学校をもっとよくするWebメディア

メガホン – School Voice Project

学校をもっとよくするWebメディア

【教職員アンケート結果】プールの水道代の賠償請求、あり? なし?

  • メガホン編集部

2023年5月、川崎市内の小学校で教員がプールの水を誤って流し続けてしまう出来事がありました。その後、川崎市は担当した教員と校長に多額の損害賠償を請求。この一連の出来事が話題になっています。

同様の出来事は他の自治体でも起こっており、今後も起きる可能性は否定できません。今回の件に対する意見と、勤務校や自治体のプール管理の現状について、全国の教職員の方に聞きました。

参考記事:プールの水流出 95万円弁償 教員の責任はどこまで?(NHK)

アンケートの概要

■対象  :全国の小〜高校年齢の児童生徒が通う一条校に勤務する教職員
■実施期間:2023年9月8日(金)〜2023年10月10日(火)
■実施方法:インターネット調査(実施時の設問はこちら
■回答数 :114件

アンケート結果

設問1 プール水道代の賠償請求についてどう思う?

Q1. 今回の賠償請求についてあなたの意見を教えてください。

「おかしい・理不尽である」を選択した人の主な意見

ヒューマンエラーが起こらないようにシステムを構築するのが自治体の役割なのに、その責任を放棄して個人の職員に責任を転嫁している。非常におかしい事案。【中学校・教員】

どこかが賠償せねばならないのかもしれないが、額も大きく、チェック体制の課題もあるため、一教員に負わせるべきではないと思う。【義務教育学校・教頭】

本来、教師が担うべき業務ではない。有資格者に業務委託することやヒューマンエラーを補うシステムを構築する責任が市や教育委員会にはあるはず。業務のマニュアルもなく、本来の業務以上のことを担わされていること自体が問題。今回は賠償ではなく、市の水道局から請求しなければいい。【小学校・教員】

そのような賠償を伴う責任ある仕事ならば、それなりの対策をたてるべきだったのであり、最終責任は管理職や教育委員会にある。同じ給料体系なのに、その仕事だけ賠償責任を負うようならば、誰もやりたくない。教育活動が仕事のはずなのに、施設の管理責任を負わされるのでは、教員のなり手がますます減る。【高等学校・教員】

「どちらかというとおかしい・理不尽である」を選択した人の主な意見

気の緩みであるという批判はその通りだと思う。一方で、ある程度の頻度で起こるヒューマンエラーでもあるのに、現場・委員会が対策を怠ってきたことも確か。止まることなく次々にタスクをこなさなくてはならないという仕事内容を考えると、何らかの対策を取るべきです。一貫してプール管理を担う人員が必要だと思う。【小学校・教員】

税金で運営されている学校の性質を考えると、このような事態になっての手続きは法律、決まりに則って行われており、やむを得ないと思う。が、毎年同じミスが全国で起きているのに、施設自体に工夫をして再発防止をしていないところがおかしい。今、お風呂だって入れたら音でしらせてくれる。税金を大事に使うべき、再発防止をするなら、教員に「頑張らせる」のではなく、ミスが起こりにくいシステムを構築すべき。何でもかんでも教員に押し付けないで欲しい。センサーを使っての管理など専門の業界団体に協力をお願いするなど対策して欲しい。【小学校・教員】

自治体がミスを補填すると税金で埋めなければならないから個人で賠償させる。というのは一理あるが、労働者として民間と同じ基準で対応してほしい。報道を見ると水の出し入れの誤操作と簡単に記載されるが、実際の設備を見るととても複雑に菅が組まれていて、バルブが複数ありとても簡単に操作することができないものもある。学校でマニュアルを整えていない責任はあるが、設備自体を古いものは改修してほしい。【小学校・事務職員】

「どちらかというと仕方ない・妥当である」を選択した人の主な意見

理不尽なところはあるとは思う。個人への責任を押しつけるのは如何と思う。ただ、5日間?という期間を考えるとそこに至るまで誰も気付かなかったのかという管理責任は問われても仕方ない部分もある。自分も体育主任を長い間務めてきたが、水管理には細心の注意を払ってきた。そういう指導助言がなされなかったのは問題ではないでしょうか。【小学校・副校長】

「仕方ない・妥当である」を選択した人の主な意見

個の過失である出来事だと判断したから。請求は、本来かかった水道代の半額であるということでもあり、金額は水を出しっ放しにしてあった期間が長った分、高額だが、個の過失のため払う義務はあると思う。【小学校/中学校・教員】

「プールの水を“誤って”流し続けた」ので、過失がある人が責任を持ち支払うべき。過失に対して税金を補填できない。【高等学校・教員】

「わからない」を選択した人の主な意見

この先生の勤務状況が分からないからです。毎日遅くまで働いておられたり、ご家庭が厳しい状況であったり、その日クラスでもめ事があったりいろんな状況が考えられるので、起きた事象だけでは判断できません。【小学校・教員】

金額が大きいこともあり、学校側だけに責任を追及することに違和感を感じます。誰もこんなことを起こしたい訳ではないとも思います。しかし、こういったプールでの事案は今後も出てきそうな気もしています。そうならないためにも、委託を考えるなど新たな方法を検討していただきたいと思います。【小学校・教員】

「おかしい・理不尽である」と回答した人は全体の71%にのぼり、「どちらかというとおかしい・理不尽である」と回答した人は21%でした。多くの教員が、担当教員や校長に対して賠償責任を負わせることに反対意見を持っていることがわかります。体育を担当している教員(38人)に絞って回答を見ると、「おかしい・理不尽である」と回答したのは60%。「どちらかというとおかしい・理不尽である」と回答したのは26%でした。

「おかしい・理不尽である」と考える理由としては、「プールの管理体制に課題があったのではないか」「最終責任は管理職や教育委員会にある」などがありました。一方で、「仕方ない・妥当である」と考える理由としては、「管理責任は問われても仕方ない」「過失に対して税金を補填できない」などがありました。

設問2 今後採られるべき対策は?

Q2. 今回のようなケースを防ぐために今後どのような策が採られるべきだと考えますか? 最も望ましいと思うものを1つお選びください。

「教員が管理する前提で、ミスを防ぐ体制構築や研修を行う」と回答したのは、全体の5%で、その他はすべて約20〜30%の人が選択しており、回答にばらつきが見られました。体育科教員に絞って見ると、「教員が管理する前提で、ミスを防ぐ体制構築や研修を行う」と回答したのは0人。同様に回答のばらつきはあるものの、特に多かったのは「公営や民間の屋内プールの活用を進める」で34%でした。

「その他」を選択した人の主な意見

人員が少なく、分掌を一人でもつことも珍しくない状況に無理がある。分掌を複数でもてるだけの人員が必要だ。【小学校・教員】

教員が管理する前提で、最終的な責任は管理職がとる。【小学校・教員】

教員の人数を増やして、ダブルチェックなどを行える体制を整える。【高等学校・教員】

水を出した人が確認すればよい。【高等学校・教員】

民間に委託できる都市部はいいけれど、地方では民間委託は厳しいので、そちらは自動装置が必要。【小学校・教員】

設問3 勤務校のプール管理の体制やシステムは?

Q3. 勤務している学校や自治体における、プール管理の体制やシステムについて教えてください。よい面・悪い面を含めてお答えください。(任意)

主に体育科の教員が管理している

体育主任が中心となって管理しています。どこの学校も、管理職に体育主任経験者が多く、「昔は俺もやっていたよ」と言われてしまい、体制を変えることは難しい状況。夏休み中は日直が水質管理を行っていますが、体育主任も休み返上でお盆期間等に見回っています。夏休み中のプール開放は行われておらず、休み明けの授業のために水質維持をしています。【小学校・教員】

体育主任を中心に校内分掌の体育部で運営する。各学年や島ごとに水栓の開け閉め、水位の調整、掃除用ロボットの投入、施錠などを輪番で行うが、土日や夏休み等の管理は体育主任、体育部が負担することが多い。【小学校/義務教育学校・教員】

体育部のプール担当が主となってやっています。大体若手の男性教員が多いです。設備が古いので、ちゃんと稼働しているかこまめにチェックしなければならず、かなり負担になっていると傍目から見ても思います。【小学校・教員】

複数の教員で分担して管理している

小規模校のため、限られた期間をほぼ全職員管理体制で見ている感じ。清掃はPTAも巻き込んで。使用の割に雑多な業務は辛いが、周囲にプール施設はないため、委託はできない。【義務教育学校・教頭】

基本は複数の先生で管理するように体育主任が呼びかけています。最新のプールでないので、どうしても人の手での作業、管理が必要なので、やり方を広めています。以前の学校はプールが古く、濾過機の洗浄、逆洗、ヘアーキャッチャーの掃除をほぼ毎日必要だったので、作業ができる人を増やすために声をかけましたが、協力してくれるのは少数でした。【小学校・教員】

​​プール当番の学年が、朝と放課後にプールの管理をチェックして日誌に書いて体育主任に出している。【小学校・教員】

その週の日直担当の学年が管理している。3クラスであれば、2〜3人の担任が水温を測ったり水を止めたりしていて、複数で行うことでミスを防ぐことができている。【小学校/中学校・教員】

貯水は体育担当で、毎日の水質は基本的に教員が交代で管理。ただでさえ時間がない朝に水質を確認したり、塩素を投入するのはきつい。また、年に数回しかない業務なので、しっかり管理方法がわからないままやらされている。【小学校・教員】

設備の老朽化が進んでおり、管理のしづらさがある

プールの管理というのはボタンひとつで済むものではなく、老朽化した施設を大変な作業で止水するものもある。古いところも多くコンピューター化されているわけでもなく、手間もかり人的なミスが起こるのも仕方がない構造である。【小学校・教員】

設備が古い、または、操作が難解。明らかに、教員を行う者の専門性とは異なる専門性が求められるものが多い。今年度は、外部に日々の管理をお願いしたり、機器の修繕や操作を行なってもらったりすることができ、負担は少なかった。【小学校・教員】

従来の古い体制のままで何ら変わっていないため、良さが見つからない。毎年水漏れなどの施設の補修をしているが、一向に改善しない。施設的な限界がきているが、作り直しなどの改善の話は何もない。今の子たちは虫の死骸の浮く屋外プールに拒否感を持つ事も少なくなく、現状のシステム・施設は限界を超えているのではないかと思う。【小学校・教員】

施設の老朽化がみられ、濾過器の運転が止まり、さらに異常な暑さのため藻が発生し、清掃しなおし、水の入れ替えを行った。プールサイドやプールの底のコンクリート部の亀裂や破損も多く、パテ等で修繕はしているがケガの心配がある。【小学校・教員】

民間施設を利用しているため、学校での管理はしていない

民間の屋内プールを借りているが、水のことについて一切心配することがないので気楽。ただ、相手がいることなので、自由に使用できないのが難点。【小学校・教員】

外部のプールで外部指導者による水泳学習を行う。校内のプール管理がなくなったのはすごく良い。ただ移動に時間がかかる。【小学校・教員】

うちは、本当にありがたく公立の市民プールを学校がお借りする形(併設しています)なので水質管理は全て外部委託です。控えめに言って最高です!授業の際も教員の他に監視員さんがついていてくださるし、室内なので中止にもならず予定が組みやすいです。唯一、強いて言えば急な予定変更はできませんが、それは水泳第一で前もって予定を組めばいいだけ。メリットの方が多いのでこのままがいいです。【小学校・教員】

まとめ

今回の賠償請求に対して、「おかしい・理不尽である」「どちらかというとおかしい・理不尽である」と回答した人は、全体の90%以上にのぼりました。その理由としてあがっていたのは、「プールの管理体制に課題があったのではないか」「最終責任は管理職や教育委員会にある」など。一方で、少数ではありましたが「仕方ない・妥当である」「どちらかというと仕方ない・妥当である」という意見もありました。理由としては、「管理責任は問われても仕方ない」「過失に対して税金を補填できない」などがありました。

改善策については、「教員以外の責任者を置く」「自動装置の導入」「公営や民間プールの活用」「水泳授業の廃止や民間委託」など、それぞれ約20〜30%の人が選択しており、回答にばらつきが見られました。

勤務校のプール管理の現状としては、体育科の教員が中心となって行っているという回答が多く集まりました。中には、学年ごとや日直が担当したりと、管理の負担が体育科の教員に偏らないような工夫をしている学校もあるようです。懸念としては、主に体育科教員への負担が大きいことや、管理の操作が覚えにくいこと、設備の老朽化による管理のしづらさなどがあがっていました。

勤務時間前や休み時間にも操作する必要があり、業務の負担にもなっていることが伺えます。教員の働き方改革の観点においても、プールの管理体制について改めて見直していく必要があるのではないでしょうか。


▼ 自由記述の回答一覧は、以下よりダウンロードしてご覧ください。 ▼

アンケート資料ダウンロード 申し込みフォーム

* 記入必須項目

■お名前*
■メールアドレス*
■立場*
■データの使用用途*
■ご所属
■教職員アンケートサイトフキダシへの登録を希望する
※対象は教職員の方のみです。
■メガホンの運営団体School Voice Project への寄付に興味がある

教職員WEBアンケートサイト

メガホンの記事は、教職員の方からの声をもとに制作しています。
教職員の方は、ぜひ声を聞かせてください。
教職員WEBアンケートサイト「フキダシ」について詳しく知りたい方はこちら

メガホンの記事は、
教職員の方からの声をもとに制作しています。
教職員の方は、ぜひ声を聞かせてください。
教職員WEBアンケートサイト
「フキダシ」について詳しく知りたい方はこちら

メガホン編集部

NPO法人School Voice Project のメンバーが、プロやアマチュアのライターの方の力を借りながら、学校をもっとよくするためのさまざまな情報をお届けしていきます。 目指しているのは、「教職員が共感でき、元気になれるメディア」「学校の外の人が学校を応援したくなるメディア」です。

関連記事・コンテンツ

記事

アンケートのお願い

記事の続きをお読みいただくには簡単なアンケートにお答えください。

※サイト運営の参考にさせていただきます。
※一度ご回答いただくと再表示されません。

ご職業やお立場をお選びください。

あなたの年代をお選びください。