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“4つのスイッチ”で、「正しく」疑う力を。小5の国語教材でメディアリテラシーを学ぶ

  • 建石尚子

多くの人がSNSを通じて情報の発信や受信ができるようになった今、良い側面もあれば事実とは異なる情報が拡散され、さまざまなトラブルを招くことも少なくありません。

杉戸町立西小学校で5年生の担任を務める上山諒さんは、国語の授業で扱う単元「想像力のスイッチを入れよう」で紹介されている「4つのスイッチ」の視点に着目して、メディアリテラシーの大切さを子どもたちに伝えました。

「4つのスイッチ」とは、白鴎大学特任教授の下村健一さんが提唱する、情報を見極める際に重要な4つの視点です。授業づくりの工夫や子どもたちの変化を上山さんに聞きました。

「既読スルー」でトラブル。事実を見極める力をつけてほしい

ーーまずは、「4つのスイッチ」について教えてもらっても良いでしょうか。

「4つのスイッチ」とは、1つの情報に対して「まだ分からないよね」「事実かな、印象かな」「他の見方もないかな」「何が隠れているかな」の4つの視点で見ることです。

例えば、過去に「ライオンが動物園から逃げ出した」という内容がSNSに投稿されたことがあります。実際は事実ではない情報だったのですが、あっという間に拡散され、動物園には問い合わせが殺到しました。

このような情報を見ると、鵜呑みにしてしまいそうになることはあると思います。「4つのスイッチ」は、さまざまな情報に対して“正しく疑う視点”を与えてくれます。

ーーどのような問題意識があって、「4つのスイッチ」について深掘りして授業で扱うことにしたのでしょうか。

子どもたちの中には自分のスマホを持っている子もいますし、日常生活の中でYouTubeやSNSなどから情報に触れる機会が多くあります。よくあるのが、ちょっとした言動がきっかけで、事実とは違う情報が伝わってしまうことや、事実と主観を切り分けられずにトラブルにつながることもあるんです。

例えば、LINEでは相手がメッセージを開いたら「既読」のマークがつきますよね。ある児童が友達にメッセージを送ったところ「既読」がついたけれど、返信がないことがあったようです。それで「無視された」と思って、トラブルに発展してしまった。でも、相手の子は家事の手伝いをしているだけだったんです。他にも、「〇〇ちゃんがこう言っていた」という、事実とは違う噂が広まってしまったこともあります。

受け取った情報をそのまま鵜呑みにするのではなく、「本当にそうなのか?」と疑ったり、他の情報を調べたりすることは、大人になってからも必要なことだと思います。子どもたちの普段のコミュニケーションからも、メディアリテラシーについて学ぶことの必要性を感じ、授業の中で取り入れることにしました。

「4つのスイッチ」で、情報を疑う視点を

ーー具体的に、どのような授業をされましたか?

授業では、毎回4つのスイッチの1つを取り上げて、さまざまな例文を提示しながら子どもたちとその文章について考えていきました。例えば、提示したのは以下のような文章です。

「サッカーの人気チームで監督が辞任することになり、Aさんが新しい監督になるのではないかと注目が集まっている」

この文章を提示した後に、「まだ分からないよね」と思うところに線を引いてもらいました。すると「Aさんが新しい監督になるのかはまだ分からない」という見方ができるわけです。「4つのスイッチ」を提示することで、子どもたちはすぐにこの情報の事実と推測の部分を意識して読むことができました。

比較的難しかったのは、4つ目の「何が隠れているかな」のスイッチです。授業では、以下のような文章を用意しました。

「『GOTOトラベル』がスタートし、町には若者が増えた。家で大人しく自粛せず、外出するとは本当に若者は危機感が薄い。東京では3人死亡。過去最多570人感染確認」

私からは「この情報の暗がりを見つけてみよう」という声かけもしました。すると「家で大人しくしている若者もいるよ。僕たちは学校から帰ったら外出しないようにしている」「感染者は出てるけど、治った人もいるよね」などの意見が出ました。

最後の授業では、長めのニュース記事を提示して、4、5人のグループに分かれてもらいました。これまでに学んだ「4つのスイッチ」を意識しながら気づいたことを付箋に書き出し、話し合ってもらいました。「まだ分からないよね」「事実かな 印象かな」の2つは割とすぐに見つけられるのですが、「他の見方もないかな」「何が隠れているかな」は難しそうでしたね。

ーー全体を通して、工夫したことはありますか?

子どもたちが主体的に学べるように、単元の最後に「下村さんに、メディアとの関わり方について自分の考えを届けよう」というゴールを設定しました。実際に下村さんに連絡してみると、快く承諾してくれた上、授業づくりのアドバイスもしていただきました。

学習計画としては、山に登っていくイメージで9つのステップを用意しました。授業を重ねるごとに「情報初心者」「情報見習い」と進んでいき、最終的に「情報使い」にたどり着きます。視覚的にもレベルアップしていく過程がわかるので、ゲームのような感じで子どもたちも喜んでいました。

授業や家庭の中で、情報の受け取り方に変化が

ーー授業を受けてから、子どもたちの変化を感じる場面はありましたか?

いろんな情報がある中で、何が正しいのかを意識するようにはなったのではないかなと思います。国語で「4つのスイッチ」について学んだ後に、社会の授業の中で、SNSで拡散された情報を見せたことがあります。そのときは、子どもたちから「絶対そんなことないよ」「誰からの情報かわからない」などの声があがりました。

中には、保護者の方から「家でニュースを見ているときに、『4つのスイッチ』の話をしてくれることがありました」と聞くこともあります。全員ではありませんが、何人かは実生活の中で活用してくれているのかなと思います。

ーー最後に、メディアリテラシーの授業を振り返ってみていかがですか。

この授業に限らず、やはり子どもたちは一方的に教えられるだけでは学ぶことを楽しめないですし、自分ごととして捉えることも難しいだろうなと思います。

今回のように考えたり話し合ったりする時間をつくると、子どもたちは真剣に取り組んでくれます。この授業をきっかけに、友達とのコミュニケーションの仕方やメディアとの向き合い方を考えてもらえるといいなと思います。

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建石尚子

1988年生まれ。中高一貫校で5年間の教員生活を経て、株式会社LITALICOに入社。発達支援に携わった後、2021年1月に独立。現在は教育に関わる人や場を中心に取材や執筆をしている。「メガホン」の運営団体であるNPO法人School Voice Project 理事でもある。

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