【教職員アンケート結果】来年度の始業式日程は? 必要だと思う準備期間は?
学校では毎年4月1日から新年度がスタートし、非常に短い期間で新年度準備を行っています。この期間には、本来であれば教職員がしっかりとコミュニケーションをとりながら学校のビジョンや目標を話し合ったり、新年度の体制やカリキュラムを作っていくための時間を取りたいところですが、実際はそのような時間を取るのは難しいと言えます。
新年度準備期間が短いと、さまざまな準備に十分な検討を行うことが難しく、ひとまず前年通りで進めるしかなかったり、超過勤務や休日出勤が状態化しているという現状があります。
そこで今回のアンケートでは、現職の教職員のみなさんに、新年度準備期間についての困り感や、望ましい新年度準備期間の長さを伺いました。
アンケートの概要
■対象 :全国の小〜高校年齢の児童生徒が通う一条校に勤務する教職員
■実施期間:2023年1月20日(金)〜2023年3月13日(月)
■実施方法:インターネット調査
■回答数 :179件
アンケート結果
設問1 2023年度の始業式は4月何日?
Q1. 令和5(2023)年度の始業式は4月何日の予定ですか。(必須)
始業式が行われる日は、4月5日から4月17日まで地域や学校によってばらつきがありました。傾向としては、始業式の日程が遅い学校は近畿地方と中国・四国地方、始業式の日程が早い学校は北海道・東北地方と関東地方に比較的多くあることがわかりました。
設問2 2022年度の始業式は4月何日?
Q2. 令和4(2022)年度の始業式は4月何日でしたか。(任意)
2023年度と同様に、始業式が行われる日は、4月5日から4月17日まで地域や学校によってばらつきがありました。傾向としては、始業式の日程が遅い学校は近畿地方と中国・四国地方、始業式の日程が早い学校は北海道・東北地方と関東地方、九州・沖縄地方で比較的多いことがわかりました。
設問3 準備期間が短いことの影響は?
Q3. あなたがこれまで経験してきた職場で、新年度準備期間が不十分なことによって起こってきた現象について教えてください。(必須)
校種別に見ると、小学校では全ての項目において「非常に当てはまる」「当てはまる」と回答した人は90%を超えていました。特に多かったのは、「異動者が必要な情報を得られない(99%)」「教科や学級の準備が不十分になる(96%)」「校務分掌の準備が不十分になる( 96%)」 でした。
中学校では、全ての項目において「非常に当てはまる」「当てはまる」と回答した人は80%を超えていました。「初任者の支援が十分にできない」 「異動者が必要な情報を得られない」「休日出勤や残業が増える」は、中学校に所属する回答者全員が「非常に当てはまる」もしくは「当てはまる」と回答しました。
高校では、「心身のコンディションが良好な状態で始業式を迎えられない(64%)」「休日出勤や残業が増える(73%)」の2項目は他の項目と比べて、「非常に当てはまる」もしくは「当てはまる」と回答した人が少ない傾向がありました。その他の項目は80%以上の人が「非常に当てはまる」もしくは「当てはまる」と回答しました。
設問4 “最低限”必要な準備期間は?
Q4. トラブル回避などのため、“最低限必要”な新年度準備期間は、4/1から何日間だと思いますか。(土日を除いて)(必須)
全体の約8割の人が、最低限必要な準備期間について「5〜7日」と回答しました。校種による大きな違いは見られませんでしたが、高校では準備期間に「10日間」必要だと回答した人は3割以上となりました。
設問5 “万全の状態”に必要な準備期間は?
Q5. “万全の状態で新年度をスタートするため”に必要な新年度準備期間は、4/1から何日間だと思いますか。(土日を除いて)(必須)
全体の約8割の人が、万全の状態にするために必要な準備期間について「7〜10日」と回答しました。校種による大きな違いは見られませんでしたが、高校では準備期間に「10日間」必要だと回答した人は3割以上となりました。
設問6 トラブルや困った経験は?
Q6. 新年度準備期間が短いことが原因で引き起こされたトラブルや困った経験を教えてください。(具体的なエピソードでぜひ)(任意)
教科や学級、校務分掌の準備が不十分
校務分掌の仕事が中途半端なままスタートしてしまった。【神奈川・小学校・教員】
主任・主事、部活動顧問がなかなか決定できず、スケジュールがずれ込んだ。【福岡・小学校・教頭/副校長】
入学式の準備が不十分(前年度の反省などの引き継ぎがされてなかった)。入学式の裏で、まだ教室準備をやっていた。【佐賀・中学校・事務職員】
新年度スタートからの準備期間が土日を除いて3日間しかなく、コロナ対応、タブレットの準備もあり、入学式の準備に不備が出た。タブレットの引き継ぎが教育委員会の準備が足りず、新学期のスタートに間に合わなかった。【新潟・中学校・教員】
児童生徒の情報共有や引継ぎが不十分
特別な支援の必要な生徒について情報提供がなされるも、顔と名前が一致しない状態で聞かされるため配慮の必要性について忘れてしまう。【島根・高校・教員】
子どもの顔と特徴は暗記した状態で望みたかったが、それをやる時間はとれず。春休み中に誕生日だった子の誕生日を把握もできない状況でした。【千葉・小学校・教員】
配慮の必要な子を間違えて覚えてしまう。保護者に全担任から聞いていませんか?と言われて何も言えない。【神奈川・小学校・教員】
クラスの児童に関する引き継ぎができず、対応の仕方がうまくいかず児童が不登校になった。【石川・小学校・教員】
児童の引き継ぎがあまりなされないまま新年度が始まって、保護者から新年度始まって1ヶ月後にその児童の重要なことを初めて聞かされ、きちんと引き継ぎをしてほしいとのクレームが来た。【大阪・小学校・教員】
教職員間で会議が不十分
スタートカリキュラムなど、新しく取り組みたい内容も準備が間に合わず、結局例年通りの内容をなぞるだけで4月が終わりました。【大阪・小学校・教員】
様々なことを「とりあえず決める」ということになり、後から変更することになったり、良くない方向でやらざるを得ないことになった。【東京・小学校・非常勤教員】
特に異動した場合、始業式入学式の流れをしっかり把握できないままスタートする。いつ何の会議があるのか、準備・心構えがしっかり出来ないまま参加することになり、内容も頭の中にキチンと入らない。【長野・小学校・臨時的雇用教員】
心身のコンディションが不良好
寝不足続きで会議に集中できなかったり、作成した文書にミスがあったり…。【北海道・中学校・教員】
休日出勤や大幅な時間外労働で体調を崩し、始業式・入学式は最悪の体調で過ごした。その後、1ヶ月は体調不良に悩まされた。【東京・小学校・教員】
始業式前に疲弊し、最初の1週間で笑顔が枯れた。回収する物のチェックが曖昧になり、出したか出していないかの行き違いが発生したことがあった。【香川・小学校・教員】
教職員同士のコミュニケーション不足
合意形成が全くできてないので、担任がそれぞれやりたいようにやり、仲が悪くなる。または、形式だけを合わせ、中身がないまま1年間取り組む。【愛知・中学校・教員】
クラス間での意思疎通の時間が取れずに、各々が思い思いに準備を進めた。結果として、職員間のトラブルが起き、人間関係が取れない1年となった。【神奈川・小学校・教員】
新任者・転任者との交流が十分にできないまま新年度が始まってしまい、毎年組織がチームになりきれない。校内研究の研究テーマやカリキュラムなどを十分に練る時間がないので、結局前年度の踏襲になる。【大阪・小学校・教員】
初任者への支援が不十分
拠点校の指導教員をしていますが、右も左も分からない初任者に、3日間で担任業務を準備させるのは物理的に無理です。【北海道・中学校・教員】
他の自治体から異動してきた若手が多すぎて、まずは指導方針についてのコンセンサスが取れない。新しい職員により改善点があれば検討する事はやぶさかではないが、そこまで辿り着けずに見切り発車することもしばしばである。【埼玉・中学校・教員】
異動者への情報共有が不十分
その学校のシステム(給食準備など)がわからず、子どもたちにも先生方にも迷惑をかけてしまった。【広島・小学校・教員】
県を越えての異動を経験しました。やり方や考え方もガラッと違うので、新しい職場のやり方を理解するのに時間がかかりました。【茨城・中学校・教員】
異動されて来られた先生方が、職員の名前や学校の雰囲気などをほぼ何もわからないままスタートし、手探りで1ヶ月を過ごすことになり、心身ともに疲弊していた。周りの先生方もその状況をフォローしようとして、自分の仕事を後回しにしてしまうことがある。【北海道・中学校・教員】
休日出勤や残業時間の増加
新1年生の担任のときは、春季休業中は土日も深夜0時を超えても職員室で準備の作業をしていました。【神奈川・小学校・教員】
会議で勤務時間はほぼすべて埋まり、教室の環境整備や教科指導の準備は夜間や土日に行っていた。(今年度は土日もないので準備が終わるイメージが持てない)【北海道・中学校・教員】
4月1日から育休復帰したが、(自分の子どもの)保育園の慣らし保育期間とかぶってしまった。担任だったので新学期準備などで、慣らし期間中ほとんど保育園の送迎に関われず、母や夫まかせになってしまい、子どもが不安定な状態になった。【兵庫・小学校・教員】
自分が初任だったときに、教室の装飾(最低限の時程表やラシャ紙と呼ばれる背景紙)に時間がかかり、始業式前日は20時、入学式の前日は21時まで残った。周りの教員も疲れていて、初任ながら気を遣った。朝から会議続きでくたくたで、入学式に不安が残った。【千葉・中学校・教員】
新学期の準備は、残業必須です。それが、初任者や異動者であれば夜遅くまで、休日も出勤しないと間に合いません。初任者や異動者は、4月1日にならないと勤務校に行けず、学校の情報もないため3月下旬から準備することができないからです。【滋賀・小学校・教員】
最も多く上がっていたのは、「教科や学級の準備が不十分になること」「休日出勤や残業が増えること」に関する内容でした。準備する時間が十分に取れないことで、やむを得ずそのまま授業をすることもあるようです。
また休日出勤や残業が増えることで、教職員の心身の疲労が溜まり、結果として教職員間や児童生徒との関わりに影響が出ていることが伺えました。
設問7 教育委員会や学校管理職等へ伝えたいことは?
Q7. 新年度準備期間について、教育委員会や学校管理職等へ伝えたいこと、あなたの考えや改善策などを自由にお書きください。(任意)
新年度の準備期間を伸ばしてほしい
新年度準備が間に合わなくて退勤が深夜になることや、連日の持ち帰り残業が続くので、せめて2週間は準備期間が取れるように行事予定を組んで欲しい。【北海道・中学校・教員】
準備期間が短いことで、「とりあえず前年と同じように」となっていることは課題だと思う。校務分掌で担当が変わっても、これまでの経緯や留意点などの共有ができないと、やはり「とりあえずそのままでやってみて、また考えよう(その「また」はやって来ない)となってしまう。【愛知・小学校・教員】
年度が変わって3日で入学式、翌日始業式というのはあまりにも日程に余裕がないです。学級びらきまでに十分な準備時間がないことで、学級経営に悪い影響があるとも感じています。現在、教室に冷房がついているため、夏季休業を数日短くし、その分を年度はじめにもってきてはどうでしょうか。【愛知・小学校・教員】
人事や異動の内示時期を早めてほしい
他県では異動の新聞発表なども4月にならないと発表できないみたいなので、3月上旬内示発表→4/1辞令交付→4/10入学式のように、辞令から出勤7日を空けないと入学式には間に合わないと思います。【北海道・特別支援学校・教員】
春休み期間中は比較的時間に余裕があるので、決まっているのであれば、管理職人事の前に校内人事を発表して、十分な準備期間を確保してほしい。実際、そのように運用している自治体、学校もあるので、揃えてほしい。【福岡・特別支援学校・教員】
業務内容の見直しや削減をしてほしい
提出資料を始業式前に要望しないでほしい。【埼玉・小学校・校長】
新1年生(の担当教員)のみ、負担が大きすぎる。1年生の準備は全体で分担して行うべき。【神奈川・小学校・教員】
報告、提出、作成の書類や帳簿、調査等は教員でなくてもできる内容です。教員は授業準備と教材研究に専念できるようにする必要がある。【茨城・小学校・教員】
新学期が始まるまでに、必要な会議、研修、教室準備等の設定以外に、フリーに使える時間を2〜3日は確保してほしい。学期当初の短縮授業期間を1〜2週間設定して、子どものことを学年で共有したり、年間カリキュラムをじっくり練る時間を確保してほしい。【大阪・小学校・教員】
働き方改革、業務効率化のための各種書類のデジタル化はトップダウンで行ってほしい。また、同期や近い年代で育休明け復帰からの退職者は私を含め3人いる。年度途中で辞めてしまった心苦しさからトラウマを抱える人もいる。慣らし保育期間は業務に入らなくても回るような、または早く帰れるような配慮や、子育て世帯が働きやすいようなサポート体制を確認し合う余裕があれば、育休明けの離職者が減らせるのではないかと思う。【東京・小学校・非常勤講師】
初任者への配慮をしてほしい
最低でも初任者には担任を持たせない配慮が必要です。【北海道・中学校・教員】
初任者の初日に行う初任研を春休み等の別の日に持ってきたら、もう少しゆとりをもって仕事か始められると思う。【静岡・小学校・教員】
年間授業時数の見直しをしてほしい
中学校の場合、この時期から授業時数を確保しておかないと、年間授業時数を確保できないという問題も大きいと思います。新年度の開始時期を遅らせる議論とあわせて、
①標準の年間授業時数そのものの削減
②45分授業・40分授業などを柔軟に認め放課後の時間の確保
③インフルエンザなどの学級閉鎖で時数が標準よりも一定少なくなっても柔軟に認めていき、年度当初から授業時数確保に追われなくていいようにする
などの対策がとられれば、新年度のスタートを遅らせる議論もすすんでいくのではと思います。【大阪・中学校・教員】
最も多く集まったのは「新年度の準備期間を伸ばしてほしい」という訴えでした。「春休みを伸ばしてほしい」という声のほか、「校内人事の発表時期を早めてほしい」「3月上旬に異動の内示をしてほしい」などの声もありました。また、業務内容の削減や効率化を求める声も目立ちました。
まとめ
始業式が行われる日は、2022年度、2023年度ともに地域や学校によってばらつきがありました。傾向としては、始業式の日程が遅い学校は近畿地方と中国・四国地方、始業式の日程が早い学校は北海道・東北地方と関東地方に比較的多くあることがわかりました。
最低限必要な準備期間は、全体の約8割の人が「5〜7日」と回答。万全の状態にするために必要な準備期間は、全体の約8割の人が「7〜10日」と回答しました。
新年度準備期間が不十分なことによって起こってきた現象については、全ての項目において8〜9割の人が「非常に当てはまる」もしくは「当てはまる」と回答しました。最も多く上がっていたのは、「教科や学級の準備が不十分になること」「休日出勤や残業が増えること」に関する内容でした。
具体的には「クラス間での意思疎通の時間が取れず、各教員が思い思いに準備を進めた」「児童の引き継ぎが不十分なまま新年度が始まり、1ヶ月後に保護者から重要なことを初めて聞いた」「異動して来た先生方が手探りで1ヶ月を過ごすことになり、心身ともに疲弊していた」などの声がありました。
教育委員会や学校管理職等へ伝えたいこととして最も多く集まったのは「新年度の準備期間を伸ばしてほしい」という訴えでした。その他、異動者や初任者への配慮、業務内容の削減や効率化を求める声も目立ちました。
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メガホン編集部