学校をもっとよくするWebメディア

メガホン – School Voice Project

学校をもっとよくするWebメディア

子どもの感情や願いにフォーカスを当てたコミュニケーションを手助けをしてくれる「子どもニーズカード」。

子どもが感じていることや考えていることを知りたい。
学校生活の中で困っている子どもの気持ちに寄り添えるようになりたい。

もしあなたがそう願っているのなら、このカードは、その願いを叶える後押しをしてくれるかもしれません。

放課後等デイサービスの児童指導員であり、「子どもニーズカード」の製作者でもある能美たかこさんと、スクールソーシャルワーカーをしながら教職員や子どもたちへの対話の場づくりをしている宝本いつみさんに、「子どもニーズカード」の魅力と学校現場での活用方法を伺いました。

カードを使って、感情を知る。ニーズを探る。

ーー「子どもニーズカード」は、学校現場を含めさまざまな場面で活用されはじめていますね。そもそも「子どもニーズカード」とは、どのようなカードなのでしょうか。

能美:子どもニーズカードは、NVC(Nonviolent Communication=非暴力コミュニケーション)の概念を元にして作成したカードで、さまざまな感情やニーズが文字やイラストで表現されています。子どもに自分の内面と近いカードを選んでもらうことで、感情とニーズに焦点を当てたコミュニケーションを取ることができます。

※NVC(Nonviolent Communication=非暴力コミュニケーション)とは、1970年代に、アメリカの臨床心理学者マーシャル・B・ローゼンバーグ博士によって体系化され、提唱された、自分の内と外に平和をつくるプロセス。

宝本:NVCのことは、「自分も相手も大切にするコミュニケーション」と言われることがあります。お互いが必要としていることや大切にしていることをわかり合った上で、どう関わり合うかを探っていくんです。

人って、本当は「仲間に入れて欲しい」「わかってほしい」と心の奥底で思っていても、真逆の行動をとってしまったりすることがありますよね。そうなってしまうのは、感情とその奥にあるニーズの概念を学んでこなかったからなんです。

目に見える言動に惑わされずに、自分自身や相手が大切にしたいことにフォーカスしてコミュニケーションを取っていく。NVCは、そんなシンプルかつ奥深いコミュニケーションの概念です。

ーー「ニーズ」と「感情」には、どのような違いがありますか。

能美:「感情」は、何らかの出来事があったときに抱く気持ちのことです。その奥にあるのが「ニーズ」です。ニーズが叶うと、嬉しい、楽しいなどのポジティブな感情が生まれ、ニーズが叶わないと、悲しい、イライラする、などのネガティブな感情が生まれます。感情は、ニーズが叶ったかどうかを表す信号のようなものです。

子どもニーズカードを使うときは、まず表に出ている感情から信号をキャッチします。そして、その信号の奥にはどんなニーズがあるのかを探っていきます。

ピンクの縁取りは「感情」のカード
ブルーの縁取りは「ニーズ」のカード

感情とニーズを見える化して起こった、子どもの変化

ーー学校現場で「子どもニーズカード」を活用する中で、印象的だったことはありますか?

宝本:ある先生が共有してくれた話です。小学校高学年の児童が、いつも英語の時間になると暴言を吐いたり、呼びかけに無反応になる状態が続いていたそうです。そこで、子どもニーズカードを使うことになりました。英語の時間にどんな気持ちになるのかを聞いたところ、その子が選んだのは「こんがらがってる、ごちゃごちゃ、よくわからない」「不安、緊張してる、心配している」「イライラしている」の3枚のカードでした。

その感情がどこから出てくるのかを聞くと、「英語でしゃべるから意味がわからなくてこんがらがる。そして、ドキドキしてどうしたら良いかわからなくなる。だから、イライラしてどうでもよくなる」と話してくれました。大人から見ると、その子の行動にはイライラしている状態だけが表れていましたが、その奥にはこれだけの感情があったんです。

その後、何をしてほしいかを聞くと、「助けてもらう、サポートしてもらう」のカードを選びました。最終的には、「英語の指示の後には日本語で必ず説明を入れる。授業中は、先生がその子のところに何度か行く。課題は一緒に取り組む」ということを本人と一緒に共有しました。

それからは、ほとんど不適切な行動がなくなったそうです。先生との助け合いの関係が、さらに子ども同士での助け合いにも広がったと聞きました。でも、最終的なこの手立ては、それまでにもやっていたそうなんです。違いは何かと言ったら、その子が自分で自分の感情を知り、さらに自分の気持ちをわかってもらえた体験があったところではないかなと思います。

子どもニーズカードは、学校現場での活用も進みつつあります(写真はイメージです)

ーー能美さんは、「子どもニーズカード」を活用する中で印象的だったことはありますか?

能美:あるお子さんと一緒に料理をしているときに、「学校の休み時間、何してるん?」と話を振ったんです。すると、「ぼーっとしています」と返ってきました。そこで、子どもニーズカードを持ってきて、どの感情が近いか聞いてみたんです。

私はてっきり「だるい」「疲れた」などの感情を選ぶかと思っていたら、その子が選んだのは喜びにあふれた状態を表すカードだったんです。驚きましたね。私の推測がくつがえされる瞬間でした。自分の感情をあまり外に出さない子どもに対して、「きっとこう思っている」と大人が勝手に決めつけてしまうことがあるかもしれない、と自覚した出来事でした。

もう一つ、普段あまり学校に行かないお子さんとの出来事です。ちょっとした会話の中で、子どもニーズカードを見せながら、「学校に行くと、どんな気持ちになるの?」と聞いてみたんです。すると、ごちゃごちゃしている状態を表すカードを選びました。やりとりを重ねる中で、「なりたい自分はどんな感じなの?」と聞くと、平和でリラックスしている状態を表すカードを選んだんです。その後、「どうしたら、そうなれる?」と聞くと、尊重されたり助けてもらう状態を表す4枚のカードを選びました。

子どもニーズカードを使い始めた頃は、なかなか自分の感情やニーズを選ぶことが難しいお子さんだったのですが、少ない枚数から選ぶことを繰り返す中で、適切に自分の状態を表すカードを選べるようになったんです。

最終的に、その子自身が「これがあれば、安心して学校にいられると思う」と思える状態まで一緒に確認することができました。一連の流れをその子のお母さんに見せたら、写真を撮り、「今度、学校の先生にこれを伝えてみます」ととても喜ばれていました。

子どもに寄り添い、一緒に歩んでいくためのツール

最後に、子どもと関わる教職員の方へメッセージをお願いします。

能美:子どもへの敬意を忘れずに、興味や関心を持ちながら寄り添うように関わっていくことが大切なのかなと思っています。「行動の奥には何があるんだろう?」という気持ちで、子どもと一緒に探ってもらいたいです。

そして、学校の先生たちも、感情やニーズの概念を使って話をしてみるのも良いのではないかなと思います。ネガティブな感情を抑え込んで頑張っている先生たちは多いのかなと思うので、そういう場合は、まずはニーズから自分が大切にしたいことを探っていって、その次に自分の感情に気づいていくのも良いかもしれません。

宝本:子どもニーズカードを紹介するときには、「子どもをコントロールするための手段として使わないでほしい」とお伝えするようにしています。大切なのは、大人が困っている状況を解決することではなく、子ども自身が自分の感情やニーズを知り、それによって人と繋がる感覚を持ってもらうことです。

自分が置かれている状況や求めていることを聞いてもらうだけでも、子どもたちの人生が救われることはあるんじゃないかなと思います。大人が子どもの気持ちを受け止めて、寄り添い、一緒に歩んでいこうとする。そんな関係性をつくるためのツールの1つとして、使ってもらえるといいなと思っています。

能美さん、宝本さん、ありがとうございました!

子どもニーズカードを使ってみたいと思ったら…

子どもニーズカードには、購入できる有料版と、ダウンロードして無料版があります。それぞれ、以下のリンクからアクセスしていただけます。また、使用にあたっては、「基本的な使い方」の資料をお読みください。

▼子どもニーズカードの購入はこちらから
https://kodomoneeds.base.shop

▼無料版子どもニーズカードのダウンロードはこちらから
https://tinyurl.com/26x4va3g

▼基本的な使い方(資料)はこちらから
https://tinyurl.com/26nqtukx

「使い方をもっと詳しく知りたい」、「カードを活かした実践を深めたい」という方には、子どもニーズカードを活用している様々な立場の方が参加している以下のコミュニティがあります。ぜひ、参加してみてはいかがでしょうか?

▼Facebookグループ「子どもニーズカードを使ってみよう!」はこちらhttps://www.facebook.com/groups/139249607781121

▼LINE公式アカウントのお友達追加はこちらから
https://lin.ee/V4yigHO

関連記事


学校での水泳の授業について、さまざまな意見が出ています。「子どもたちの安全管理やそのための人員確保が大変」という声のほか、「プールの栓を締め忘れて数百万円の賠償を求められた」といった事例も報道されています。

また、コロナ禍以降プールの授業が大幅に減少した学校や、プールの授業を民間業者に委託する学校もあるなど、学校の水泳の授業に関する状況も変化しています。

学校現場で働く教職員は、水泳の授業についてどのように考えているのでしょうか。

アンケートの概要

■対象  :全国の小〜高校年齢の児童生徒が通う一条校に勤務する教職員
■実施期間:2022年9月16日(金)〜2022年10月10日(月)
■実施方法:インターネット調査(実施時の設問はこちら
■回答数 :88件

アンケート結果

設問1 児童生徒のために、今後の水泳授業は?

Q1. 「児童生徒のために」という観点から、今後の水泳の授業のあり方についてあなたの意見にもっとも近いものをお選びください。

「児童生徒のために」という観点で水泳の授業についてのあり方を聞きました。外部施設を利用する場合も含めると、「続けた方がよい」と答えた人は、全体の約7割でした。

「続けた方がよい」と思う理由としては、「子どもたちが楽しみにしているから」「水の危険性を知るため」「水泳技能の習得のため」などがあがっていました。「外部施設を利用する形で続けた方がよい」と思う理由は、「専門家に教えてもらった方が水泳の楽しさを伝えられる」「外部施設の方が、衛生的で天候に左右されない」など。外部機関の利用も含めて「無くした方がよい」と思う理由としては、「体型を見られることに抵抗がある児童生徒もいるため」「数時間の指導では水泳技能の習得に繋がらないため」などがあがっていました。

今後も学校で実施

「今後も学校で続けた方がよい」を選んだ方の主な意見

校外の施設を利用するとなると、回数を多く行うことが難しくなると考えらえれる。そのため、子どもたちが多くの回数プールに入れることは、子どもたちにとっても楽しみであると考えるので、子どもたちにとっては学校での実施ができるとよいと思う。【小学校・教員】

施設はあるし、子どもたちも楽しみにしている。体育の先生は大変だとは思うが、泳げる、顔に水をつけられるというのは生活スキルとしてできるようになっていてほしい。【中学校・教員】

外部施設では回数が確保できず形骸化してしまう危惧があると思います。また、水泳は全身運動でしかも体に負担がかからないので、特に支援級の子どもにとってはとても良い運動経験になると思うからです。【小学校・教員】

外部施設などを利用して実施

「外部施設などを利用する形で今後も続けた方がよい」を選んだ方の主な意見

特に小学校は専科ではないため、水泳の楽しさを教えられていない部分があり、逆にプール嫌いを生んでしまっているところがある。水泳が得意な先生でも、子どもたちに無理強いをし過ぎているので、専門の指導員に楽しく教えてもらうのが良いと思う。【小学校・教員】

水の危険を知るためにも必要だと感じる。気温によって入れないこともあるため、外部施設の利用が妥当だと思う。【小学校・教員】

海や川が多い国ですから、児童には泳ぐという技能は、必要だと思います。スイミングスクールには、誰もが通えるわけではありません。学校のプールは屋外の場合が多く、児童の中には「汚い」「虫が嫌」などの理由で入らない選択をしている子もいます。しっかりと屋内で管理されているプールを利用すれば、少しはいいと感じます。【小学校・教員】

プールの老朽化が進み、毎年のように手を入れなければいけない状況があります。また、夏の日差しは厳しく、外で授業を受けることは多少なりともリスクがあると思われます。今年度は市の配当予算を活用し、民間の指導者にお願いして指導を受ける機会を設けました。1~4年生が各2時間でしたが、児童にとっても教師にとっても貴重な学びの機会となりました。市内にはいくつかプールもあるので、外部施設や民間の指導者とも連携して子どもの指導にあたれば、子どもたちの力もより伸ばせるのではないかと思いました。【小学校・教員】

泳ぐ技能は災害時などに活用できるから必要だが、学校で実施するよりも専門的に水泳指導を行なっている施設での方が、指導が優れていると考えるから。【中学校・教員】

学校での運営は少子化や施設の老朽化、管理維持費、教員の負担など課題が多い。しかし全く授業がなくなると水難事故が増えることも想定されるので、民間委託などして機会は提供できるほうがいいと思います。【高等学校・教員】

無くしたほうがよい

「無くしたほうがよい」を選んだ方の主な意見

短い時数で水泳指導をしても効果はありません。集団で水泳を行うと、前後の着替えや移動でかなりの時間を取り、実際の活動はほんのわずかな時間しか取れません。また、何十人もの児童(しかも個別に対応しなければならない児童が増えている昨今)をたった数人の教師で、しかも水泳専門でもない教師が一斉に指導するなんて、何か事故や問題が起きないかといつも冷や冷やしてます。危険すぎるので、小学校では水泳指導をしない方がよい、習い事に任せた方がよいと考えます。【小学校・教員】

水泳の授業に参加したがらない生徒の数が年々増えている。泳げないと知られることや体型を他の生徒に見られることを嫌がる生徒が多くなっていると感じる。全員が必修でなくてよいと思う。【中学校・教員】

安全面にいくら配慮しても、危険リスクは高い。そしてなおかつ何か事故があれば、学校、教員の過失となる。水泳、水遊びについては学習指導要領から無くし、泳力、水慣れについては親が我が子に養うものではないだろうか。【小学校・教員】

小規模校での実施は本当に命懸けです。誰か1人、教職員が不足すれば、子どもの命を守れません。命をかけてまでおこなうことなのでしょうか?学校教育を再編するために必要です。熱中症の危険性もあります。そのためか研修を、受けて熱中症アドバイザーというものを取らなければなりませんでした。もちろん時間保障はありません。もう現場は崩壊しています。プール指導の時は休憩時間もありません。朝は早めに出勤し、ハイクロンを入れ、終わってからはハイクロンを入れ、水を止める。異常事態です。【小学校・教員】

中学校で保健体育の教員をしております。無くした方が良いと考えます。3点の理由を投稿いたします。
①予算的に外部に委託しても厳しいと思われます。
②校内で授業をしても生徒の体力(技術、泳力)は、身につくものではありません。
③ジェンダー論の観点からも望んでいない単元で異性の前で水着になることに抵抗感のある生徒がいるのは容易に想像できますし、現に毎年そのような生徒がいます。
教育のアップデートを願います。【中学校・教員】

設問2 教員の働き方の観点で、今後の水泳授業は?

Q2. 「教職員の働き方や管理業務」という観点から、今後の水泳の授業のあり方についてあなたの意見にもっとも近いものをお選びください。

「教職員の働き方・管理業務」という観点で水泳の授業についてのあり方を聞きました。外部施設を利用する場合も含めると、「続けた方がよい」と答えた人は、全体の約5割強「児童生徒のために」という観点と比べると、13人減少しました。

「学校で続けた方がよい」と思う理由は、「近くに外部施設がない」などの外的要因や「管理業務は大変だが、そこまで大きな負担ではない」などがあがっていました。一方で、多くの回答者が、管理への負担や責任の重さを理由に「外部施設などを利用し続けた方がよい」もしくは「無くした方がよい」と回答しました。

今後も学校で実施

「今後も学校で続けた方がよい」を選んだ方の主な意見

プール担当でした。とても負担が大きかったですが、継続してやっていけばノウハウが蓄積されるので大丈夫だと思います。分からないことは業者に聞きました。【小学校・教員】

勤務地でのことを考えると、バスを使ってもすぐに行ける外部施設がないため、学校での実施ということにならざるを得ないだろう。ただし、外部指導者を導入する等、水泳指導への人的支援を取るなどの対策は検討したほうがよい。【小学校・教員】

学校で続けるが、今までとは違い、夏休み等にごく短期間で行うべきだと思います。また、希望者には放課後、外部施設などで学べるようにしてはと思います。【小学校/中学校・職員】

確かに、プール管理は大変である。塩素濃度の管理を体育主任が1人で行っている学校も本市では散見される。機械の不具合によって水泳指導が止まってしまう学校が過去にあったことも聞いている。現在赴任している学校においては、毎年藻が発生しないように放課後指導後に数名でプール清掃を行う必要もある。とはいえ、放課後水泳練習の練習時間が市で統一されたことを受けて、教員の帰宅時刻は早まっている。【小学校・教員】

外部施設などを利用して実施

「外部施設などを利用する形で今後も続けた方がよい」を選んだ方の主な意見

プールの管理は毎年大きな負担となっています。担当は毎日の水質検査や薬品の投入などのために早めに出勤をしています。以前は次亜塩素をタンクに入れる作業も教員がしていましたが、目に入った方や衣類に穴が開くなど危険と隣り合わせでした。教員の業務からこれらの作業が減らせたら、その分子どもたちのために使える時間が増やせるので、外部をうまく利用できたらと思います。【小学校・教員】

水泳授業が、熱中症の問題や時数確保、泳力確保ができる指導までに追いついておらず、「働き方」という観点で夏季休業中の補講も難しいのであれば、外部委託を検討した方がいい。また、「管理業務」という点で、毎年のプールの清掃やプールの水を止めていなかったために数百万という新聞記事などを見るたびに、精神的負担も大きくなってしまうため、外部施設の利用ならば清掃の時間も精神的負担も取り除ける。【中学校・教員】

担当する体育主任への負担がものすごく大きいので、学校で担任をする片手間にプールの管理をすることは、健全な働き方の中では難しいと考えます。コロナにより、夏休み前に水泳学習を終える学校もあるようになりましたが、夏休みをまたぐ学校は夏休み中も水質と水量、機械の管理をしなければなりません。コロナで夏休みの開放もなく、誰も入らないプールに水と薬剤を投入することも、財政的に無駄だと思います。【小学校・教員】

プールの管理がとても大変で、体育科の先生方の大きな負担となっているので、民営委託など今までとやり方を変えるべきだと思います。【特別支援学校・教員】

無くしたほうがよい

「無くしたほうがよい」を選んだ方の主な意見

プールの機械操作を覚えて操作したり、薬品を使用したり、水位を調べたりするのは教員の仕事ではない、専門家を雇うべきだと思うからです。水を出しっぱなしで責任を問われる(そんなニュース記事を目にしました)なんて言語道断だと思うからです。【小学校・教員】

夏休み期間は準備のため、いつも早く来たり、放課後はプールの水質管理のため、輪番で見に行かなくてはいけない。その時間を、学級の時間にかける方が合理的である。学校は採算や合理性を考えないので、もっと効率化や合理化を図るべき。【小学校・教員】

働き方や管理業務という視点からしたら、なくした方がよい。温暖化が進む中、体育の教師は塩分チャージや経口補水液などを自費で補充しギリギリの中授業をしている。年間で短期間しか使わない施設の管理に多額の費用がかかっている。室内にあり、年間通して市民に公開しているプールならば別だが、その場合は管理は学校ではなく市になり、教員の負担は減る。「授業」もインストラクターにお願いできるのであれば継続可能かと考える。【中学校・教員】

管理体制を整えるという理由で水泳期間中は補教に入り負担が増えます。最近の事故後の教員の管理体制など様々なニュースを見るとやりたくないというのが本音です。また、負担が多い割に子どもたちに成果は出るのかは疑問ですし、水泳期間中は成績の時期でもありとにかく肉体的にも精神的にも疲れます。【小学校・教員】

プールを使用できるのは、主に7月9月の僅かな期間で、授業時数で10時間程度である。そのために、学校全体で救命救急講習を行なったり、浄化槽の使い方講習、プールを清掃するために全ての職員が放課後を使って掃除したり、さらには子どもたちまで使って掃除をしたり…。また、安全のために学年によって水位を調節したりと、非常に業務は大きい。また、職員の中にもプールに入りたくないなど、入水による指導を拒絶する人もいるなどトラブルの元となっている。【小学校・教員】

設問3 学校の水泳授業、どう思う?

Q. その他、学校の水泳の授業について、あなたの思っていることや意見、考えなどがありましたらお書きください。(任意)

水泳の授業の教育的意義や目的について

夏のレジャーで命を落とす子どもを減らすために、基本的な泳ぎ方、着衣水泳など災害時身を守る訓練に取り組む方が効果的ではないか。長時間、長距離をわざわざ泳がせる行事を行う自治体もあるようだが、伝統だからとただ続けるのではなく、行事を減らし内部から仕事を減らしていく努力をしていかなくてはならないのではないか。【小学校・教員】

私の勤めている自治体では昔から水泳の授業が盛んです。ただ、保護者の話を伝え聞くと、学校の授業についていけないと困るとか、水泳が苦手だと成績に影響が出るからといって、小さいころからスイミングスクールに通わせている、という話もききます。水泳が苦手、という子どもがそこまで求められるのもおかしなことですし、過度に水泳の能力を競うのではなく、もっと気楽に、ひとつの体験学習として水泳が実施されたらいいのにと思います。【中学校・教員】

1番大切な水泳授業は「着衣泳」だと思っているのですが、水が汚れるので、外部の施設だと実施できないのかな、という点が気になります。【小学校・教員】

時代が変わり、スイミングスクールなどの施設もある。義務教育の中で、するべきこととは思えない。【小学校・教員】

島国として防災等を目的にした水泳学習の意義は大きいが、学校が担う必要はない。地域によっては水泳学習自体が縮小しているなか、目的を果たすために十分な指導ができない状況も多く見られる。教師の指導力にも限界があることから、専門機関への委託等に維持費を使ってほしい。【小学校・教員】

児童の個人差が大きいことから、年々指導が難しくなっていると感じる。ただ、学校でやめてしまうと、泳げない子どもが泳げるようになる機会はなくなるだろう。苦手な子の中から自主的にスイミングに行きたがる子は少なく、仮に行きたいと行ってもお金はかかる。家庭の意識と経済力に左右される。【小学校・教員】

小さいころから水泳を習っている子が泳げて、学校の授業だけではなかなか泳げるようにならないのが実情だと思う。水泳を授業で行うことは、水の事故などから命を守るためという位置づけで、成績に反映させなくてもいいのではと思う。中学生になると入りたくないと休む子も増える中、それに対して教師が時間を割くのは必要なのかと感じる。「入りたくない子は入らない」それでいいのではないか。成績に反映しなければ、入らないから点数がつけられないという問題もなくなると思う。あくまでも命を守るための授業と考えたらいいと思う。【中学校・職員】

教職員の負担について

特別支援学校では、てんかんや医ケアの生徒が多数在籍し、また知的障害のある生徒の安全管理には多大な労力が必要なため、特別時間割を組んで対応しています。その他夏休みのプール指導日は学生ボランティアを募るなどしていましたが、教員不足や病気休業の先生がいるなどで、いよいよその余裕も無くなってきているように思います。

今までのやり方から変える必要があると思いますが、民間委託した時に果たして安全管理ができるかどうかは大変疑問です。文字通り命がかかっているので…。【特別支援学校・教員】

水泳に限らずですが…。もちろん学校でやった方がいいことはたくさんある。でも私たちが使える資源(時間、金銭、施設、スキル他)も有限で、どこにそれを使っていくか資源を踏まえた上で精選する必要を感じる。【小学校・養護教諭】

いざ事故が起きた時本当に対応できるかと考えると不安が強く、子どもたちにも無理させないような授業設計をしてしまいます。習い事で水泳を頑張っている子どもたちにとっては学校の水泳はつまらないのではないかと思います。教員の負担も大きく、子どもたちによっては水着購入などの経済的負担、顔をつけられない子たちの精神的負担、本当に今の形で続けるべきなのか考えるいい時期なのではと思います。【小学校・教員】

児童生徒の実態について

中学校では、女子が生理でない日でも生理と嘘をついて入らない!一方で生理でよ入れるから極力、入りなさいという体育教員もいます。毎年、水泳大会の日は休む子、見学する子も続出し、泳げない子にとって水泳の授業は苦痛なんだなと感じる一方、苦手なことから逃げてほしくないと迫る学校体制の狭間でなんとも言えない気持ちになります。【中学校・教員】

様々な事情で「入れない」「入りたくない」生徒も多い。しかし「授業」だと実技を行っていないという理由で成績が不利になる。無くすか、もしくは選択制にすることで、多くの人にとって負担が減るのではないだろうか。【中学校・教員】

プールの設備について

プールには、虫が浮いているなど衛生面でも心配です。50年以上たつ汚いプールに入るのはかわいそうです。【高等学校・教員】

プール施設や水道代などに費用をかけるよりも、老朽化した校舎の建て替えに予算をまわすべきだと考えます。また、国際的にも、水泳授業を実施している国は稀です。働き方改革の側面からも、費用面でも、水泳は民間の手に委ねるべきです。【小学校・教員】

まとめ

学校の水泳の授業について一定の教育的意義は感じるものの、教職員への負担の大きさから、学校で教職員が水泳指導を担当することに対しては反対する意見が多く集まりました。外部施設の利用を支持する意見の中には、「学校のプールが建設されてから50年以上が経過しており、環境面を考えて外部施設を利用する方がよい」という意見もありました。教育的意義については、水難事故などのときに、衣服を身につけた状態で浮いたり移動したりする訓練でもある「着衣泳」については必要だという意見も。また、水泳の授業への抵抗感を持つ児童生徒がいることも回答の中から伺えました。


▼ 自由記述の回答一覧は、以下よりダウンロードしてご覧ください。 ▼

アンケート資料ダウンロード 申し込みフォーム

* 記入必須項目

■お名前*
■メールアドレス*
■立場*
■データの使用用途*
■ご所属
■教職員アンケートサイトフキダシへの登録を希望する
※対象は教職員の方のみです。
■メガホンの運営団体School Voice Project への寄付に興味がある

※メディア関係者の皆様へ
すでに公開されている教職員アンケート結果やWEBメディアの記事の内容等は報道の際に使用いただいて構いません。その際は【出典:NPO法人School Voice Project 】クレジットを入れていただき、事後でも結構ですのでご一報ください。

今、日本の学校には先生が足りていません。学級担任の不在によって不安な思いをしている小学生、専門ではない教科の先生から教わる中学生、高校生がたくさんいます。

2021年度に文科省による調査で明らかになった教員の不足数は、全国で2558人。しかし、この数字には「そんなはずない」「もっと多いはず」との現場や保護者の声が多く聞かれます。2022年度からは小学校で35人学級がスタートし、地域によっては更なる教員不足が起こることも心配されます。

「担任が配置できない」「教科の先生がいない」「育休の代わりの先生が見つからない」この状況は、教員の働き方はもちろん、子どもたちにも影響が出る大きな問題です。

本サイト「メガホン」を運営するNPO法人School Voice Project では、学校業務改善アドバイザーの妹尾昌俊さん、教育行政学の研究者である末冨芳さんとともに、「#教員不足をなくそう緊急アクション」を立ち上げました。子どもたちのために、教員不足を一刻も早く改善するための活動です。

教員不足の実態について、副校長・教頭、教職員、保護者の三者に、学校現場で起こっていることや教員不足に対する意見を聞きました。

アンケートの概要

■実施期間:2022年4月26日(火)〜2022年5月22日(日)

<教職員向けアンケート調査>
■対象  :全国の小〜高校年齢の児童生徒が通う一条校に勤務する教職員
■実施方法:主にSNSを通じて協力者を募集し、ネット上で回収
■回答数 :1052件

<副校長、教頭向けアンケート調査>
■対象  :全国の小中学校年齢の児童生徒が通う一条校に勤務する副校長、教頭
■実施方法:全国公立学校教頭会の協力を得て、会員へメール案内し、ネット上で回収
■回答数 :1070件

<保護者向けアンケート調査>
■対象  :全国の小〜高校年齢の子どもを持つ保護者
■実施方法:主にSNSを通じて協力者を募集し、ネット上で回収
■回答数 :85件

結果を読む際に、ご留意いただきたいこと

  • 任意の調査であるため、教員不足で困っている人ほど、回答しやすい傾向があると考えられます。そのため、現実よりも教員不足の実態が過大に出ている可能性が高いと予想されます。
  • 副校長・教頭向けアンケートでは、地域や校種に一定の偏りがあります。兵庫県(19.2%)、茨城県(11.8%)、熊本県(8.7%)で多くの回答が集まりました。28都道府県から協力を得られましたが、19府県からの回答はありませんでした。
  • 教職員向けアンケートでは、公立の小、中、高、特別支援学校を中心に集計しました。義務教育学校、中等教育学校、国立附属学校は回答数が少なかったため、集計には含めていません(自由記入には含めています)。特別支援学校は回答数が少なかったため、参考値扱いとしています。私立学校については校種別にせず、私立学校というカテゴリーで一部集計に含めました。

アンケート結果

教員不足の発生状況

副校長・教頭向けアンケートでは、2021年度に年度を通じて一度でも教員が不足したことがある小中学校は約4割。2022年度始業式時点では約2割の小中学校で教員不足が発生していると回答しました。その後、4月28日時点でも教員不足の状況は改善されていないことがわかりました。

副校長・教頭向けアンケート

副校長・教頭向けアンケートでは、教員不足が起きている学校数を母数とした場合、小学校の約76%、中学校の約66%で教員の不足数は「1人」と回答しました。次いで多かったのが「2人」で、中には3人以上の教員が足りないケースもあるようです。

副校長・教頭向けアンケート

教職員向けアンケートでは、高校においては約3割が2人不足、約1割が3人以上不足していると回答しました。特別支援学校はもともと教員数が多いものの、約2割が5人以上不足していると回答しました。

教職員向けアンケート

教職員向けアンケートでは、2021年度に年度を通じて一度でも教員が不足したことがある学校は約6割。2022年度始業式時点では約4割の学校で教員不足が発生していると回答しました。その後、4月28日時点でも教員不足の状況は改善されていないことがわかりました。

教職員向けアンケート

教員が不足している場合の対応としては、小学校では管理職が担任業務を兼務するケースがあるようです。中学校では臨時免許を発行して対応したり、中には授業が実施できない教科もあるようです。

副校長・教頭向けアンケート

教員不足の影響

教員が不足することで懸念されることとして、「児童生徒が不安に思う」に対して「おおいにそう思う」と回答したのは、小中学校ともに7割を超えていました。次いで多かったのは、教科等の専門性が高くない教員や学級経営力が高くない教員が教えることによる「授業の質の低下」。選択肢に対して「おおいにそう思う」と回答したのは小中学校ともに半数を超えていました。

副校長・教頭向けアンケート
副校長・教頭向けアンケート(4月28日時点で教員不足が起きている学校のみ集計)

小中学校ともに、約65%の教頭が「講師の質を評価して選んでいられる状況ではない」と回答しました。この状況は、授業の質への不安とも関連していると考えられます。

副校長・教頭向けアンケート

 教員不足が起こることで、教職員が受け持つ授業時間数が増えたり、校務分掌や児童生徒への指導などで負担が増えたりすることを懸念する声が多く集まりました。

副校長・教頭向けアンケート
副校長・教頭向けアンケート(4月28日時点で教員不足が起きている学校のみ集計)

「出産や育児、介護と仕事との両立を応援しづらい雰囲気が職場にできる」と回答した人は約7割でした。

副校長・教頭向けアンケート
副校長・教頭向けアンケート(4月28日時点で教員不足が起きている学校のみ集計)

講師探しについては、約半数の小中学校の副校長、教頭が「校長、教頭らが人脈等と通じて独自に探すが、なかなか見つからないため負担は大きい」と回答しました。

副校長・教頭向けアンケート

今後の見通し

約3〜4割の教職員が、「定年が延長されても働かない予定」と回答しました。定年の延長は2023年度から順次実施されますが、教員の不足解消の切り札となるかには疑問が残ります。

教職員向けアンケート

副校長、教頭においては、「定年が延長されても働かない予定」と回答したのは約1〜2割でした。

副校長・教頭向けアンケート

小〜高校の約15%の教職員が「現在、離職・転職を考えている」と回答しました。「3年以内に離職・転職する可能性がある」と回答した数を含めると、約6割に上ります。

教職員向けアンケート

離職や転職を考える理由として最も多いのが「勤務時間(忙しさ)」で7割を超えていました。次いで多かったのが「給料」でしたが、その数は3割程度。「勤務時間(忙しさ)」を選択肢した人が圧倒的に多いことがわかります。

教職員向けアンケート

1年以内に離職・転職する可能性がある人のみに同様の質問をしたところ、「勤務時間(忙しさ)」と「給料」が理由として多いことに変わりはありませんでした。その他、「保護者との関係」や「職場の人間関係」、「教職員間でのハラスメント」なども一定数の回答が集まりました。

教職員向けアンケート

副校長・教頭向けアンケートでは、「現在、離職・転職を考えている」と回答した人はごくわずかでした。「3年以内に離職・転職する可能性がある」と回答した人は、約15%でした。

次のページでは、「求められる政策・支援策」「当事者の声」を紹介します。

髪型や下着の色の指定、スカート丈のチェック、携帯電話の禁止……。
近年、多くの学校で適用される校則の意義が、問い直されています。「ブラック校則」という言葉で、学校側の対応の問題点や裁判への発展事例とともに取り上げられているのを、メディアで目にすることも増えました。一方で、民主的な方法でそれらの校則を見直そうという、前向きな動きも多く生まれています。

とはいえ「校則の見直し」をしたくても、何が具体的に問題なのか、どのような段取りや方法が必要なのか、いまいち分からないという先生も多いのではないでしょうか。

この記事では、ブラック校則とは何を指すのか、そしてなぜいま校則の問題が注目されているのか、その意義や最新の取り組みなどを紹介します。

「問題校則(ブラック校則)」とは?

全国的なムーブメントとなっている問題校則(ブラック校則)の見直しですが、そもそも問題校則(ブラック校則)とは、どのようなものを指すのでしょうか。

文部科学省(文科省)は、現在改訂中の生徒指導の手引である「生徒指導提要」の中で、校則は「児童生徒が健全な学校生活を送り、よりよく成長・発達していくために設けられるもの」であり「教育目標を実現していく過程において、児童生徒の発達段階や学校、地域の状況、時代の変化等」を踏まえて、「社会通念上合理的と認められる範囲において、教育目標の実現という観点から校長が定めるもの」であるとしています。

問題校則(ブラック校則)は、「合理的範囲」を逸脱し、児童生徒が自主的に守るものではなく、守らせることが目的となってしまったような校則全般のことを指していると言えるでしょう。

引用「生徒指導提要(案)」(文科省,2022年10月5日参照)より

【注】本メディアでの「問題校則(ブラック校則)」の呼称について
行き過ぎた校則を「ブラック校則」と呼称することが一般的となっていますが、「ブラック〇〇」という表現が黒色へのネガティブイメージを固定し、人種差別や偏見助長へつながる恐れがあることから、本記事では、以降、基本的に「問題校則」の表記で統一いたします。

問題校則の具体例とその問題点

「合理的範囲を逸脱」とのことですが、具体的にはどんな校則が問題校則と言えるのでしょうか。教育関係者や評論家によって組織された「ブラック校則をなくそう!」プロジェクトでは、下記のような校則をその代表例として挙げています。

  • 頭髪に関するもの
    • ツーブロックやポニーテールなど、特定の髪型の禁止
    • 髪染めやパーマなど、加工の禁止(地毛証明やくせ毛証明の提出)
    • 男子は耳にかかったら切る、女子は肩にかかったら結ぶなどの長さに関する規定
  • 制服に関するもの
    • カーディガンやセーターの禁止
    • スカート丈に関する規則(膝が見えたら駄目、など)
    • 肌着の色の指定
  • 登下校のルール
    • 自転車通学の禁止
    • ジャージや部下着での登下校の禁止
    • カップルで一緒に登下校することの禁止
    • 飲食店などへの立ち寄りの制限
  • その他
    • キャラクターものの文房具やシャープペンの使用禁止
    • 眉毛の手入れの禁止
    • 授業中の水分補給の禁止
    • 給食や清掃の時間での発話の禁止
    • 携帯電話の持ち込みや使用に関する規定

問題校則が「問題」となるポイント

問題校則は、人によっては「でもそれって必要だよね?」と思われる場合もあるかもしれません。合理的範囲を逸脱しているとされるポイントは、一体どこにあるのでしょうか。

人それぞれの良し悪しの感覚ではなく、明確に校則に問題があるとみなされる場合には、「傷害」「個人の尊厳」など、いくつかの具体的な観点があります。

  • 障害行為の疑いがあるもの
    地毛を黒髪に強制的に染髪させる、髪を強制的に切るというような、傷害行為の疑いがあるもの
  • 個人の尊厳を損なうもの
    地毛証明を提出させる、性別によって制服や髪型を指定するなど、個人の尊厳を損なうもの
  • 生命の危機・健康を損ねること
    水飲み禁止、防寒具の禁止など、生命の危機・健康を損ねること
  • ハラスメント行為
    下着の色の指定とそのチェックなど、ハラスメント行為

引用・参考「「ブラック校則とは」(「ブラック校則をなくそう!」プロジェクト,2022年10月5日参照)より

学業成績との関連がなく、社会通念上のマナーとしても一般的でないという以上に、上記のような観点で児童生徒の権利を不当に侵害し、精神的苦痛を与えるような校則が、問題校則になりうると言えます。

裁判に発展したケースとその結果

校則や処分がその適法性を問われ、裁判事例にまで発展したケースもあります。

  • 熊本丸刈り訴訟(1985年11月13日判決)
    男子生徒の髪型を丸刈りに指定し、長髪を禁止する公立中学校の校則が問題となった事件。
  • 商業高校バイク謹慎訴訟(1990年2月19日判決)
    原付免許取得に関して「免許試験を受けるには学校の許可を得ることを要する。学校の定める地域外の生徒には受験を許可しない。」との校則がある学校において、当該の地域外の生徒が学校に無断で原付免許を取得したことに対し、無期自宅謹慎処分が課されたことの適法性が争われた事件。
  • 大阪カラーリング訴訟(2021年2月16日判決)
    公立中学校で染髪をしていた女子生徒が、教師数名に髪を黒く染めなおさせられたことが体罰に当たるなどとして、親が市に対して損害賠償請求した事件。

これらいずれの判例においても、学校側に違法性は認められない結果となりました。
実は校則には、その定め方や妥当性を直接的に根拠づける法律は存在しません。たとえ基本的人権や子どもの権利条約の観点からその妥当性に疑問が持たれても、問題校則が温存されやすい背景には、そのような法環境上の問題があります。

現状として、校則作りのルールを具体的に決める法律はありません。せいぜい、本記事で度々触れる「生徒指導提要」で、運用と見直しに関する強制力のないポリシーが定められる程度です。
裁判所は、学校には広い裁量権があり、運営のトップである校長に「児童生徒を規律する包括的な権能」があると見ている傾向があります。つまり、校則の内容がよほど酷いものでない限り、ひとりの生徒の主張で変えられるものではないと考える傾向が見えるのです。

引用「ブラック校則とは?定義や問題点を事例と共に弁護士が解説」(ベリーベスト弁護士法人,2022年7月10日公開,4日2022年10月5日参照)より

とはいえ、過去には学校側の違法性が認められた判例も存在します。

  • 私立高校バイク退学処分訴訟(1992年3月19日判決)
    校則に違反してバイクの免許を取得し、乗車していたことが発覚したことを受け、退学処分としたことの適法性が争われた事件。

なお、こちらの判例においても、あくまで「退学」という処分が教育的配慮を欠く、合理的裁量の範囲を超えた違法な行為であるとみなされたのみで、校則によるバイク規制そのものには合理性が認められています。

とはいえ、裁判で違法性が認められないとしても、傷つく生徒がいる限り看過はできません。裁判に発展する前に、学校や教育委員会自らが校則の意義を問い直し、見直しの動きを作っていく姿勢があります。

参考「司法における「ブラック校則」問題と、これからの政治の役割」(SYNODOS,2022年12月13日,2022年10月5日参照)より

全国で広がる現在進行形の「校則見直し」の取り組み

上記のような事情でこれまで留保されることの多かった校則問題ですが、見直しの動きは確実に起きています。NHKの令和3年の報道におけるアンケートによると、全国の都道府県教育員会のうち、4割が校則を「見直した」「見直す予定」と回答しています。

参考「「学校つらい…私がおかしいの?」~不登校の原因は校則でした 」(NHK,2022年9月10日公開,2022年10月5日参照)より

学校単位で校則を見直す動きも、各地で起こっています。ここからは「校則見直し」の意義と、全国で広がる現在進行形の取り組みについて紹介します。

ブラック校則をなくそうプロジェクト

2017年、前述の「大阪カラーリング訴訟」を発端に、NPO法人理事長やLGBTアクティビストが組織する「「ブラック校則をなくそう!」プロジェクト」が発足されました。

評論家でありNPO法人「ストップいじめ!ナビ」代表を務める荻上チキ氏をスーパーバイザーとして、理不尽な校則を見直し、学校と社会が共にこれからの時代にふさわしい校則を全体で考えていくための調査や活動が行われました。

同組織は2019年に、問題校則に関する6万以上の署名を集め、文科省に要望書を提出しています。

文科省の見解

文科省は2021年6月、校則見直しについて「学校を取り巻く社会環境や児童生徒の状況は変化するため,(中略)絶えず積極的に見直さなければなりません。」とその必要性を指摘しました。

また、「校則の見直しは,児童生徒の校則に対する理解を深め,校則を自分たちのものとして守っていこうとする態度を養うことにもつながり,児童生徒の主体性を培う機会にもなります。」と、校則が本来的に持つ教育的な意義についても言及しています。

引用「校則の見直し等に関する取組事例」(文科省,2022年10月5日参照)

2022年、文科省は12年振りに、生徒指導提要の改訂に動きました。試案には、校則の見直しやその公開、児童生徒の権利に関する文言が盛り込まれています。

教育委員会単位での見直し

校則見直しの動きは、教育委員会単位でも広がっています。ここでは、例として岐阜県・熊本市・東京都での動きを紹介します。

岐阜県の例

岐阜県は令和2年の調査において、9割以上の学校に人権などに配慮する必要がある校則があったことから、見直しと廃止の動きに着手しました。制服着用時の下着の色などの制限や、外泊・旅行の届け出や許可を主とした「時代の要請や社会常識の変化に伴い適用が想定されない校則」が、見直しの主な対象となりました。同時に、生徒が主体的に考えられるような校則改定のプロセスについても、各学校に明文化を求める方針が通知されました。

参考「ブラック校則、県立高の9割以上に 岐阜で廃止の動き」(朝日新聞,2019年11月6日,2022年10月5日参照)より

熊本市の例

熊本市では、教育委員会主導で校則見直しの指針となるガイドラインをとりまとめ、市内にある137の市立学校全てにおいて、見直しの取り組みが始まりました。ガイドラインでは、生まれ持った性質や性の多様性を尊重できない校則を必ず改定することや、 取り組みの柱として「児童・生徒がみずから考え、みずから決める仕組み」を各学校で作ることのほか、校則をホームページに公開し、周知を図ることなどが求められています。

遠藤教育長:
「先生の決めたことに対して、守るだけだったり、反抗するだけだったりしたら、大人になってもそういう意識になってしまいますよね。そうではなくて、自分たちのことを自分たちで決めて、そして責任を持って守るということが民主主義です。小学生の頃から校則の見直しを利用して、自分たちの責任で学校をつくるという経験を積み重ねていくことで、大人になった時にもそれが出来るようになり、よりよい社会のあり方につながると思うんです。そして、その中で、少数派の人権をないがしろにするようなルールを作ってはいけないことも含めて覚えていくことですよね。だから髪型や服装をどうこう以上に校則の見直しは、この国のあり方の見直しであって、これからの時代を生きていく子どもたちを育てるための最高の教材なんです」

引用「「校則見直しは最高の教材」 ”異色の教育長”が仕掛ける校則改革|#その校則必要ですか?」(NHK,2021年12月17日公開,2022年10月5日参照)より
参考「校則の見直しについて」(熊本市 学校安全・安心推進課,2022年10月5日参照)より

東京都の例

東京都では2021年4月から12月にかけて校則の自己点検の取り組みが行われ、「生来の髪を一律に黒色に染色」「下着の色の指定に関する指導」など計6項目について改定が行われました。各校では、Googleフォームを用いた生徒の意見集約や、教職員や生徒、保護者同士の意見交換といった取り組みがなされたとのことです。

引用「都立高等学校等における校則等に関する取組状況について」(東京都,2022年10月5日参照)より

ここまで、問題校則のどこが問題であるか、またどのように見直しの気運が広がっているかについて解説しました。
次ページでは、実際に校則を見直したいと思った時に、どのようなプロセスを踏めばよいのかについて、校則見直しの意義や、具体的な取り組み事例に触れながら、解説していきます。

2022年8月27日に、Zoomセミナー「学校にファシリテーションを!」が開催されました。テーマは「『任せる』マネジメントを広げよう」。ファシリテーションの普及に取り組む株式会社ひとまちが主催し、代表のちょんせいこさんが進行役を務めました。

講師は、『カラフルな学校づくり』『「任せる」マネジメント』などの著者である住田昌治さん(学校法人湘南学園学園長)。第1部では、これからの学校や管理職のあり方について住田さんが講演し、第2部では、住田さんの前任校で働く学校事務職員の上部充敬さん(横浜市立日枝小学校)と、教職員や生徒がファシリテーターとして活躍する徳島県美馬市立穴吹中学校校長の濱田雅子さん、同校養護教諭の林加奈恵さんより、実践の紹介がありました。

この記事では、登壇者のお話から、これからの管理職のあり方やファシリテーション※の具体的な実践方法を中心にご紹介します。

※ ファシリテーション:狭義では、会議や研修、プロジェクトなど人が集まる場で一人ひとりの意見を活かし、合意形成や課題解決を進めるための話し合いの技術。広義では、私たちは本来、誰もが力をもつ存在で、その力を発揮できるエンパワメントな場づくりを進める話し合いの技術。

「任せるマネジメント」を提唱する校長・住田昌治さんのお話

校長の役割は、管理ではなく経営

「校長にこそファシリテーションを」。そう書かれた資料を参加者に見せながら、学校法人湘南学園の学園長を務める住田昌治さんの講演が始まりました。

住田:「俺について来い」なんていう考えはもう時代遅れだと思っています。校長は“管理職”とも言われるので、人をコントロールすることが役割だと勘違いをされてしまいがちですが、実際はそうではありません。

本来の役割は、管理することではなく、経営することです。教職員の力を引き出し、エンパワメントすること。エンパワメントされた教職員が、さらに子どもたちをエンパワメントすること。そんな循環を、学校の中でつくっていくことが校長の役割だと思っています。そのために必要な技術が、ファシリテーションなんです。

ーー学校を経営する立場として、どのようなことを考えてきたのでしょうか。

住田:私が校長のあり方として心がけていたのが、「校長が必要とされない学校経営」です。もちろん校長という立場は必要なのですが、「校長に言われたからやりました」「校長のおかげでできました」とか、そういうことは言われたくないと思ったんです。

「校長がいなくても、自分らでできますよ」そんなふうに言ってもらいたい。教室では、先生が脇役、子どもが主役ですよね。職員室では、校長は脇役、教職員が主役なんです。そんな学校経営ができるように、私は指示や命令をせず、ビジョンを示したあとは教職員に任せることにしました。

全員が主体的になるには?安心して話せる場をつくる

具体的に、どのような学校経営をされてきたのでしょうか。これまでに取り組んできた事例をいくつか紹介していただきました。

住田:前任校では、新年度初日の4月1日に、教職員全員で「ビジョン共有ワークショップ」をやりました。教員だけではなく、事務職員や用務員も参加します。教職員全員で1つの学校をつくっていくので、職種や立場を越えて、みんなが対等に関わることが大切なんです。

校長の話はできる限り短くして、教育目標について話し合いました。このときに使ったのが、直接書き込める円形のボード「円たくん」です。みんなで円になり、円たくんを膝の上に乗せて、話し合いながら意見を書き込んでいきます。上下関係を意識せずに話し合うためには、とても有効なツールだと思います。この時間を丁寧に取ったことでお互いに考えていることを共有でき、教職員同士の安心感にもつながりました。

授業研究会は、授業担当者だけではなく、参加者全員が主体的に参加できるようにと考え、話し合いの仕方を変えました。まず授業が終わったら、授業担当者は一旦職員室に戻ります。その間に、参加者が話し合いたいテーマをホワイトボードに書き込んでいき、テーマごとに分かれて話し合いを始めます。その話し合いに、後から授業担当者が加わります。途中でグループを移動して話し合うフラットタイムやワールドカフェも取り入れるようにしました。そうすると、話し合いのテーマは授業で扱った内容に限らず、本当に多岐に渡るんです。

最近の私は、「デフォルトを変える」とよく言っています。いろんなことが変化している時代ですから、学校の中も変化させていく必要があります。例えば、校則や宿題、定期テストや通知表など、今まであることが当たり前だったものをなくしてみたり、変えてみたらどうなるでしょう。学び方や学ぶ場所も、子どもたち自身が自分で選べるようにする。前任校では、そんな取り組みもしていました。

マネジメントの先にあるのは、子どもたちの幸せ

教職員がやっている仕事は、最終的には子どもたちを幸せにすることなんです。ハッピークリエイターなんですよね。そんな教職員をマネジメントする立場にいる校長は、学校に関わるすべての人を幸せにすることが仕事です。

校長にファシリテーションする力があるからこそ、教職員が最大限の力を発揮できる。結果として、それが子どもの幸せにつながる。これからも、そんな循環が生まれる学校づくりをしていきたいと思っています。

夏の学校は暑いところ…というイメージがありますが、実は教室や職員室の温度については「学校環境衛生基準」で「18℃以上、28℃以下であることが望ましい」と定められています。しかし、各学校で、実際に基準通りに運用されているのかにはバラつきがありそうです。学校の教室・職員室の温度状況について、教職員の方に聞きました。

アンケートの概要

■対象  :全国の小〜高校年齢の児童生徒が通う一条校に勤務する教職員
■実施期間:2022年8月26日(金)〜2022年9月19日(月)
■実施方法:インターネット調査(実施時の設問はこちら
■回答数 :109件

アンケート結果

設問1 学校の温度基準、知ってる?

Q1. 文部科学省の定める「学校環境衛生基準」において、教室の温度は「18℃以上、28℃以下であることが望ましい」とされていることを知っていますか?

教室の温度設定が「18℃以上、28℃以下であることが望ましい」という基準は、約7割の教職員が「明確に知っていた」もしくは「だいたい知っていた」と回答しました。周知の度合いについては、校種による差は見られませんでした。

設問2 18℃~28℃の基準、守れてる?

Q2. あなたの勤務校では、学校環境衛生基準で望ましいとされている温度を守れていますか?

望ましいとされている設定温度を守れているかという質問に対しては、教室では約6割が「しっかり守れている」もしくは「だいたい守れている」、職員室では約8割が「しっかり守れている」もしくは「だいたい守れている」と回答しました。

教室において「しっかり守れている」と回答した人の割合は、東日本では約30%、西日本では約10%であり、明確な差が見られました。職員室において「しっかり守れている」と回答した人の割合は、教室に比べると大きな差は見られず、東日本で26%、西日本で16%でした。

設問3 教室で基準が守れていない理由は?

Q3. 設問2で教室について「あまり守れていない」「全く守れていない」と答えた方への質問です。その理由として当てはまるものを選択してください。(複数選択可)

※ 設問の対象者(設問2で教室について「あまり守れていない」「全く守れていない」と答えた方)は42人でした。

クーラーの能力不足

「クーラーを最大限稼働させても、基準の温度にならないため」を選んだ方の主な回答

教室によってクーラーの効きにばらつきがあって、効きの悪い教室ではクーラーを稼働させても30℃をゆうに超える教室があります。【中学校・教員】

校則・管理職の指示

「クーラーはあるが校則や管理職の指示等によって使用できない/設定温度が変えられないため(学校単位のルール)」を選んだ方の主な回答

電気代に予算があり、デマンド監視システムが作動するため、クーラーがあっても温度を下げられない。真夏などはデマンド監視システムによって、ほとんどの教室がクーラーをつけられない状況もある。【高等学校・教員】

クーラーが一括管理のため、教室内が暑く、クーラーをつけている意味がない。【小学校・教員】

職員室から教頭が機械を操作する決まり。設定温度は28度で、各教室の端末操作機には、触られないようにカバーがかけられている。カバーを外して温度調節ボタンを押すと26度までは下がる。そのため、毎日、教員が密かにカバーを外して26度まで下げている。しかし、26度の設定では教室の気温は30度以上になる。【中学校・教員】

クーラーが未設置/不足

「クーラーが設置されていない/不足しているため」を選んだ方の主な回答

本県の県立学校の空調は県で設置していないために、学校のPTAなどで設置せざるを得ない。そのため、クーラーを設置できない教室もある。【高等学校・教員】

多くの専門教室(実習室)にはパソコン室などを除き設置されていません。生徒は夏は暑い中冷房なしで授業を受けています。【高等学校・教員】

各HRにはエアコンが設置されているが、各教科の教室や実験室には一部しかエアコンが設置されていない。【高等専門学校・教員】

一般の教室にはクーラーがあるが、特別教室(芸術)にはないので、業務用の送風機で対応している。【高等学校/高等専門学校・教員】

設問4 職員室で基準が守れていない理由は?

Q4. 設問2で職員室について「あまり守れていない」「全く守れていない」と答えた方への質問です。その理由として当てはまるものを選択してください。(複数選択可)

設問の対象者(設問2で職員室について「あまり守れていない」「全く守れていない」と答えた方)は26名でした。

管理職の指示

「クーラーはあるが管理職の指示等によって使用できない/設定温度が変えられないため(学校単位のルール)」を選んだ方の主な回答

教頭が、クーラーの制御盤を管理している。【中学校・教員】

どんなに暑くても寒くても、管理職の許可が下りない限り、冷暖房のスイッチを入れることはできません。就業時間内のみ稼働で、室温は管理職が設定しており、変えることはできません。冷房は28℃設定ですが、換気していることもあり室温が28℃以下になったことは一度もありません。この夏も冷房がついていても30℃を超える職員室で、各自ミニ扇風機を持参しやり過ごしています。朝晩の残業中は、夏は汗だく、冬は防寒着にくるまって震えながら働いています。【特別支援学校・教員】

クーラーが未設置/不足

「クーラーが設置されていない/不足しているため」を選んだ方の主な回答

大きな職員室にはエアコンが設置されているが、各教科等の準備室にはエアコンが設置されていない。【高等専門学校・教員】

準備室にエアコンがなく、隣の教室から冷気を送っています。誰も使わない部屋をガンガンに冷やしているのは電気代の無駄遣いだと思いますが、こちらもエアコンがなければやっていけませんので仕方なく使っています。【高等学校・教員】

クーラーの能力不足

「クーラーを最大限稼働させても、基準の温度にならないため」を選んだ方の主な回答

換気のために窓を開けているため、既定の温度設定では想定の温度にならない。【小学校・教員】

教育委員会等の基準

「クーラーはあるが教育委員会等によって定められた使用基準があり使用できない/設定温度が変えられないため(自治体単位のルール)」を選んだ方の主な回答

教育委員会から節電の通達があり、生徒の下校後(おおよそ18時以降)には節電のためエアコンを止めるように指示が出たため。【中学校・教員】

その他

「その他」を選んだ方の主な回答

クーラーの故障が長期間続いている。【小学校・教員】

設問5 学校の温度環境、どう思う?

Q5. 教室・職員室温度について、あなたの問題意識や考えを自由にお書きください。(任意)

エアコンの設置やメンテナンスをして欲しい

教室内の温度を均一にするためにサーキュレーターがほしい。【中学校・教員】

職員室のクーラーは年季が入っているためスイングせず、特定の職員のみが直に当たっている。極端に寒くなるのも問題点である。【小学校・教員】

快適な空間で生活するために、地域によって差がないように冷暖房設備を設置してほしいです。体育館の冷暖房設備がまだまだ整っていないので、設置してほしいです。また、エアコンの清掃を保護者のボランティアと用務員で行っているのを見かけました。エアコン業者に任せる予算をつけてほしいです。【小学校・職員】

生徒のいる各教室にはエアコンが設置されており、環境は改善してきていると思います。しかし、教員の準備室にいまだエアコンがないのは異常な状況です。この夏も校舎4階で日中の体感温度は40度くらいだったと思いますが、その中で仕事をせざるを得ませんでした。熱中症の危険がある職場は本当に異常だと思います。準備室を含めたすべての職員室にもエアコンの設置を切に願います。【高等学校・教員】

基準やルールを見直してほしい

コロナの影響で換気もしながらエアコンを使用しているので、教室によって温度にはばらつきがあります。職員室は教室より設定温度が低く、あまり冷房が得意ではない私には寒いです。(ときどき設定温度を上げたり、窓を大きく空けたりするなどしています。)いろいろな人がいるので仕方のないことかもしれませんが、冷房がもとで体調を崩すのは避けたいです。【小学校・教員】

各教室で必要に応じて設定できるようにした方が良いのだが、例え操作は教員以外してはならないと決めても、守らない生徒が必ずでる。それを前提に、罰則規定も含めた、規則を守らせる追加の指導が必要で、手間が増えた。【高等学校・教員】

冷房をつけて良いか悪いかというところから管理職や目上の方に気を遣わないといけないから、やりづらい。【中学校・教員】

設定温度の基準は知っていて概ね守っている。昨今の異常気象で昔より確実に気温が上昇しているし、教室内の人数や教室の場所(下の階か上の階か)によっても体感温度が違う。またコロナ禍でマスクをしている実態から臨機応変に温度設定を変えていく必要がある。【小学校・副校長】

児童生徒の教育活動への弊害

コロナ禍でマスクをしながら30℃を超えている中で授業をまじめに受けなさい!というのは、しんどかった。「一人一台タブレットじゃなくて、一人一台扇風機を」と訴える生徒もいた。【中学校・教員】

私はものづくり系のクラブの顧問をしていますが、この夏、冷房のない教室で部員がずっと作品作りの作業をしていました。熱中症など体調不良は大丈夫でしたが、おそらく暑さのため作業効率が下がり、完成までにかなりの時間を要しました。【高等学校・教員】

まとめ

教室で基準が守れていない理由としては、「クーラーを最大限稼働させても、基準の温度にならないため」が最多。クーラーの冷暖房能力によって適した温度にならない他、感染症予防のために換気をしているため、効きが悪いという声もありました。また、クーラーの設定温度が適切であっても、教室内に児童生徒がいる状態ではなかなか温度が下がらないこともあるようです。

職員室で基準が守れていない理由としては、「クーラーはあるが管理職の指示等によって使用できない/設定温度が変えられないため(学校単位のルール)」が最多。管理職が職員室の温度管理をしており、教職員が自由に設定を変えることができない学校もあるようです。

児童生徒や教職員が普段使用する教室であっても、クーラーが設置されていない教室がある学校は少なくないようです。クーラーの設置や、クーラーが正常に稼働するようにメンテナンスをして欲しいと望む声が多く集まりました。

関連記事


▼ 自由記述の回答一覧は、以下よりダウンロードしてご覧ください。 ▼

アンケート資料ダウンロード 申し込みフォーム

* 記入必須項目

■お名前*
■メールアドレス*
■立場*
■データの使用用途*
■ご所属
■教職員アンケートサイトフキダシへの登録を希望する
※対象は教職員の方のみです。
■メガホンの運営団体School Voice Project への寄付に興味がある

※メディア関係者の皆様へ
すでに公開されている教職員アンケート結果やWEBメディアの記事の内容等は報道の際に使用いただいて構いません。その際は【出典:NPO法人School Voice Project 】クレジットを入れていただき、事後でも結構ですのでご一報ください。

以前、 School Voice Project で行った「#教員不足をなくそう 緊急アンケート」は、報道各社に取り上げられ(報道記事はこちら)、文部科学大臣も提言内容にコメントをする(記者会見録はこちら)など、大きな反響がありました。

教員不足を解消するため、School Voice Project では『もっと聞きたい、教員不足現場の“声”』という連続アンケートを実施しました。この記事では、全3回のアンケートのうち、第3回のアンケート結果についてまとめて紹介します。

第1回・第2回のアンケート結果はこちら


第3回 教員の退職を減らすために

第3回のテーマは「教員の退職を減らすために」。教員不足の解消のためには、教員の積極的な採用や臨時免許の発行などの方策があげられています。それと同時に、本来望んでいなかった退職を未然に防ぐことも大切です。教員が退職を考えるのはどのようなときなのか、現場の声を聞きました。

アンケートの概要

■対象  :全国の小〜高校年齢の児童生徒が通う一条校に勤務する教職員
■実施期間:2022年8月12日(金)〜2022年9月12日(金)
■実施方法:インターネット調査(実施時の設問はこちら
■回答数 :136件

アンケート結果

設問1 退職を考えた・相談された経験は?

Q1. 教員の退職について、以下のうち経験のある事柄をすべて選んでください。(複数選択可)

「同僚が辞めたことがある」と回答した人は最も多く、全体の71%でした。次いで多かったのが、「辞めようと思ったことがある」で、全体の63%。どの選択肢においても、校種による回答の大きな差は見られませんでした。「辞めたことがある」と回答したのは、男性では6%、女性では24%と、性別によるばらつきがあることがわかりました。

設問2 退職した・退職を考えた要因は?

Q2. 辞めた・辞めようと思った経験がある方に質問します。辞めた・辞めようと思った要因はなんですか。

働き方

拘束時間が長すぎて、家庭が崩壊するので、難しいと感じた。勤務時間についても定時付近でタイムカードを切らされるのが常態化しており、もし過労死したりうつ病になったりしたときに家族や自分を守れないと思ったから。【小学校/中学校・教員・辞めたことがある】

時短勤務が可能であれば、働きたかったのですが、叶いませんでした。担任をしていたときの生活時間を考えると、子どもを育てながらの復帰は考えられませんでした。頼れる祖父母が近くにいないので、夫と分担しても、私が短時間で働く以外、生活が成り立たないと判断しました。【小学校・職員・辞めたことがある】

授業に関わらない仕事でプライベートが押しつぶされて、何のために働いているか、何のために生きているのかが分からなくなったから。【小学校・教員・辞めようと思ったことがある】

心身の不調

心身の疲労。子どものためにとすべての業務において真面目になりすぎた。身体を壊し、やってられないと思った。やめて正解。休日はあっても1日。毎日の業務量も半端ではなく、肝心の授業づくりは帰宅してからやること。今考えればよくやっていたと思う。【中学校・教員・辞めたことがある】

あまりに業務量が多く、心身両方の面で長く続けていけるか心配になった。体調を崩しても休みづらいと感じたから。【小学校・教員・辞めようと思ったことがある】

異動先でうまくいかず、保護者対応に追われ、適応障害になり、休職を経験。人と接するのが怖くなり、辞めようと考えたことがある。【小学校・教員・辞めようと思ったことがある】

職場の人間関係

私学に勤務中、職場内人間関係が悪く、また、同期が非常に高圧的でこの同僚とずっと勤めるのは無理だと思った。【小学校/中学校・教員・辞めたことがある】

職員室内の人間関係に疲弊した。困難な部活動、校務分掌を一人で任され、激しい叱責を受け、周囲から救済を得られなかった。【中学校・教員・辞めようと思ったことがある】

仕事内容、待遇

自分のやりたい仕事と任されるしごとの乖離。【小学校・教員・辞めようと思ったことがある】

月の超過勤務時間が平均で100時間を越えることが続いたり、教育困難校で勤務していて給料と割に合わないと感じた。【中学校・教員・辞めようと思ったことがある】

あまりの仕事の大変さ(重い責任、身体的、精神的な負担)に対して、対価が支払われていないと感じたとき。【小学校・教員・辞めようと思ったことがある】

保護者や生徒との関係

保護者対応に精神的に追い込まれる。毎年のように出会い、本当につらい。授業が終わった後に対応すると、全く仕事ができない。【小学校・教員・辞めようと思ったことがある】

理不尽な保護者に対応するのにほとほと疲れたこと。本来の業務に支障が出てなんのために仕事をしているのかわからなくなった。【小学校・教員・辞めようと思ったことがある】

自身のキャリア

未来に希望が持てないなぁと思ったとき。【小学校・教員・辞めようと思ったことがある】

他の業種に転職した方が人間として成長できるのではないか?と考えたりした。【中学校・教員・辞めようと思ったことがある】

設問3 どんな制度・サポートがあるといい?

Q3. 同様の要因で退職する教員を減らすために、どのような制度やサポートがあるといいと思いますか。

働き方や仕事内容が要因の退職を減らすために

20人学級の実現。【高等学校・教員】

給特法の遵守、待遇の改善。【小学校・教員】

部活動を早急に地域移行する。【中学校・教員】

初任者については、小学校でも副担任として勤務できる人員配置。【小学校・校長】

持ちコマ数上限の適切な設定(LHRを含めて17)。【高等学校・教員】

全員担任制に切り替え、難題をチームで請け負うようにする。【中学校・教員】

初任のときは、いきなり担任ではなく、副担任としてつとめられる制度。(可能なら、助手的な立場でつとめられる制度)【中学校・教員】

校長など管理職に労務管理の研修を必修させる。業務過多の教師が出た場合、管理職になんらかのペナルティとなる制度を設定する。【中学校・教員】

専門性がなくてもできる作業(集金の計算、出席記録、草むしり、トイレ掃除、印刷、帳合など)を委託することができると良いと思う。【小学校・教員】

特別支援対応の人員を増員する。教科採用の教員は教科指導に専念し、学活・道徳・総合は専門の教員を当てる。無駄な仕事、特に、なくても済む書類作成(特別支援対応、教育委員会提出用)を減らす。【中学校・教員】

道徳や英語教育(小学校)、宿泊体験学習や運動会をやめる。実施するのなら、勤務時間内に収まるようにそのときの授業を午前中のみにし、職員がその準備ができるように環境を整える。【小学校・教員】

日常的に休憩の時間をしっかりと保障することだと思う。余裕がなくなればどんな人でも雑になり追い詰められていく。法定の休憩時間の確保と、退勤時間から次の業務時間までのインターバルを決めるべき。【小学校・教員】

次から次へと学校教育に求めるのではなく、「家庭」「社会」で行われるべき教育を今一度考えてほしい。子どもは学校だけで育つのではないのです。「家庭」「社会」で育っていくのです。「学校」は一部でしかない。【高等学校・教員】

次から次へと学校教育に求めるのではなく、「家庭」「社会」で行われるべき教育を今一度考えてほしい。子どもは学校だけで育つのではないのです。「家庭」「社会」で育っていくのです。「学校」は一部でしかない。【高等学校・教員】

心身の不調が要因の退職を減らすために

休みやすい環境づくり。部活動軽減。担任したいひとは担任をする、教科のみのひとも作る。そもそも今の学校の指導内容の再検討が必要だと思います【中学校・教員】

まずは、仕事量の調整です。例えば週のコマ数に上限をつけたりすることは重要だと思います。【小学校・教員】

やはり、教員の数を増やしたり、印刷、パソコン入力のボランティアを雇うなりして、事務量を減らして、本来の教材研究などに使う時間を増やすこと【高等学校・教員】

職場の人間関係が要因の退職を減らすために

少なくとも2ヶ月に1回ぐらいは管理職と面談する機会があればいいです。管理職が信用できない人物の場合もあるので、それ以外の人との対話の場もほしいです。とにかく孤立化させないような仕組みが必要です。【小学校・教員】

パワハラの相談を校長を介せずに教委に相談できる仕組み、および教員による管理職評価。【中学校・教員】

気軽に相談できるところがある。他の立場の人に専門家として助言してもらうこと。職場に余裕のある時間や人員が増えるといいと思う。【小学校・教員】

保護者や生徒との関係が要因の退職を減らすために

保護者対応は専門の窓口を設ける。【中学校・教員】

SSW(スクールソーシャルワーカー)、SC(スクールカウンセラー)の常駐。警察官OB(スクールポリス)、スクールロイヤーの巡回。【小学校・校長】

現在の学校の力では、地域や保護者の要求に抗うことはできない。授業は教師、児童同士のトラブルはカウンセラーとそれぞれの仕事の領域を明確化させ、教師を何でも屋にしないことが大切。【小学校・教員】

設問4 同僚の退職、どう防げた?

Q4. 同僚が辞めた・同僚から辞めたいと相談を受けた経験がある方に質問します。そのような教員を減らすために、どのような制度やサポートがあるといいと思いますか。

※設問3と同様の意見が多く集まりました。そのため、ここでは設問3の回答と内容が重複していない回答の一部をご紹介します。

管理職以外に第三者の相談機関があること。【高等学校・教員】

悩んでいる先生が、その思いを吐き出せる場所が必要。そして吐き出したことで、嫌な思いや、圧力がかからないようにもすべき。【小学校・教員】

対話を通して、お互いが理解し合う場。
実践の困り感を共有し、サポートする場。
教員がリフレッシュできる体制。【小学校・教員】

辞めたくなる要因はさまざまなので、ひたすら思いを聞いて寄り添う仲間が必要だなと思います。悩みの種が管理職であることも多いので、やはり「同僚」かと。組合など何かしらの組織に所属していることも、ある一つの心理的安心につながると思います。行政が行っているメンタルサポート政策ではなかなか本音が言えないので、公的にはしばらくお休みする制度の充実しかないのかな。ただお休みしたとしても、「あの時辞めなくてよかった」を引き出すには、やはり身近な仲間からの言葉かけが大事だと思います。【小学校・教員】

設問5 教員の退職、どう思う?

Q5. 教員の退職について、気になっていることや意見などありましたらお聞かせください。(任意)

これだけ問題点が明らかになってきているのだから、国、地方公共団体、教育委員会が本腰入れて改革しないとこの状況は変わらない。現場の職員はお互い助けてあげたいがその余裕がない。本当に切羽詰まっている。【中学校・教員】

離れる人が出てくる一方で、新たに民間などから参入できるような仕組みや、初任者がすぐに重いポジションにならないように、仕組みを作っていくことが望ましいと思う。【高等学校・教員】

自分も辞めてしまった人間なので、先生が足りなくて困っている話を聞くと、とても申し訳ない気持ちになります。教員としてのやりがいも十分分かっているからこそ、いつかまた戻るかもしれないという気持ちもあります。(教員に戻っている夢を見るほど)【小学校・教員】

早期退職者増、採用試験受験者減の背景にあるものは何か、現場の教員自身が自らの言葉で語り合う時間をもっと取れたらいいのにと思います。このフキダシに集まる声は現場の叫び。でもたぶん実際の職場では話題にしにくいのではないかと思います(時間もなくチャンスもなく)。上からの指示で動くばかりではなく、教職員自身が「教育」を語り合う場の設定を各学校や自治体でしてはどうかと思います。【小学校・教員】

まとめ

過去に教員を「辞めた」もしくは「辞めようと思った」経験がある人は99人で、回答者全体の73%でした。その理由として最も多く上がっていたのは、働き方や仕事内容。業務量の多さによって勤務時間が長くなり、プライベートの時間が確保できないことで、教員を続けることが難しいと感じることがあるようです。また、勤務時間の長さだけではなく、同僚や保護者との関わりに精神的なストレスを感じるケースも。教員の退職を減らすために必要なサポートとしては、教員や各専門の充実、業務の削減など、教員の負担を減らすことにつながる意見が多く集まりました。

2021年4月時点で、全国の公立学校で不足していると言われている教員数は2,558人です。一方で、定年退職者を除いた教員の離職者は約12,000人にのぼります。本来望んでいなかった退職を未然に防ぐことができれば、教員の欠員を減らすことにもつながるのではないでしょうか。

参考「「教師不足」に関する実態調査」(文科省,2022年1月28日公開,2022年10月6日参照)より
参考「令和元年度学校教員統計調査(確定値)の公表について」(文科省,2021年3月25日公開,2022年10月6日参照)より


▼ 自由記述の回答一覧は、以下よりダウンロードしてご覧ください。 ▼

アンケート資料ダウンロード 申し込みフォーム

* 記入必須項目

■お名前*
■メールアドレス*
■立場*
■データの使用用途*
■ご所属
■教職員アンケートサイトフキダシへの登録を希望する
※対象は教職員の方のみです。
■メガホンの運営団体School Voice Project への寄付に興味がある

※メディア関係者の皆様へ
すでに公開されている教職員アンケート結果やWEBメディアの記事の内容等は報道の際に使用いただいて構いません。その際は【出典:NPO法人School Voice Project 】クレジットを入れていただき、事後でも結構ですのでご一報ください。