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特別支援教育推進委員会から、総合支援委員会へ。困難を抱える生徒をチームで支える体制づくりの軌跡

  • 建石尚子

社会科教員と総合支援コーディネーターを兼務するのは、兵庫県立明石西高校の東耕三(ひがし・こうぞう)さん。東さんは、特別支援学校での勤務の他、兵庫県在日外国人教育研究協議会で事務局を勤めてきました。それらの経験を活かし、同校にて、障害や疾患のある生徒のみが対象であった支援体制から、外国につながりのある生徒やさまざまな困難を抱える生徒も支援の対象となるよう、仕組みを大きく変えていきました。具体的にどのように仕組みを変えていったのでしょうか。東さんに聞きました。

※本記事は取材を行った2023年12月時点の内容を記載しています。

※兵庫県在日外国人教育研究協議会:真に国際的に開かれた多文化共生社会になるよう、保育所・幼稚園・学校での在日外国人教育と多文化共生教育を推進するネットワーク作りを目指す団体(参考:同協議会HP

障害や疾患のある生徒に限らず支援する仕組みへ

—— 総合支援コーディネーターとして、東さんはどのようなことをされているのでしょうか?

私が明石西高校に着任した当初の名称は「総合支援コーディネーター」ではなく、「特別支援教育コーディネーター」でした。主な役割は障害や疾患のある生徒のサポートです。もともと教職員間で行う会議も特別支援教育推進委員会だったのですが、総合支援委員会へと改称してからはコーディネーターの名称も変更することになりました。「総合支援コーディネーター」に変わってからは、障害や疾患のある生徒だけではなく、外国につながりのある生徒やさまざまな困難を抱える生徒などのサポートをするようになりました。

—— なぜ特別支援教育推進委員会から総合支援委員会に改称したのでしょう?

私は以前から外国につながりのある生徒をエンパワメントする団体「兵庫県在日外国人教育研究協議会」の事務局をしていて、障害や疾患がある生徒以外にも困難を抱えている生徒がいる現状を見てきました。それもあって、「高校では外国につながりのある生徒や家庭へのサポートはされているのだろうか?」という意識があったんです。

また、教員と生徒の偶然の巡り合わせによって、生徒にとってはサポートされたりされなかったりする現状があるのではないかと感じていました。例えば、あるクラスに外国につながりのある生徒がいた場合、担任や学年の教員に適切な知識や経験があればサポートができますが、それがない場合は双方がしんどい思いをします。専門的な知識や経験が必要な領域だからこそ、学校としてのノウハウを蓄積していって、チームでサポートしていくことが必要だと思いました。

そんな思いがあり、障害や疾患にかかわらず困難を抱える生徒や家庭をサポートできるよう、総合支援委員会へと変えていきました。

まずは、特別支援の認知拡大を目指した

—— どのようにサポート体制を変えていったのでしょうか?

私が特別支援教育コーディネーターの役割を担うことになった5年前は、高校の中で特別支援という考え方さえそこまで認知されていませんでした。それは、私が勤めていた高校に限ったことではないと思います。当時は障害や疾患のある生徒をサポートするための話し合いをする特別支援教育推進委員会が年1回開催されていたのですが、それもあまり機能していない状態でした。なので、まずは特別支援教育推進委員会を年4回に増やしたり、特別支援についてのお便りを年4回発行したりしながら、特別支援の認知を広げることからスタートしました。

それから2年後の年度末に、支援の対象となる生徒の拡大とともに、名称も変える提案をしました。無事に提案は承認され、2022年度から「特別支援教育推進委員会」は「総合支援委員会」に、「特別支援教育コーディネーター」は「総合支援コーディネーター」に改称しました。

—— 東さんの役割としてはどのような変化がありましたか?

それまではあくまで障害や疾患のある生徒にのみアプローチするかたちでしたが、名称が変わってからは、気になる生徒について障害や疾患の有無に関係なく担任の先生から話を聞けるようになりました。外国につながりのある生徒は学校の中ではマイノリティなので、なかなか自分の悩みを共有する場がありません。そのような生徒を在日外国人交流会に引率することもできるようになりました。

入学前から相談できる場所をつくる

—— 生徒だけではなく、保護者のサポートをすることもあるのでしょうか?

はい、ありますね。生徒が入学する前には「高校生活サポートカード」というアンケートを配布しています。これは、大阪府が発行している「高校生活支援カード」をアレンジしたもので、高校生活がスタートするにあたり、不安なことやサポートが必要なことを聞く内容になっています。その中には、国籍や在留資格についての質問も含まれています。

このアンケートの回答と、学年の先生がそれぞれの生徒の出身中学校を訪問して聞いた情報をもとに、要支援の生徒についての情報交換会をします。支援が必要な生徒については、要支援生徒情報ファイルを作って学校の教職員全員が誰でもすぐに見れる状態にしています。さらに、必要があれば個別の教育支援計画を作っていきます。

希望するご家庭とは入学前に面談もしますね。そうすることで、障害や疾患のある生徒だけではなく、外国とつながりのある生徒や登校に対する不安感がある生徒へのサポートもしやすくなると感じています。

※ 高校生活支援カード:高校が生徒の状況や保護者のニーズを把握し、中学校、保護者、生徒の想いを受け止め、高校卒業後の社会的自立に向けて学校生活を送れるよう適切な指導・支援の充実につなげるためのカード(参考:大阪府HP資料

※大阪府のHPより借用

—— 具体的に、どのようなサポートをしていくのでしょうか?

例えば、外国につながりのある生徒の家庭が、経済的に厳しい状況であるとわかったことがあります。一定の条件を満たせば高校の学費が実質無料になる就学支援金を受け取れるのですが、その家庭では受け取っていなかったんです。理由は、生徒の保護者が日本語がわからず、就学支援金を受け取るための書類を出せていなかったからでした。それがわかってから、一緒に書類を作って、無事に就学支援金を受け取れたことがあります。その過程で通訳の方に来てもらうこともしました。

担任の先生を支え、チームで生徒の支援を

—— 先生方との関わりで意識していることはありますか?

担任の先生に動いてもらおうとするのではなく、こちらが動くことは大切にしています。この仕組みをつくった動機の一つは、たまたまサポートが必要な生徒を受け持った担任や学年の先生に負担が偏ってしまうことに対してなんとかしないといけないという気持ちからだったので。「こういう風にしてください」ではなく、「こういうサポートができますが、どうしましょうか?」と、下から支えるような気持ちでやっています。そうすると、自然と先生方も必要なときに相談してくださいます。

—— 今後、力を入れていきたいことはありますか?

さまざまな困難を抱える生徒がいる中で、時には専門的なサポートが必要なこともあります。その中で、学校ができることは本当に限られています。ただ、そうだとしても学校で支援の仕組みをつくっていくことは、障害や疾患、さまざまなバックグラウンドがある人が生きやすい社会につながっていくと思っています。

今は、私自身が特別支援学校での勤務経験があるからできる部分もあるので、次の方に引き継いだとしても、学校がチームとして生徒や保護者を支援できるような仕組みをつくっていきたいと思っています。

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建石尚子

1988年生まれ。中高一貫校で5年間の教員生活を経て、株式会社LITALICOに入社。発達支援に携わった後、2021年1月に独立。現在は教育に関わる人や場を中心に取材や執筆をしている。「メガホン」の運営団体であるNPO法人School Voice Project 理事でもある。

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