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【教職員アンケート結果】「裁量的な時間」どんな用途に使いたい?

  • メガホン編集部

学習指導要領改訂に向けた特別部会の議論の中で、年間標準授業時数1,015時間の中に「裁量的な時間」を設けることが提案されました。

これは、学校ごとに教科等の授業時数を自由に削減し、そこで生まれた時間を他の活動に活用することができるというものです。その使い道の範囲は現在検討中ですが、児童生徒の学習支援や教員研修に使うことなどが提案されているほか、現場からも多様な用途が提案されています。

引用:教育課程企画特別部会における審議の状況について

もしこの「裁量的な時間」が導入されるとしたら、どのような使い道が望ましいと思いますか? 全国の先生方に聞いてみました。

アンケートの概要

■対象  :全国の小〜高校年齢の児童生徒が通う一条校に勤務する教職員
■実施期間:2025年7月4日(金)〜2025年8月25日(月)
■実施方法:インターネット調査(実施時の設問はこちら
■回答数 :56件

アンケート結果

設問1 「裁量的な時間」の導入に賛成? 反対?

Q1.あなたは「裁量的な時間」の導入に賛成ですか?

全体で見ると賛成が80%、反対が13%、その他が7%と、賛成多数の結果となりました。

校種別では小学校が賛成79%、中学校が81%といずれも高い割合を示し、回答者の少なかった高等学校、その他の校種についても「既に裁量的な時間をとっている」という回答を除く7名中7名が「賛成」と答えました。

賛成側の主な意見

自校の課題に応じて使えるようにしたい【小学校・教員】

用途を事前に決めて報告したりしないものなら賛成。適当になっている授業準備にあてたり、心配な生徒の面談に使ったり自由に使えるとよい【高等学校・教員】

基本的に賛成です。学校の特色を出しやすくなると思います。しかし、保護者や地域への「裁量的な時間」導入のしっかりした説明(文科省としての)と、教科の学習内容の削減、校長の権限の教科、「裁量的な時間」のための学校予算の確保、がセットであることが必須です。【小学校・教員】

現行の教科の学習の時数を圧縮して、生み出された時数を柔軟な教育課程の編成のために使う、ということ自体には賛成である。今後は、子どもたち一人一人に応じた教育課程が編成されていくことで、その子にあった学びがつくられることは望ましいことのように思う。課題として、それを担う教師が圧倒的に不足している点がある。現在は教育課程は場所に付随しているため、大まかに考えれば、教育課程=場所=教師の数となるが、教育課程を場所で区切ることをしなければ、教師の数はより必要となる。必要な制度の新設と制度の実施に必要な環境整備とが同時に達成されたのちに実施されなければ、形骸化してしまうか、教師の業務の天井知らずの高まりを招いしてしまうことが懸念点としてあるように思う。【小学校・教員】

自由な時間が必要です。休憩時間がなくて、体力的に辛いので、自由裁量時間がほしいです。教材研究をする時間を確保してください。持ち帰りでやるのは、精神的にしんどいです。それでもやらなくては、自信をもって子どもたちの前に立てないので、やらざるを得ません。【小学校・教員】

中学校現場ですが、生徒も先生も疲れていると感じます。興味のあることを探究する時間や先生たちが研修できる時間にあてたいです。【中学校・教員】

反対側の主な意見

裁量的な時間をあえて設けるより、標準授業時数を減らし、教師が教材研究をしたり、休憩をしたり、研修に取り組める時間にしてほしい。「裁量的な時間」を設けることで、保護者もなんらかの期待をするので、文科省は、余計な時間を増やすのではなく、仕事、標準授業時数を減らしてほしい。【小学校・教員】

もともとの学習、指導要領内容を削減しない限り、何をやっても無駄です。採用の時間等入れたら複雑になるだけで、メリットがありません。ゆとりと言われた指導要領が1番良かったです。【小学校・教員】

市町村で差がでて、オリジナル感を出そうとする教育長が負担を現場に増やすと思う【小学校・教員】

主体的な学びが重視されていることで、複雑な目標の活動が多いように感じるため、裁量的な時間の実施は反対です。【中学校・教員】

その他を選択した方の主な回答

既に裁量的な時間をとっている。【小学校・教員】

わからない。イメージがわかない【中等教育学校・教員】

使い方次第【小学校・校長】

設問2 「裁量的な時間」はどのくらいが適切?

Q2. 設問1で賛成またはその他と回答した方にお聞きします。
「裁量的な時間」の量についてお聞きします。裁量的な時間は、どのくらいの時数を充てるのが望ましいと思いますか。

「2割程度(1日1時間または週に1日程度)」を選んだ方が全体の41%と、最も多い結果となりました。

一方で、「1割程度(週に半日程度)」や「4割程度(1日2時間または週に2日程度)」という選択肢もそれぞれ全体の14%・18%となるなど、意見のばらつきが見られました。

校種による回答の大きな差は見られませんでした。

設問3 「裁量的な時間」、どんなことに利用したい?

Q3. 学校をよりよくするために、「裁量の時間」はどのように利用されるとよいと考えますか。次の項目の必要性を選択してください。

肯定的意見が最も多かったのは「教職員の授業準備の時間に充てる」の選択肢で、全体の92%が「とても必要」「どちらかというと必要」と回答しました。

次いで多かったのは「児童生徒の負担軽減のため早く帰宅させる」の84%、「教職員の休憩時間に充てる」の82%、「教職員の研修に充てる」と、いずれも肯定的意見が8割を越えました。

逆に否定的意見が最も多かったのは「部活動に充てる」の選択肢で、全体の94%が「あまり必要でない」「必要でない」と回答しました。次いで「学校行事に充てる」が71%、「その他課外活動(委員会活動など)に充てる」が66%と続きました。

校種別に見ると、前述の「教職員の授業準備の時間に充てる」などはどの校種でも共通して肯定的意見が多い一方で、いくつかの選択肢でばらつきが見られました。

たとえば「その他課外活動(委員会活動など)に充てる」については、中学校のみ肯定的意見が過半数を占めたほか、「時数の足りない教科の授業に充てる」に関しては、高校でのみ肯定的意見が過半数となりました。

同様に、「特定の児童生徒に対し補習や学習支援を行う」「保護者との面談に充てる」に関しても、高校での肯定的意見の割合が、その他の校種より有意に高い結果となりました。

設問4 

Q4. その他、「裁量的な時間」の是非や実施方法等について、あなたの考えを教えてください。

個別の用途に関する意見

教員の活動・ゆとりに関する意見

子供の学力向上のためには、教員が自発的に学習に取り組むことができるようなゆとりが必要である。【中学校・教員】

社会に受け入れられない考え方(学校は楽しすぎているみたいになりそう)だが、子どもを教育する教師の魅力向上を第一に考え、教師が勤務時間内に業務を終え、余暇で研鑽するという形を創り出したい。現場は、時間がなく自転車操業的に子どもたちと接している・授業を行っている。ゆとりをもち、しっかり準備したうえで子どもたちや保護者と関わるようにすることで、「教育」自体が魅力あるものにかわるはずである。【小学校・校長】

自由に業務ができる時間であるという認識なので、教材研究や採点、ノートやワークの点検などを始め、授業準備に充てたいと考える。また、そういう時間がまとまって必要だと思う。【中学校・教員】

働き方改革としても教員の余白を如何に確保するかがすべてでしょう。【小学校/中学校・校長】

教職員同士の対話の時間と教材研究や準備の時間が圧倒的に足りていないと思います。週の一割は職員同士の対話の時間、残りの一割は授業をデザインする時間にしたいです。これらの時間は現状削がれるか自宅で行っていますので。【小学校・教員】

あれば面談などに担任が使えてよいと思います。高校では体育祭や文化際の準備に時間が必要なので時間を割いてほしいです。また、短縮で生徒は帰宅し、先生が考査の事務作業、成績作業をする時間がほしいです。部活動と授業、校務分掌だけで精一杯で、考査を作る時間などありません。自宅で作っている方がほとんどではないでしょうか。【高等学校・教員】

生徒の活動・学習に関する意見

徹底反復などの前向きな学習機会の確保に充当したいと考えます。【小学校・教員】

学ぶ意欲のある生徒との発展的な学びの時間【中等教育学校・教員】

児童がやりたいと思うことをのびのびできる時間にしたい。今の時数だと学習することがガチガチすぎて、本当に子どもが気になったり興味を持ったりしたことに時間を取ってあげられない。指導要領上の学習内容もしっかり減らして、余裕をもって裁量的な時間を取り入れられる時数にしてほしい。そうでないと、教科書の内容が終わり切らない教科の補充で終わってしまうと思う。【小学校・教員】

現行の学習内容・指導要領の見直しに関する意見

既に学校行事や校外学習との兼ね合いで担任の裁量で融通をきかせている時間をとっている。そうでもしないと現行の指導要領の内容と教科書の内容が多すぎて未履修の内容が出てしまうからだ。裁量的な時間をとる以前にカリキュラムオーバーロードを改善しないと意味がないと思う。【小学校・教員】

とにかく、指導の範囲を見直し、現行の内容を削減する。特に小学校3年までは基礎基本の徹底。四年からは、学力別にクラス編成をし、そのクラスに応じたカリキュラムをもっと自由で探究的な学習に当てたい【小学校・教員】

時間を増やすのでなく、教科の学習内容を減らして、その分自由裁量の時間にあててほしい。子どもたちが自分たちで使える(考え、計画、実行できる)時間を増やしてほしい。【小学校・教員】

その他の用途に関する意見

不登校の対応を協議したり、多様な生徒のニーズに応えるための研究、もしくは授業に当てるべきです【中等教育学校・教員】

探究の時間にあてる【小学校・教員】

勤務時間内に余白が生まれ、その時必要なことに使えるのが本当に嬉しいし、有難い!
・法定研修や職員研究とは異なる教員が課題だと感じ学びたいと思っている研修にあてたり、平日に他校の授業実践を見学しに行くことができる
・連絡事項の情報伝達で終わっていた学年や分掌の会議を対話の時間を設けて、本質的なねらいの確認などが行える
・教科内での授業研究や研究協議をし、授業内容や方針について同僚と意見交換ができる
・SCやSSWとの支援生徒の振り返りをゆっくりできたり、保護者も加えた相談の時間を取ることができる【高等学校・教員】

実施されるなら、私が兼ねてより考えていた教育過程を取り入れたいと思います。子どもたちの学習能力と運動能力の低下に歯止めをかけるための教育過程です。その内容は朝の会後は、全校で体育又は運動の時間を取り入れることで、それ以降の時間の学習効果や記憶力、集中力、創造力などに貢献できるというカリキュラムです。【中学校・教員】

その他の総合的な意見

より実態に合わせて使えればいいと思うし、子供の意見表明権を大事にしたい。【小学校・教員】

子どもも先生も、どちらも幸せに過ごすための時間になったら良いと思います。【小学校・教員】

各学校の実践の蓄積から、裁量的な時間は流動的に活用されるべきだと思う。現状「裁量的な時間」について、教職員同士で話す機会もない。国の施策等を理解し、各校で趣旨を理解した上で、内容を決定できるように教育委員会が旗振り役として機能すべきだと思う。【特別支援学校・教員】

時間の使い方について、むろん教員の働き方の軽減に向けて実施することに反対ではないが、そこだけになってはいけない。その時間が子どもたちの成長発達に寄与するものであることが大前提であると考えます。その部分が抜け落ちてしまうことがあっては本末転倒ではないでしょうか?なんのために学校は存在するのか?確かに教員の働き方は異常な部分もあるけれど、子どもたちの学び方も今となっては異常であると思う部分もある。そこをアップデートすることも見落としてはいけないと思っています。【小学校・教員】

時間割(特に道徳や総合、学活等)の大幅な調整が必要になると思います。勤務時間が限られている非常勤・時短の先生、SSSさん、SCさん、用務員さん、支援員さん、ICTサポーターさん、STさんなど様々な職種の方々も交えて、議論を深め、学校全体の負担過重にならぬよう、教育課程検討会議などを通じて決定していく必要があります。教育行政の方々にも積極的に現場に入って頂き、視察ではなく、現状把握を目的に本気で長時間労働と負担荷重を見直す好機と捉えて取り組んで頂きたいです。また、市町村教育委員会や都道府県教育委員会は、通知文を出すだけでなく、行政と現場での取り組みに多忙化の拍車をかけぬよう、大幅な負担減と超過削減につながる政策や施策を各部会を通じて打ち出し、自治体間・学校間・校種間格差を生まぬよう、全国を上げて動き出して頂きたいです。教育界が若い世代にとって希望が見える、特定の誰かに頼り切らない、任せ切らない、組織として個人を守ることができる、持続可能な業界に生まれ変わる第一歩になることを、強く望むばかりです。【中学校・教員】

まとめ

「裁量的な時間」の導入に関しては、全体の80%の方が賛成、13%が反対、7%がその他と、賛成多数の結果となりました。校種別に見ると小学校の先生方の79%が賛成、中学校が81%、高等学校・その他の校種が88%と、いずれも高い割合を示しました。

「裁量的な時間」の理想的な割合については、「2割程度(1日1時間または週に1日程度)」を選んだ方が全体の41%と、最も多い結果となりました。一方で、「1割程度(週に半日程度)」や「4割程度(1日2時間または週に2日程度)」など他の選択肢についても全体の1割以上の方が選択しており、意見のばらつきが見られました。

「裁量的な時間」をどんなことに利用したいかという問いについては、「教職員の授業準備の時間に充てる」「児童生徒の負担軽減のため早く帰宅させる」「教職員の休憩時間に充てる」が8割以上の肯定的意見を集めました。逆に「部活動に充てる」「学校行事に充てる」は、否定的意見の多い結果になったほか、「時数の足りない教科の授業に充てる」「その他課外活動(委員会活動など)に充てる」など一部の校種のみで支持される選択肢も見られました。

全体を通して見ると、児童生徒や教員の負担軽減につながる選択肢は肯定的意見を、児童生徒の活動を従来通りとする、または増やしかねない選択肢は否定的意見を多く集める傾向が見られました。

「裁量的な時間」の使いみちや学習指導要領について、多くの意見が多く寄せられた今回のアンケート。
目立ったのは「児童生徒にも教員にも、ゆとりが必要」という声です。様々な活動に充てることができる「裁量的な時間」が、現場の先生方の生活や、児童生徒の学びを豊かにするものにつながることを願ってやみません。

今後もSchool Voice Project は、学校の様々な実態や課題について調査し、伝えてまいります。


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