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【教職員アンケート結果】事前対策をしている学校も。“全国学テ”どう思う?

  • メガホン編集部

全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)のあり方について、新たな議論が起こっています。

全国学力テストについては、実施開始当初から「全国悉皆調査(すべての学校で行う調査)である必要はあるのか」「平均点を公表する必要はあるのか」などの議論がありました。さらに先日、特別な授業や過去問題の配布など、行き過ぎた事前対策をしている学校があるとの報道がなされたことで、全国学力テストのあり方自体が問われています。

教職員を対象に、事前対策の実施の有無や学力テストに対する意見を聞きました。

参考「全国学力テスト 行き過ぎた事前対策 トップクラス石川県で何が 」(NHK,2022年10月14日公開,2022年12月20日参照)より

アンケートの概要

■対象  :全国の小〜高校年齢の児童生徒が通う一条校に勤務する教職員
■実施期間:2022年10月22日(土)〜2022年11月14日(月)
■実施方法:インターネット調査(実施時の設問はこちら
■回答数 :55件

アンケート結果

設問1 全国学力テストの事前対策は行われている?

Q1. 全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)について、あなたの勤務校では事前対策が行われていますか。

「行われていない」と回答したのは、小学校で約4割、中学校で約6割でした。小学校では学校や管理職の方針によって行われているケースが多く、中学校では教員の判断によって行われているケースが多いという結果となりました。事前対策の内容については、授業内で過去問や独自の対策問題を解く時間を設けることが多いようです。中には「過去問を配布するのみ」という回答もありました。

なお、各地で行き過ぎた事前対策が行われていることが問題となり、文科省からは2016年4月にテスト本来の趣旨を学校に浸透させ、適切に対応させるよう求める通知が出されています。

参考「全国学力テスト 行き過ぎた事前対策 トップクラス石川県で何が 」(NHK,2022年10月14日公開,2022年12月20日参照)より

設問1-2 事前対策の状況・内容は?

Q1-2. 詳しい状況や内容(対策授業を◯時間行った、宿題として過去問を配布した、等)を教えてください。(任意)

教育委員会等の指導により事前対策が行われている

過去問を使った授業が行われている。授業で過去問を解かせている。市町村独自に1月に全学年学力調査が行われている。【大分県・小学校・教員】

市教委主導で過去問等から作成した学力向上ワークシートの実施、模擬テストの実施、年度末の過去問実施、事前対策2〜3時間。【埼玉県・小学校・教員】

教育局からほぼ毎月配信されるサポート問題をやらなくてはいけない状況にある。【北海道・中学校・教員】

学校・管理職の方針により事前対策が行われている

以前の学力状況調査の問題と似た問題を、朝タイムで取り組む。【福岡県・小学校・教員】

授業や宿題として過去問を解かせたり、過去問の解説を行っている。【大阪府・中学校・教員】

教員の判断により事前対策が行われている

年間を通じて、単元ごとに練習問題として少しずつ取り組ませている。また、定期テストにも活用し、準備をしている。【北海道・中学校・教員】

教科によっては、学年末の授業として、全国学力テスト対策が行われています。【福島県・中学校・教員】

過去問を自由課題として、配布する程度。【大阪府・中学校・教員】

正式に事前対策をしなさいという指示はありませんが、正直見えない圧を感じて職員が学年部ごとに過去問を解かせているという実態はあります。【大分県・小学校・教員】

設問2 全国学力テストの結果の活用方法は?

Q2. 全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の結果を、あなたの勤務校ではどのように活用していますか。(複数選択可)

小学校では、「児童の学習状況の把握」を選択した人が最も多く約6割。次いで多かったのが、「日々の授業改善」で5割弱でした。中学校では、「日々の授業改善」を選択した人が最も多く約5割。次いで多かったのが、「生徒の学習状況の把握」で4割弱でした。小学校、中学校ともに「特に活用していない」と回答した人は3割を超えていました。

設問2-2 具体的な活用方法は?

Q2-2. あなたは実際にどのように活用していますか。具体的にあげてください。

児童生徒の学習状況の把握

結果に対して、どういった問題が苦手なのかを把握し、その部分をどのようにすれば力がつくか話し合いを行う。【埼玉県・小学校・事務職員】

分析の結果を家庭へも公表。分析を踏まえ、今後の学校が取り組む課題と具体的な施策、家庭へのお願いを文書で出している。【大阪府・小学校・養護教諭】

日々の授業改善

全教職員で結果を考察。本校の特徴をつかみ、低学年から何を大切にすべきか、高学年では何を重点的に復習すべきか、研修します。また個人の非認知能力等にも注目し、指導の個別最適化を目指します。【埼玉県・小学校・教員】

自分が教えた内容の定着を確認し、必要があれば再度復習を行う。【千葉県・中学校・教員】

傾向を見て日々の授業のやり方を考える程度。【北海道・中学校・教員】

児童生徒への個別の学習支援

個々の生徒への質問項目を把握して、個々に適した対応を心掛けている。【新潟県・中学校・教員】

特に活用していない

活用する暇がない。日々忙しく、そこに時間は使えない。【広島県・小学校・教員】

対外的には、「結果を受けて対策をしている」としているが、具体的に特別にしていることはない。【大阪府・中学校・教員】

その他

市教委に分析(市教委が作成した形)を提出。ホームページで公開。【大分県・小学校・教員】

学力テストで何が求められているのかを探る。【北海道・小学校・教員】

教員の評価に使われていて、児童への指導には反映されていないと思います。【群馬県・小学校・教員】

特別支援学校のため、ほとんど実施されていない。【福岡県・特別支援学校・教員】

設問3 全国学力テストの実施方法について、どう思う?

Q3. 現状の全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の実施方法について、あなたはどう思いますか。
* 悉皆調査…全員に行う調査のこと

「自治体ごとの平均点が公表される」ことについては、全体の約8割の人が反対を選択。特に特に小学校の教職員からの反対が多く集まりました。「全国悉皆調査である」「小学6年生と中学3年生に実施される」ことについては、小学校よりも中学校の教職員からの方が反対する意見が多く集まりました。

設問4 全国学力テストの実施について、どう思う?

Q4. 全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の実施について、あなたはどう思いますか。

全体の6割以上が全国学力テストの実施に対して反対する意見を持っていました。特に20代ではその傾向が強く、30代以上の方が実施に対して肯定的な意見を持つ人が多い傾向がありました。校種別に見ると、実施に対して肯定的に捉えている人は、中学校よりも小学校の方が多い結果となりました。

実施に対する肯定的な意見

現在の子どもたちの一部の学力を測るという点では、無駄でないように思います。ただ、そのあとは外部に調査を依頼して個人別、学級別、学校別の対策を打ち出してほしい。事前の対策なんかも、働き方改革と逆行してしまうので、なし。【埼玉県・小学校・教員】

子どもの学力や学習状況を調査する点、その結果から教員の指導方法のふり返りや改善に活用する目的であれば、実施するべきであると考える。数値化されたくない子どもがいることも踏まえれば、保護者とも連携した希望者で実施するのも1つの方法ではないだろうか。子どもや保護者にとって、子ども自身の能力を測定する機会を損ねるのだけは避けたい。【鹿児島県・小学校・教員】

現状では点数優位で学校間競争として、保護者が点数や順位だけを見とる傾向にあることの弊害があります。一方で児童の学習を個別最適化するための調査として実施するのであれば、教員のさじ加減的な現在の評価を是正することに寄与するはずだと思います。点数や順位は児童、生徒にとって、結果は学習動機には結びつかないことは認知科学の視点でも明らかです。リセットが必要だと思います。【群馬県・小学校・教員】

活用のされ方が間違われなければ有効である。自分の自治体が平均と比べてどうなのかを知ることは大事。なので、実施は悪くない。その結果が、日ごろの学習指導の改善に生かされるのならいいが、ただ順位をあげたいがために、学力テストの対策がとられるとか、順位が低いがために、自治体行政が現場に圧力をかけるようなことはあってはならない。【愛知県・小学校/中等教育学校・教員】

実施に対する否定的な意見

ただただ数字で教育を考えるようになってしまうから。人を育てるという本来の目的が、学力を上げるという目先の目的にすり替えられてしまい、教育が大きく歪む原因になっていると思います。【大分県・小学校・教員】

全国学力テストが生徒の学習状況や教員の授業実践に役立っているという実感を得たことがない。また、校内での定期テストや実力テスト、大阪府ではチャレンジテストと中学3年生が受けるテストの数が多く、精神的にも実質的にも生徒・教員ともに負担が増す。【大阪府・中学校・教員】

1日授業が潰れることになるし、受験した生徒になんにも還元されていない現状だから。【神奈川県・中学校・教員】

負担でしかないから。英語はさらに話すことの実施が増え、英語科としての負担も増した。これ以上もう何も増やしてほしくない。【東京都・中学校・教員】

テスト監督や返却などの負担があります。テストの仕分けや、テスト監督のマニュアルを確認する会議などもあります。全国学力テストで測られている学力が、ほんとうに今の生徒たちに身に着けないといけない力なのかどうかと疑問に思います。【大阪府・中学校・教員】

まとめ

事前対策が行われている学校と行われていない学校の数は、ほぼ半々という結果となりました。対策の内容については、「授業内で過去問や独自の対策問題を解く時間を設ける」や、「過去問を配布するのみ」など学校や教員によってばらつきが見られました。

全国学力テストの実施に対しては、反対する意見が多く集まりました。その理由として上がっていたのが、点数を取ることが目的となってしまい本来の教育の目的を見失っていると感じる声。それと同時に、教員の業務負担やテストを繰り返し受けることでの児童生徒の負担が増えている点について懸念を示す意見もありました。一方で、児童生徒の日々の学びに活かされるのであれば実施する意味があるという意見もありました。

また、実施に賛成する人でも、結果を公表することによる学校間の競争に繋がることには、反対する意見が多数集まりました。


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NPO法人School Voice Project のメンバーが、プロやアマチュアのライターの方の力を借りながら、学校をもっとよくするためのさまざまな情報をお届けしていきます。 目指しているのは、「教職員が共感でき、元気になれるメディア」「学校の外の人が学校を応援したくなるメディア」です。

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