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【教職員アンケート結果】教員不足解消のために「もっと聞きたい、教員不足現場の“声”」② 教員の退職を減らすために

  • メガホン編集部

以前、 School Voice Project で行った「#教員不足をなくそう 緊急アンケート」は、報道各社に取り上げられ(報道記事はこちら)、文部科学大臣も提言内容にコメントをする(記者会見録はこちら)など、大きな反響がありました。

教員不足を解消するため、School Voice Project では『もっと聞きたい、教員不足現場の“声”』という連続アンケートを実施しました。この記事では、全3回のアンケートのうち、第3回のアンケート結果についてまとめて紹介します。

第1回・第2回のアンケート結果はこちら


第3回 教員の退職を減らすために

第3回のテーマは「教員の退職を減らすために」。教員不足の解消のためには、教員の積極的な採用や臨時免許の発行などの方策があげられています。それと同時に、本来望んでいなかった退職を未然に防ぐことも大切です。教員が退職を考えるのはどのようなときなのか、現場の声を聞きました。

アンケートの概要

■対象  :全国の小〜高校年齢の児童生徒が通う一条校に勤務する教職員
■実施期間:2022年8月12日(金)〜2022年9月12日(金)
■実施方法:インターネット調査(実施時の設問はこちら
■回答数 :136件

アンケート結果

設問1 退職を考えた・相談された経験は?

Q1. 教員の退職について、以下のうち経験のある事柄をすべて選んでください。(複数選択可)

「同僚が辞めたことがある」と回答した人は最も多く、全体の71%でした。次いで多かったのが、「辞めようと思ったことがある」で、全体の63%。どの選択肢においても、校種による回答の大きな差は見られませんでした。「辞めたことがある」と回答したのは、男性では6%、女性では24%と、性別によるばらつきがあることがわかりました。

設問2 退職した・退職を考えた要因は?

Q2. 辞めた・辞めようと思った経験がある方に質問します。辞めた・辞めようと思った要因はなんですか。

働き方

拘束時間が長すぎて、家庭が崩壊するので、難しいと感じた。勤務時間についても定時付近でタイムカードを切らされるのが常態化しており、もし過労死したりうつ病になったりしたときに家族や自分を守れないと思ったから。【小学校/中学校・教員・辞めたことがある】

時短勤務が可能であれば、働きたかったのですが、叶いませんでした。担任をしていたときの生活時間を考えると、子どもを育てながらの復帰は考えられませんでした。頼れる祖父母が近くにいないので、夫と分担しても、私が短時間で働く以外、生活が成り立たないと判断しました。【小学校・職員・辞めたことがある】

授業に関わらない仕事でプライベートが押しつぶされて、何のために働いているか、何のために生きているのかが分からなくなったから。【小学校・教員・辞めようと思ったことがある】

心身の不調

心身の疲労。子どものためにとすべての業務において真面目になりすぎた。身体を壊し、やってられないと思った。やめて正解。休日はあっても1日。毎日の業務量も半端ではなく、肝心の授業づくりは帰宅してからやること。今考えればよくやっていたと思う。【中学校・教員・辞めたことがある】

あまりに業務量が多く、心身両方の面で長く続けていけるか心配になった。体調を崩しても休みづらいと感じたから。【小学校・教員・辞めようと思ったことがある】

異動先でうまくいかず、保護者対応に追われ、適応障害になり、休職を経験。人と接するのが怖くなり、辞めようと考えたことがある。【小学校・教員・辞めようと思ったことがある】

職場の人間関係

私学に勤務中、職場内人間関係が悪く、また、同期が非常に高圧的でこの同僚とずっと勤めるのは無理だと思った。【小学校/中学校・教員・辞めたことがある】

職員室内の人間関係に疲弊した。困難な部活動、校務分掌を一人で任され、激しい叱責を受け、周囲から救済を得られなかった。【中学校・教員・辞めようと思ったことがある】

仕事内容、待遇

自分のやりたい仕事と任されるしごとの乖離。【小学校・教員・辞めようと思ったことがある】

月の超過勤務時間が平均で100時間を越えることが続いたり、教育困難校で勤務していて給料と割に合わないと感じた。【中学校・教員・辞めようと思ったことがある】

あまりの仕事の大変さ(重い責任、身体的、精神的な負担)に対して、対価が支払われていないと感じたとき。【小学校・教員・辞めようと思ったことがある】

保護者や生徒との関係

保護者対応に精神的に追い込まれる。毎年のように出会い、本当につらい。授業が終わった後に対応すると、全く仕事ができない。【小学校・教員・辞めようと思ったことがある】

理不尽な保護者に対応するのにほとほと疲れたこと。本来の業務に支障が出てなんのために仕事をしているのかわからなくなった。【小学校・教員・辞めようと思ったことがある】

自身のキャリア

未来に希望が持てないなぁと思ったとき。【小学校・教員・辞めようと思ったことがある】

他の業種に転職した方が人間として成長できるのではないか?と考えたりした。【中学校・教員・辞めようと思ったことがある】

設問3 どんな制度・サポートがあるといい?

Q3. 同様の要因で退職する教員を減らすために、どのような制度やサポートがあるといいと思いますか。

働き方や仕事内容が要因の退職を減らすために

20人学級の実現。【高等学校・教員】

給特法の遵守、待遇の改善。【小学校・教員】

部活動を早急に地域移行する。【中学校・教員】

初任者については、小学校でも副担任として勤務できる人員配置。【小学校・校長】

持ちコマ数上限の適切な設定(LHRを含めて17)。【高等学校・教員】

全員担任制に切り替え、難題をチームで請け負うようにする。【中学校・教員】

初任のときは、いきなり担任ではなく、副担任としてつとめられる制度。(可能なら、助手的な立場でつとめられる制度)【中学校・教員】

校長など管理職に労務管理の研修を必修させる。業務過多の教師が出た場合、管理職になんらかのペナルティとなる制度を設定する。【中学校・教員】

専門性がなくてもできる作業(集金の計算、出席記録、草むしり、トイレ掃除、印刷、帳合など)を委託することができると良いと思う。【小学校・教員】

特別支援対応の人員を増員する。教科採用の教員は教科指導に専念し、学活・道徳・総合は専門の教員を当てる。無駄な仕事、特に、なくても済む書類作成(特別支援対応、教育委員会提出用)を減らす。【中学校・教員】

道徳や英語教育(小学校)、宿泊体験学習や運動会をやめる。実施するのなら、勤務時間内に収まるようにそのときの授業を午前中のみにし、職員がその準備ができるように環境を整える。【小学校・教員】

日常的に休憩の時間をしっかりと保障することだと思う。余裕がなくなればどんな人でも雑になり追い詰められていく。法定の休憩時間の確保と、退勤時間から次の業務時間までのインターバルを決めるべき。【小学校・教員】

次から次へと学校教育に求めるのではなく、「家庭」「社会」で行われるべき教育を今一度考えてほしい。子どもは学校だけで育つのではないのです。「家庭」「社会」で育っていくのです。「学校」は一部でしかない。【高等学校・教員】

次から次へと学校教育に求めるのではなく、「家庭」「社会」で行われるべき教育を今一度考えてほしい。子どもは学校だけで育つのではないのです。「家庭」「社会」で育っていくのです。「学校」は一部でしかない。【高等学校・教員】

心身の不調が要因の退職を減らすために

休みやすい環境づくり。部活動軽減。担任したいひとは担任をする、教科のみのひとも作る。そもそも今の学校の指導内容の再検討が必要だと思います【中学校・教員】

まずは、仕事量の調整です。例えば週のコマ数に上限をつけたりすることは重要だと思います。【小学校・教員】

やはり、教員の数を増やしたり、印刷、パソコン入力のボランティアを雇うなりして、事務量を減らして、本来の教材研究などに使う時間を増やすこと【高等学校・教員】

職場の人間関係が要因の退職を減らすために

少なくとも2ヶ月に1回ぐらいは管理職と面談する機会があればいいです。管理職が信用できない人物の場合もあるので、それ以外の人との対話の場もほしいです。とにかく孤立化させないような仕組みが必要です。【小学校・教員】

パワハラの相談を校長を介せずに教委に相談できる仕組み、および教員による管理職評価。【中学校・教員】

気軽に相談できるところがある。他の立場の人に専門家として助言してもらうこと。職場に余裕のある時間や人員が増えるといいと思う。【小学校・教員】

保護者や生徒との関係が要因の退職を減らすために

保護者対応は専門の窓口を設ける。【中学校・教員】

SSW(スクールソーシャルワーカー)、SC(スクールカウンセラー)の常駐。警察官OB(スクールポリス)、スクールロイヤーの巡回。【小学校・校長】

現在の学校の力では、地域や保護者の要求に抗うことはできない。授業は教師、児童同士のトラブルはカウンセラーとそれぞれの仕事の領域を明確化させ、教師を何でも屋にしないことが大切。【小学校・教員】

設問4 同僚の退職、どう防げた?

Q4. 同僚が辞めた・同僚から辞めたいと相談を受けた経験がある方に質問します。そのような教員を減らすために、どのような制度やサポートがあるといいと思いますか。

※設問3と同様の意見が多く集まりました。そのため、ここでは設問3の回答と内容が重複していない回答の一部をご紹介します。

管理職以外に第三者の相談機関があること。【高等学校・教員】

悩んでいる先生が、その思いを吐き出せる場所が必要。そして吐き出したことで、嫌な思いや、圧力がかからないようにもすべき。【小学校・教員】

対話を通して、お互いが理解し合う場。
実践の困り感を共有し、サポートする場。
教員がリフレッシュできる体制。【小学校・教員】

辞めたくなる要因はさまざまなので、ひたすら思いを聞いて寄り添う仲間が必要だなと思います。悩みの種が管理職であることも多いので、やはり「同僚」かと。組合など何かしらの組織に所属していることも、ある一つの心理的安心につながると思います。行政が行っているメンタルサポート政策ではなかなか本音が言えないので、公的にはしばらくお休みする制度の充実しかないのかな。ただお休みしたとしても、「あの時辞めなくてよかった」を引き出すには、やはり身近な仲間からの言葉かけが大事だと思います。【小学校・教員】

設問5 教員の退職、どう思う?

Q5. 教員の退職について、気になっていることや意見などありましたらお聞かせください。(任意)

これだけ問題点が明らかになってきているのだから、国、地方公共団体、教育委員会が本腰入れて改革しないとこの状況は変わらない。現場の職員はお互い助けてあげたいがその余裕がない。本当に切羽詰まっている。【中学校・教員】

離れる人が出てくる一方で、新たに民間などから参入できるような仕組みや、初任者がすぐに重いポジションにならないように、仕組みを作っていくことが望ましいと思う。【高等学校・教員】

自分も辞めてしまった人間なので、先生が足りなくて困っている話を聞くと、とても申し訳ない気持ちになります。教員としてのやりがいも十分分かっているからこそ、いつかまた戻るかもしれないという気持ちもあります。(教員に戻っている夢を見るほど)【小学校・教員】

早期退職者増、採用試験受験者減の背景にあるものは何か、現場の教員自身が自らの言葉で語り合う時間をもっと取れたらいいのにと思います。このフキダシに集まる声は現場の叫び。でもたぶん実際の職場では話題にしにくいのではないかと思います(時間もなくチャンスもなく)。上からの指示で動くばかりではなく、教職員自身が「教育」を語り合う場の設定を各学校や自治体でしてはどうかと思います。【小学校・教員】

まとめ

過去に教員を「辞めた」もしくは「辞めようと思った」経験がある人は99人で、回答者全体の73%でした。その理由として最も多く上がっていたのは、働き方や仕事内容。業務量の多さによって勤務時間が長くなり、プライベートの時間が確保できないことで、教員を続けることが難しいと感じることがあるようです。また、勤務時間の長さだけではなく、同僚や保護者との関わりに精神的なストレスを感じるケースも。教員の退職を減らすために必要なサポートとしては、教員や各専門の充実、業務の削減など、教員の負担を減らすことにつながる意見が多く集まりました。

2021年4月時点で、全国の公立学校で不足していると言われている教員数は2,558人です。一方で、定年退職者を除いた教員の離職者は約12,000人にのぼります。本来望んでいなかった退職を未然に防ぐことができれば、教員の欠員を減らすことにもつながるのではないでしょうか。

参考「「教師不足」に関する実態調査」(文科省,2022年1月28日公開,2022年10月6日参照)より
参考「令和元年度学校教員統計調査(確定値)の公表について」(文科省,2021年3月25日公開,2022年10月6日参照)より


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