だと思います。【中学校・教員】
不登校生徒に「内申点を与える」ことを目標にするのではなく、「個人に合った学習支援を本人が望めば行う。進学時は内申点を気にせず進学できる制度を用意し、私学や通信も含め、個人に合った進学先を選べる環境を整える」ことが最も重要なことだと考える。【中学校・教員】
実際に埼玉県では実施しているが、普通に受けるよりも学力は必要となるため、問題はない。【中学校・教員】
勉強だけすれば良いと技能教科の学習に真面目に取り組まない生徒は合計すると評定が低くなる。また、真面目にいろんなことを取り組んできた生徒を評価することも必要ではないだろうか。【中学校・教員】
学びのプロセスの評価が内申点だと思うので、そのプロセスがしっかりと評価されるべきだと思います。【中学校・教員】
高校ですが、高校の勉強を全て捨てて某東大専門塾優先という生徒が少なくない。内職する、早退する、欠席・遅刻する、宿題はやらない、遠足来ない。中学でもそのようにならないか?【中等教育学校・教員】
不登校状態の児童生徒の評価について「成績に反映させるべき」「どちらかというと反映させるべき」だと考える教職員は全体の68%でした。しかし、そのための作業が「とても大変だと思う」「まあ大変だと思う」と認識している人も全体として68%に上ります。成績に反映させることで教職員の負担が増えることを予想し「特別な職員を配置し、その教員が特別に評価するというのであれば納得はいく」という意見も寄せられました。
不登校の児童生徒の評価・成績が、学校に来ている児童生徒と異なる基準になることによって起こる公平性の課題については「問題」だと考える人と「問題ではない」と考える人が同数となりました。「高校受験で評価を使用している以上、公平性を無視することは難しい」という意見がある一方で「学びの文脈は、教室にいるときでさえ教師がコントロールしきれるものではありません。公平であるべきとの考え方そのものが間違っていると思います」との回答もありました。
高校受験の際に一定割合の「内申点不問枠(=当日試験や面接などで受験に挑戦することができる枠)」を設けることについては「賛成」「どちらかというと賛成」という意見が全体の84%を占めました。「(競争に作用しないよう)制度設計のバランスをとることが鍵」とする声も寄せられました。
▼ 自由記述の回答一覧は、以下よりダウンロードしてご覧ください。 ▼
2023年9月~12月にSchool Voice Projectが行った授業の持ちコマ数に関するアンケート調査では、校種に関わらず、多くの先生がコマ数の多さに負担を感じている現状が明らかになりました。
その約半年後の8月、文部科学省は教師の処遇改善や学校の働き方改革の加速化のための「教師を取り巻く環境整備 総合推進パッケージ」を発表。教職調整額を引き上げる方針などが話題となりましたが、授業の持ちコマ数に関しても 「小学校中学年の学級担任持ちコマ数は週3.5コマ減、新採教師の持ちコマ数は週5コマ減」 という具体的な目標が示されました。(参考:教師を取り巻く環境整備総合推進パッケージ,文科省)
しかし、実際には全国で深刻な教員不足が続いており、このままでは学校活動や授業の質を維持できない、という声も少なくありません。指導の質の維持・向上のためには、教員一人あたりにつき、どの程度のコマ数が理想であり、そのためにどのような解決策を図れるのでしょうか。School Voice Projectでは再度、全国の小中学校・高等学校の教職員から、授業の持ちコマ数の現状やそれに対する意見、理想のコマ数に関する声を集めました。
前回のアンケート調査との比較も交えながら、その結果をお伝えします。
■対象 :全国の小〜高校年齢の児童生徒が通う一条校に勤務する教職員
■実施期間:2024年9月5日(木)~2024年9月24日(火)
■実施方法:インターネット調査(実施時の設問はこちら)
■回答数 :107件
※現在、一般的に小学校では学級担任制(一人の学級担任の教員がほとんどの教科を教える体制)、中学校・高校では教科担任制(一人の教員が専門教科を受け持ち、複数の学級で授業を行う体制)が採られています。そのため、例えば、小学校における持ちコマ=6コマとは6回の異なる授業を行うことを意味する場合が多いですが、中学校・高校においてはそうではないことが多いです(3つのクラスで異なる授業を2回ずつ行う等)。また、特別支援学校においては、個別の指導計画に沿って授業が行われるため、他の校種とはさらに事情が異なります。その点を加味して下記のアンケート結果をご覧ください。
Q1. 現在、受け持っている週の授業コマ数はいくつですか?
※ここでのコマ数とは、会議等を含めない“授業”のコマ数です(以下の設問でも同じ)
前回の調査と同様、児童生徒の学齢が低い校種であるほど、授業のコマ数が多いという傾向が見られました。
小学校は、前回と同じく全体の74%の教員が20コマ以上を担当。中でも25コマ以上を担当する教員は24%から38%に増加し、負担がより増えていることが伺えました。特に学級担任や通級を担当する先生からは、逼迫した現場の様子を訴える声が多く届けられました。
中学校では、21コマ以上を担当する教員が全体の21%から33%に増加。高等学校では、16コマ以上を担当する教員は全体の55%となり、前回の57%と比べて大きな変化は見られませんでした。
Q2. 現在の持ちコマ数で、児童・生徒に充実した授業ができていますか?
こちらも前回と変わらず、担当している授業コマ数が多いほど、充実した授業ができていないと感じている人が多い傾向がありました。
持ちコマが25以上の人に限定すると、実に全体の78%が「あまりできていない・できていない」と回答していました。また校種別では、持ちコマ数がかさむ傾向のある小学校の先生に「できていない」の回答が最も集中しました。
持ちコマ数が少なくても、空きコマに会議、教室に入れない生徒への対応、急な生徒指導対応、急に休んだ職員の代替など、様々な対応が入り、持ちコマ数以上に忙しい。これ以上持ちコマが増えると残業がさらに増えるだけだと感じている。【中学校・教員(10~14コマ)】
多すぎると余裕がなくなるので、15コマ以内に収めるべきだと考えます。【中学校・教員(10~14コマ)】
今勤務している学校は一人あたりの持ちコマが少ない方です。前任校では、20コマ近く持っている教員が大半でした。その結果、教材研究は放課後や休日の仕事となり、教員同士で授業について話す機会もとれませんでした。【中学校・教員(10~14コマ)】
現在、高学年で算数、社会、道徳、図工を受け持っています。専門教科ではない社会の授業がある前日の夜は、たいてい寝る時間がありません。準備のため12時を超えたり、早めに寝て午前3時に起きて授業準備をすることが多いです。朱書きの指導書通りの授業をすれば、それは解消されるのでしょうが、つまらない授業をやることは特にむずかしい学級ではデメリットが大きすぎます。【小中学校・教員(15~19コマ)】
現在勤務している学校では理科、音楽、家庭科の専科がいる。また、隣のクラスの担任と科目ごとに担当を決めることで、一人当たりの教科数を減らしているため、今の運用の形でも昨年度より大幅に働きやすくなっている。家庭科、音楽、体育、などは専科がいてくれると助かる。【小学校・教員(20~24コマ)】
「児童・生徒にとって望ましい授業の質を維持するため」の授業準備の時間が、今のコマ数では十分に取れず、残業や持ち帰りの仕事を増やして対応せざるを得ない。【中学校・教員(20~24コマ)】
担任の先生、主任の先生の授業数の負担が少なくなるよう、自分のクラス、学年に関われるように配慮されるので、調整役の副担、臨任は必然とコマ数は増えます。25コマ以下の場合毎日1〜2コマ空きがあるとプリントの印刷とレポートの添削等ができますが授業準備をする余裕はないので自宅に持ち帰りすることで授業の質を保ってます。【中学校・教員(20~24コマ)】
あまりできていない・できていない
自分が授業をしない時間は、TTとして子どもたちへの個別の支援や家庭訪問、聞き取りの対応などをしているので、授業準備等に当てることができない実態もある。【小学校・教員(10~14コマ)】
たとえば、持ちコマ数が多くても一教科だけなら、少しコマが多くなっても、その条件を受け入れていた先生はこれまで何人もみてきました。具体的には、地歴公民の場合、日本史・世界史・地理など科目が多岐に渡るので、3年日本史だけを持てるのであれば学校での標準時数より多めに持ってもいいという場合です。授業の準備が1科目だけならば、準備をする種類が減るので、満足のいく授業計画や教材研究、生徒の課題へのコメントなどもできます。【高等学校・教員(10~14コマ)】
2単位の8クラスで受け持つ生徒は約300名である。評価や個に応じた指導は難しい。空き時間は校務分掌の業務に追われ、授業に関する仕事は勤務時間内ではほとんどできない。【高等学校・教員(15~19コマ)】
本校ではどの教員も平均して週18コマほど持っているが、誰かが病気等の理由で長期離脱になると、その分のカバーができない。ギリギリにしすぎているため、非常時に学校が回らなくなる。【高等学校・教員(15~19コマ)】
小学校で20時間以内。今、特別支援学級担任と専科を掛け持ちして、教務主任も持っている。支援学級担任はトイレに行く余裕もない(肢体不自由、重度障害)他の先生の時数を減らすために専科もしているが、教材研究もままならず、結局5時過ぎにしている現状だ。【小学校・教員(20~24コマ)】
理科専科で5,6年生24コマの授業を受け持っているが、理科の場合、予備実験などの準備も多く、高学年2学年の理科専科はかなりきつい。空き時間はほぼない。6年は特に時数が足りず、指導要領の内容をこなすことで精一杯。【小学校・教員(20~24コマ)】
学校の方針で毎日子どもの日記を見ているため、空き時間のうち1時間は日記への返信に消えていきます。自分の裁量で使える空き時間がもう少し欲しいです。【中学校・教員(20~24コマ)】
全く余裕がありません。生徒に無駄だと思うことにこそ価値が生まれる、と言いながら、朝7時半から夜8時過ぎまでやっても終わらない仕事。空き時間が少なすぎて、授業準備が1番後回しになっています。定時で帰る人たちはどこかで見切りをつけて、授業以外はしないとか、担任なしとか…そんなふうになりたくないからやっていますが、そんな働き方を割り切ってやってる人の方が疲弊していない皮肉。【高等学校・教員(20~24コマ)】
小学校1年生を担任していますので、毎日5時間授業です。それでも、授業の準備をしっかりしようとすると、定時に帰るなど夢のまた夢です。低学年は授業の準備や教材研究が楽ということはありません。ノートに書いてもらおうとするととても時間がかかるので、ワークシートを使わざるを得ないことがあり、そのワークシートも子供の実態を見て作っているので、時間がかかります。【小学校・教員(25コマ以上)】
特支担でずっと個別をやっているので、空きコマがない。個別の時間も一度に何学年か来るので、教材研究しなければならない教材も多い。もっと一人一人に合わせた学習にしようと思ったら、もっとコマ数を減らさないと準備できない。あと、コーディネーターという立場上、いろいろな学級に児童観察に行かないといけないので、その時間を自分の学級の児童に支障がないように確保できる時間がほしい。【小学校・教員(25コマ以上)】
生徒の自分以外の授業の様子を把握したり、保護者と連絡を密に取るには空き時間が必要。落ち着いて物を考える余裕の無い勤務時間は異常。【中学校・教員(25コマ以上)】
日本語学級の担当をしています。夏休み明けの来日児童が毎年多数入級してきますが、教員数は前年度末の児童数を基準に決められているので、現任の教員でなんとかしなければならず、担当児童数や持ち時数が膨大になります。【小学校・教員(25コマ以上)】
Q3. 児童・生徒にとって望ましい授業の質を維持するため、あなたが適切だと考える持ちコマ数の上限はいくつですか?
授業の質を維持するために望ましいコマ数は、小学校では「15~19コマ」と回答した人が71%と最も多い一方で、中学校では「10~14コマ」と回答した人が54%、高等学校では77%と共に最多でした。こちらも他のアンケートと同様、前回と同じ結果となりました。
また小学校だけで見ると、15未満のコマ数を選んだ人が20%増となり、授業の質の維持のためにコマ数の削減を望んでいる人が多いことが伺えました。
担任、校務分掌、生徒指導、保護者対応など教員の仕事は多岐にわたる。仕事の1人あたりの範囲が広すぎてその日の授業の準備ですら、満足のいくものができない。どこか妥協せざるを得ない状況だ。そんな事では子どもへしわ寄せがきて、十分な教育は受けられていない。【中学校・教員】
時短勤務で10時間で働いていた時、時短勤務終了後にも自宅で授業準備をしていましたが、それでやっと回っている、人間らしい生活ができると思いました。担任で16時間持っている今は睡眠時間を削ってるし、家事育児をパートナーにだいぶお願いしてなんとか回っている状況です。【高等学校・教員】
授業準備、提出物の確認、生徒の定着度の理解などを考えると週12コマ程度が妥当なラインだと考えます。【高等学校・教員】
1日3コマが限界です!4コマになると、授業の質が下がります。3コマ授業して、2コマが会議や当番に当てられ、結局、実質の空きコマが1コマしかない状態もおかしいと思います。【高等学校・教員】
高校なので小学校に比べたら断然持ちコマは少ないと思う。しかし実際は会議も入るし、生徒指導(突発的な教育相談的な対応含む)が入ると空きコマはなくなる。評価もパフォーマンス評価に時間がかかる。観点別になり、パフォーマンス課題への取り組み方(プロセス)を評価するという視点が強化された(教員によるが)点は良かったと思うが、時間はかかる。【高等学校・教員】
自分の専門と授業を繋げながら授業実践ができるほどの余裕が欲しいです【高等学校・教員】
持ちコマ数を減らし、代替となる教員が担当することで 子ども自身がいろいろな先生から学ぶことができます。それは1年生でも同じことです。【小学校・教員】
他の業務、授業準備があることを考えると1日6時間のうち、半分は空いていることが望ましいです。【小学校・教員】
毎日2時間、空き時間があればノートもみられるし、個別指導もできる!【小学校・教員】
小テストや業者テストの採点、プリントやノートの評価を土曜日の午前中に出勤してまとめてやっています。2〜3時間かかります。それらを毎日1時間ずつ空き時間ができて、その中でできたら、週末のサービス残業もなくなりますし、評価もたまらない、子供達へのレスポンスも早くなるので学習効果も上がるのでは、と考えます。私の授業で子ども達が理解できているかという自分の授業への評価はしますが、成績表に反映するための評価をなくせば、空き時間がなくてもいいかもしれません。【小学校・教員】
週20時間以内が限界だと思います。そもそも、勤務時間内に業務を終わらせるためには、毎日4時間+給食のみという時間割が必須です。午後の退勤時間まで全て使っても終わらないほどの業務量です。もちろん、休憩時間はゼロです。最大で毎日5時間授業とし、持ち時間数は上限20。そうでなければ、文科省の言う「超過勤務20時間以内」の達成は不可能です。【中学校・教員】
数だけで言えば、12~15時間がちょうどいいのかなと思います。それ以上少ないと、授業づくりを頑張りたい先生たちは寂しくなるように思います。【中学校・教員】
20コマを超えると、日々の心の余裕ももてず、授業以外の仕事を放課後(もっと言うと勤務時間外)にしないといけなくなる実感がある。自分の少ない空きコマの間にどれだけ仕事ができるかという考え方になり、空きコマを利用して他の先生の授業を見に行ったり体調不良で保健室を訪れた生徒や別室に通う生徒に会いに行ったりするような、マストじゃないけれどやれたらいいようなことに足を踏み出しづらい。【中学校・教員】
20コマと24コマは大きく違う感覚があります。また、時数だけでなく教科数がいくつあるかもしれません。担任を持っているか、持っていないかも大きな差がある気がします。それから、クラスの規模も関係するので、時数だけでは、計れない部分もある気がします。【小学校・教員】
特別支援学級なので、担任以外に授業を任せにくいところがあります。特別支援学級に限って言えば、定員8人を減らすとか副担任をつけるとかして、担当の教員を増やすことで、持ちコマを減らしてほしいです。【小学校・教員】
私は専科教員ですが、担任経験もあります。全学年担任しましたが、担任として20コマ持つのと専科として20コマ持つのは全然違い、正直担任で20持ってたほうが楽だったなと思います。1時間の勝負度合いが違うのと、1年の次に6年の授業が来ることもあり、なかなか切り替えが大変です。空きコマに学級の支援へ行くよう言われていましたが、それを続けている間に心身が疲弊し、休職寸前になったため、今年は支援を外してもらって、代わりに校務分掌が少し多めになりました。コマ数の数字だけ見て「空いてるから動けるだろう」と思われるのはつらいです。【小学校・教員】
特別支援学校教員です。最低でも1日1コマの空きがあれば、業務と心にゆとりができます。並行して、業務の削減が必要。形式的な申請書類等は今すぐにでも減らせると思います(が、減らない)【特別支援学校・教員】
Q4. 授業の持ちコマ数について、あなたの意見を自由にお書きください。(任意)
総時数やカリキュラムの見直しが必要
学習内容の見直しをして、今の時代で本当に必要な内容を精選して取り組むべきだと思います。プログラミング教育やキャリア教育、外国語、道徳の教科化などやることが増えているので、その分他の部分で内容を見直して欲しいです。【小学校・教員】
総時数を減らして欲しいです。教員に空き時間が増えたとしても、子供は減りません。教員の働きやすさと同時に子供の学びやすさを考えたら、総時数を減らす以外にないと思います。授業日数を増やして、1日あたりの指導時数を減らすと言いますが、子供が強いられる時間はトータルでは変わりません。【小学校・教員】
小学校段階で教科担任制にしすぎると、発達段階も絡み、学級経営がうまく成立しなくなると考えます。担任の負担が重すぎない20時間程度になるよう、教科担任よりも授業時数、教科の削減を求めます。【小学校・教員】
教科によって教員の持ち時間が変わり、周りの先生の中には1日に1コマしか空き時間のない教員がいます。放課後は会議、生徒指導、部活動指導に追われる中、絶対に授業準備が勤務時間内には終われない状態です。学ぶ内容を減らし、教員数をそのままにしてもらえればいいと思います。現状を考えれば、少なくとも総授業時数、教える内容を減らすのは大前提ではないかと思います。【中学校・教員】
学習指導要領に示されている学習内容が多すぎる。歴史を教えているが、用語が多すぎて生徒が覚えることに汲々としている。共通テストは改善されてきているが、私立大学を含めた入試改革が必要と感じる。【高等学校・教員】
持ちコマ数だけで判断できない側面がある
結局、病休や育休などで学校現場にいなくなる先生の代わりがいないのでみんなで補助している。時間数は関係ないと思う。来ている人は休む人の代わりにも授業をする。【中学校・教員】
持ちコマ数だけで考えるのは難しいです。テキスト数のほうが大きい要素かもしれません。授業コマ数を減らすのを考えるよりも、授業以外の業務を減らすことを考えるほうが重要だと思います。【中学校/高等学校・教員】
2単位の8クラスで受け持つ生徒は約300名である。評価や個に応じた指導は難しい。空き時間は校務分掌の業務に追われ、授業に関する仕事は勤務時間内ではほとんどできない。【高等学校・教員】
教員の負担は、単に授業のコマ数だけでは測れません。担当する授業の種類、分掌や学年や教科等の会議、クラブ指導、HR指導、1クラス当たりの生徒の数など多岐にわたる要素が関係してくるからです。また、3観点評価の導入により評価方法が以前とは比較にならないほど複雑になり、その負担増(というか、その負担に見合うほどの効果が期待できないという徒労感)もあります。【高等学校・教員】
教科によって差があると思う。実習をしてレポートを課す教科、小テストの採点が必要な教科と、体育や音楽のように時間外に生徒の提出物をこまめにチェックする必要がない教科とは、持ち時間に差があって当然だと思う。さらに言えば、学校や教科担当者によって、実習がない、実習させてもレポートは書かせない、レポートを書いても内容は見ずにハンコだけのような教員は持ち時間を減らす必要はない。校長がどのような教育がなされ、どのような指導をしているか把握すべきだと思う。【中等教育学校・教員】
「週案の時数が労働時間」と見なされる習慣が教員の世界には根強く、週案に反映されない時間に仕事をしがちな特別支援教育コーディネーターや通級指導担当は、どうしても「仕事をしていない」ような見られ方をすることが多い。本校は教員に対する管理職の理解があり信頼が厚いので、週案の時数外での仕事があることはわかっているので、時数に捉われることがなく、働きやすい。学級担任はどうしても時数が多くなってしまう(それでも25コマぐらいが限界)が、私のように自由に動き回れて全学年の様子がわかっている人が学校に一人いるととても助かると思う。【小学校・教員】
負担軽減のために、何が必要か
理科や音楽や書写などの専門的な科目は専科の先生に見てもらえたほうが、授業の質も上がるしほかの研究の時間にも充てられそうです。【小学校・教員】
会議の時間を減らすことが教員の福利厚生、授業の充実につながる気がします。【中等教育学校・教員】
コロナ禍をへて、標準時数を上回らなくとも、適切な指導ができていればよいという風潮になったことを受け、余剰時数を削減し、放課後の空き時間を確保できるような計画を立てる。また、教科担任をひけるような人員の確保、校内での交換授業等を積極的に行い、教材研究の負担軽減、複数の教員による指導体制の構築を進める必要がある。【小学校・教員】
加配を積極的に進めてほしい。市の予算で会計年度任用職員も採用してほしい【特別支援学校・教員】
行事や大会により、時数が足りなくなってしまうことは避けたいです。授業以外の業務を大幅に削減し、全員担任制を全国各地で導入し、質の高い指導を実現すべきです。【中学校・教員】
その他の意見
教員の労働時間の削減が課題となる中、一向に改善が進まない。最も有効な手段が一人当たりの授業の持ちコマ数を減らすことだと以前から考えています。【小学校・教員】
午前中はフルであってもいいので、午後からは探究や習熟の時間にして他の先生に任せたい。【小学校・教員】
理科と社会がクラス数によって1番最初に教員数が減らされるのが納得いきません。
学校によっては国数英でも授業数が多くて習熟度などしていないところもあります。まずは教員の数を増やすこと。そのために、部活動指導員だけでなく、教員の労働環境を良くすることが大切だと思います。【中学校・教員】
コマ数の不平等が、職員間の分断を招いています。なんとかして欲しいです!【中学校・教員】
現状、持ち方数というよりも担任をしている教員のほとんどが毎日一限目から授業が入っていることがしんどいなと思います。学校ごとの教員の勤務形態にもよるかとは思いますが、朝礼を行いその後約10分後に授業が始まるのは欠席生徒などにも連絡ができません。私は昨年度などは週4日一限から授業でした。【高等学校・教員】
毎日日中1コマは空きがあるか、放課後に教材研究する時間があるといい。やらねばならないことが多過ぎて、きめ細かなことをしたくても準備の時間がなく、日中は子ども達への対応に追われ、一日一日を過ごすのに精一杯になってしまう。保護者や議員、地域の人など日中放課後などに気軽に学校を訪問してもらったり、対話したりしたい。子ども達のために私たちにゆとりが必要であることを知ってもらい、お互いに何ができるのかを一緒に考えたい。【中学校・教員】
前回のアンケート調査と同様、小学校の教員の授業コマ数が最も多く、児童・生徒の学齢が上がるほど少なくなる傾向が見られました。
しかし、授業以外の業務に割かれる時間や、受け持つ科目数や人数規模、評価活動の負担が増していることなど、一概にコマ数だけでは判断できない実態があることもわかりました。
今回のアンケート調査では、現場の窮状と、その改善を求める切実な声が多数寄せられたため、なるべく多くの意見を記事の中で引用いたしました。校種を問わず、教員の多忙解消と、それによる授業の質向上や教員の心身の健康の保証は、依然として急務であると言えます。
▼ 自由記述の回答一覧は、以下よりダウンロードしてご覧ください。 ▼
文科省は2019年、教職員の時間外勤務について上限を「月45時間、年360時間」とするガイドラインを設けました。しかし、業務削減についての具体策は後手に回り、現場の努力に委ねられているのが現状。管理職から早い時間の退勤を勧められ、仕事を持ち帰ったりタイムカード打刻後に残業をしたりするケースも多く見られます。給特法により、公立学校の教員には残業代が出ることもなく、過酷な労働条件は長年に渡って問題になっています。そこで今回は、全国の小中学校・高等学校の教職員から声を集めました。みなさんの時間外勤務はどのくらいですか?
※このアンケートは、WEBアンケートサイト「フキダシ」内にある『みんなに聞きたいこと』に寄せられた投稿から作成されました。
■対象 :全国の小〜高校年齢の児童生徒が通う一条校に勤務する教職員
■実施期間:2024年7月19日(金)〜2024年9月2日(月)
■実施方法:インターネット調査(実施時の設問はこちら)
■回答数 :84件
Q1. 1ヶ月の時間外勤務の平均時間はどれくらいですか?
※土日・祝日の出勤や早朝の時間外勤務も含みます。
全体の平均値は49.9時間でした。校種別の平均値は中学校が67.5時間と最も多く、次いで小学校の46.9時間、高等学校の42.8時間でした。
文科省が2019年のガイドラインで定めた教職員の時間外勤務の上限は月45時間ですが、月45時間以上の人の割合は中学校が75%、小学校が57%となり、もっとも低かった高等学校でも38%と、高い割合となりました。また、一般的に「過労死ライン」と呼ばれる月80時間以上の時間外勤務も、全体で19%、特に中学校では44%に上る回答者が該当していました。
時間外勤務の平均値に性別や雇用形態による差はほぼ見られませんでしたが、職種の比較では「一般的な教員」が51時間だったのに対して「主幹(首席)教諭」は55.7時間となり、約5時間の開きがありました。
Q2. 上記の内容に関連して、あなたが思っていることや考えていることを教えてください。
もっと効率よくできればという思いと、勤務時間内に自分のための時間をそもそもほとんど取れないことが問題だという思いがあります。子どもが帰ったあと、会議がある日がほとんどです。子どもが早く帰ってくれれば。【小学校・教員(時間外勤務:80時間)】
ガイドライン通りに部活動を行うだけで45時間は超過する。休憩時間はゼロ。【中学校・教員(時間外勤務:80時間)】
勤務時間は17時までだが、クラブ活動の時間は17時30分まで。全員がクラブの顧問をしているため、ほぼ毎日少なくとも30分は勤務時間外で仕事をすること前提に教育活動が成り立っているのはおかしい。【義務教育学校・教員(時間外勤務:45時間)】
業務内容から学校でしなければならないデータばかりのため、時間内に終わらせることができないアンケートや照会は時間外や土日にしなければ締切に間に合わない。【小学校・教頭(時間外勤務:100時間)】
職場で時間外勤務している時間は、一日平均3時間(始業前1時間、終業後2時間、土曜日2~3時間)ですが、家に帰ってからも翌日の授業準備をするので、月平均100時間ぐらい入っているかな、と思っています。【小学校・教員(時間外勤務:70時間)】
本校は19:40で強制退勤となります、それによって特に若手の先生方は授業づくりに時間がかかるために持ち帰っての仕事となります。しかし、それは勤務時間に反映されないことが大きな問題と感じています。【中学校・教員(時間外勤務:60時間)】
学校は18時30分に管理職によって施錠される。残業したいわけではないが、仕事が終わらず結局持ち帰りをする。さらに管理職は数値、結果を求める。【小学校・教員(時間外勤務:60時間)】
育児のために部分休業を取っているし、それを理由に仕事をたくさん抱えないようにしている。出産前に比べれば減っているが、授業準備やテスト作成はかなり自宅でやっている。【高等学校・教員(時間外勤務:13時間)】
本当は、定時出勤・定時退勤したい。管理職が職員の定時を守ろうという考えでない限り、勤務時間内にやり切れる業務量にはならず、難しいだろう。児童の登校時刻が勤務時間前なのが、教員の時間外勤務の要因の一つ。【小学校・教員(時間外勤務:25時間)】
とにかく睡眠時間がほしい。ただそれだけ。【小学校/中学校・教員(時間外勤務:90時間)】
しんどいです。【中学校・教員(時間外勤務:75時間)】
仕事が終わらない。生徒の理解が悪く、教材の作り直し、提出物の採点、生徒の起こした問題についての話し合い。疲れ切って帰宅し、風呂にも入れない。買い物もできない。生活に支障をきたしている。【中等教育学校・教員(時間外勤務:15時間)】
家の都合で遅くまで残れないため、休み時間や隙間時間も必死で仕事し、できなかった分は持ち帰って、なんとか早くに帰れるようにしているが、休憩もなく毎日何かに追われていて、帰っても家事があり、疲弊している。【小学校・教員(時間外勤務:30時間)】
100超で校長面談。100ギリギリ超だと、後からチョイ削りの要求。【高等学校・教員(時間外勤務:115時間)】
授業時数は減らず、人は増えず、時間が多いからなんとかしろと言われる気がする。持ち帰って仕事をする人やタイムカード打刻後のウラ残業が増えています。【中学校・教員(時間外勤務:100時間)】
在校時間が多いと管理職に怒られるだけでなく県教委へ反省文?を出さなければいけないので、みんな実際よりかなり少なく記録し提出しています。【小学校・教員(時間外勤務:80時間)】
「業務改善」を理由に、子どもに関わる重要なことも簡易化されたり十分な検討がされなかったり。でも業務改善は確かに切実で、意見しにくい。【小学校・教員(時間外勤務:75時間)】
勤務時間内で終えようと思うと、クオリティーの低さが目立ってしまい、結果的に誰も得しない。かといって,こだわろうとすると勤務時間外に取り組むことになってしまい結果的に勤務時間を管理できない自分が悪者扱い【小学校・教員(時間外勤務:40時間)】
朝はギリギリに出勤して、大体19時ころには帰るようにしています。15年目になりますが、だんだん残業は減ってきました。【小学校・教員(時間外勤務:45時間)】
なるべく仕事の優先順位をつけて早く帰宅するよう努めています。仕事のやり方の要領を身につけてきたからできますが、若い方や仕事熱心な方はなかなか早く帰れる状況にないのが現状ではないかと思います。【小学校・教員(時間外勤務:30時間)】
全員が定時退勤できるような業務改善を行っています。先生の意識改革も必要だと思っています。【小学校・教員(時間外勤務:5時間)】
早く帰るための工夫も限界を感じる。実質的な業務を削ることをしないとこの数字が減ることはないと思う。【小学校・教員(時間外勤務:55時間)】
仕事量を勤務時間に収まるように減らしてほしい。授業や集団づくりなど、子どもと向き合う時間をとりたい。【小学校・教員(時間外勤務:52時間)】
行事を精選し、指導方法も共有しながらやれると、もう少し時間外勤務は減るのでは?と思うが、行事は多いまま、指導は、各々で…という雰囲気があるので、結果、時間外勤務が減らない【小学校・教員(時間外勤務:40時間)】
現場の「働き方改革」では限界がある。子どもや保護者へのパフォーマンスを下げて改革している。なのに、教育委員会は次々と新しい仕事を増やしてくる。全国学テから脱退するとか、委員会でできる削減もしてほしい。【小学校・教員(時間外勤務:35時間)】
働いた分だけお金をくれ。何でもかんでも教員にやらせるな。【中学校・教員(時間外勤務:140時間)】
多少の残業は仕方ないので残業代を出してほしいです。ベテランの先生方から作業効率の悪い仕事を押し付けられることもあります。【小学校・教員(時間外勤務:30時間)】
必要な仕事をしたのに残業代も出ず、好きでやったことだと言われてしまうことに、ひどく理不尽を感じます。【小学校・教員(時間外勤務:50時間)】
月45時間の超勤でもきついと感じるし、「立派な」超勤だが、職場、また教育現場には「まだもっと苦労している人がいる(だから、45程度で色々言うな)」という空気があり、恐ろしいと感じる。【特別支援学校・教員(時間外勤務:45時間)】
非常勤講師の仕事として授業時間のみ想定されていることと、その実際があまりにもかけ離れている。印刷、授業準備、教材注文、評価作成、会計簿作成など、授業時間内に収まり切れないことが多々ある。【中学校/義務教育学校・職員(時間外勤務:20時間)】
事務職員なので定時内に終わるよう全力で取り組んでいる。よけいな時間外手当をつけないため。教員は帰りが早い人も遅い人もいる。自由に残業できるし、管理する人がいない。そんな環境なので定時で帰る気苦労がある【小学校・事務職員(時間外勤務:10時間)】
1カ月当たりの時間外勤務について、全体では「45時間以上」と回答した人が57%、「80時間以上」は19%に上りました。
「80時間以上」という回答の中には「授業時数は減らず、人は増えず、時間が多いからなんとかしろと言われる」など、時間外勤務が多すぎると管理職から指導を受けるという声もありました。また「ガイドライン通りに部活動を行うだけで45時間は超過する」「子どもが帰ったあと、会議がある日がほとんど」という記述もあり、部活動や会議に時間を取られていることが分かりました。
「40~79時間」と答えた人の回答には、強制退勤や施錠の時間が決まっているとの記述がありました。「家に帰ってからも翌日の授業準備をするので、月平均100時間ぐらい入っている」という声もあり、持ち帰って仕事をしている人が多く見られます。一方で「15年目になり、だんだん残業は減ってきました」など、経験の蓄積によって業務改善が進んでいる様子も見受けられました。
「5〜39時間」では「家の都合で遅くまで残れないため、休み時間や隙間時間も必死で仕事し、できなかった分は持ち帰って、なんとか早くに帰れるようにしているが、休憩もなく毎日何かに追われていて、帰っても家事があり、疲弊している」という回答も。非常勤講師として授業時間のみが勤務時間とされている人や、事務職員であるために周囲に気兼ねして時間内で働いていると回答した人もいました。
また、すべてに共通して「とにかく睡眠時間がほしい」など、生活に支障が生じている様子や「残業代が必要」と、給特法の維持に疑問を持つ声も聞かれました。
【このようなアンケートを作成したいと思った方へ】
「フキダシ」は、現役の教職員の方が無料で登録できるWEBアンケートサイトです。このアンケートは、WEBアンケートサイト「フキダシ」内にある『みんなに聞きたいこと』に寄せられた投稿から作成されました。投稿内容をもとに定期的にアンケートを作成しますので、フキダシでアンケート化してほしい話題がありましたら、ぜひユーザー登録をして投稿してください!
▼ 自由記述の回答一覧は、以下よりダウンロードしてご覧ください。 ▼