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Uターンで働き方を見直した中学校教員。学校を飛び越えた“出会い”を大切にするわけ

  • 建石尚子

学校の中だけにとどまらず、地域や社会で活躍する人との関わりから生徒の学びを広げる実践が全国で広がっています。

島根県出雲市出身の吉田理沙さんは、10年間、大阪の公立中学校に勤めたのちに出雲市へUターン。2つの地域の中学生との関わりで、「学校外の大人との出会いの必要性」や「教員の働き方」について考えるようになったと言います。昨年度は社会教育士の称号も取得したという吉田さんに、現在取り組んでいることと、働き方の変化について聞きました。

まずは、“知ること”から。学校の外にいる人と生徒をつなぐ

—— 吉田さんは、6年ほど前に大阪から島根へUターンをされたのですよね。どのようなきっかけがあったのでしょうか?

大阪の公立中学校に勤めていた頃は、毎日20時を過ぎて帰宅することが当たり前でしたし、土日は基本的に部活動の指導で出勤していました。生徒や保護者と向き合う時間も大切にしたいと思っていたので、「自分を犠牲にしてでも人のために働く」という考え方が強くなっていたんです。あまりにも忙しく、「自分の働き方を変えたい」と思ったのが島根県出雲市へのUターンを決めた理由の一つです。

—— 実際に出雲市の中学校で働き始めて、変化したことはありますか?

最初に感じたのは、大阪と島根の生徒の違いでした。すべての生徒に当てはまるわけではないのですが、大阪の生徒と比べて、島根の生徒は大人になることをネガティブに捉えているように見えました。生徒たちは「学校はつまらない場所」「受験は嫌なもの」と感じていることが伝わってきたんです。

考えてみると、大阪の方が住宅やお店も多く身近なところで人とつながる機会が多くありました。田舎だと人と出会う機会は少ないなと。楽しそうに働いている人との出会いがなく、知らないことが多いから将来への希望が持てないのかもしれないなと思いました。それで、学校の外にいる人と生徒たちが出会う機会をつくりたいと思うようになりました。

—— 具体的に、どのようなことをしたのでしょうか。

これまで修学旅行は関西方面へ行っていたのですが、昨年度はコロナ禍で遠方に行くことができず、比較的近くの地域へ行くことになりました。遠くに行けなくなってしまったことは残念ではあるのですが、生徒たちに地元に目を向けてもらう良い機会にしたいなと捉え直すことにしたんです。それで、地元のことを調べて別の地域の中学生に向けて発表してもらうことにしました。地元とは言え、生徒たちは知らないことが多かったようで、誰かに伝えることをゴールにしたことで意欲的に取り組んでくれたなと思います。

また、キャリア教育の一環として、本校を卒業した高校生に学校生活について話をしてもらいました。中学生にとって、高校生は年が近くて身近ではあるけれど、憧れの対象のような存在です。教員があれこれ話すよりも、高校生たちの話を聞くことでより将来のことを考えやすくなったのではないかなと思います。他にも、現在起業されている方にキャリアや仕事についてお話ししてもらう機会もつくりました。

「何のために?」を明確にし、活動を見直す

—— 新たな実践をする際に、大切にしていることはありますか?

これまで学校で行われてきた教育活動の中にも、学校の外にいる人と出会う機会はあったと思います。ただ、「とりあえず去年と同じことをやる」という思考になってしまうと、その活動をする目的を見失ってしまいます。正直なところ、修学旅行や職場体験、総合的な学習の時間は、目的が曖昧になっている部分もありました。なので、改めて「何のためにやるのか?」を問い直すようにしています。

—— 職場体験も何か変えたことがあるのでしょうか。

体験先を決めるまでのプロセスを変えました。今までは興味のある業種を選んでもらうだけだったのですが、今年からは「自分がなぜその職場にいきたいのか?」「どのような体験をしたいのか?」など、自己PRを一人ひとりに書いてもらいました。全員が自分の第1希望の職場に行けるわけではないのですが、ただ選ぶだけではなくその理由を言語化することで、より前向きに職場体験に取り組む生徒が増えたように思います。

(PHOTO by MINATO SHINOHARA)

—— 学校の外の大人には、生徒たちにどのように関わってもらいたいですか?

子ども扱いせず、1人の人として真正面からぶつかってもらえたら嬉しいなと思います。中学生であっても、同じ地域に住んでいる住人の1人です。関わっていく中で、きっと良い面も悪い面も見えてくると思うので、感じたことをそのまま伝えてほしいですね。先生や親だけではなく、地域みんなで子どもたちの成長を支えていけると良いのではないかなと思います。

1人の大人として、楽しく生きている姿を見せたい

—— さまざまな実践をしていく中で、ご自身にはどのような変化がありましたか?

学校と地域や社会をつなぐ教育をするために、私自身もいろんな人と出会ったり、いろんな場所に出かけることが増えました。それをしているうちに、自分の世界がどんどん広がっていくことが楽しくなってしまって。「出雲市内にどんな人がいるのか?」「どんな場所があるのか?」など興味が湧いてきて、気になる人がいたら直接ご連絡して会いにいくこともあります。

最近は、高校生や大学生が集まるコミュニティスペースや不登校の生徒が通うフリースクールなどともつながりができました。学校以外にも、地域には子どもたちの学びにつながる場所がたくさんあるんですよね。まずは私がいろんな方とつながって、それを生徒たちに還元していきたいなと思っています。大人が楽しそうに働いてたら、生徒たちは大人になることや働くことに希望が持てますよね。

—— 学校外の人とのつながりを通して、生徒たちにはどのようなことを伝えたいですか?

まずは、島根や自分たちが住んでいる地域を好きになってほしいです。私自身、大人になるまで島根は好きではありませんでした。交通の便は悪いし、何もないし、つまらない場所だと思っていた。でも離れてみたら、「島根って意外といいところだったんだ」と気づきました。楽しんで働いている大人や、地域を元気にしようと奮闘している大人がいる。生徒たちには、そんな大人たちがいることを知ってほしいなと。

そして、「働くって面白そう」とか「あんな人になりたい」とか、何か少しでも将来に対する希望を持ってほしいと思っています。

—— 吉田さん、ありがとうございました!

(PHOTO by MINATO SHINOHARA)

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建石尚子

1988年生まれ。中高一貫校で5年間の教員生活を経て、株式会社LITALICOに入社。発達支援に携わった後、2021年1月に独立。現在は教育に関わる人や場を中心に取材や執筆をしている。「メガホン」の運営団体であるNPO法人School Voice Project 理事でもある。

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