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授業や働き方改革に活かせるICTツールは?学校全体で活用を進める中学校の教員に聞きました

  • 建石尚子

「生徒一人ひとりに合った学び」や「教職員の働き方改革」の実現に向けて、ICTの活用を進める横浜市立鴨居中学校。ここに今年(2022年)4月から英語教員として赴任した的場彩さんに、授業や業務でどのようにICTツールを活用しているのかを伺いました。

的場さんは一人一台端末の活用が始まる前から、デジタル教科書やプロジェクターを使って授業を進めてこられました。現在は学校全体がICTの活用に積極的に取り組んでいることもあり、さらに活用の幅が広がったと言います。普段使っているICTツールや、活用の工夫などを伺いました。

ICTツールの活用で、自由進度学習や遠隔での授業参加が可能に

ーー 授業の中では、どのようなICTツールを活用していますか?

1番よく使っているのは、単語学習アプリ「Quizlet(クイズレット)」です。英単語を覚えるときに、小さなカードの表と裏に英語と日本語を書いて覚えた経験がある方は多いと思いますが、それのデジタル版だと思ってもらえるといいと思います。簡単に単語帳が作成できて、音声を聴くこともできます。自動でテストを作成してくれる機能があり、4択問題にしたりタイピングで解答したりと、出題スタイルも変えることもできます。

生徒たちは一人ひとりがChromebookを持っているので、それを使って、授業開始後の5分間で英単語テストに取り組んでもらいます。授業では英会話や文法の学習に時間を使いたいので、基本的に英単語は家で覚えてきてもらい、学校ではテストをするだけにしています。それぞれのペースで学習を進められるのはこのアプリの良さだと思います。

学習ツールが紙からデジタルデバイスに変わるだけで、やる気がでる生徒も多いようです。自動でそれぞれの学習レベルにあった問題が出題されたり、ゲーム感覚でできたりするからだと思います。

ーー 英単語の学習を終えたあとにも、授業内でICTツールを使うことはありますか?

ありますね。その日の授業内容によっても違いますが、発音練習をするときは、生徒たちは自分のChromebookに入っているデジタル教科書を使います。それぞれがイヤホンをつけて、音声を聴きながら同じように発音するんです。教科書本文の音読練習では、出てくる単語の一部を隠す機能もあるので、意味や単語を考えながら音読練習をすることができます。それぞれが録音した音声を「ロイロノート」で提出してもらうこともありますね。ロイロノートは、教員から生徒に課題を配布したり、生徒たちの解答を集めたりと、さまざまなことができるクラウド型の授業支援アプリです。

また、クイズ作成アプリ「Kahoot!(カフート)」を使うこともあります。私が4択クイズを作成して、生徒たちはそれぞれが自分のChromebookでクイズに答えます。答えが合っていた人を解答の早い順で教室にあるモニターに表示させることができるので、クイズ大会のような感じですごく盛り上がるんです。本校では、基本的にどの教室にもiPadを設置し、授業の様子をビデオ会議ツール「Google Meet(グーグルミート)」でつないでいるので、教室に入りづらい生徒でもそこから授業を受けることができます。この前は自宅療養で休んでいた生徒が自宅から参加してくれて、その生徒が1位を取りました(笑)教室にいなくても一緒に学ぶことができるのはICTツールの良さだと思います。

ーー 英語の授業以外でも、学校全体で活用しているICTツールはありますか?

毎朝15分間は朝学習の時間を取っていて、記憶定着をサポートするアプリ「Monoxer(モノグサ)」を使っています。導入前の授業時間は50分間だったのですが、この朝学習を始めてからはすべての授業が45分間になりました。朝学習ではそれぞれの科目の「知識」の記憶定着を図り、授業ではその知識を活用して「思考判断表現」する場面を十分に設定して、もっと深い学びができるようにしようと学校全体で取り組んでいます。

朝の電話対応が激減。ペーパレスにも繋がった

ーー 日々の業務でICTツールを使うことはありますか?

教職員間では、校務支援ツール「milim(ミライム)」を使っています。お互いにメッセージや資料を送ったり、さまざまな情報を共有することができます。掲示板機能があるので、教職員に知らせたい内容を事前に入力しておくと、それぞれが掲示板を見て確認することができます。例えば、朝の打ち合わせで「体育行事実行委員は、今日の昼休みに会議室に集まるように伝えてください」などと先生たちに連絡することがあると思います。そういう内容も全て掲示板に書き込んでおくので、「見ておいてください」という連絡だけで済むようになりました。朝の打ち合わせ時間が短縮されましたし、紙の資料を用意することもほとんどなくなりました。

また、定期テストや小テストの採点ではデジタル採点システム「Answer Box Creator(アンサーボックスクリエイター)」を使い始めたことで採点にかかる時間が大幅に減りました。回収した答案用紙をスキャンしてパソコンに取り込んで画面に表示させ、選択問題は自動で採点、記述問題は一覧表示にして一括で採点することができます。英語だと自動採点ができない問題も多いのですが、採点スピードは上がりましたね。手も疲れなくなりました(笑)

ーー 保護者とのやりとりでICTツールを活用することはありますか?

保護者の方とのやりとりには、学校連絡・情報共有サービス「COCOO(コクー)」を使っています。欠席や遅刻をする場合は、保護者が保護者用Webサイトから学校に連絡することができます。教員はそれをパソコンの画面上で確認します。今までは毎朝欠席連絡の電話が鳴り止まず対応に追われていたのですが、それがほとんどなくなりました。システム上で学校からのお知らせを保護者へ送ったり、保護者がアンケートの回答を行ったりすることもできます。教員だけではなく、保護者の方にとっても負担は減ったのではないかなと思います。

まずは自分で使ってみて。興味を持ってくれる先生はきっといるはず

ーー これから学校内でICTツールの活用を広げようとしている先生へ、アドバイスをお願いします。

いきなり職場の先生たちに広めていくのはなかなか難しいことだと思うので、まずは自分が興味のあるICTツールを使ってみるといいと思います。そうすると、生徒たちから反応があったり、興味を持ってくれる先生が声をかけてくれたりすると思います。

実際に、私が授業でクイズ作成アプリ「Kahoot!(カフート)」を使っているところをたまたま見た数学の先生が興味を持ってくれて、早速授業で使ってくれています。使ってみた感想を職員室でのちょっとした雑談の中で話してみるのもおすすめです。きっと興味を持ってくれる先生はいるはずなので、周りにいる先生を少しずつ巻き込んでいけると、徐々に学校全体にも広がっていくと思います。

ーー 的場さん、ありがとうございました!

ご紹介いただいたICTツールまとめ

< 授業内で使えるICTツール >
① Quizlet(クイズレット)|https://quizlet.com/ja
② ロイロノート|https://n.loilo.tv/ja/
③ Kahoot!(カフート)|https://kahoot.com/
④ Monoxer(モノグサ)|https://corp.monoxer.com/

< 日常の業務で使えるICTツール >
⑤ milim(ミライム)|https://www.milim.jp/
⑥ Answer Box Creator(アンサーボックスクリエイター)|https://answerbox.jp/
⑦ cocoo(コクー)|https://www.cocoo.education/

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建石尚子

1988年生まれ。中高一貫校で5年間の教員生活を経て、株式会社LITALICOに入社。発達支援に携わった後、2021年1月に独立。現在は教育に関わる人や場を中心に取材や執筆をしている。「メガホン」の運営団体であるNPO法人School Voice Project 理事でもある。

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