校長も教職員も生徒もファシリテーターに。“全員主体”でしあわせな学校をつくる
2022年8月27日に、Zoomセミナー「学校にファシリテーションを!」が開催されました。テーマは「『任せる』マネジメントを広げよう」。ファシリテーションの普及に取り組む株式会社ひとまちが主催し、代表のちょんせいこさんが進行役を務めました。
講師は、『カラフルな学校づくり』『「任せる」マネジメント』などの著者である住田昌治さん(学校法人湘南学園学園長)。第1部では、これからの学校や管理職のあり方について住田さんが講演し、第2部では、住田さんの前任校で働く学校事務職員の上部充敬さん(横浜市立日枝小学校)と、教職員や生徒がファシリテーターとして活躍する徳島県美馬市立穴吹中学校校長の濱田雅子さん、同校養護教諭の林加奈恵さんより、実践の紹介がありました。
この記事では、登壇者のお話から、これからの管理職のあり方やファシリテーション※の具体的な実践方法を中心にご紹介します。
※ ファシリテーション:狭義では、会議や研修、プロジェクトなど人が集まる場で一人ひとりの意見を活かし、合意形成や課題解決を進めるための話し合いの技術。広義では、私たちは本来、誰もが力をもつ存在で、その力を発揮できるエンパワメントな場づくりを進める話し合いの技術。
「任せるマネジメント」を提唱する校長・住田昌治さんのお話
校長の役割は、管理ではなく経営
「校長にこそファシリテーションを」。そう書かれた資料を参加者に見せながら、学校法人湘南学園の学園長を務める住田昌治さんの講演が始まりました。
住田:「俺について来い」なんていう考えはもう時代遅れだと思っています。校長は“管理職”とも言われるので、人をコントロールすることが役割だと勘違いをされてしまいがちですが、実際はそうではありません。
本来の役割は、管理することではなく、経営することです。教職員の力を引き出し、エンパワメントすること。エンパワメントされた教職員が、さらに子どもたちをエンパワメントすること。そんな循環を、学校の中でつくっていくことが校長の役割だと思っています。そのために必要な技術が、ファシリテーションなんです。
ーー学校を経営する立場として、どのようなことを考えてきたのでしょうか。
住田:私が校長のあり方として心がけていたのが、「校長が必要とされない学校経営」です。もちろん校長という立場は必要なのですが、「校長に言われたからやりました」「校長のおかげでできました」とか、そういうことは言われたくないと思ったんです。
「校長がいなくても、自分らでできますよ」そんなふうに言ってもらいたい。教室では、先生が脇役、子どもが主役ですよね。職員室では、校長は脇役、教職員が主役なんです。そんな学校経営ができるように、私は指示や命令をせず、ビジョンを示したあとは教職員に任せることにしました。
全員が主体的になるには?安心して話せる場をつくる
具体的に、どのような学校経営をされてきたのでしょうか。これまでに取り組んできた事例をいくつか紹介していただきました。
住田:前任校では、新年度初日の4月1日に、教職員全員で「ビジョン共有ワークショップ」をやりました。教員だけではなく、事務職員や用務員も参加します。教職員全員で1つの学校をつくっていくので、職種や立場を越えて、みんなが対等に関わることが大切なんです。
校長の話はできる限り短くして、教育目標について話し合いました。このときに使ったのが、直接書き込める円形のボード「円たくん」です。みんなで円になり、円たくんを膝の上に乗せて、話し合いながら意見を書き込んでいきます。上下関係を意識せずに話し合うためには、とても有効なツールだと思います。この時間を丁寧に取ったことでお互いに考えていることを共有でき、教職員同士の安心感にもつながりました。
授業研究会は、授業担当者だけではなく、参加者全員が主体的に参加できるようにと考え、話し合いの仕方を変えました。まず授業が終わったら、授業担当者は一旦職員室に戻ります。その間に、参加者が話し合いたいテーマをホワイトボードに書き込んでいき、テーマごとに分かれて話し合いを始めます。その話し合いに、後から授業担当者が加わります。途中でグループを移動して話し合うフラットタイムやワールドカフェも取り入れるようにしました。そうすると、話し合いのテーマは授業で扱った内容に限らず、本当に多岐に渡るんです。
最近の私は、「デフォルトを変える」とよく言っています。いろんなことが変化している時代ですから、学校の中も変化させていく必要があります。例えば、校則や宿題、定期テストや通知表など、今まであることが当たり前だったものをなくしてみたり、変えてみたらどうなるでしょう。学び方や学ぶ場所も、子どもたち自身が自分で選べるようにする。前任校では、そんな取り組みもしていました。
マネジメントの先にあるのは、子どもたちの幸せ
教職員がやっている仕事は、最終的には子どもたちを幸せにすることなんです。ハッピークリエイターなんですよね。そんな教職員をマネジメントする立場にいる校長は、学校に関わるすべての人を幸せにすることが仕事です。
校長にファシリテーションする力があるからこそ、教職員が最大限の力を発揮できる。結果として、それが子どもの幸せにつながる。これからも、そんな循環が生まれる学校づくりをしていきたいと思っています。
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メガホン編集部